栄えあるミョウコウ型姉妹艦にバカなどいないのだ   作:独資耶

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戦闘シーンは苦手です……


第三話

妙高達の性能テストから早2週間後、旗艦叢雲率いる第一艦隊は敵艦隊の撃破任務のため、

海に出ていた。空は晴れていたが、海は少し荒れていた。

 

初めて4人で出撃してから2週間も経つと、叢雲達は4人での戦い方に慣れていき、

戦闘時の連携も問題なくとれるようになった。

今日の任務も無傷で達成し、アシガラがMVPを取ったのであった。

 

 

「敵艦発見! 戦艦1、重巡2、駆逐2の単縦陣だ」

 

戦闘終了後、鎮守府に帰還中の叢雲達は、ミョウコウの声で即座に戦闘態勢に移る。

艦載機とリンクしているミョウコウの視界には、敵が進路上に居るのがはっきりと見えた。

艦載機から情報を得たミョウコウは、即座に敵の情報を僚艦に伝える。

ミョウコウの役目は、艦隊の目となることである。

索敵機を駆使し、敵の編成、陣形などを仲間に伝える。

ミョウコウが得た情報で、敵と遭遇する前に簡単な指示が出せるのである。

報告を受けた叢雲はミョウコウに、敵に見つかっているのか確認した。

 

「いや、敵はこちらには気づいていないな」

 

返事を聞き、叢雲は艦隊のコンディションを確認して指示を出す。

 

「分かったわ! 戦艦の砲撃に注意しつつ、周りの雑魚からかたずけるわよ!」

 

 

 

しばらくして、敵艦隊が叢雲達の目にギリギリ目視できるほどに近づくと、

叢雲はミョウコウに指示を出す。指示を受けたミョウコウは艦隊から少し離れる。

少し離れたミョウコウは敵に見えないよう姿勢を低くしてから、敵戦艦を主砲で狙撃した。

狙撃後、素早く移動する4隻。

弾は見事目標に命中し、敵戦艦が小破するのが遠くから見えた。

攻撃を受けた敵艦隊は此方の姿をまだ視認できていないらしく、動揺しているのが分かる。

そんな敵艦隊をよそに、叢雲達は着々と陣形を整え水雷戦の準備にかかった。

敵艦隊に気づかれぬよう波の陰に身を隠しながら接近する。

 

「沈みなさい!」

 

叢雲の掛け声で魚雷が発射され、重巡2隻が被雷し大破、轟沈した。

ようやく此方に気づく戦艦だが、煙幕が展開され此方の姿が目視できない。

叢雲と白雪の煙幕で弾幕が張れない敵に、装甲を抜ける位置まで近づいた4隻は敵艦隊に斉射をお見舞いする。

 

4隻の放った攻撃に敵艦隊は大破した戦艦を残し轟沈した。それでもなお戦艦はしぶとく此方に主砲を向けてきたが、その主砲が火を噴く前にダメ押しの魚雷を受け轟沈した。

 

戦闘が終わると、叢雲は足柄に声をかける。

魚雷を放ったアシガラは嬉しそうに勝利ポーズを決めている最中だ。

 

「足柄、今回もMVPはアンタだったわね」

 

「ありがとう叢雲、私もこの艦隊に来てから2週間、経験を積んで強くなったしね。

 それに最近は連携がとれてきたし、この調子でどんどんいこーー!」

 

アシガラはそう言って笑うと、次の獲物はまだーとミョウコウに聞いていた。

 

アシガラの役目はミョウコウと一緒に重巡の火力で敵を殴る、この艦隊の砲火力を担っている。

ミョウコウの装備は偵察機や電探など索敵に重きを置いているが、アシガラは主砲や副砲をがん積みという火力に特化した装備になっている。

 勿論その装備にも訳がある。この艦隊は重巡2隻以外は駆逐艦である。そして駆逐艦の主砲では、巡洋艦、戦艦にはまともにダメージが通らないのだ。勿論魚雷を使えばいいダメージが入るが、魚雷はそんなに沢山携帯することができない。しかも一度に沢山撃つ。そして1本当たればいいというものなのだ。そのため毎回魚雷を撃っていればすぐ弾が切れて撃てなくなってしまう。そのため駆逐艦に代わりアシガラは砲撃戦で敵を叩く役割をこなしているのだ。

 

そして叢雲や白雪、駆逐艦の役目は味方の支援だ。

昼間、戦闘中に味方が集中攻撃を受けないように煙幕を張ったり、足の速さを生かし、常に艦隊が有利な位置取りになるよう動いている。もちろん、夜戦になれば駆逐艦の時間だ。

小さな体を生かして闇に紛れ、主砲や魚雷を敵の近くから叩きこむからだ!

 

……そんな感じで2週間経過し、ミョウコウ達は艦隊に馴染んできたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・次の日・

 

任務から帰ってきた翌朝。空気は冷たく澄み、小鳥の囀りと波の音が聞こえてくる。

まだ朝日が上りきらない時間に台所からトントンと、規則正しい音が聞こえてきた。

音の正体は包丁で味噌汁の具材を切る音だ。慣れた手つきで包丁を動かしているのは白雪であった。その横で巨大な鍋を見ているアシガラ。二人はこの鎮守府の朝食を作っているのである。

鍋の火を落としたところで白雪達の作業はひと段落した。もうすぐ皆が起きてくる時間だ。

 

「毎朝、手伝ってもらい助かります。後はご飯が炊ければ配膳するだけですね」

 

そう言って白雪はエプロンを外した。アシガラも同じようにエプロンを外す。

 

「いいって。料理って意外に楽しいしさ。早起きも苦じゃないし」

 

そう言ってお茶を飲むためコップを二つ出すアシガラ。

二人は毎朝朝ご飯を作っていたのであった。

 

 

アシガラが一緒に作り始めたのは一週ほど前になる。

その日、朝早くから目が覚めたアシガラは鎮守府の中を少し散歩していた。誰も起きていない鎮守府は静かだ。窓からは朝日が差し込み、何となく神秘的である。まだ真新しい廊下をゆっくり歩いていたアシガラの耳に、食堂の方から音が聞こえてきた。

なんとなく興味がわき食堂をヒョイと覗き込むとエプロン姿の白雪が料理しているのが見える。

料理。そういえば誰かが戦術ネットワークに料理について上げてたっけ。と、頭のなかで情報を思い出していると白雪と視線が合う。おはようと元気に挨拶をする。白雪もおはようございますと丁寧に返す。少しの間、2人の間に沈黙が流れた。沈黙を破り白雪が申し訳なさそうに言った。

 

「すいません、まだ作り始めたばかりでご飯まだなんです。何時もの時間には出来上がるので待っててくださいね」

 

朝食の時間まで特にやることがなかったアシガラは、時間まで何をしようと考えふと思った。料理の経験をここでしておいた方がいいのではないかと。メンタルモデルであるアシガラには本来食事は不要だ。無駄な事と言ってもいい。しかし、人間は無駄なことから何か見出す事もあると聞く。ならば時間を潰すのにも料理は最適ではないのか。と、ここまで頭の中で一瞬で考える。

 

「白雪ーー! 私も料理手伝っていいーー?」

 

言いつつもエプロンを見えない位置からナノマテる。

手品みたいに出てきたエプロンに驚きつつ会話を続ける白雪。

 

「えっと……足柄さんは料理はしたことがあるんですね? それならお願いします」

 

「ないよー、でも安心して何でも任してくれていいよ!」

 

「ないんですか……。でも折角ですし簡単な事をお願いしますね?」

 

こうして、アシガラは料理を手伝い始めることとなったのである。

最初はアシガラに簡単な仕事を指示していた白雪も、教えたことをすぐに覚えるアシガラに、安心して仕事を任せるようになったのであった。

 

ご飯が炊け、朝食の時刻になる。

時間になるとまずやってきたのは提督とミョウコウだ。

提督は二人におはようと言うと半分寝ぼけながら席に着く。朝からキッチリした格好をして食堂に入ってきたミョウコウは手伝おうと言い配膳を手伝ってくれた。

そうして配膳が終わると眠たげな明石を引っ張りながら叢雲が入ってきた。これで全員集合だ。

叢雲は毎朝ちゃんと起きてきなさいよと明石に言うが、いろいろやってたら寝るのが遅くなるんですよーと明石は返す。明石はほっとくと昼近くまで寝ているため、毎朝提督か叢雲が起こしにいくのが習慣になった。

 

全員が朝食を食べ終わると朝礼がそのまま食堂で行われる。

朝食を食べ目が覚めた提督が、今日の予定を叢雲とミョウコウに聞く。

今日の出撃は近くの漁船の護衛任務のようだ。

アシガラと叢雲が指名され、残りは待機を言い渡される。

護衛と言っても近くに鎮守府がある海域での任務なので、一人か二人で十分達成できる任務だ。

何かあればすぐに駆け付けられる、比較的安全な任務なのである。

今日の任務は一つだけだったらしく、そのまま朝礼が終わり、各人仕事にかかった。

 

アシガラと叢雲が出ていくと白雪は今日の仕事を確認する。

今日は天気がいいので洗濯物を干そうとか、お昼は何を作ろうかなとか。

こんなとき間宮さんがいてくればぐっと楽になるかもしれないが無い物強請りである。

艦娘間宮は大本営でしか建造できないらしく、しかも滅多に建造が成功しないらしい。

一応間宮の配属申請書類があるらしいが、莫大な資源を書類と一緒に送らなければいけないと前に提督に聞いた。

白雪は頭を振って雑念を払い、まずは洗濯物の方をかたずけようと気合をいれ仕事にかかった。

 

 

執務室。お昼ご飯を食べ、鎮守府に送られてきた書類に目を通しながら提督は寝そうになっていた。

日差しが暖かく、瞼が落ちそうになる。

そんな提督に、隣で書類整理を終えたミョウコウが声をかける。

 

「なんだか眠そうだな提督。コーヒーを入れてこよう」

 

そう言って椅子から立ち上がり、執務室から退室する。

このままでは仕事にならないなと、体を伸ばしながら立ち上がる提督。眠気を覚ますため、窓を開けた。窓を開けると気持ちのいい風が部屋の中に入ってくる。

しばらく新鮮な空気を吸って眠気を飛ばしているとミョウコウが帰ってきた。

手にはコーヒとガムを持っている。

 

「アイスコーヒとガムだ。口を動かすと眠気がなくなるらしい」

 

ミョウコウから受け取るとすぐに飲み干す。

 

「助かる妙高。……お前はいらないのか?」

 

「眠くはないからな。さあ仕事を再開するぞ提督」

 

二人はそのまま叢雲達が帰ってくるまで仕事に打ち込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・工作艦明石・

 

夕食が終わり、誰もが寝静まった時間に、明石の船内に二人の人影がいた。

片方はミョウコウであり、もう片方は明石であった。

ミョウコウは通信機で何か話している。

 

「ええ……、今の所反応はありません。……了解しましたヒエイ、それでは」

 

「定時報告は終わった、ミョウコウ?」

 

「ああ、そちらはどうだ明石?」

 

明石の方を見るとミョウコウの艤装を整備していた。隣には整備が終わった艤装が吊るされている。

 

「ナノマテリアルでできる限り再現しているとはいえ、元々艦娘とは規格が違いますからねー。

 艤装を制御するにしてもコアの処理が大変ですし、最適化も中々難しいですね」

 

「動かせただけでも上々か……例の件はどうなっている?」

 

明石は作業を中断すると、机上のパソコンを操作して壁のスクリーンに海図を映す。

海図は微妙に動いており、これがリアルタイムで観測されていることが明石から説明される。

 

「今現在まで観測ユニットから送られてくる情報を解析した限り、怪しい物は映っていませんね。

 時々深海棲艦の姿も見られますが、それだけです。重力子反応も無いし範囲を広げるしかありま

 せんね」

 

「気長に行くしかないな」

 

そう言ってミョウコウは仕事に戻ろうと甲板にでた。明石も一緒に付いてくる。

 

 

 

夜の港は静かだ。月明りのおかげで全体がよく見える。

ミョウコウは、少し歩いてから背後を振り返る。

 

「おやすみ、()()()

 

「夜勤、頑張って下さいねミョウコウ」

 

手を軽く振るとミョウコウは静かに船から降りて、鎮守府の見回りを再開するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




*ナノマテる……ナノマテリアルで何かつくる事。
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