恋姫☦伝説   作:貧弱戦士

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四話 塾

お久しぶりです、田中太郎12歳です。あれから約一か月ぐらし経過しております。そんな中でもまた感想もらえて、若干ウキウキ気分でしたけど、この状況のため全然楽しめません。

自分は今、陳留というところの都にいます。もっと正確に言えば、その都で英才教育している塾にいます。

そう、自分はついにニートから学生にレベルアップしたのです。

 

ことの発端は、あの関帝から始まりました。あいつが何故自分をここに連れてきたのかというと、自分の才能をもっと広く深くするために、ここに無理矢理ねじ込んだ……と、笑顔で言ってましたよ。

塾の先生に聞けば、元々は関帝をこの塾に向かい入れようとしたらしいが、もう大人のために断ったらしく、その代わりに自分を推薦されたので、厳密な審査の末にで受け入れたとか。

なにその受験のおこぼれみたいな扱い……ここでも負け組とか、嫌になっちゃうんだけど。

 

 

 

「不正解です。慶くん、そろそろこの塾に慣れたころだと思います。ですから、今までは優しくしていましたけど、ここはこの大陸一を誇る学問所です。あなたがふざけるのは結構ですが、こちらも考えがあります。以後自分の言動や行動を、自重するように…………廊下にたってなさい」

 

「うぃっす」

 

 

 

不正解と不愉快のおかげで、自分は先生に廊下で立てと言われてしまい、向かっていく。通り道に自分をあざ笑う奴らが大勢いる中で、その中で異彩を放っている『二人』がいる。

一人は面白そうにこちらを見ており、もう一人はどこかしか気になるのか、自分の顔を睨んでいる。

両方とも金髪で、髪型はクルクルに巻かれているのが特徴だが。どことなく、雰囲気は対極的だと思われる。

 

 

 

「へぇ、やっぱし面白いわね……」

 

 

 

そんな言葉がふとこの教室を出る瞬間に聞こえた。振り返るといつものように静かにお行儀よく景色だが、こんな雰囲気でそんな幻聴が聞こえるとは思えない。

…………やっぱ、こんなお願い事断ればよかったか?。

今はいない関帝を恨み辛みをぶつけながら、廊下にただ突っ立っていることにした。

 

 

 

 

 

 

「それでは、今日の授業を終わりにします。各自、予習・復習をちゃんとこなしてください。では、解散」

 

 

 

教室内から先生の言葉が聞こえるとともに、生徒たちは一斉に喋りだし、次々と帰って行っている。

廊下に立っている自分をみては、また先ほどの嫌味をぶつけるような顔を向け、さらにはあざ笑いながら自分の前を通っている。

中にはわざわざ自分に話しかけて、暴言を吐く子もいる。そんな暇があるのなら、早く友達やら親のところに行った方がいいのにな………。

自分は教室に置いてある荷物を取りに入ると、すれ違いざまに先生に話しかけられる。

 

 

 

「慶くん、これに懲りたら二度とふざけないことです。あなたが関帝殿から推薦されたからといって、限度がありますからね」

 

「……………はい」

 

 

 

もう気づいているだろうか? この塾が俺に対する思いを。

ぶっちゃけ嫌われています。それはもう、親の仇のように……とはいかず、純粋なことなんだと。

教師側は優秀な関帝ではなく、凡夫な自分を迎えて腹が立っており。生徒側は田舎から来たガキが、こんな有名な塾にいるのが気に入らないのであろう。

これ、どっちも自分悪くないじゃん。関帝の件だって、あいつが渋ったからこうなったわけだし、田舎生まれがという理不尽な理由で苛められる覚えもない。

つまり、自分は無実。裁判沙汰なら慰謝料もらえるレベルですよ。

 

そう強く思っても、本当は意味はない。

この世界では裁判というのは存在しない。全てが家柄や富、名声で判断するわかりやすい上下社会だ。むしろ訴えたら、自分の首と体は切り離されてしまう。

恐ろしいことを考えてしまい、突然全身が震える。一瞬だが、その一瞬が自分の体に刻み込まれる。

荷物を持ち、すぐさま宿に帰ろうとした…。

――――その瞬間。

 

 

 

「待ちなさい、慶凱」

 

 

 

この教室の一番後ろにあるほうから、声をかけられた。しかも、その声には聞き覚えがある。

この塾は数々の名家や豪族たちの子供が通っている、名門塾の一つである。教師も高レベルながら、子供たちも一般とは違い高レベル。けれども、やはり天才というのはいつの時代にもいる。

優秀な生徒程、塾側にはとても融通を利かせることができる。実はこの塾では週に一回に席替えをする方針がある。

理由としては『生徒たちの社会性を高めるため』といっているが、本心は『名家と豪族の社交場』だ。

子供同士が知り会えば、親同士も自然と知り合うことができる。それを利用して、頻繁に席替えをしているわけだ。お互いの利益というためにな。

だが、先ほど自分が気になっている『二人』は違う。一人は、今はこの教室にはもういないけど、そいつは名家中の大名家。富と権力、名声を全てもっている完全お嬢様である。

そしてもう一人―――。生まれは有名な子孫でありながら、それに慢心することなく全てをこの歳で完璧に仕上がっている天才。

 

席替えをするときは、必ず皆は先生のところに集まるのだが、コイツ等は動かない。

別に生徒や先生の輪に入れないとかではない、単純明快な『興味がない』という理由だけである。

先ほどの先生はとても規律などに厳しいのだが、この二人に対しては見て見ぬ振りをしている。たしかに家柄も超豪華な二人、けれども誰もが感じるその素質が異様なのだ。

どちらも『王』としての素質がある。そんな二人だからこそ、下手に口出しができないでいる。後のことを考えれば、将来有望な二人に不愉快なことをすれば、後が怖いからとでも、思っているんだろうか。

大名家の一人は、『自分が一番』というのを信条としているのか、率先するように一番前の真ん中の席にいつもいる。

天才の一人は、『冷静で冷徹』という雰囲気がどことなくある。関帝に多少似ているが、たぶん根本な部分は大違いなのだろう。

背中を見せるのが気に食わないゴルゴみたいな考えなのか、もしくは『王』として人々を見たいがために、つまりこの教室で観察がしたいがために、後ろに居るのか………。

 

 

 

「あれ、ここの生徒は自分の名も覚えてるんだ。驚き桃の木山椒の木ってか」

 

「下手な言い回しね。でも、嫌いじゃないわ」

 

 

 

最後方から、彼女はまた自分に話しかける。関羽とは違うタイプの女性。綺麗というより、可愛い。

天使という言うより悪魔。ドMというよりドS。あれ、最後のところらへんとかほぼ関羽じゃん。

 

 

 

「それで、答えを聞かせてもらえるのかしら。あれからもう、半月は経過したわ……慶凱」

 

 

 

自分とは男と女なので身長差がでており、彼女は自分の胸元まで詰め寄ってくる。どことなく色香を纏わせながら。

大きな女の子らしい瞳をしているのだが、やはりこの子が生まれ持つ雰囲気は『王』であるのか、どこか警戒してしまう。

半月も前に、この子にある契約を持ち込まれたことがあった――――。

 

その答えはまだ出ていない。

なので、一度この場所を離れたいために自分は彼女を気兼ねなく呼ぶことにした。

 

 

 

「近くに小さな丘があったよな」

 

「えぇ。雰囲気がとてもいい場所って、先生方から聞いたわ」

 

「なら話が早い。―――――曹操、そこに行こうぜ」

 

 

 

これが彼女の名前だ。一度は考えたことだが、まさかそれが当たりとは思わなかった。

当時の自分は、故郷の村だけしか知らず世間のことなど全く知らなかった。関羽が女性なら、歴史の偉人たちにも影響があると考えていた時期もあった。

そして、この塾で出会ったのは二人の英雄だ。

 

曹操 字は孟徳。歴史では国全体を指揮できるほどの器であり、覇王とまで恐れられている後の『王』の一人である。

だが、自分の目の前にいるのは可愛らしい女の子だ。

 

 

 

「あら、私を誘っているのならついていくけど。そこで答えが聞けるならね」

 

「そうそう」

 

「首から上がなくなる覚悟があるのなら、今度からその冗談は今後言わない方がいいわよ」

 

「誠に申し訳ありませんでした!!」

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

歩いて10分で、目的の小さな丘についた。そこから見える景色は、現代では考えられないほど緑が多く、空気が汚れていないのか空が綺麗に見える。

時刻は夕方のため、夕日が空一面を染めだしており、どことなく不安な感じを漂わせている。それと、不思議さも増していく。

曹操は自分の隣で、ここから見える都を見つめている。……いや、これは多分見下しているんだろうか。

自分は彼女じゃないため、気持ちなど全く分からない。憶測だけここまで語っている、ヤレヤレ主人公体質なのだ。けれども、考えてしまう。

曹操という偉人が、どこからどこまでが物語っているのかよ。有名人と直接会ったら、こういう感じなのだろうか?

 

―――と、そんなことを考えると曹操は動き出した。

 

 

 

「それで、ここまで来たんですもの。答えを聞かせてくれるのでしょ?」

 

 

 

まだ幼いながら、そして関羽とは違う魅力を持つ彼女からは、夕日のせいなのか、それともそういうオーラがあるのか、『色気』を発している風に自分の眼には写る。

曹操は丘に設置されている木の柵に腰をかけて、こちらを誘っている。

 

 

 

「………いやぁ、わかんないな。なんで自分みたいなのがって考えてさ。だって自分アレですよ? 塾では嫌われ者の、バカ札を張られているようなもんなんですよ?」

 

「ようなんじゃなくて、実際張られてるじゃない」

 

「え」

 

 

 

自分を指さされて驚き、体中に手で検査する。いやいや、そんなアメリカンなホットな苛めを受けるとか自分そこまでバカじゃないから?

曹操は『違うわ、後ろよ。後ろ』と、もう一度自分を指した。背中に手を回せば、そこには紙の感触がある。

ビッと思い切り剥がせば、その紙に書いてある文字は『阿保』と『馬鹿』と書かれてあった。

 

なんていう奴らだ、まさか『馬鹿』だけではなくて『阿保』まで付け足すとは。

 

 

 

「誰だコノヤロー!! 右隣の剛くんか!? それとも、左斜め前の令くんか? いやまて、右斜め隣の前に副くんがいたよな? ………そういえば、隣の教室の藍くんか? じゃなかったら……」

 

「あなた、まだ一か月ちょいしか居ないのに、敵多すぎない?」

 

 

 

まぁ、それほどでもないけどね。自分も、まさかここで隠された才能が、変に開花してしまったのが原因だと思うけど。

自慢ではないけど、故郷の村でも相当嫌われてたから。武くんに、敦ちゃんに、王くんとか。あぁ、あと関羽ね。

 

曹操はなぜか悲しそうな目で自分を見て、何かを言いたそうなため息を突然吐いた。

なんだお前、喧嘩売っているのか。

 

 

 

「……それも才能と考えれば、利用価値はありそうね」

 

「利用って、なんスか? 自分をどうこうしようとしたりするんですか?」

 

 

 

そう聞くと、曹操は吹っ切った表情になる。夕日からの光が彼女のせいで見えなくなっている。ちょうど、そこに彼女が立っているからだ。

曹操と自分はお互い同い年。なのに、関羽とはまた違うところが多々ある。

けれど、似通っているところもある。それは『大人』だ。三国志の時代だとよくわからないけど、関羽や曹操など歴史の人物は、他の人たちと圧倒的に何かが違う。

もう精神が出来上がっているといっても、過言ではない。だから、彼女は半月も前に、自分にあることを持ち掛けてきた。

予想はしてた、けれどまさかされるとは思わなかった。

 

 

 

「慶凱。―――――――私の部下になりなさい」

 

 

 

曇りなき眼とは、このことを言うんだろうな。

一切迷いない態度で、彼女は自分でこうもぶつかってきている。玉砕覚悟ではない、自信があって誘ってきているわけでもない。

 

 

 

「あなたのその類まれない精神は、この大陸において随一と見込んでいるわ。それに、才能もある。誰かを手助けするという、私にとっては傍に置いときたいものよ」

 

「曹操さん、それは買いかぶりですよ。どこに自分とそんな、イケイケな部分を感じたんですか」

 

「勘よ」

 

「あ、はい…」

 

 

 

なんだその、母親に自分の親じゃないの? と聞いたら、そうよ? みたいな疑問形で反ってきそうなお答えは。

どうやら曹操さんは、自分がとてつもなく欲しいらしい。もちろん、自分はニート生活万歳なので、誰かの下につくのは真っ平である。………ある特定の奴、以外だと。

何回も断れば、何回も申し込んでくる。曹操は人材を欲している、この自分をだ。

 

 

 

「私はいずれ、こんなちんけな都も村も手に入れるわ。それには、大きな力が必要なの」

 

「自分だって、家でゴロゴロしてお昼寝してご飯食べて、寝るという野望ががあって、大きな権力と財力が必要なんですよ」

 

「屑過ぎて何も言えないわ」

 

「自分も、一瞬屑だと思いました。じゃなくて、自分はどう誘われてもアンタの下にはつかない。それが答えです」

 

 

 

そう啖呵を切って言えば、曹操はまたもう一度ため息を吐いた。夕日を背にしており、彼女は首を少し曲げて都を、また見下している。

そこから彼女は2分ほど動かなかったけれども、自分をチラリと見てこちらに向かってくる。

彼女の行動が読めないため、少しばかりというかかなり体が硬直する。

 

 

 

「あなたは、絶対私のものにするわ。覚悟しなさい」

 

 

 

それを言い残し、彼女はこの場を去っていった。

…………はは、殺されるかと思った。たしか曹操の武力もかなり高かったよね? 

危ないなぁ、武力30以下の自分なら首とか何時でも飛ばされてたわ。

 

先ほどまで曹操が見下していた都を、自分の目で確かめるように見る。

いたって普通な都だ。自分のところの都はここまでではない。石壁もしっかりしているし、村の所有数も多い。商売も平凡だ。

だけれども、何れこの場所は彼女のものになるだろう。遠い未来、三国時代が訪れれば、あとは彼女たち英雄の伝説。

この都も、今より素晴らしい発展を遂げるだろう。

 

 

………いつしか自分は、曹操と同じようにこの都を見下していた。

まだ見ぬ、輝かしい時代を思い描きながら。

 

じゃあ、また今度




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