人間強度が下がらなかった話   作:ボストーク

21 / 41
皆様、こんにちわ。
気が付けば、このシリーズもいつの間にか20話突破してました。
まだまだ話は続きますが……ここまで応援してくださった皆様に感謝!

さて、今回のエピソードは……舞台は阿良々木家で、原作にはない挿入シーンとなります。

??「挿入……もうその言葉だけでイキそうだなっ!」

いや君の出番まだだから。バスケットボールの表面でエロい妄想できると豪語する電波はほうっておいて……そこで語られるのは、直江津市と変体刀にまつわる物語です。

いや、まあそれより大小問わず妹にダダ甘の暦とか、初登場のキャラ(CV:折笠愛さん)とか、「火憐ちゃん、お前もかい」的なノリとかを詰め込んでいます(^^






[021] ”直江津語”

 

 

 

翌朝、4月30日。

僕は自分のベットの上で月火ちゃんの匂いと柔らかい感触の中で目覚めた。

 

”CHU”

 

そして、寝ぼけ眼のままに唇に温かい感触が、

 

”ちゅぱ……にゅぷ……”

 

唇が舌先でなぞられ、僕は求めるままに口を開いて月火ちゃんの舌を受け入れ絡める。

そしてたっぷり分単位の時間が過ぎた後、唇が離れて二人の唾液が混じりあったものが糸を引いて垂れる……

 

「おはよ♪ お兄ちゃん♪」

 

僕の目の前には……いつの間に脱いだのだろう?

一糸纏わぬ姿の月火ちゃんが微笑んでいた。

 

「おはよ。月火ちゃん」

 

その日に最初に見るものが可愛い妹の笑顔……とても気分のいい目覚めだった。

 

 

 

***

 

 

 

さて、月火ちゃんと一緒にシャワー&朝食をとった僕は次なる行動に移る。

確かに「()()()()()()」忍野に丸投げ状態だが、かといって何もしないつもりはない。

 

”コンコン”

 

僕は自宅のとある部屋をノックした。

 

「母さん、入るよ?」

 

返事が無いということは了承ということだろう。

 

 

 

「バカ息子、どうしたんだい? 私の仕事部屋に来るなんて珍しいじゃないか?」

 

と執務机で作業していた母さんは、椅子ごと僕に振り返る。

 

「【千刀”(つるぎ)”】を借りたいって思ってさ」

 

僕は単刀直入に切り出す。

正直言えば母さんと話すのは苦手だ。いつの頃からか何を話していいかわからなくなった。

僕はどうやら母親との接し方というものを、どこかに置き忘れてしまったらしい。

だから、あまり無駄話をしたくはなかった。

 

「そうかい。アンタが変体刀を持ち出そうとするなんて、何かあったのかい?」

 

母さんは当然のように僕の()()……本来なら、【全刀”錆”】の特殊能力であるはずの「棒状の物を全て刀とできる力」、”()()()”を知っていた。

 

「まあね。それを使わないとならなくなりそうな問題が少々ね」

 

その全刀化体質と『()()()()()()()()』のお陰で、僕は今のところ特定の変体刀を相棒とはしてないけど、

 

「期間限定ってとこかい?」

 

「ああ」

 

怪異化した羽川の能力と贋作【絶刀”鉋”】の相乗効果威力は抜群……いや驚異的だ。

そこいらの刀じゃ歯が立たないだろう。

だから本来、頼りたくないけど母さんに頼った。

 

 

 

僕達の住む「直江津市」は少々……いやかなり変わった街だ。

その生涯が怪異譚じみた伝説の刀匠”四季崎記紀(しきざき・きき)”と縁、あるいは因縁が深い土地だけあり、古くから変体刀を巡る奇怪な事件が後を絶たない土地柄だった。

 

実際、現在に至っても刀剣類……特にオリジナル/レプリカを問わない変体刀を刃傷沙汰が後を絶たない。

いや、むしろ『地域特性による()()()()()』として黙認されていた。

つまりは変体刀の存在もその所持も帯刀も、「刀に選ばれるという()()()()()」に含まれるのだ。

 

なぜ国がこのような判断に至ったのか定かじゃないが、遥か昔から……近代政府となる明治維新の前から、この土地はそういう扱いだったらしい。

郷土史を紐解けば、変体刀が触媒になるせいかはたまた別の要因からか、どうやら怪異絡みの『不可思議な事例』も昔から多いみたいだ。

記録によれば変体刀絡みじゃなさそうなものを挙げれても、有名な湖に降臨した『金色の女神』伝承やいくつもの村の住人が瞬く間に消えた『()()()()の大規模神隠し』などがある。

ホント、物騒な昔話には事欠かない場所だ。

 

 

 

そういうわけで直江津市を中心とした半径数十kmは、建前的には「何の変哲も無い地方都市」であるために立ち入り制限こそ()()()無いものの、平成の御世になっても国家公認の”第壱級災害指定地域”になっていた。

 

例えば、街から陸路で郊外に出れば「日本ではありえないような荒野」が人工的に維持されており、特にミスタードーナッツがある国道なんかは映画で見る「アメリカのルート66のような風景」が見られ、ちょっとした名物になっていた。

これはもちろん観光開発などではなく、有事の際に簡単に街を閉鎖できるようにするための処置とも、あるいは大規模な鎮圧部隊が展開できるようにするための処置とも言われている。

エヴァ風に言えば「A-801発動の準備的環境整備」になるだろうか?

 

 

だが、そのような()()()()()……まるで「変体刀を封じ込めるための結界のような街」とはいえ、政府は完全に無法地帯とするわけにはいかない。

当然のように治安組織も、()()()()()()()()()()()に対応できるような人員が選ばれる。

 

そして僕の両親は、二人揃って治安組織要員……警察官だった。

加えて言うなら、変体刀絡みの事件に対応できる現在では随分と少なくなった「帯刀警官隊」の上の方で、本人達も怪異化したそれを含む贋作変体刀を複数所持していた。

 

 

 

「……貸すのは駄目だ」

 

「そっか」

 

確かにそうほいほいと持ち出していいものではないよな。

 

「だが、進呈するのならいい」

 

「えっ?」

 

驚く僕をよそに、母さんは椅子から立ち上がると贋作【千刀”剱”】を手に取り、

 

「暦、お前もそろそろ『剣士が変体刀を持ち、帯刀する責任』をまっとうしてもいい頃じゃないか?」

 

 

 

はあ……母さんは厳しいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

************************************

 

 

 

 

 

「変体刀を持つ責任、か……」

 

変体刀は、直江津市にある無数の刀剣の中でも別格の存在だ。

 

『刀は斬る()()を選ばず。されど主を選ぶ』

 

とは使い古された表現だが、その代表格が変体刀だ。

実は変体刀、それもわざわざ”贋作”と銘打ってまで売られる刀は多いが、その多くは「見せ掛けだけ真似た物」だ。

 

そしてそれらの代物、実は一般に変体刀とは呼ばれない。

模造品とつけようが偽者とつけようが贋作とつけようが、絶対に変体刀とは言われない。

変体刀に最も重要とされるのは”()()”であり、変体刀に相応しい性能を持つ刀しか変体刀としか呼んではいけないのが暗黙の了解だった。

模造/偽物/贋作という言葉は「マスターピース(本物)ではない」という意味であり、性能が変体刀と呼ばれるに至ってないという意味ではないのだ。

 

 

 

変体刀は物が刀であるだけに血腥い逸話に事欠かないが……

都市伝説じみた物でなく、現実に起きたものをあげてもこんな話がある。

 

直江津市は「公表されない殺人/立件されない殺人」が多いが、その路地裏に遺棄された死体を調べれば、かなりの確率で「変体刀でない刀を変体刀として売った者」に行き当たる。

 

そして警察は背後関係を探るために調べ上げるが、こと被害者が「偽の変体刀を売ったのではなく、変体刀でない代物を変体刀と偽って売った」ことが原因での殺害であれば、直江津市やその周辺で起きた事件なら先ず立件されることはない。

書類上は「事件性のない不審死」として処理されるだけだ。

 

要するに変体刀を偽れば、それは()()として跳ね返ってくる……奇譚的な言い方をすれば「変体刀に祟られた」という扱いになるのだろう。

実際、直江津市にはこんな言葉がある。

 

『もし刀偽れば、殺され損の殺し得』

 

実際、この言葉過去にこの地であった事例が元になっていた。

時は開国半世紀ほど前、とある大店(おおだな)が商売敵の大店がただの刀を変体刀と偽って売ってることを突き止めた。

そこである夜に腕の立つ浪人を雇い、討ち入りをし商売敵の一族郎党を血祭りにあげたのだ。

本来なら大罪人として厳罰に処されるところだろうが、「この者達こそ天上天下を騙し、偽りの変体刀を売った大罪者なり。我ら天にかわりて成敗せし候」とお上に訴えた。

この大店、偽の変体刀を売りつけられた詐欺の被害者を集め、また雇った浪人者の中にも贋作変体刀使いがいたせいもあり、吟味の結果、お白州の上で「罪の一切を不問とす」とお裁きを受けたのだ。

 

以来、その討ち入りを行った大店は名士として持て囃され、子々孫々まで長く繁栄したといわれている。

 

 

 

今は流石に売った本人はともかく、一族郎党まで全て斬れば大騒ぎにはなるが……今も根本的には変わらぬ直江津市の特性をよく現す言葉だった。

 

 

 

***

 

 

 

こんな街に生きる者にとり、かくも変体刀とは特別な意味を持ち、また明文化されない”()()()()()()”をもつからこそ、所持するにも帯刀するにも相応の義務と責任が生じるのだった。

 

(つまり母さんは、今回の案件……)

 

「”()()()()()()()()”解決してみせよと言いたいわけか……」

 

リビングのソファで僕はスラリと贋作【千刀”剱”】を朱鞘から抜き放つ。

なるほど……贋作とはいえ確かに業物だ。

二尺三寸五分の刀身は、”抜けば玉散る氷の刃”と思わず表現したくなる。

 

実はこの【千刀”剱”】、この間「異形の羽川」との1stコンタクトで僕が使ったスレイブ”剱”を街中にランダム発生させていた”剱”とはまた別の贋作だ。

 

何しろあの時は、まだこの刀は機能の大半を封印され、主の無い()()()()だった筈だ。

 

「”目を覚ませ”」

 

僕が呟く……見た目には何の変化も起きないけど、

 

「同等の性能はある、か」

 

幸いにしてこの”剱”も無事に付喪神ないし九十九神に変化し、怪異化変体刀……怪変刀【千刀”剱”】として成立してるみたいだ。

 

(これなら羽川にもどうにか対抗できるか……)

 

羽川を討伐するなら他にも向いた怪変刀はあるけど、僕の今考える戦術なら”剱”がベストなはずだ。

 

 

 

「あれ? 兄ちゃんが朝から刀の手入れしてるなんて珍しいじゃん?」

 

と不意に聞こえる声。

どうやらジョギングから帰ってシャワーを浴びたらしい下着姿……というかパンツ一枚の火憐ちゃんだった。

 

「そうかもな。手入れっていうより確認だけど」

 

”チャキ”

 

僕は刀を再び鞘に収める。

正直、文字通り剣呑な姿を可愛い妹の前で晒したくはない。

 

「ふ~ん」

 

とナチュラルに火憐ちゃんは僕の膝の上に乗ってくる。それも対面座位で。

刀をしまって脇に置いたから、きっと「おいで」の合図と思ったのだろう。

 

「あっ、そうだ火憐ちゃん」

 

「なんだい、兄ちゃん?」

 

ここは交渉開始だ。

 

「もうじき街で『化け猫』の噂が出回ると思うけど、動かないでいて欲しいんだ」

 

「なんで? そんな危ないのを退治するのが、アタシ達”ファイヤーシスターズ”の役目じゃん?」

 

「それはそうなんだけどね」

 

火憐ちゃんを頭ごなしに否定しちゃいけない。

火憐ちゃんの正義を僕は否定したりなんかしない。

それが「純粋すぎるが故に()()」だったとしてもだ。

 

「でも”()()”は『僕の獲物』だから……わかってくれるね?」

 

「う~ん……兄ちゃんの獲物かぁ。ん? だから兄ちゃんは刀の手入れしてたのか?」

 

「まあ、そういうこと」

 

すると火憐ちゃんはにっこりと笑って、

 

「兄ちゃんが刀持ち出すくらい気合入ってるなら、譲ってやってもいいぜ♪」

 

「火憐ちゃん……ありがとう」

 

「んー」

 

目を瞑っておねだりする火憐ちゃんに、

 

”CHU”

 

僕は背は高いけど、思ったより華奢な肢体(からだ)を抱きしめて感謝のキス。

『感謝と誠意は唇に乗せて』が阿良々木兄妹のルールだ。

随分と昔に決まったルールだけど、発起人は確か月火ちゃんだったはず。

確か当時の言葉だと、

 

『どんなにケンカしてもキスで仲直り☆』

 

きっと、当時流行っていたアメリカのホームコメディかなんかの影響かな?

火憐ちゃんも乗り気だったし、僕も反対する理由はなかったから、今もそれは続いている。

育がいた頃はもうちょっとライトなキスだったような気もするけど、それだけ火憐ちゃんも月火ちゃんも大人になったってことだろう。

 

 

 

「兄ちゃん、もっとキスぅ……」

 

「あれ?」

 

気が付いたらしなだれかかられて、そのままソファに押し倒されてしまったぞ。

さすが修行中とはいえ現役格闘家(グラップラー)。マウントの取り方に隙が無い。

 

うーん、でも困った。

力技で振りほどくのは趣味じゃないし。

特に可愛い妹たちに対しては。

 

「ところで火憐ちゃん」

 

「なぁに?」

 

トロンと濁った目で僕を見つめる。

可愛いなぁ……

 

「彼氏くんともこういうことしてるの?」

 

そういえば火憐ちゃんも月火ちゃんと同じで、何故か彼氏の名前教えてくれないんだよなー。

真面目に聞いたからって何かするってことはないんだけど……

 

「へっ? なんで?」

 

あれ? 急に素に戻った?

 

「なんでアタシが瑞鳥(みずどり)君とこういうことしなくちゃならないんだ? 兄ちゃんだけに決まってるじゃん」

 

「あっ、そうなんだ」

 

「だって家族だぜ? 兄ちゃんだぜ? 妹だぜ?」

 

「そりゃそう……か?」

 

何か違う気もするけど、あんまり気にする必要もない気がする。

 

「だから兄ちゃん……続き、しよ?」

 

「うん、いいよ」

 

僕と火憐ちゃんの唇がまた重なった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
兄が”駄目妹製造機”、妹二人が”駄目兄製造機”であることが判明したエピソードはいかがだったでしょうか?(マテ

基本的に、
月火→確信犯&黒幕
火憐→流れに進んで乗った
暦 →無自覚のうちに流された
両親→兄妹仲良いのはまあいいか(えっ?

って感じです。
どうやら平行世界(げんさく)とは随分生い立ちが違うせいで、こよみんは妹たちとの接し方はかなり違う……というか「理想のお兄ちゃん(兄ちゃん)」に逆光源氏されたっぽいです。
そりゃ彼氏の扱いが……になるわけですな(白目)
なんか月火ちゃんはガチに「阿良々木ハーレム建造計画」とか考えていそうで怖い(^^

そしてそして、今明かされる直江津市の裏の姿!
「いや、それどんな冬木市だよ?」というツッコミは作者自身もしました(笑

普通の刀では怪異化羽川に文字通り太刀打ちいかないと悟った暦ですが……その判断は吉と出るか凶と出るか?

心渡(レプリカ):「出番ェ……」

それでは皆様、また次回にてお会いしましょう!




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。