まあ、そうは言っても、それは感情抜きでの話だ。
こういうことはどうしても感情が入る。
私だってお姉ちゃんの立場であれば、同じように適当なことを言って邪魔をするよ。ハーレムを了承しても、本気で好きな相手が別の人といちゃいちゃしていたらさすがにむかってくるもん。
「ほらほら! しーちゃんもやっていいってよ。やろうよ」
束さんが一瞬の隙をつき、私に近づく。そして、私の胸をまた揉む。
「やっぱりいいね! ほら、ちーちゃんも!」
「なっ!? 勝手に!」
束さんはもう片手でお姉ちゃんの手を取り、そのお姉ちゃんの手を揉まれていないほうの胸に押し付けた。
「んっ」
思わず声が出る。
「ほら、しーちゃんも気持ちよさそう。ねえ、一緒にやろうよ。これならちーちゃんも仲間はずれにはならない」
「だ、だが……」
「もう! ちーちゃんはもうちょっと正直になったほうがいいよ! ちーちゃんはしーちゃんが気持ちよくなってくれる姿が見たくないの? 私たちだけしか見ることのできないしーちゃんを見たくないの?」
「……見たくないと言えば嘘になる」
「じゃあ、やろう? しーちゃんもそれを望んでいるよ」
「……分かった」
束さんの説得と私の誘惑により、お姉ちゃんもまた私にしてくれることになった。
そういうわけなので、服を脱いで上半身裸状態になっている。今はその状態で二人に前後を挟まれていた。束さんが後ろでお姉ちゃんが前だ。
「か、囲ってどうするんですか?」
「ん~、もちろん後ろからと前からやるんだよ。しーちゃんは何もしなくていいよ。私たちがしてあげるから」
「にゃっ!?」
いきなり後ろにいる束さんから胸を掴まれた。
私が束さんからの攻撃に驚いていると、お姉ちゃんのほうからも攻撃された。
「やはり詩織のはいいな」
うん、いつもはかっこいいお姉ちゃんだけど、こういうときはエッチだ。
私は片方ずつ揉まれていく。
「はあっ、はあっ、んっ! んあっ……」
「もう感じているの?」
「だ、だって、そ、そこは……やんっ」
「こんなに勃起して……。気持ちいいんだ?」
私の胸の先を抓みながら、束さんが言ってくる。
僅かな時間だというのにもう体に力が入らない。束さんに体を預ける形になっている。
「…………」
私は無言を貫く。
ただ、私の口から快感による喘ぎ声が出ているが。
「まあ、言わなくても表情に出ているんだけどね」
「ち、違います」
「あとね、そうやって何も言わないようにってやっているけど、そっちのほうがエロいんだよね。気づいてた?」
「!?」
「ちーちゃんもエッチだって思ったでしょ?」
私の耳元でしゃべる束さんがお姉ちゃんに聞く。
「た、確かに、その、興奮した。あ、あまり抑えないで貰うと暴走しない」
お姉ちゃんが私を目を合わせないようにしながら言ってきた。
わ、私はどうすればいいのだろうか? エッチな声を出すか、声を抑えるか。
どちらを取っても二人を興奮させるだけだ。
な、ならば声を出しちゃう? 二人はどちらでも興奮できるからいいかもしれないけど、こちらは声を抑えるとただでさえ息が荒いのに酸素不足になるのだ。だから声を出したほうが楽なのだ。
それにどうせ束さん以外は声を出す私を知っている。うん、よく考えたら本当に抑えるなんて無意味だ。
「あんっ」
「おお? どうやら声を出すことにしたみたいだね。うん、いいよ。出して。大丈夫。人は来ないようにしているから。だから出して。もっとその声を聞かせて」
私は声が出していく。
「詩織」
お姉ちゃんに名前呼ばれ、お姉ちゃんを見る。
と、その瞬間に私の口は塞がれた。
「ん、んむっ」
「はむっ、詩織」
「んぐぐっ、じゅるっ」
お姉ちゃんは口に舌をいきなり進入させる。軽いキスからではない。
私の口内を隅々まで刺激を与えていくお姉ちゃんの舌に対抗するように、私もまた自分の舌をお姉ちゃんの口内へと侵入させた。
私の舌とお姉ちゃんの舌は必然的に絡み合う。
私とお姉ちゃんの舌が絡み合い、くちゅくちゅと音を立てる。私たちの口の端からははしたなくも、口内に溜まった涎が零れた。
だが、そんなことは気にも留めずにそのキスに夢中になっていた。
「ちゅる……じゅるうっ……ん、おねえ……ちゃん……」
「ふふ、もっと……ちゅっ、乱れろ。ここには私たち以外、はむっ、ん、んくっ、誰もいない」
「ふぁい。二人に……二人に私の恥ずかしいところ……見せましゅ」
意識にはもう理性なんてない。あるのはただもっと気持ちよくなりたい、二人に喜んでもらいたいというものだけ。
「ああ~! もう! 二人だけで楽しんでる! 二人とも! 私もいるんだよ!」
わ、忘れていた訳ではないのだけど、声を出さず荒い息と真後ろにいるということで、ちょっと意識が束さんのところまで行き届かなかった。
その攻撃だろうか。
私の下腹部からジーという音が聞こえた。
お姉ちゃんとキスしながらその部分を見ると胸を揉んでいた束さんが私のズボンのジッパーを下げていた。
思わずそれを阻止しようとするが、お姉ちゃんが束さんと息を合わせたかのように指と指を絡ませてきた。
私のズボンのジッパーが完全に下がると、今度はズボンを下げ始めた。
手の動きも封じられ、足は行為が始まってすぐに力が入らなくなったので抵抗できないし、できたとしても好きな人に蹴ったりなんかできない。
下げられたズボンは完全に脱ぐことはなく、膝辺りで止まっていた。
ただ脱がすだけかと私は一瞬思ったのだが、もちろんのことそれで終わるわけがなかった。
「んひゃっ!?」
そ、その、どうも私の股間部分を束さんが指で触れてきたのだ、パンツ越しだが。
「そ、そこは……!」
「ふふ、入れたりなんかしないよ。ここまでだよ」
股間部分を指の腹で何度もされる。その度に体が熱くなる。
「もうびしょびしょだね」
「い、言わないでください!」
私はそう叫ぶ。
「もうパンツはいらないよね!」
束さんがパンツもズボンと同じくらい下げた。
私の大切な部分が外気に晒され、ひんやりと冷たく感じる。
その大切な部分を束さんは――
すべてが終わった私はベンチに横になっていた。ただ、完全に何も着ていない状態だが。まあ、一応、束さんが出してくれた布をかけられている。
他の二人は色々と身だしなみを整えていたりして、傍にいた。
「ふふ、しーちゃんの裸を見て、たくさん触れた♪ うんうん! なんて最高の日なんだろう!」
「束、早く身だしなみを整えろ」
「分かってるよ。でも、好きな人とエッチしたんだよ! 興奮が治まらない!」
「まあ、それは分かる。ならば私が整えるからその間に治めろ」
「ありがと。でも、整えるついでにエッチなことはしちゃダメだよ。私、しーちゃん以外とはキスしないから」
「私だってそうだ。当たり前のことを言うな。私も詩織以外には興味ない」
ぼんやりとした思考の中、二人の会話が聞こえる。
ただ、ぼんやりとしているので、ほとんど聞き流しているが。
私はまだ荒い息をしていた。終わった直後よりは落ち着いたが。
やばいな。今、何時だろうか。結構な時間がかかった。きっと簪たちは心配されているに違いない。
連絡を入れておきたいのだけど、まだ体が落ち着かない。
「よかった。ちーちゃんとキスとかするなんて気持ち悪いもん」
「おい、事実だとしても本人の目の前で言うな。あまりいい気分ではない」
「あはは、ごめんね。でも、一応ちゃんとしておこうって思って」
「……言っておくが、私は別に同性愛者になったわけではない。詩織という存在を好きになったんだ。詩織が男だろうと女だろうと関係はない」
「へえ、同じか。じゃあ、心配はないか」
何やら重要なことを聞いた気がするが、疲れて眠かったのですぐに反対の耳から通り抜けてしまった。
まあ、大事な話でも二人が私にしないということは、重要ではない、または聞かなくていいということだろう。お姉ちゃんたちは大人だ。子どもの私はそれに従う。
まだお姉ちゃんたちに甘えたいから。
「あっ、そういえばちーちゃんってしーちゃんから『お姉ちゃん』って呼ばれているよね? いいなあ~。私も呼んでほしいな~」
「お前には箒という妹がいるだろう。なんだ? 箒のことが嫌いになったのか?」
「違うよ。箒ちゃんのことはもちろんのこと大好きだけど、もう一人の大大大好きなしーちゃんに『束さん』って呼ばれるのがちょっと不満なの」
「どこが不満なのだ?」
「はあ……、ちーちゃんはしーちゃんに『お姉ちゃん』って呼ばれているから分かんないけどさ。私はせっかく恋人になったのに、さん付けされるのが他人行儀みたいで嫌なの」
「なるほど」
「それにしーちゃんと私たちって結構歳が離れているでしょ。だから、他人行儀みたいにしないでって言っても、きっと困らせちゃうって思うんだよね。だから『お姉ちゃん』。これなら他人って感じはしない。か、家族だもん」
「い、いきなり恥ずかしがるな! そんなお前を見たことがないから、こっちも困るんだ!」
眠気を何とか耐える私の視界に何故か恥ずかしがる束さんとそれにおろおろとするお姉ちゃんだった。
そんな二人を見ていると勝手に嫉妬してしまう。
二人はきっとただの仲のいい友人だというのに。それが分かっていても嫉妬してしまう。
はあ……、恋人なのに疑ってしまうとは……。
そんな私自身を叱りたくなる。
「あっ、しーちゃんが眠いみたい。ちーちゃん、ちゃんと最後まで送ってあげてよ!」
「当たり前だ。ちゃんと送る」
「じゃあ、私はもう帰るから」
話が終わったらしく、ベンチで寝ている私に近づいてきた。
「しーちゃん、今日はこれで帰るからね」
「ん、はい」
「あと、今度から私のこともお姉ちゃんって呼んで。ちーちゃんもいるから私のことは『束お姉ちゃん』、ちーちゃんのことは『千冬お姉ちゃん』って呼んでね」
「束お姉ちゃん、千冬お姉ちゃん」
「そう。私もちーちゃんの恋人だからね。じゃあ、帰るよ。今度、プレゼントを用意するよ。楽しみにしていてね、ちゅっ」
そう言って束さんが頬にキスをした。
ぼんやりとする意識の中で束さんがミサイル――じゃなくて、乗り物に乗った。そして、行ってしまった。
また会えるのだが、それでもつい先ほどまで一緒にいた人が、長い間会えないというのが寂しい。
今度プレゼントをもらえると言ったので、それをもらったときはそれを見て、悲しさを紛らわせよう。
「帰ったか。さて、詩織。もう少し起きていろ。い、色々とやったから風呂に入ったほうがいい」
「ん~、分かってます」
「さあ、服を着るぞ。まあ、パンツは使いもんにはならんし、ズボンは一部濡れているが。また下着なしだがいいか?」
「別に……いいですぅ。それよりも動けましぇん」
主に眠すぎて。
まあ、今日は怪しげな手紙に死への恐怖、束さん――ではなくて、束お姉ちゃんと恋人になったり、私とちょっと過激なスキンシップをしたり。本当に僅かな時間で色々とありすぎたのだ。精神的にも肉体的にも疲労が溜まったのだ。
そうなると体が睡眠を求めるのだ。
というのもあるが、千冬お姉ちゃんに甘えているというのもあるが。
「しょうがない。ほら、体を起こせ。私が着せる」
「ん」
私は頑張って体を起こす。体にかけていた布が重力に従う。そのため私の胸が。
ここは外だが、お姉ちゃんだけということで隠すことはしなかった。
「そういえば、下着だが、今日返そうと思っていたものがあった。それを履け。ぬ、濡れたのは私がまた後日返そう。それでいいな?」
「いいです……」
私は千冬お姉ちゃんに言われるがまま動き、服を着せてもらった。
そして、私は帰るために千冬お姉ちゃんに背負われている。
「お姉ちゃん」
「ん?」
「ちゃんと寝ないとダメですよ」
寝ぼけた私がこう言うのはもちろん前回のことがあってのこと。
前回もエッチなことをした翌日、千冬お姉ちゃんが寝不足だったからだ。ちゃんと寝るように言わなければならない。ちなみにその寝不足はその翌日と翌々日まで続いたのだ。
「わ、分かっている」
「本当でしゅか? 明日、そうだったら怒りますからね」
「う、うむ」
千冬お姉ちゃんが怪しい返事をしたのだけど、私はほとんど眠っている状態だったので気に留めなかった。
そのまま移動して寮の物陰に着くとお姉ちゃんが携帯でどこかに連絡をする。
ほとんど寝ている状態の私では話はほとんど聞き取れなかった。
「誰ですか?」
「お前の恋人でルームメイトの子だ」
「簪ですか」
「ああ。ただなぜかオルコットの声が聞こえたのだが、どういうことだ? 更識は自室だと言っていたが」
「セシリアもしばらく同じ部屋にいることになったんです」
「……私は?」
「……ごめんなさい」
それしか言えなかった。
お姉ちゃんとも一緒の部屋がよかったのだが、もちろんのことさすがにそれは無理だった。それはどんなに頑張っても。
セシリアの場合だと友達だから泊まっているということで言い訳ができるが、これが千冬お姉ちゃんとなると簡単な話ではなくなる。おそらくは私たちの関係がばれてしまうだろう。
それは嫌だ。
だからお姉ちゃんには我慢してもらうしかない。