さて、セシリアとの初めてをしてから数日の平日のある日のこと。
私は箒と一緒にお昼ご飯を食べていた。
いつもならば、箒は一夏と一緒にお昼を食べるのだけど、どうも最近は一夏とは食べていないみたい。あの無人のISがやってきた日からみたい。
喧嘩でもしたのかなって思ったんだけど、教室内で見る限りそんな様子は全くなかった。
「それでどうしたの?」
箒の数倍以上ある量の昼食を口にしながら箒に聞く。
箒は私の問いかけで箸の動きが止まり、顔を真っ赤にする。
可愛い。
「その顔を見ると悪いことじゃないみたいだね。じゃあ、良い事なんだ?」
言葉での返答は今のところ無理そうなので、勝手に判断する。
箒は私の推理にこくりと頷いた。
良い事みたいだね。じゃあ、その良いことはこれまでの箒の行動から察するに一夏関係ではないだろうか。
一夏のことを避けている(?)のだけど、箒は良いことがあった。ということは、恋人になったわけではないけど、それに近い何かがあったと考えたほうがいい。
だってもし一夏関係で悪いことがあって、それと同時期にいい事があっても、これだけ一夏のことを思っている箒のことだ。きっと良い事よりも一夏が絡んでいる悪いことのほうが優先されるだろう。
となれば、箒に言うべき言葉は、
「告白でもした?」
恋人になったわけではないのは箒の行動から分かる。というか、あの一夏だ。私の予想では、恋人になったら恥かしがったりなどせずに、普通に積極的に箒と一緒に行動しようとするはずである。たぶん。
なので、その前段階である告白かと聞いたのだ。
すると、
「は、半分正解だ」
箒がようやく口を開き、そう言った。
「!? ついに告白したの!?」
驚きである。
「どっちから告白したの?」
私は食べるのを一旦止めて、箒に詰め寄った。
「ち、近い! 話すから一旦離れろ!」
「あっ、ごめん」
一夏関係の話だけど、こういう恋愛系の話は結構好きだ。つい恋人たちと自分の妄想をしてしまうから。
「それで? 最初から話してもらえる?」
「ああ」
それから箒は語り出す。
それを大雑把に言うと、あの事件のあと、来月にある、個人で戦うISのトーナメントで箒が優勝したら、一夏と付き合うと宣言したそうだ。
な、なんというか、箒。無駄にハードル上げたね。個人トーナメントは自主参加だけど、自分たちよりも遥かに経験のある代表候補生は出てくると思われる。まあ、学年別のトーナメントだから、セシリアと簪のことなんだけどね。
その中での優勝はとても難しい。
箒がいくら剣道での優勝者でも、ISに勝つのは難しいだろう。
「その、詩織が言いたいのは分かる。優勝は難しいと言うのだろう?」
「うん」
「私も今思えば少しだけ後悔している。自分の剣の腕を過信するつもりはないが、それなりに腕はあると自負している。だけど、ISを使った戦いでは、剣の腕だけでは勝てないということも知っている」
「それなのに言っちゃったというわけか」
箒はがくりとうな垂れて、頷いた。
「まあ、付き合う条件の部分はマイナスだけど、ちゃんとストレートに付き合うって言ったんだよね?」
「もちろんだ。間違いはない」
「なら、結果的にはプラスだよ!」
もし箒が付き合うという言葉を通常のときに使えば、あの一夏のことだ、買い物に付き合う、なんていうものすごい勘違いを起こす可能性はあったけど、箒の話を聞く限り、二人きりだったそうだ。しかも、わざわざ優勝したらという条件も付けて。
これならばさすがの一夏もおかしな勘違いを起こすことはないだろう。
「よく言ったね、箒。例え優勝できなくても、一夏は箒の気持ちに気づくはずだよ。どっちにしても問題ないよ!」
「そ、そうだな。私は告白をしたんだったな」
「うん! まあ、理想とは程遠いけどね」
「うぐっ、そ、その、恥かしかったんだ! だから仕方ないだろう!」
箒らしい理由である。
まあ、それでも告白であることには間違いない。
あとは一夏次第ということだ。
一夏はどのような選択をするのだろうか。一夏とよく話す女の子は私の知る限り、箒と鈴のみである。他の女の子は少し話すくらい。
だから、一応候補としては箒と鈴の二人になる。
そこから考えて、もっとも可能性があるのは箒かな。
だって、箒のほうは毎日昼食を作って、一夏と一緒に食べているのに対して、鈴のほうは会話はするようだけど、(一夏の)勘違いのためによる喧嘩などで、あまり一夏といい関係を築いているようには思えない。
この場合、どちらと付き合うかと言われたら、普通の人だったら箒だよね。
私は一人しか選ばないなんて選択肢はないから二人ともだけどね。
まあ、ということで、鈴が選ばれることはないだろうと思っている。
それが分かって私はうれしくなる。
それは箒のこともあるが、鈴のこともである。
鈴には悪いけど、鈴を恋人にしたい私からしたら好都合だもん。
「じゃあ、とりあえずは優勝を目指して頑張らないとね。いくら負けても大丈夫だと言っても、一夏の前ではかっこいいほうがいいでしょう?」
「当たり前だ」
他の子だったらかっこいいとかではなく、可愛いとかを求めるのだろうけど、箒はかっこいい、だ。とても箒らしい。
「先ほどから私の話だが、詩織のほうこそどうだ?」
「私? 私のほうは結構順調だよ。喧嘩もなく、いちゃいちゃしてる」
「ほ、ほう、そのいちゃいちゃというのは、ぐ、具体的には?」
そう興味心身に聞いてくる箒の顔はやや赤い。
そんな箒を見ると苛めたくなるのだけど、そんなことはしないよ!
「へえ、聞きたいんだ」
私がニヤニヤしてそう聞くと、箒は顔を伏せた。
うん、苛めようと思って苛めなくても、期待通りの反応をしてくれるね。これ、私が事実を話すだけで期待通りの反応を見られるよね。
「どんな話がいい? やっぱり一夏が相手だからエッチな話?」
「………………違う!」
結構間が空いた。
どうやら本当は聞きたいみたい。
「しょうがないなあ。教えてあげるよ」
「なっ、ま、待て! べ、別に私は!」
そう言う箒の耳元へ口を寄せる。
「一夏も健全な男の子だよ。恋人になれるまで時間は近いんだよ。一夏の期待に答えるためにもこういう話は聞いておいたほうがいいじゃない?」
「い、一夏はそんな……」
「そう? 女である私だって結構興味があるんだよ? 一夏だって興味があるはず。箒だって一夏と結婚したいんだよね? だったら知っておかないと」
自分たちのいちゃいちゃを知ってもらいたいなんていうわけではないけど、箒が慌てる姿は見たい。
箒って千冬お姉ちゃんと似ていて、クールっていうか、真面目なんだよね。
まあ、千冬お姉ちゃんはプライベートでは結構だらけているし、私と恋人になってからはこっそりと私といちゃいちゃするようになっちゃったけど。
「ま、まだ一夏と恋人になると決まったわけでは……」
「あれ? じゃあ、一夏が自分以外と恋人になっていいの?」
「よくない」
「でしょう? だったらそんなこと言わない。まだ恋人じゃないけど、将来は、近い未来では恋人。いいね?」
「あ、ああ」
「じゃあ、話そうか。幸いにも時間はあるからね。放課後だってあるし」
「そ、そんなに話すのか!?」
「当たり前だよ。恋人たちの可愛さは短時間では話せないもん」
もしかしたら延々の話せるかもしれない。それほどまでに恋人たちのことは話が尽きないのだ。
「いや、待て。私が聞きたいのは、詩織と恋人たちの、その、甘い部分だったはずだ!」
真面目な箒は『エッチな部分』とは言わずに『甘い部分』と言葉を濁す。
別にここは濁さなくてもいいと思うのだけど。人それぞれなのだろうけど、まさかそういう言い方にするとは思わなかったので、思わず笑いそうになる。
まったくどうして一夏はこういう箒のかわいいところに気づかないかなあ。私が一夏だったら迷いなく箒を選ぶのに。
まあ、確かにちょっと暴力的なところはあったりするんだけど。
それが照れ隠しだって知れば可愛いものだ。
それに今の箒は私のアドバイスに従い、そういう行動はしないように言っている。もし恥かしいときがあっても、暴力的なことはしないようにと。
少し前に恥かしいところを見られて、暴力的に対応したとか。
そのような行動は好感度を下げる行為なので、そういう行動を抑えるようにとアドバイスしたのだ。
「しょうがないなあ。じゃあ、そういう所だけを言ってあげるよ」
「そ、そうしてくれ」
本当に可愛い。真面目な顔をしてエッチな話をしてくれって言うんだから。しかも、顔を真っ赤にして。
「誰のことから言ったほうがいい? 束お姉ちゃんはあまり会えなかったから少ししか話せないけど……」
束お姉ちゃんと気軽に会えればよかったんだけどなあ。
「い、いや、さ、さすがに姉さんが絡むそういう話は聞きたくない。正直、複雑になる」
「あっ、やっぱりそう?」
私も従姉妹たちの恋愛話なんて知りたくはない。
「だから、姉さん以外に恋人を話してくれ」
「分かった」
というわけで、まずは簪からにしよう。
今回はエッチな部分の話ということで、恋人になる過程は話さない。それにその過程は箒と話しているうちに結構話していたからね。
でも、そういうエッチな部分はそんなに話していない。
まあ、エッチな部分とは言っても、恋人たちの体のことを話すわけではなく、どいういう絡みをしたのかを少しだけ曖昧にしながら話すだけだからね。さすがの私も全てを正直に話すわけではない。
それから私は昼休みの時間いっぱいを使って、簪とのエッチを話す。
箒はそういう場面になる度に顔を真っ赤にしていた。
ただ、同性同士のものだけど、箒はとても熱心に聞いていた。
で、昼休みだけでは簪のことしか話せなかったので、放課後も話すことに。
箒は嫌そうな顔をしていた気がするけど、それは気のせいだね。
というわけで放課後は千冬お姉ちゃんとセシリアのことを話した。
「ふう、話した話した」
私と箒の顔は赤い。
私はそのときの光景を思い浮かべたから。箒は話の内容がエッチだったから。
「じょ、女性同士で本当に気持ちいいのか?」
全てを聞き終わった箒が聞いてくる。
「気持ちいいよ。試してみる?」
私は箒の膝をいやらしく撫でる。
「す、するな!」
こういう雰囲気だから少しは受け入れるかと思ったけど、箒の意思は固かった。即答である。
「ふふふ、冗談だよ。やらないよ」
「そ、そうなのか?」
「そうだよ。これでも私、純愛が好きだからね。無理やりは好きじゃないし、やっぱりこういうのは好きな人とやりたいからね。あっ、箒のことを嫌いってわけじゃないよ。私はいつだって箒を待っているからね」
「そんな日は来ないとは思うが」
「あはは、そうだね。私は箒の幸せを願っているから、一夏と結ばれることを願っているよ」
なので、一夏。絶対に振らないように。もし振ったら私が直接文句を言ってやろう。あと、千冬お姉ちゃんにも協力してもらって。