Tales of Lovelive!~みんなで叶えるRPG~   作:@ぷくぅ

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始まりの鼓動

「……カ…。…ノカ…」

 

 誰かが私を呼んでいる。なんだか懐かしいような、優しくて力強い声。

 

「ホノカ…」

 

「ん…」

 

 声に誘われて、私はゆっくりと目を開ける。真っ先に視界へと入ってきたのは突き抜けるような青い空。え、外?などと思いながら立ち上がると、そこは一面の大平原だった。建物一つない、あるのは一本の大きな木、ただそれだけだ。通り抜ける風がどこか心地よい。

 

「ここは…?」

 

 知らない場所、いや、全く知らないわけじゃない。小さいころ、一度だけ見たことがあるような、行ったことがあるような。そんな記憶の片隅に残っているような場所。でも、なんでそんな場所にいるんだろう?

 

「気がついたかい?」

 

 後ろには、先程から私を呼んでいた声の主がいる。振り返ると、そこには胸甲姿の青年が優しい笑みを浮かべていた。肩のあたりまで伸びた橙色の髪は、男の人にしては長い方だと思う。かなり高位の役職なんだろうか、鎧の装飾もきらびやかだ。でも待てよ……この人、前にどっかで見たことあるような気がするんだけど…。

 

「えっと…もしかして、ほむまんのおじさん…?」

 

「覚えていてくれたんだね。嬉しいよ」

 

 ほむまんのおじさん。本当の名前は知らない。私がものすごく小さかった頃――3歳とか4歳とかだったんじゃないだろうか――旅先で出会ったおじさんだ。

 

「久し振りですね! あれ、でも、全然変わってない?」

 

 旅先で会ったというのもほんの少しの間で、迷子になって泣いていた私をあやしてくれて、そう、あそこに立っている大きな木の下だ。それから、ちょうど持ってたほむまんを一緒に食べて、おしゃべりして。そのほむまんをものすごくおいしそうに食べていたから、ほむまんのおじさんと名付けた気がする。そうこうしているうちに私は眠ってしまったらしく、両親が見つけてくれた時には、いつの間にかいなくなっていた。

 

「ははは、よく言われるよ」

 

 ただ、この見た目でおじさんは少し辛いかな、と独りごちる。確かに、言われてみれば見た目は20代前半ぐらいだろうか。背丈は私よりも幾分か高く、少し見上げないとその表情は伺えない。私と同じゴールデンオレンジの長髪がそよ風に揺れていた。

 

「すまない、あまり時間がないんだ。今日キミに会いに来たのは折り入って頼みがあってのことなんだ」

 

「頼み?」

 

 あぁ、とオリオンブルーの双眸が、じっと私を見下ろす。さっきまでの微笑とは一変して、今度は真剣な眼差しでおじさん(お兄さん?)はこう語りかけた。

 

「ホノカ、この世界を救ってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん、起きなくていいの?」

 

「あ、れ? ほむまんのおじさんは…?」

 

 私は、肩を揺すっている小さな手を払いのけながら、まだ重たいまぶたをありったけの力でこじ開け、妹のユキホを見つめた。ユキホは、払いのけられた手をそのまま胸のあたりで組み、呆れたように返答する。

 

「はぁ? 何言わけわかんないことってんの、今日緊急集会なんじゃなかったの?」

 

 緊急集会?そういえば、今日は魔物討伐のための作戦会議って騎士団長が…。

 

「ユキホ!! 今何時!?」

 

「はぁ…お姉ちゃんが昨日言ってた集合時間の20分前」

 

 それを聞いた私は、かぶっていた布団を吹き飛ばして台所のある階下へ一直線。ベッドと扉を結ぶ直線上にいたユキホはというと、もう完全に慣れてしまっているのか、ぶつかりそうになった私をすんでのところで躱し、トーストならお皿の上に置いてあるからねーと言いながら自室へと戻っていった。

 

「あらホノカ、今日は早いのね」

 

「緊急集会!!」

 

 台所の机に座っていたお母さんとそれだけ会話して、私は皿の上のトーストを引っ掴む。食べながらの鎧早着替えも、一年経ったとなればもうお手のものだ。最後の留め具を締め終わると同時に、視界の隅に時計を入れる。あと10分。これならなんとか間に合う!

 

「いってきます!!」

 

 蹴破るように家のドアを開け、外へと飛び出す。台所から、乱暴に扱うな!と怒号が聞こえた気がしたけど、振り返る余裕は持ち合わせていなかった。

 

 これが私、ホノカ・コウサカ。オトノキ王国騎士団に所属するグリーンナイト。今、私が住んでいるオトノキ王国は、ちょっと、いや、かなり重大な問題を抱えている。魔物の襲撃だ。最近の魔物事情はなかなかに物騒で、国王様が亡くなって以来、魔物による侵略は規模を拡大し、まさに王国のすぐそばまで迫ってきていた。ある村では魔物に支配されてしまい、毎月一人生け贄を捧げなきゃいけないようなところもあるとか。

 

 残された女王様も、側近の方と協力して対策をとっているけれど、思うような成果を挙げれず、国民もやきもきしている。王国とはいえ、あまり大きな国ではないためか、みんな国が大好きで、暴動こそ起きていないものの、傍から見れば何か事件が起きてもおかしくない状況だ。私達騎士団も、国のために尽力を尽くしてはいるが、無尽蔵に湧いてくる魔物たちを食い止めるので精一杯。今日の緊急集会は、その問題を少しでも解消すべく開かれるもので、最近より活発になった魔物の動きを抑えるための会議だった気がする。たしか。とにかく今、オトノキ王国は大ピンチなのだ。

 

 大ピンチといえば、と。走っている足が緩まる。今朝の夢は何だったんだろう。朝のドタバタで少し忘れてきてしまってるけど、ほむまんのおじさんに頼まれごとをされたような気がする。そう、世界を救ってくれ、と。全くもって変な夢だ。世界どうこうよりも先に、この国をどうにかしなきゃだよね…。何かいいアイデアはないのかな…。このままジリジリと侵略されていくなんて、そんなの嫌だよ。

 

 しばらく小走りで夢のことを考えていたが、いつしかオトノキ王国のことについて考えていたようだ。もうほとんど覚えていないような場所や人が出てきたのがちょっぴり気になるけど、所詮は夢の話。とりあえず、今は会議に間に合うことが先決だよね。私は地面を強く蹴り、再び走りだした。

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