恋姫☦伝説   作:貧弱戦士

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三話 旅

さて、みなさんおはようございます。孤高の戦士こと、田中太郎君です。いや、なんで? おはようだって?

それは今自分がいるところでは、明朝を迎えているからさ。温かい日差しが出始め、小鳥たちはそれを祝福するように鳴いている。そよ風は優しく自分を通り過ぎ、とても心地よく感じる。

世界ってこんなに優しいんだと思わせられる感覚が体中に駆け巡り、今の気分ならどんなことされようが、怒らない自身がある。自分自身に酔いしれるなんて、久しぶりだな。

 

そう、まさに縄で全身を巻かれながら馬に無理やり固定されても、それはもう過ぎたこと――――――。

 

 

 

「―――よぅし、やったのは誰だ? 今なら、自分の全身全霊を使って泣かすから、犯人は挙手しなさい。じゃないと、これからなにが起ころうがとてつもない惨事が、目の前で起こることになる!!」

 

「さてと、文句があるなら聞いてやるぞ凱」

 

「今現在進行形で文句多発してんだろうが!! お前しかいないんだよ! こんな雑なやり方ができるのは、関羽お前だけなんだよ」

 

 

 

ギチギチの縄で縛られても、なんとかここを脱出しようと動かしても全く動けないでいる状態。馬の背にのしかかる様な体制であり、両手も縛られては、どうするすべもない。

諦めが早い自分でも、この状況を納得する度量もない。関羽はニヤニヤしながら自分の頬をつつき、やりたい放題だ。その近くには数人の関羽の兄・関帝の部下たちがいて、手には俺を縛っている縄と同じものを持っている。

その横には、およよとウソ泣き乙の母・慶 天が居る。ちょくちょく自分を見ているのが、気に食わないよ。なにその、私泣いているんだからあなたも泣きなさいという、さもやれという言わんばかりの顔は。

 

 

 

「説明しろ関羽。なぜ自分はこうも屈辱的な恰好をさせられているのかを」

 

「さぁな、私たちは兄上に命令されてやっているわけだからな。けれども……」

 

 

 

関帝がか? あいつがここまですることなんだ、絶対裏があるに違いない。そういわれれば、なんであいつの部下がここにいるのかも納得できる。

最後の関羽の言葉が少しだけ気になり、さらに問いだたすことに決めた。

 

 

 

「けれども? なんだ、その神妙な顔つきは。ろくでもないことなんだろ、本当は」

 

「いつかは私も、お前にこのようなことをしたいと思っていた」

 

「マジでろくでもねぇ!! 夢が叶って、若干嬉しそうな顔してんじゃねぇよ!」

 

 

 

悲痛の叫びをあげると同時に、関羽はだんだんと火照ったのか、頬を染めだす。瞳もトロンと12歳ながら、色気が出ている。

関帝の部下たちは、そんな自分らを見ては爆笑を決め込んでいる。昔からの付き合いの奴らなので、こういう奴らとはわかっていた。すげぇ、素直にぶっ殺したいと久しぶりに思う。

そんな自分を見かねてか、大人しかった母が前にでてきた。

 

 

 

「落ち着きなさい、勇人。これは関帝もとい、この村の大将が決めたことよ。あなたも男なら、腹をくくってさっさとお縄につきなさい。縄だけに………ぷぷっ!」

 

「面白くない冗談、感謝心極まります。さて、そんなのはいいですから自分の縄を解いてください、愛しき母よ」

 

「あら、勇人も全く全然これっぽっちも面白くないバカ冗談なことを。いいわ、どちらが慶家の主になれるか、拳で決着つけましょう」

 

 

 

拳で決着とかいいながら、あちらは構えているが……まて、自分はこの無防備な状態で戦えってか? なんかオーラ漏れてますよ、母さん。

別にそういうのには興味ないけどさ、父さんの事を完全に忘れているよね? 父さん、まだ都で兵として働いているんだから、死んでないから!。

こんなの父さん聞いたら、卒倒しちゃうよ。最近手紙では自分が相手していて、母さんは? とか聞いてくるから、少しは構ってあげてよ、ね? お願いしますよ。

関羽は俺と母の会話で触発されたのか『私も加勢します、おば様』と意気込みをいれている。

いやいや、なんで武力90オーバーのお前が武力80オーバーの母と組もうとしているのか、理解できない。そこは武力30以下の自分を助けようとするでしょ。

 

今でも顔面に拳が来ようと覚悟してきたとき、後ろで大笑いしていた関帝の部下たちが突然静まり返った。

その後ろから着々とこちらに、静かに向かってくる関帝が現れたからだ。

 

 

 

「やぁ、待たせてしまったね」

 

 

 

その一言で、ここら辺一帯がさらに静かになった。風が彼を迎えているかのように、強烈に吹き出す。髪をなびかせていて、近くにいた無関係の女性が、彼に見惚れている。

 

 

 

「―――て、なんだいこの状況は? 私はたしかに勇人君をここに連れてきてほしいと、そうは言ったけど……まさか、ここまでやるなんて」

 

「兄上、申し訳ありません。本来ならここで穏やかに兄上を待とうとしましたが、このバ凱がいう事を聞かず、このような事態になってしまい」

 

「嘘つけバ関羽。寝て起きて、目が覚めればこんな事になってたんだよ。バカにすんなよ、犯すぞ」

 

「……………」

 

 

 

嘘八百もいいところである。

正論で言い返せば、いつもの調子ならさらにこじ付けで、嫌味ったらしく返してくるが、なぜか今回はそれが来ないでいる。

なるほど、やはり犯すとか言えばたとえ女の子でも、かなり心に来るもんだったんだな。今まで何回もこいつにこのフレーズを言ってきたが、ついに凹む程落ち込んできたか。

勝気な気分でいると、関羽は重い口を開く。

 

 

 

「口に異物入れるぞ、童貞が」

 

「大変、失礼しました!」

 

 

 

異物と聞くと、いろんなものを連想してしまい、すぐ想像ができてしまう。それと同時に童貞攻撃とか、マジやめてほしい。

 

 

 

「これ愛紗、少しは落ち着きなさい。お前はおば様のところで待機です」

 

「わ、わかりました………」

 

 

 

兄の言葉を真に受け、関羽は肩を落としながら母のもとに向かった。関帝はこちらに振り向き、自分の縄に手をかけた。

え、まさか外してくれるパターンですか? なにこいつ、顔も良ければ中身もいいとかどこのギャルゲー主人公なんだよ。マジ、自分が女なら頭上からツンデレ風に殴るところだったよ。

 

 

 

「さて、行くとするか」

 

「え、なに………え、だからなにが?」

 

「おい! 『遠呂智』をここに!」

 

 

 

大きな声が響き渡り、その数秒後に部下の一人が一頭の灰色の馬をよこしてきた。

『遠呂智』、数年前に関帝が山賊の奴らから無理やり奪った馬であり、その性能は軍馬を圧倒することと、瞳が爬虫類のように鋭い目つきのために『遠呂智』と命名された。

ちなみにこの馬は、自分のことが大嫌いである。もう一度、言おう! 大嫌いなのだ!。

毎回自分と会えば噛みついてくるし、足を踏んでくるわでせこい嫌がらせの数々。一度乗馬しようと試みたか、どんだけ嫌がったのか自分の半径100mに近づこうとしなかったことまである。

関帝はそのまま遠呂智の綱を握りながら、華麗にまたがり乗り出した。どことなく遠呂智もそれを誇りに思うのか、喉を鳴らす。

かくいう縄に巻かれながらも自分を乗せてもらっている『拷問丸』(いま命名)は、自分を煩わしいのか、何回も小さく背中を動かしている。

 

 

 

「それでは、おば様。四日後に帰ってきますから、村のことを任せました。愛紗は昨日話した通り、おば様の下でお世話になりなさい。そして、絶対ご迷惑かけないように」

 

「えぇ、あなたも道中気を付けて」

 

「兄上、早い帰還をお待ちしております。凱、あまり兄上に迷惑をかけるなよ? そしたら、兄上の帰りが遅くなるからな」

 

「では………行くぞ遠呂智!!」

 

 

「あれ、なんで自分だけ話わからないのかな!! 自分この物語の主人公、っって! 急に馬を、はし……らすなぁーーー!!」

 

 

 

関帝は馬を走らせると同時に、こちらの拷問丸の手綱を握っており、同調するように走り出した。

なにこの展開、嘘だろ。まだ生まれて12年なのに、なんでこんなハードスケジュールをこなさなきゃいけないの? というか、なんで母さんは止めようとしなかった。あなたとか言ってたけど、自分含んで中ってよね。

頭の中はパニックを起こしながらも、そんな自分に振り向くことなく関帝は馬を走らせている。

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

「ドウッ! ふぅ、やっと馬を休ませるところについたよ、ここで一服しよう、勇人くん」

 

「ここで一服しよう、勇人くん。じゃねぇよ!! どんだけ自分を馬に巻きつけて走らせたと思っているんだ! バカじゃねぇの、もう一度いうとバカだろ! ありえんわボケが」

 

「君、さらに口が悪くなってるよ」

 

 

 

あれから数時間の時が流れており、もう空が朱くなりだしているじゃありませんか。関帝は少しだけ休めるスペースを見つけ、そこに遠呂智を放し飼いにしている。

川が流れているというと、ここは北の方か? 方向感覚がまだ鈍っているのか、全く頭が働かないでいる。そりゃそうだ、ずっと馬と無理やり縄で固定されたからだ。

関帝は縛られている縄に手をかけて、今度こそ外そうとしているのか結び目を解こうとしてくれている。

 

 

 

「まぁまぁ、落ち着いて。ここは私たちが二人きりなんだから、仲良くしましょう。――――ね、太郎くん」

 

「………………」

 

 

 

また呼ばれた。

自分の記憶だと、本名をこの世界で呼ばれたのは数十回ほどだが、ほとんどがこいつだ。名を呼ばれるのは構わない、けれども名を呼ぶ人間に関しては躊躇してしまう。

とくに、このイケメンに関してはな。内面が読めないのと、頭が異様に切れるから、下手に口が出せない。

 

縄がとけ、自分はそのまま開放感を味わい地面におりて背伸びなどして、自由を賛歌する。

 

 

 

「気持ちよさそうだね、太郎くん。顔がさらに気持ち悪くなってるよ」

 

「笑顔で酷いくて下劣なこと、言ってんじゃねぇーよ関帝さん。これはアンタの鬼畜妹のせいだろ」

 

「おいおい、兄の前でそういう事を言うとは感心できないな。あれでもまだ可愛い一面なんだよ?」

 

「可愛いとは可憐なことを言い、巨木を刀で一刀両断する化け物のことを、可愛いとは言えない」

 

「愛紗ちゃん、本当に激かわゆす」

 

 

 

関帝は自分の体験したことを話したら、どことなく顔が赤くなり身を震えながら妹の名を呼ぶ。そう、こいつは関羽大好き、変態お兄ちゃんなのである。

いわゆる、シスターコンプレックス。妹を溺愛しており、全てを受け入れている。最初会ったときは気づかなかったけど、こうも二人きりになれば正体を現してくる。

ぶっちゃけ怖いです。身内にこんなのと年中顔を合わせているとなると、恐怖を感じてしまう。

 

 

 

「つか、ここから目的地までどのくらいかかるんだよ。それだけ先に教えくれ」

 

「あれ? なんで拉致……もういいや。なんで拉致されたのかっていう理由は聞かないのかい?」

 

 

 

奥さん、聞きましたか? この人、拉致って言いましたよ。しかも言い直すとかではなく、開き直りましたよ奥さん。こいつ、少しだけ自分にたいしてフレンドリーだからって、調子のってないか? なめられているとか、屈辱なんだけど。どうする、今ならここで泣きわめいて、無理やり謝罪させるよ? いいの?

12歳の本気見せちゃいますよ?

 

 

 

………馬鹿らしい。あぁ、なんて馬鹿らしい自分なんだ。

想像するのも馬鹿らしくなり、近くにある座りやすそうな石に腰を下ろし、大きくため息を吐く。

関帝も向かい側の石に座り込み、どことなくつまんなそうな顔をしだす。

 

 

 

「理由聞いたって、家には帰れない。前にも言ったでしょ? 自分はあんたの駒になるって」

 

 

 

―――――――約束しよう。自分は、あんたの駒になってやる。だから、お願いだ。あんたは――――

 

大昔前に、こいつの御前で誓った言葉が脳裏にもう一度よみがえる。関帝は鳩がショットガンくらったような顔をしだし、静寂な時が流れた。

 

――――と、数秒後に。

 

 

 

「はははっ!!! やっぱ面白いよ、太郎くん! 君はやはり私が見込んだ、見込み以上の逸材だ!」

 

 

 

顔が完全にイケ顔が崩れ、爽やかに進化した。関帝はそこまで面白かったのか、お腹を抱え込みながら、何回も笑い声を発している。そこまで笑われていると、こっちがすごい恥ずかしいのですけど。

近くに休んでいた遠呂智と拷問丸は驚き、川の中に思い切り入り込んでしまった。

数分間ぐらい笑い続けた奴は、だんだんと落ち着きを取り戻し呼吸が通常へと戻っていく。

 

 

 

「太郎くん、君はやはり最高さ。いいだろう、そんな君に少しだけ答えてあげよう。目的地は言えないけど、目標なら言えるよ」

 

「前半は残念だが、目標ってなんだ? そこで何かしらの任務とかなのか?」

 

 

 

気になる言い方だが、関帝はニヤリと笑い出し自分の目の前に移ってきた。あの、顔が近いんですけど。

 

 

 

「そう、勉強さ」

 

 

 

え? 勉強? ………そういえば、こないだ母さんと話したときこの単語が聞こえたのを思い出した。

『塾』という単語。この一文字だけで、どれだけ連想したことか。そんな自分に助言するかのように、ある神からのお告げみたいなのが聞こえた。

 

『男塾』と。

 

………………さて、帰り道はこっちかな?

 

 

 

あれから関帝とのリアルファイトを続けた結果、自分はまたも馬に固定されている。しかも、今度は鎖性さ。やったね、太郎君! これで君もM力が上がるね。

 

…………じゃあ、また今度

 




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