Tales of Lovelive!~みんなで叶えるRPG~   作:@ぷくぅ

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友情ノーチェンジ

 街へと戻った私たちは、驚くべき事実を耳にする。鎧を着込んでいた青年は、なんと、最初に訪れた店の店主の息子さんだったらしい。なんでも、数カ月前、染料採取にでかけたまま戻ってこず、探しに行こうにも魔物に阻まれ、半ばあきらめていたそうだ。事件を解決した私たちは一瞬にして英雄扱いされ、握手は求められるわ、宴に呼ばれるわで、てんやわんやだった。

 翌日、息子さんに話を聞いても、何も覚えておらず――私達と戦ったことすら覚えていなかった――進展がなさそうだったため、衣装を受け取ってオンデンの街をあとにした。

 

 ただ、気がかりなことがたくさんある。

 青年が今回の事件の犯人であることは間違いなさそうだ。では、なぜ青年は、リビングアーマーを着込んでいたのだろうか。リビングアーマーも、この辺りで見かけることはまずない。更に言うなら、あの鎧は、『自分の意志で着よう』としないかぎり、身に付けることはできないのだ。もしくは、誰かに装備させられたか。誰に?

 操られている時の行動も不可解だ。あの道を塞いでいた理由も見当たらない。バンブーロードに先にあるのは、アストリング渓谷だけ。更にその奥は傾斜が厳しいため、未開の地になっている。その未開の地に何か秘密が…?

 それに、王国の対応があまりにも遅すぎる。数カ月前に救援を依頼しているのに、何も手を打っていないというのは流石にありえない。染料が取れなくて困るのはこの街だけではない。国中の町や村、城下町にだって影響が及ぶだろう。衣類の供給がストップしてしまうのだ。それをずっとほったらかしなんて、考えられない。

 数カ月前、と言うと、ちょうどコトリ様がお部屋に籠もりきりになられた時期と合致する。これだけ時期がピンポイントであってくると、どうも引っかかる。

 ふと、ヒフミの言葉を思い出した。

 

『でも、気を付けて』

 

『国王様が亡くなってから、王宮内の様子が少しおかしいの』

 

『なんて言ったらいいんだろう……。ちょうどいい言葉が思いつかないんだけど、監視されてるというか』

 

 一抹の不安を抱えながら、私はアルパカの手綱を引いて、オトノキへと戻るのであった。

 

 

 

 

「なんか、緊張するね……」

 

 昼ごろ、オトノキへと戻ってきた私たちは、すぐにヒフミに連絡をとった。ま、及第点かなと、なんだか上から目線だったのは釈然としなかったけど、夕方にもう一度来るようにとのことで、指示通りに動いている、んだけど……。

 

「そ、そうですね……なにせ、5年ぶり、ですからね」

 

 私とウミちゃんは今、真っ白な扉の前に立たされている。ここは、王女様の自室前。この扉の向こうには、5年間会うことのなかった幼馴染がいる。

 

「と、とりあえず……ノックしよっか?」

 

「あ、ホノカ、おねがいしますね」

 

 なんで私なの!?と思いはしたが、ここでごねても先には進まない。ええっと、確か、2回ノックってトイレの時に使うから、こんなとこで使ったら失礼なんだっけ。で、3回は親しい友人とかの時で、4回が正しいんだったよね……?しばらくそんなことが頭の中をぐるぐるとしていた私だったが、覚悟を決め、それでもこわごわ扉を叩いた。

 

 

コン、コン、コン、コン

 

 

 4回ノックし終わるかどうかというタイミングで、部屋の中から返事が返ってきた。それも、すごい剣幕で。

 

「誰ですか!?この部屋には近づかないでと言ってあるはずです!!ヒデコちゃん、フミコちゃん、ミカちゃん、何をやっているんですか!!すぐに立ち去りなさい!!」

 

 知ってる声が、知らない色を浮かべていた。こんな声、聞いたことない。

 

「あ、あのー、お届け物をお持ちしたのですが……」

 

「そんなもの、捨ててしまい、な、さい…?え、えっ!?」

 

 私がドア越しに要件を伝えると、最初はとてつもない剣幕で話していた王女様だったが、徐々にその勢いを失っていき、最後には戸惑いを隠し切れない、そんな様子に変わっていった。

 

「えっと、あの、そこにいるのは、もしかして、ホノカちゃん、ですか……?」

 

 恐る恐る、と言う言葉がぴったりだろうか。パタパタと、慌てた様子でドアのそばまで駆けてきたコトリ様がそう尋ねる。

 

「作用でございます」

 

 言い終わるが先か、いや、後だろう。それはもうすごい勢いで目の前の真っ白な扉が開く。と同時に真っ白なドレスが私めがけて飛びかかってきた。

 

「嘘みたい!!なんで!?どうしてここに!?あっ!!ウミちゃんも!!」

 

 コトリ様は気分が高揚している様子で、矢継ぎ早に質問を投げかける。

 

「落ち着いてください、コトリ様。お届け物をお持ちしたんですよ」

 

 その様子に、優しい微笑みでウミちゃんが答える。その手には衣装がたっぷり詰まった紙の袋が。

 

「ちゅん!!ちゅん!!」

 

 ワンテンポ遅れて灰色の鳥が、ぱたぱたと羽ばたいてきた。そのままコトリ様の頭の上に止まる。

 

「あ、ちゅんちゅんー。ひさしぶりー」

 

「ちゅん!」

 

 ペットのちゅんちゅんも久方ぶりの再会を喜んでいるように見えた。

 

「もしかして、三人が言ってたプレゼントってホノカちゃんとウミちゃんのことだったの!?あ~ん、もうみんな大好き!!さ、中にはいって!お話したいことがたっくさんあるんだぁ~」

 

 いつにもましてテンションの高いコトリ様が、私達の手をグイグイ引っ張って、室内へと招き入れる。

 

「コ、コトリ様、お部屋にお招きいただくのは、恐れ多いというか……」

 

「ウミちゃん、この期に及んで見苦しいよ」

 

「ウミちゃん!!!今日は寝かせてあげません!!!」

 

 そんな私達のやり取りを聞いて気づいてしまったのか、コトリ様の目がますます輝いたように見えた。

 

 

 

 

「はぁ~ん、可愛かったよ~ウミちゃぁん♪」

 

 がっくりとうなだれるウミちゃん。もう、日が傾きだしていた。用意した衣装で終わると思っていた私達の読みは、全くの見当違いで、コトリ様自作のお洋服が何十着と用意されており、――私もその何着かの餌食となった――そもそも、5年もあっていなかったのにどうしてぴったりサイズの衣装が作れるのだろうかと、その感性に脱帽するばかりだった。

 

「ひどいです…コトリ様……」

 

「え~、ホントはもっとたくさんあったんだけど、流石にサイズ合わなくなっちゃって見せてないのがあるのに」

 

 それでもコトリ様は不満気だ。未だにクローゼットの中とにらめっこしている。

 

「コトリ様、お戯れも程々にしていただかないと、ウミちゃん恥ずかしくて死んじゃいますよ」

 

 さすがの私も苦笑いだ。

 

「あの、ね?二人に、お願いが、あるんだけど……」

 

 しばらく衣装を見つめていたコトリ様だったが、手にしたハンガーを元に戻し、おずおずとこちらに向き直った。

 

「その、昔みたいに名前で呼んで欲しいなって……だめ、かな?」

 

 頬を赤らめたコトリ様が、うつむき加減でそうつぶやく。突然のことに顔を見合わせる私達。なんだか冷や汗が垂れてきそうな雰囲気だったが、意を決したウミちゃんが、大きな深呼吸を、1回、2回、3回、え、何回するの?

 

「で、では、コ、コトリ…?」

 

 結局7回深呼吸したウミちゃんは、恐れ多い気持ちと、バレたら大変なことになるんじゃないだろうかって気持ちと、どことなく嬉しいような恥ずかしいような気持ちが入り混じったような表情で王女様に問いかけた。

 

「なぁに、ウミちゃん♪」

 

 コトリ様が満面の笑みをウミちゃんに向ける。よーし、私も!

 

「コットリちゃーん!!」

 

 そう言って私は、コトリ様、いや、コトリちゃんに勢い良く抱きついた。

 

「ホノカちゃーん!」

 

 コトリちゃんもギュッとハグし返してくれる。横であたふたしてるウミちゃんに手招きして、それから三人でしばらく抱き合っていた。

 

「なんだか、夢みたい……」

 

 ボソリとコトリちゃんがつぶやいた。これから話すのは、ただの独り言なんだけど、と前置いて、コトリちゃんは続ける。

 

「お父様が亡くなってから、この国は変わってしまった。…ううん、本当におかしくなってしまったのはつい最近だけど。それまで、私はずっと一人で、お裁縫をしてても、お菓子を作ってても、何も感じなくなってきて、もう、だめかなって思ってた。最後にホノカちゃんとウミちゃんに一目会いたい。そう思ってたんだけど……」

 

 コトリちゃんが顔を埋めている私の肩が、じわり、と熱くなるのを感じた。

 

「でも、二人にあったらそんな気持ちも吹き飛んじゃった!!」

 

 目元を拭って、にっこりと笑いかける彼女の姿は、5年前と何一つ変わっておらず、さながら天使のようだった。コトリちゃん、今までごめんね。こんな美しい笑顔を、失ってしまっていたのかと思うと、胸がひどく傷んだ。これからは、私達も出来る限り力になろう。

 

「作戦外されちゃったけど、むしろ良かったよ~。コトリちゃんも元気になってもらえたみたいだし」

 

 とは言うものの、真面目なキャラはあまり性に合わないと言うか。なんとなくおどけて見せてしまう。どこか気恥ずかしいところがあるというか……私もウミちゃんのこと言えないなぁ。

 

「作戦?」

 

「ホノカ、他言無用のはずですよ。そんなに軽々しく口にしてはいけません」

 

 ウミちゃんがキッとした目つきでこちらを睨む。

 

「コトリちゃんなら大丈夫だよー。だってこの国のお姫様だよ?」

 

「作戦って?」

 

 王族が作戦のことを知らないことにいささか疑問を感じたけど、ずっと閉じこもっていたなら仕方ないことなのかもしれない。私はかいつまんで説明することにした。

 

「城下町を出て、東西にそれぞれ少し進んだところに、マンセ遺跡とショーヘ遺跡があるでしょ?そこに封印を施したら魔物の勢力が弱まるんだって~」

 

 瞬間、コトリちゃんの顔が固まった。

 

「コトリ…?」

 

「嘘…そんな、ことって…」

 

「?」

 

 狼狽した様子でその場にへたり込むコトリちゃん。つられて私達も立て膝をつく。心ここにあらずと言った様子のコトリちゃんは、何も理解できていない私達に説明を続ける。

 

「あの遺跡は、王家が代々守ってきた大切な遺跡。最深部には破邪の祭壇があって、それを封印してしまったら、魔物の勢力が弱まるどころか…」

 

 はじゃ?

 

「……勢力が、弱まるわけがありませんね」

 

「えぇ!?」

 

 アヤセ騎士団長は先日の経過報告で得た情報だって言ってたはず。ってことは本当のことを知らない?嘘の情報を与えられたってこと?

 

「私がずっと閉じこもってたから…もっと見張っておくべきだった…!!」

 

 握りしめた拳から血が滴り落ち、綺麗な模様のカーペットを赤く染めた。この慌てよう、タダ事ではなさそうだ。

 

「行こう」

 

「え…?」

 

「今からなら、まだ間に合うかもしれない。行こう!!」

 

 いてもたってもいられなくなった私は、勢い良く立ち上がった。

 

「そうですね、時は一刻を争います。急ぎましょう」

 

 ウミちゃんもおもむろに立ち上がり、私に目配せをしながら頷いた。

 

「……私も行く」

 

「コトリちゃん!?」

 

 その様子を見ていたコトリちゃんが私達を見上げて叫んだ。

 

「私のせいだもん。私がしっかりしてなかったからこんなことになっちゃった。だから、私がどうにかしなきゃ!!」

 

「危険です!もし何かあったらどうするのですか!?」

 

 それを聞いたウミちゃんも声を張って諌める。

 

「私達だけで向かいます。ホノカ、マンセ遺跡とショーへ遺跡、近いのはどちらですか?最悪の場合、どちらか一方ということになってしまうかもしれませんが……」

 

 決意の表情のコトリちゃんに見向きもせず、ウミちゃんが私に問いかける。ウミちゃんは第1軍の集会の話しか知らないから、それぞれの遺跡への位置関係とか、詳しい話は聞かされてないみたい。私は少し考える。詳しい話を聞かされていないのは、何もウミちゃんだけじゃない。現に私だって今はじめて聞いた。そもそも、詳しい、話はコトリちゃんしか知らないのだ。

 

「待ってウミちゃん。コトリちゃんがいたほうが話が通りやすいかも」

 

 いそいそと着ていた衣装から着替え始めているウミちゃんに提言する。

 

「と言うのは?」

 

 ウミちゃんは着替えの手を一旦止め、真剣な眼差しで私の方に向き直った。

 

「はじゃの祭殿?は王族しか知らないわけでしょ?王族しか知らないような話を、私達が知ってるってのは結構無理な話だと思うんだ。それなら、コトリちゃんが説明したほうが話は通りやすいし、説得力があると思う」

 

「なるほど、一理ありますね。ですが……」

 

 ウミちゃんは、うむむ、と少し悩んだ素振りを見せて、チラリとコトリちゃんの方を見やった。コトリちゃんの目は、先ほどと変わらず熱い炎が宿っている。

 

「お願いウミちゃん。私だって、この国のために戦いたい。連れてってください!」

 

「……わかりました。ですが、私とホノカのそばを離れないことだけは、必ず守ってください」

 

「ウミちゃん…!!」

 

 必殺のお願いに、ウミちゃんが折れた。いや、必殺のお願いに、というよりも、コトリちゃんのハートに心動かされたんだろう。とは言え、やはり危険はついてまわる。私も心してかからなくちゃ!!

 

「アヤセ騎士団長が指揮をとってる部隊がマンセ遺跡に行ってる。あの人なら話を聞いてくれるはず!」

 

 私たちは、誰にも見つからないようこっそりと宮殿を抜け出し、マンセ遺跡を目指した。




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