私、
私はどこかのお金持ちの娘ではないし、何か特別な事情のある家柄でもない。ただごく普通の家庭に生まれた娘だ。
私は両親に虐待されることもなく、父と母は優しく頭を撫でたり抱きしめたりと大切にされて幸せに毎日を過ごしていた。
さらになんと運のいいことか。私は容姿も優れていた。
自分で言うのもなんだが、綺麗、もしくは可愛いと思うほどである。それは大和撫子や日本人形(これって褒め言葉?)という言葉が似合う顔立ちだ。
それにスタイルもいい。
特別大きいわけではないが形が整った胸。腰はほどよく締まり、出るところは出るというナイスバディというやつだ。
よく人は外ではなく内とか言うが、それでも第一印象ともに容姿が良いほうがいいに決まっている。私だってそうだ。外側を重視する。それについて一切否定などしない。
だからこんなきれいな子に生まれてよかったと思う。
だが、私が恵まれているのは両親と容姿だけではない。身体能力にも恵まれている。
どのくらいかと言うならば全く鍛えていない腕で、本当はあまり言いたくないが六十キロほどの荷物を片手で持てるくらい。本気で走れば世界大会(男子)を目指せるくらい。
さらにこれだけではなくさらに反射神経さえも高い。
前に宙を素早く飛ぶ鬱陶しいハエがいたのだが、それを一発で人差し指と親指で掴み取るなどという芸当ができるほど。これはまぐれではない。何度かやったが全て成功している。それに学校で私めがけて飛んできた野球ボールを紙一重で避けたこともあった。これも何度か。
うん、正直言って化け物だ。人間じゃない。というか、女の子が持つ身体能力じゃない!
前にその身体能力の高さを見られて、怖がられることはなかったが、引かれたことがあった。ちょっとショックだった。
それからは見られないようにというか、普通の人たちと同じくらいに合わせた。そのために私は手足や胴に重りを着けて体の自由を奪うなどして、身体能力を制限した。したのだが……。
私はその当時はただ制限することだけを考えていた。だが、体を重りなどで制限をするということがどのような効果をもたらすのかをよく考えていなかった。
結果は確かに当初は制限できてはいたが、制限するどころか筋力が上がるなどという逆の身体能力向上へと繋がってしまった。
うん、これは私がバカだった。というか、なぜあのときの私は考えなかったし! そもそも考えれば分かっていたことなのだ。あの重りは筋力を上げるためのものなのだ。それなのに私の安易な考え、まあ、めちゃくちゃ重くすればいいでしょう、でやってしまった。
さて、そんな幸せと容姿と化け物のような身体能力を持つ私だが、実はある秘密がある。それは前世がある、ということだ。しかも、女性のではなく男性の前世が。
それを思い出したのは小学二年生だったか。
あの日は別に何もない普通の日だったということを覚えている。
天気だって晴れて、友達と何気ない会話をするという楽しい何もない日だった。下校時も友達と会話をして仲良く歩いていた。そんないつもの日だった。
私は友達と別れて一人家へ帰る。玄関に入って最初に私を迎えてくれたのは母だった。私は母とちょっと話した後、自分の部屋へと向かった。
ここまでは体にも何の不調もなかったのだ。
それが起こったのは部屋に入って数十分後のこと。部屋に入って横になっていたとき、私は突然今まで感じたことのない頭痛に襲われたのだ。それとともに頭の中に誰かの記憶が流れてきたのだ。
全ては男の人からの視点の記憶だった。その記憶は子どもの頃から大人までの記憶だ。
今の私と同じくらいの歳の知らない男の子と女の子が自分と一緒に遊んでいる記憶。
中学生、あるいは高校生のときに囲まれて友達と楽しく談笑する記憶。
同い年の女の子の恋人と二人きりで……の記憶。
大人になり結婚した記憶。
妻が妊娠し子どもができたことを一緒に喜び合う記憶。
子どもたちが生まれ段々と大きくなっていく記憶。
子どもたちの入学式、卒業式の記憶。
子どもたちが成人となり自分たちから独立する記憶。
子どもたちが結婚し孫ができて喜んだ記憶。
妻と共に互いに歳を取り、仕事を止めて余生をのんびりと過ごす記憶。
そして、ついに体が動かなくなり妻と子ども、孫に看取られながら死ぬ最後の記憶。
それら全てが流れ込んだ後、私の意識は途切れた。
一人分の人生という膨大な情報量に脳が耐え切れずに私は気を失ったのだ。
私が目を覚ましたとき、まず目にしたのは白い知らない天井だった。場所は病室で後から聞いた話しだが、私に記憶が流れ込んだとき、私は狂ったかのように叫んでいたと聞いた。そして、叫び終わると同時に気を失い、そこからそのまま病院の病室で一週間寝続けていたとか。
で、私は前世の記憶を手に入れたのだ。
その記憶がなぜ断定できたのかは実は私にも分からない。ただなんだろうか。勘とかそういう科学的ではないもので、非現実的なものだ。それでその記憶が私の前世だと理解したのだ。
私は最初前世の記憶を手に入れてから心の変化でもあるのかと思ったのだが、すでに人格の基盤ができていた私はほとんど変わることはなかった。
そうほとんどは、だ。
念のため述べるが私は女である。考え方も同じく女だ。それは前世の記憶を思い出しても全く変わっていない。ただ男のときの記憶があるだけ。
なのだが、ほとんどに含まれないのがあった。
それは私の好みだ。
好みだけで言えばいくらでもある。
好きな食べ物、好きな漫画、好きな教科、好きなスポーツ、好きな車、好きな色、好きな映画、好きなゲーム、エトセトラエトセトラ。
変わったのは私の好きな人のタイプだ。それが変わった。
正確に言えば私の好きなタイプというよりも恋愛対象が男、ではなく! 女ということだ。つまり私は同性愛者になったわけなのだ。
私もそれを自覚した当時はなんとかして男子を見ることでそれを治そうとしたのだが、どうしても私の心と視線は女の子を追いかけてしまった。
それでもがんばったのだが 結局無理だった。どうしても女の子を追いかけてしまった。
だって私の前世は男だよ! 今は心身ともに女だけど、前世は男だ! 男を見て何が楽しいし! 女の子を見ていたほうが楽しいよ!
そういうわけでもう開き直ってそれを改善することは止めた。
そんなことがあった頃、私が住む日本はある一つの危機に陥っていた。
それは『白騎士事件』だ。
詳しくは知らないがたくさんのミサイルが日本へ向かって来て、それをなんと『インフィニット・ストラトス』と呼ばれるパワードスーツを着た誰かがそのミサイルを破壊した後、その搭乗者を捕らえようとした自衛隊を振り切り逃げたという事件だ。
この日以降、世界は大きく変わった。世界はインフィニット・ストラトスを軸にして動き出したのだ。
なぜならばインフィニット・ストラトスは従来の兵器を凌駕する性能を持っているからだ。そしてインフィニット・ストラトスの前では従来の兵器など鉄くずのようなものだとか。
世界の国々はそのスーツに注目し、その開発に集中する。
だが、そんな世界にも影響を及ぼしたスーツはある欠点を持っていた。それはそのスーツは女は乗れるが男が乗ることができないということだ。
この欠点がまた世界に大きな影響を及ぼした。なんと女尊男卑という思想が生まれたのだ。これにより男の立場は女よりも低くなった。
まあ、そういうことがあったということで、それは置いといて同性愛者の私は前世で結構幸せな人生を送ったということで、今回の人生は好きなように生きようと決めていた。
どのように生きるのかだが、それはやはり女の子といちゃいちゃする、だろう。
それもその相手は一人ではない! 複数人だ! つまり私は女の子に囲まれるというハーレムを作りたいと思っているのだ。
なぜそれなのかだが、うん、私も分からない。もしかしたら前世の最後が年老いていたからだろうか。そして、今の私は若い体だ。長い間の溜まった欲求が開放されたのかもしれない。
そう思ったのが小学三年生の頃だった。
で、まずしたことは武術を習得することだ。
なぜ恋愛とか関係ない武術を習うのかだが、これは私の身を守るということもあるが、自分のこの身体能力を制御するためというのが一番だ。
やはりこの身体能力を制御しきれていないのは怖かった。私が好きなのは女の子だ。丈夫な体の男ではない。なのに制御できずに抱きしめればその女の子の体は壊れてしまうかもしれないのだ。
それは嫌だ。
そういうことで力を学ぶために武術を習ったのだ。
武術を教えてくれたのはなんと祖父だ。
私が武術をしたいと言ったところ、父が祖父が武術をしているからと言って紹介してくれた。
父方の祖父とは何度も会ったことがあったのだが、まさか武術をしているとは思わなかった。祖父は会うたびに私を可愛がってくれる優しい大好きな人だったからだ。
まあ、それで祖父に武術を習うことになった。
私には武術の才能もあったようでみるみるうちに実力を伸ばした。祖父が褒めてくれた。
武術のほかにはやはり勉強だ。
前世の知識があるので小学校、中学校の勉強は省き、小学生の頃から高校から大学でする範囲を勉強し始めた。
これは私が優秀になって周りの女の子たちに頼られて徐々に好感度を上げていこうという思惑があってのことだ。
私の妄想――じゃなくて想像では、教室で私の周りに可愛らしい女の子が集まり、私に勉強を教えてほしいと乞う場面だ。
これを実現するために私は勉強を頑張っていた。
私はこれを中学生になってから開始するつもりでいた。
だってね、小学生が相手じゃそういう気にはなれないんだもん。だから大人の色気の一片でも現れる中学生からやろうと思ったんだ。
それまでは目立たないように小学校生活を続けた。
そして時は経ちついに中学生になる。
それと同時に私は作戦を開始した!
で、過程を飛ばして結論だけど、見事に私の想像通りに事が運びました。
それはただ勉強できただけではなく、お嬢様のような仕草と口調があったということもあっただろう。
私はもちろんのこと学校内では有名となった。学校内ではほとんどの人が知っているくらいに。
けど、ただ勉強ができて仕草口調がいいだけでここまで有名にはならない。特に仕草口調がいいというのは有名にはなる要素はない。
で、有名になったのはこの学校のちょっと変わった制度のせいだ。
私が入った学校は何と一年生から生徒会長ができるというものだったからだ。
私は自分の欲のために立候補して、見事に選ばれた。
普通は一年生が選ばれることなどはないのだが、私は選挙がある二学期の前期である一学期に定期考査でトップだったとかで、それなりに実力もあると知られていたのが大きな理由だろう。何せあと十点で満点だったし。
生徒会長になってからというもの、自分で言うのもちょっと恥ずかしいのだが、私は上手く学校を動かすことができた。おかげで私の知名度はどんどん高まる一方だ。そして最終的には校内で知らない者はいないほどになったのだ。
まあ、そんな目立つような存在の私だったので、私はちょっとした人に目を付けられました。その人たちはどこの学校にもいる不良たちだ。
呼び出し方は手紙だ。
男の字で校舎裏で待っているという、もしかして告白!? と思うような手紙だった。ちなみに貰ったとき本気でラブレターかと思っていた。
正直に言うとドキッとしてしまった。いや、だってね。告白だよ、告白!
前世では逆の告白する側だった。なのでされる側というのはとても新鮮でドキドキとさせるものなのだ。
まあ、ちょっとはドキッとしたけど残念ながら相手が男である限り、その愛を受け取ることなどありえないのだけど。
結局それが罠だと気づいたのは指定された場所に来たときだった。
待っていたのは服をだらしなく着ている男子生徒と女子生徒だった。
私が来ると同時に男子生徒たちは私を囲んできた。そして男子生徒たちは私の体を性的な目で見てくる。
そのときの私の気持ちだが、祖父に肉体的にも精神的にも鍛えられたので、全く怖いとは思わなかった。
で、そこからは不良たちに色々と言われて(内容はとても幼稚レベルだったので覚えていない)、最後にはやはり年頃の不良の男子生徒たちは私の体を要求してきた。
うん、私の体が欲しいという気持ちは前世が男の私にはよく理解できた。だって、私だって風呂上りに鏡で見たときに思わず見惚れちゃうんだもん。
けれど分かるからと言ってこの体を私を囲む男たちに私の体を差し上げる気はない。
というわけでもちろんのこと断った。けど、向こうは強引に触ろうとする。
そこからはもう正当防衛である。
私の身体能力の高さと武術を以って不良たちと戦った。
その数分後に立っていたのはかすり傷程度の傷を負った私だけだった。他の不良男女たちは
この一件が終わってちょっと面倒だなと感じた私は私を罠に嵌めた不良たちを洗脳――じゃなくて、教育した。
それから一ヵ月後、この私が通う学校の不良たちは絶滅した。
時は過ぎついに私は三年生となった。つまり高校のことを考える年となったということだ。
みんな休み時間などにどこの高校にするかなどと話し合う。それに私も話しに加わる。
そのとき私は普通の高校の名を言っていたのだが、実は入る学校はとっくに決まっている。
それはIS学園だ。
IS学園はその名のとおりISを学ぶための学校である。
私がこの学校を学ぶことにしたのは小学校六年生後半のときだ。
図書館で面白い本はないかなと探していたときに偶然ISの本を見つけたのだ。
そこで詳しくISのことを知った。
私はそれをきっかけにISについてもっと学びたい、そう思いIS学園に入ろうと決めた……わけではない!
私がIS学園に入ろうと決めたのはISの開発者である篠ノ之 束さんの顔写真を見たからだ。私は束さんに惚れたのだ。私は束さんを私のハーレムの一人にしたいと思ったのだ。
そして、IS学園には女の子しかいない!
ハーレムを作る出会いと環境としては最高のものだった。何せ男がいないから好きな子を取られる心配はないのだから。
でも、女の子だらけがいいというならば女子高があるのではとなるのだが、IS学園はさまざまな国から生徒が集まるのだ。それは色々なベクトルの女の子がいるということだ。だからIS学園にしたのだ。
IS学園に入ると決めてからは私はISについて勉強した。し始めたのは中学へと進学してからだ。IS学園に入る者としては遅いのかもしれないが、中学の勉強など前世の知識でなんとかなるし、小学生の頃から高校や大学の勉強していたので、ほとんどの時間をISについての勉強にまわすことができた。
で、ISについて詳しく知ったのだが、どうやらISの本来の用途は宇宙空間での活動することらしい。つまり宇宙服とも言える。
しかし、テレビで見るISは戦うための兵器ということを主張していた。どこにも宇宙空間での活動を目的にしているなんて見えない。
それはISが束の思った通りの道を歩まずに別の道へと向かったということだ。
私は束さんを想っているせいか、怒りの感情が湧き上がった。
許せない! 束さんのISをそういうふうにするなんて!
それで私は束さんと女の子だらけという二つの理由でIS学園に入ることを決めた。
こうして私の目標はハーレムを作りつつ、ISを本来のものへと正すというものになった。とはいえ、特に最後のは私自身でも難しいものだと分かっている。というか無理と分かっている。
だが、このようにして怒りを目的あるものにしなければ束さんを想うあまり暴走してしまうかもしれないのだ。
それで私はIS学園を受験し、見事に合格した。
その後、三年連続生徒会長の座に君臨した私も卒業式を迎えた。
私は有能でもあり優しいということで後輩と先生から名残惜しそうな声と涙を貰った。
正直、後輩はともかくまさか先生からも泣かれるとは思わなかった。
それはそれだけ先生の信頼を得たと言えるのだが、それと同時に私だけある意味贔屓されているのような感覚を覚えた。
だけど、まあ、悪くない。
そう思った。
だからだろうか。私が卒業生代表として壇上へ上がり、あらかじめ決められた言葉を言うときに涙を流したのは。
私は中学を自分のハーレムのための道具としか思っていないと思ったが、それは違ってちゃんと思うところがあったらしい。
涙を流すため話す言葉は小さく途切れ途切れとなって音となった。
まさかみんなの前で泣くとは思わなかった。恥ずかしかったがいい思い出になった。
そんな卒業式を終えて、私は中学校を無事卒業した。