精神もTSしました   作:謎の旅人

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第22話 私の始めてのISの戦い

「ようやく来ましたのね。ずいぶんと待ちましたわ」

 

 セシリアが自身のIS、ブルー・ティアーズを装着し、空で待っていた。

 セシリアは宙に四枚の青の羽のような武装を浮かせ、自分の身長を超えるライフルを持っていた。その物騒な姿に私は美しいという言葉を抱いた。

 それとともに私はセシリアを見て、ごくりとのどを鳴らす。あきらかに私よりも強者。そういう雰囲気を感じ取ったからだ。セシリアがISを装着するという万全の状態だからそれが分かる。

 や、やばいな。負ける気はしないけど、それは心の問題だもん。これはちょっと、いやかなり不利だよ。

 正直、私はセシリアをなめていたのた。ISというパワードスーツを着てもそれはやはりISの性能のおかげだから本人は大したことはないと思っていた。だが、ISを装着したセシリアを実際に見てその認識は変わった。

 ISは所詮は道具であって強さには関係ない。強さは操る者の腕だ。セシリアにはその腕がある。

 

「そう、それは待たせたわね。でも、素人だからということで許してちょうだい」

「……っ。あ、あんな約束をしたあなたが素人という言葉を盾にするのですか!?」

 

 セシリアはそう言って怒鳴った。

 

「そうよ。それだけしないと私とあなたの差は埋まらない」

「じゃあ、あなたは最初からわたくしに負けるつもりで!?」

「いいえ、違うわ。そんなつもりじゃないわ。負けるつもりなんて全くない。むしろ勝つつもりでいるわ」

「あ、あああ、あなたという人はISをバカにしていますの!?」

 

 セシリアの顔は怒りで真っ赤になり、手に持っていたライフルの銃口をこちらへと向けてきた。

 向けられた私はまだ空を飛ぶということに慣れていなくて素早く動くこともできない。というか、プカプカと浮いているのが精一杯だった。

 ああ~もう! なんで私はセシリアを怒らせることを言うかな! セシリアだってISを真剣にやってきたんだから、あんなふうに言ったら怒るって分かっていたはずなのに!

 私は優雅に宙に立っているように見えるが、内心では色々と焦っていた。

 

「許せませんわ!」

「えっ?」

 

 そして、そのままセシリアは引き金を引いた。

 セシリアのライフルから出たのは金属の塊ではなく、レーザーだった。

 それは私の前世の記憶にある針の穴のように細いものではなく、人の上半身と下半身を真っ二つにするにはいいほどの太さだった。

 それが一瞬で私へ向かってきた。

 

「きゃっ」

 

 私はそれを可愛らしい悲鳴を上げながらほぼ反射的にかわした。

 だが、やはりまだ空を飛ぶことに慣れていないためか、わき腹を掠ってしまった。

 

「……っ」

 

 ただわき腹に掠っただけとはいえ、その衝撃は凄まじかった。祖父から軽く殴られたくらいの痛み(祖父と一般男性の威力の差は月とスッポンです)が走った。私の体勢が崩れ、私は無防備になる。

 や、やばい! 敵の間合いで体勢を崩すなんて!!

 何か相手と戦う武術、スポーツ等をやっている者ならばすでに知っていること。それは一瞬の隙が自分の負け、死に繋がるということだ。そして、プロは一瞬の隙を見逃さない。

 プロのセシリアはやはり見逃さなかった。すぐさま銃口を向け直して再び引き金を引きかけていた。

 私は知識にあったISの飛行の操作を思い出す。

 えっとなんだっけ。確か…………『自分の前方に角錐を展開させるイメージ』か。うん、難しすぎる! 無理! 初心者向けじゃないし! これじゃないやつは……えっと自分なりのイメージだっけ。こっちのほうが分かりやすい。

 飛び方が分かった私は毎日見ていたアニメから飛びやすいものを見つける。

 よし! 見つけた! じゃあ、レッツゴー!

 セシリアが引き金を引き、二度目の射撃が行われた。その二度目の射撃もまたそれは正確で当たるかと思われたのだが、その一筋の光は当たらず地面を抉るだけだった。

 

「なっ!?」

 

 確実に当たると思っていたセシリアは驚愕に声を上げた。

 ふっふっふ~私が何をしたかって? それは最大速力で回避しただけだ。

 そう、ただそれだけ。当たり前のこと。普通ならばセシリアは驚きはしなかっただろう。だが、驚いたのは素人だったはずの私が回避したからだろう。

 私はそのまま飛行の感覚を覚えようとする。が、フラフラとしていて地面スレスレで時々地面を掠った。

 う~ん、やっぱりすぐには覚えられないか。というか、慣れが必要かな。にしても、掠っただけなのにアレだけの衝撃、か。ダメージは大したことはないけど、衝撃が強かったから掠ることもできない。やっぱりISもスポーツや武術と同じってことなのか。

 そう考えている間にもセシリアは何発も撃ってくる。

 その度に私は避け続ける。

 まだ動作が大きいとはいえ、わずかな時間でここまで動けているのだから初心者としてはいい方ではないだろうか。やはり武術の才が影響しているのかな? これも体を動かすものだしね。

 さて、飛行のほうはまあまあ慣れたみたいだし、今度は攻撃にしようか。

 私が乗っているIS学園から貸してもらっている訓練用IS、打鉄に搭載されている武装の種類は一種類だ。近接用ブレードだ!

 いや、もちろん中距離用のアサルトライフルがあったのだが、経験談から使い慣れていない武器を使うのは失敗を意味する。

 そういうわけでブレードを使っている。

 私はそれを展開した。

 うん、久しぶりの武器の感触だ。なんだか興奮してきた。

 

「なっ! ここまできて近接用ですの!? ISの次はわたくしを馬鹿にしていますの!?」

「い、いや、違うわよ。言っておくけど銃にしなかったのは使い慣れていなかったからよ」

「むう、確かにそうですわね。使い慣れていない武器を使うのは格好付けだけですわね」

 

 うん、やっぱり経験者は分かってくれるよね。時々そういうのを分かってくれない人がいるから困る。特にアニメとか見すぎているような人とかだ。

 いや、確かにアニメでは色んな武器を使っているけど普通は無理だから! 斬り方とか色々違うから! だから無理だし!

 私はセシリアと同じ高度まで行き、ブレードを構えた。

 その姿を見たセシリアは先ほどは雰囲気を変えた。

 あ、あれ? もしかして今からが本気? さっきまでのって手加減していたの? あんなに正確な射撃だったのに?

 私は冷や汗をかかずにはいられない。

 

「……あなた、何かやっていましたの?」

「まあ、武術をちょっとね。分かるの?」

「もちろんですわ。相手の力量を測れずに戦うなんてバカのやることです。けど、わたくしセシリア・オルコットは相手の力量をきちんと測って戦いますわ」

「相手がどんなに強力な敵でも?」

「……それが自分だと?」

「違うわ」

 

 私がもしセシリアよりも強かったら内心焦っていない。

 

「ただ聞いてみただけよ」

「そうですか。まあいいですわ。聞かせてあげますわ。もちろんのこと戦います。例え負けると決まっていても」

「ふ~ん、そう」

 

 反対に私は自分よりも強いと分かれば私はすぐさま逃げるだろう。死んだらハーレムでいちゃいちゃできないしね。

 にしても、セシリアは本当にプライドが高い。もしかして命よりもプライドのほうが大事っていうやつなのかな? セシリアのことも大好きな私は命のほうが大事にしてほしいと思う。

 

「さあ、あなたのほうも慣れてきたみたいですし、わたくしのほうも体のほうが温まりましたわ。さあ! 踊りなさい! わたくしと愛銃、スターライトの奏でる円舞曲で!」

 

 その言葉を開始の合図としてセシリアが先ほどよりも激しく、速く、それは弾幕の嵐だった。逃げ道の少ない嵐だった。

 なっ!? いきなりこれ!? 容赦なさすぎだよ!

 私は上下左右に避けながらセシリアから離れた。

 くっ! や、やっぱりさっきのは本気じゃなかった!

 そう思うのは雰囲気の変化だけではなく、この弾幕の嵐からも分かった。

 私は先ほど以上に避けているのだが、まだ完全に慣れていないということもあり、直撃はまだないものの先ほどよりも多く掠っていた。

 うう、やばい。エネルギーはまだたくさんあるけど機体の損傷が!

 いくらエネルギーがあろうが、それは戦闘には影響されない。しかし、機体にダメージを負うと損傷箇所によっては戦闘に影響される。

 今のところは影響はない。

 

「どうしましたの? そのブレードは飾りですの?」

 

 地面をアイススケートのようにして滑るように飛んでいる私に上空にいるセシリアはそう言ってきた。

 むう~こっちだって反撃したいけどまだ慣れてない私じゃ、できない!

 射撃と射撃の間に間があるとはいえ、私にその間を攻めるだけの技術がない。そのため避けるだけしかできない。

 

「……い、言ってくれるわね」

「くすっ、怒りましたの?」

「ちょっとね」

 

 ちょっとだけ怒ったけど、セシリアのその見下すような笑みに喜びを得た。

 ちょ、ちょっとだけ興奮した。私ってやっぱり奴隷とかメイドとかでもいけるほうなのかな?

 さすがの私もちょっと自分の性癖が怖くなった。

 

「それにしても、本当にあなたはISに乗って少しですの?」

 

 一旦射撃を止めて互いに対面し合う。

 

「もちろんよ。初めて乗ったのが試験のときだったもの」

「ならば才能、ですわね」

「おそらくね」

「あら? その自覚がおありで?」

「自覚というか祖父が武術の才能があるって言っていたからね」

「なるほど。あなたのおじいさまは武術かで?」

「ええ。もう歳だというのにまだ数回に一回くらいしか勝つことができない相手よ」

 

 本当に身体能力が異常に高い私と同じくらい化け物だ。いくら経験の差とか言っても限度があるだろうに。私が祖父に完全勝利する日はいつだろうか。なんだかその日は歳のことを含めて永遠にないって思う。つまり勝ち逃げってやつだ。

 まあ、祖父的には私に完全敗北しようがしまいがどちらにしてもいいんだろうな。だって、完全敗北したら孫の成長を喜ぶだけだし、しなくても私に向かってしわくちゃな笑みを浮かべてくるだろう。だからどっちでもいいのだ。

 

「そうですの。さて、もうちょっとお話したいのですが、もう終わりですわ。続きは私の奴隷になってからということで」

「そうね。でも、勝つのは……この私よ!」

「ふふっ」

 

 私が改めてブレードを構えなおしてそう言うとセシリアは笑った。

 ちょっと私はむかっとした。

 

「……何がそんなにおかしいのかしら?」

「そんなに本気になっているところすみませんけど、わたくしは本気は本気でも手を隠している本気ですもの」

 

 そう言うと周りにプカプカと浮かんでいた四枚の武装を撫でた。

 それを見て私は察する。

 

「まさか、それも?」

「ようやくお分かりになりましたのね。ええ、そうです。確かにこの四機はスラスターとして動いていましたわ。でも、その本当の正体はこの愛銃、スターライトmkIIIと同じくもう一つのわたくしの武器ですわ! そして、この自立機動兵器の名前はこのISの名前と同じくするブルー・ティアーズ!」

 

 その自立機動兵器――って長い! アニメから取って『ファンネル』で! ごほん、そのファンネルたちは一斉に私に銃口を向けてきた。その銃口からはぼんやりと明かりが見えて撃つ準備が整っていることを示していた。

 私はどう避けるのか考える。

 

「さあ、まだ円舞曲は始まったばかり! もっとわたくしを楽しませてくださいな!」

 

 その言葉を合図にワルツの第二曲が始まり、セシリアの持つスターライトとファンネルが一斉射され、計六つのレーザーが私へと向かってくる。

 それは脅威だが、すでに逃げることだけを考えていた私には脅威ではなかった。

 私はそれをすぐさま避ける。避けた先でもまた動く。すると避けた先にレーザーが地面を抉った。

 

「やっぱり最初よりもいい動きをするようになりましたわね。それほどなら代表候補生レベルも近いですわ」

「褒めてくれてありがとうと言った方がいいのかしら?」

 

 私は六本のレーザーを避けながらそう尋ねる。

 

「ええ。言っていいなら言ってくださいませ。礼を言われるならうれしいですしね」

「なら、止めておきましょうか」

 

 にしても、ファンネルも撃ってくるようになってやっぱり抉れる土の量も多いな~。おかげで避けても抉られた土がさらに私の視界を狭くするし、ダメージだってさっきよりもごくわずか多く入る。

 

「さて、ではブルー・ティアーズを動かしましょうか」

「え?」

「あら、どうしましたの? まさかこのブルー・ティアーズがわたくしの周りを浮かんでいるだけとお思いで?」

 

 はい。そう思っていました。ただ周りをプカプカと浮いているだけだと思っていました。

 

「残念ですけどこれはわたくしの意思次第で自由に飛びまわれますわ」

「……」

「ふふふ、そんな顔をしないでくださいまし。わたくしがこのブルー・ティアーズを使うなんて滅多にないことでしてよ。なのにわたくしが使った。つまりあなたはわたくしをその気にさせたのです。そのことを誇ってもよろしくてよ」

 

 どうやらセシリアは滅多にファンネルを使わないようだ。つまりほとんどがセシリアが持つあのスターライトで相手を倒してきたのだろう。

 うん、なるほど。それは理解できる。なにせあの正確な射撃だ。ブルー・ティアーズなどなくても十分に勝てる。それを身を持って知っている。

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