精神もTSしました   作:謎の旅人

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第55話 私の初デートの日

 翌日、私は昨日と同じように起きる。

 簪と私は抱き合ったままだ。

 今回、私は夜中に起きていないけど、簪はちゃんと寝られたかな? 昨日眠れなかった原因は束さんへ告白することだったから、今回もセシリアとデートだから眠れなかったかもしれない。

 なんか悪いことをした気分だ。

 私としては簪にぐっすりと寝てほしいから。

 やっぱり今度の土曜か日曜に簪のやりたいことなんでもしよう。私も簪の恋人だもん。この程度のことくらい当たり前だ。

 私は簪にせめてと思い、僅かに空いた隙間を完全に埋めるようにいつものように抱きしめた。

 この際、ちょっと強く抱きしめすぎたのか、息苦しそうに声を出していた。

 ごめんね! でも、これも好きってことだから許して!

 私は十分に満足した後、簪の額にキスをする。そして、私はベッドから出た。

 

「んんっ~~!」

 

 起きたばかりの私は背伸びをする。

 十分に伸びをした後は、すぐに顔を洗ったりとデートへ向けて準備を始める。髪を整えたり、服を選んだりと身だしなみを整えた。

 最後に確認として鏡を使って自分を見る。

 うん、やっぱり私、可愛い! そして、綺麗! ああ、もしこの可愛い子を他人として触れることができたら……!!

 私はいつものように自分を褒める。他人からしたら変態だ。

 あっ、そういえば今は生徒会長モードじゃないけど、生徒会長モードにするとどのように映るのだろうか。

 簪が言うには雰囲気が変わるようだけど、生徒会長モードにしてから見てもよく分からなかった。だったらこうして鏡の前で変わったら? そしたら分かるのではないだろうか。

 試しにやってみた。

 ……。

 う~ん、ちょっと変わったかな?

 その程度だった。具体的に言えば生徒会長モードではない素の状態ならば可愛いが強かったが、生徒会長モードだと綺麗のほうが強いといった具合だ、ちょっとだが。

 多分私じゃない他人が見ればこの違いが大きく見えるのだろう。

 ただ雰囲気だけでなく、仕草を入れれば大きく違うかな。

 生徒会長モードになると優雅になるのだ。ただの一般的な動作もお金持ちのお嬢様に。

 すごいぞ、生徒会長モード! まさか口調だけではなく、仕草まで影響するとは! 

 ただの意識の切り替えがここまで来るともう二重人格だ。

 簪が自分の前では止めてくれというのも分かった気がする。これじゃまるで別の人を好きになったみたいに勘違いするよ。

 っと、こんなことをしている暇はないんだ。

 

「簪は……寝ているね。よかった」

 

 昨日は行く前に起きたが、それは寝たばかりということもあったのだろう。

 よかった。もしまた起きて、実はまだ寝たばかりだったらデート前に落ち込んじゃう所だもん。

 

「じゃあ、簪。行ってくるよ」

 

 寝ている簪の額にもう一度キスをして部屋を出た。

 道中には昨日よりも多くの人が私を見た。やはり今日が日曜日だからだろうか。

 基本日曜日は部活もほとんどが休みなのだ。

 だから道中の人たちは制服でもなく運動着でもなく私服の割合が多かった。多分、そのほとんどの人が学園の外へ外出するのだろう。

 となると昨日みたいにモノレールに全く人がいないというのはないのだろう。二人きりという空間が欲しかったので残念だ。

 私は待ち合わせの場所へ行った。そこは昨日と同じ寮の前だった。

 約束の時間までには約三十分あった。

 やっぱりここは私が早く来ないとね。

 

「し、詩織!?」

「ん?」

 

 驚いた声で私の名前を呼んだのはセシリアだった。

 あれ? もしかして時間間違えた? ううん、違う。間違ってない。じゃあ、時計が遅れてた? それも違う。私のは電波時計だ。壊れていなければ狂うはずがない。そして壊れているという可能性もない。この時計は卒業祝いに買ってもらったので新しく、部屋を出る前に部屋の時計を確かめた。なので壊れてはいない。

 

「あれ? セシリア。まだ時間じゃなかったわよね?」

 

 即座に生徒会長モードにし、自分が間違っていないと願って言った。

 

「え、ええ、時間は……まだですわ」

 

 よ、よかった~!! やっぱり私は間違っていなかった!

 

「そうよね。じゃあ、セシリアはなんで?」

「それはわたくしの台詞でもありますわよ。そう言う詩織は?」

「今日はデートよ。遅れないようにって先に着ていたのよ」

 

 まあ、デートではよくあるお決まりのパターンだ。

 これは男の立場だが、私たちは同性同士の恋人なので、前世とかそういうので私がその立場だ。

 

「あなたは?」

 

 セシリアに問いかける。

 

「その、わたくしもですわ。初めてのデートでしたので、遅れないようにと……」

 

 セシリアは頬を赤めて言った。

 なに、この子。めちゃくちゃ可愛いんだけど!

 

「ふふっ、じゃあ、互いに遅れないようにって先に来たのね」

「……そういうことになりますわね」

「私、日本以外の国って時間にルーズって思っていたからちょっと意外だわ」

「……それってわたくしの祖国をバカにしていますの?」

 

 照れから一変してセシリアが不快だって顔になった。

 

「ごめんなさい。そう聞こえてしまうような言い方をしたわ」

 

 私の言った言葉はセシリアを怒らせるには十分だ。あんなのだと怒って当たり前だ。

 だから私は素直に謝った。

 私だって愛国者というわけではないが、自分が生まれ育った国をバカにされたら怒るだろう。

 

「い、いえ、分かってくださればいいんですわ。それにわたくしも思い当たるところがないと言えば嘘ですし」

「それでもごめんなさい」

「いえ……って、これじゃ繰り返しですわね」

「そうね。これじゃらちがあかないわ。それにせっかく早く着たんだからそれを有効活用しないとね」

 

 そういうことで私たちはモノレールへ向かった。

 駅ではやはりモノレールを待つ生徒が何人かいた。一人だったり、二人だったり、それ以上だったり。私が見る限り、私たちみたいに恋人関係はいないようだった。ただ手を繋いでいる子たちはいるみたいが、多分恋人同士じゃない。

 でも、もし恋人関係ならお似合いだ。いい関係になると思う。

 あっ、そうだ! 良いこと思いついた!

 

「セシリア、手を繋ぎましょう」

 

 見ていたらこっちも手を繋ぎたくなった。

 

「!? な、何を言っていますの!?」

 

 周りを気にしてセシリアは声を抑えて言う。

 

「別に問題はないでしょう。私たちは恋人よ。それに今日はデート。だったら手を繋がないと」

「で、ですが、その、周りに人が……」

 

 セシリアに嫌がる様子はない。あるのは誰かに見られたら恥ずかしいという感情だけだった。

 なんかセシリアがそういう反応をすると私のこと嫌いだってことを忘れてしまう。このデートはデートではあるが、私のことを知ってもらうということを目的にしたデートだ。でも、セシリアの反応が何か違うので、ただ単に本来の意味である楽しむだけのデートになってしまう。

 いや、別にそれが嫌だというわけではない。デートなんてすれば楽しいし勝手に相手のことなんて分かるもん。

 私の今からするデートは楽しいけど、意図的に、例えば店に行ったときに自分が好きなものを示したりするのだ。

 こんなデートは変なことだと分かっているのだが、恋人になるのは好きになってからだったのでどうすればいいのか分からなかったのだ。

 だから、デートで私のことを知ってもらおうと思ったのだ。

 でも、知ってもらうためのデートだからといって楽しくないデートにはしないよ。

 

「大丈夫よ。ほら、あそこの二人を見て。周りに人がいるけど、堂々と手を繋いでいるわよ」

 

 セシリアにその二人を指を指して示した。

 

「っ!?」

「ね? 手を繋いでいるでしょ? こういうのはね、逆に堂々としてたほうが目立たないのよ」

「ですけど、恥ずかしいですわ……」

「それは手を繋ぐという行為に対して? それとも見られること?」

「……見られること、ですわ」

 

 本当にセシリアが私のこと嫌いなのか分かんなくなる。ねえ、セシリアは私のこと好きなの? 嫌いなの?

 

「なら大丈夫ね。繋ぐことが嫌だって言われたら無理だったけどね」

「? なぜ繋ぐことが嫌ですの? わたくし、あなたの恋人ですわよね?」

 

 セシリアが不思議そうな顔をした。

 ああ、本当に本当にセシリアはどっち? 嫌いなら嫌いだってもうちょっと態度に表して! そりゃ私はセシリアに好かれることが一番だよ。でも、セシリアは私のこと……。だからそんな不思議そうな顔をせずに嫌がるような素振りをしてほしい。

 セシリアの私に好意を抱いているかのようにも取れる行動に私は戸惑ってしまっていた。

 私はその戸惑いを押しとどめ、対応する。

 

「そうね。うん、あなたは私の恋人よね。ほら、手を繋ぎましょう。案外、こういうのはしている本人は周りからの視線を意識しちゃうけど、周りはそんなに見ていないのよ。ただ仲のいい子たち程度なのよ」

「うう、分かりましたわ!」

 

 セシリアは思い切って私の手を取った。

 今はさっきのことを忘れよう。私がすることはセシリアに好きになってもらうことだけ。もし今の段階でセシリアが私のこと好きならばそれでいいじゃん。嫌いじゃなきゃいいじゃん。

 そう考え方を変えることで戸惑いを完全に消した。

 

「あなたの手、温かいわね」

「詩織もですわ」

 

 ただ単に手を繋いだだけだったが、私の心を幸せにしてくれた。

 しばらく待っているとモノレールがやってくる。扉が開き、待っていた者たちは次々と入っていった。

 

「セシリア、こっちの車両にしましょう。あっちのは人がいないわ」

「そうですわね。わたくしとても、人の目がないほうがいいですわ」

 

 みんなが入る車両とはべつの車両に乗り込んだ。

 思ったとおり、人は全くいなかった。

 私たちは長椅子に座る。

 私たちが座ると同時に扉は閉まり、モノレールは動き出した。

 これからしばらくただ座るだけだ。

 

「そういえば目的地までどれくらいですの?」

 

 セシリアが尋ねる。

 

「そうね。モノレールを離れて次は新幹線に乗るから……約二時間くらいかな」

「新幹線に乗って二時間。結構遠いんですのね、その遊園地って」

「まあ、都市の近くにはないからね。でも、日本一の遊園地って評判だから楽しいわよ。私も何度か行ったことがあるけど、本当に楽しかったわ」

 

 初めてのデートで遊園地というのは早いかもしれないが、セシリアにどこに行きたいか聞いたところ遊園地と言ったので即断した。

 多分、セシリアとしてはデートの行きたい場所として言った訳ではないのかもしれない。ただ単純に行きたい場所として言ったのだろう。

 でも、セシリアに詳しく聞けば遊園地など行ったことがないと言う。

 だったら初体験としてもいいと思った。

 

「それは楽しみですわね」

 

 セシリアの顔には言葉通りに期待を含んでいた。

 その顔を見るとこのデートを提案してよかったと思う。そして、同時にこのデートを成功させたいと思った。

 私の情報をただ渡すだけではなく、ちゃんと楽しんでもらおう。

 

「でも、その、いいんですの?」

 

 セシリアは申し訳なさそうな顔をする。

 

「何が?」

「お金、ですわ」

 

 セシリアは持ってきたハンドバッグから三枚の小さな長方形の紙を取り出す。逸れはチケットだ。

 二枚は行きと帰りの新幹線のチケット、一枚はその遊園地のチケットだ。

 全て私がネットで予約したものだ。それをこの前、セシリアに渡した。

 

「これをわたくしは受け取るだけでお金を払っていませんもの」

「別にいいわ」

「でも」

「でも、じゃないわ。これはデートなのよ。ほら、デートにもあるでしょ? 男性が女性に対して奢るみたいな」

「でも、それは異性同士、ですわよね? わたくしたちは違いますわ」

「そうね。でも、セシリアは私の大切な恋人なのよ。だから、男性が女性に対して奢るってことが分かるのよ。そういうお決まりとしてとかじゃなくて、大事な女性の前でかっこつけたいって。私にもあなたの前にかっこつけさせて。これじゃダメ?」

「……分かりましたわ。ただ無理しないでくださいまし」

「分かっているわ」

 

 無理してかっこつけようとしてお金がなくなったりしたら、きっとセシリアは自分に負い目を感じてしまう。そんなことをしてしまえば、セシリアが私のことを好きなる時間はより長くなってしまうに違いない。

 それにそういうのは前世で痛い目にあっているので、同じ轍を踏みたくはない。

 

「なら、わたくしもこの件に関しては何も言いませんわ。ただわたくしも同じ女性ですし、その遊園地では同じことをやらさせてくださいな」

「ええ」

 

 これが異性同士ならば多分私は承諾しなかった。でも、私たちは同性だ。そういうできる限り奢るというのはない。なんか奢り合いというのができるのは新鮮だ。

 

「にしても、本当に本当にお金は大丈夫ですの?」

「本当に大丈夫よ。それなりに私お金持っているから。だから本当に気にしないでいいわよ」

 

 本当にセシリアが心配するほどではない。本当にお金に関しては全く問題ない。

 セシリアはこれ以上この件については何も話さなかった。その代わり、これから行く遊園地についてたくさん質問してきた。何度か行ったことがある私はセシリアのはしゃぎようがうれしくてそれに丁寧に答えていった。

 こんな子どもっぽいセシリアもいいな。絶対にこのデートを成功させよう。

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