私と簪はほとんど同じくらいで食べ終わった。
「あ~、美味しかった! もう今度からここに来たときに食べる店は決まったね!」
私は口元を拭きながら言った。
この店は私のお気に入りの店に決定した。
そうなったのはもちろんのこと今、食べ終わったオムライスである。私はこの料理に、この店のこの料理に惚れたのだ。
燃費の悪い私だから味ではなく量が多かったから、なんて思われそうだけど、量なんていつも通りたくさん頼めばいいし、大盛りを頼めばいいだけだ。
ということで私が量で気に入ったということが分かっもらったと思う。ちゃんと味で気に入っている。
一方で簪のほうは、
「お、おかしい・・・・・・。量が三倍以上あった・・・・・・のになんで一緒に、食べて・・・・・・一緒に食べ、終わる、の?」
と、私の食べるスピードに疑問に思っていた。
いや、そう疑問に思わないでよ。私、普通に食べているだけなんだけど。別に早く食べてないよ! そんなに真顔で気にならないでよ!
そうして帰る準備をしているとメイドさんが駆け寄ってきた。
ん? 何?
「お嬢様! おめでとうございます!」
「ふえっ!? な、何が?」
「お嬢様が頼まれたオムライスにはある条件を満たすと特別なご褒美を差し上げるということです。条件は三十分以内に一人で食べ終わるということです」
「と、特別なご褒美・・・・・・」
私は可愛らしいメイドさん言う『ご褒美』に反応してのどをゴクリと鳴らした。
私が想像したのは裸にリボンを巻き付かせた恋人たち。恋人たちの反応は様々で、恥ずかしがる者、堂々と見せつける者。そんなみんなが『私たちがご褒美です。貰ってください』って言うのだ。
も、もちろんメイドさんが言っているものがエッチなご褒美じゃないって分かっているよ。で、でも、こんなに可愛い子(私よりも年上)が言っているんだもん。は、反応くらいするよ。
と、そのとき、私の手に痛みが走る。
思わず声を上げそうになったが、目の前にメイドさんがいるということで、なんとか声を抑えた。
痛みの原因は隣にいる簪だ。
人が周りにもいるせいか、無表情だが、簪が怒っていることはすぐに分かった。
きっとメイドさんの言葉に反応したからだ。きっと私が想像したものをほぼ正確に理解したのだろう。ただし、相手が恋人ではなく、メイドさんがご褒美になっていると勘違いしたようだけど。
嫉妬だね。ふふ、全く可愛いんだから。私が身や心を許すのは恋人だけだもん。恋愛感情のない相手となんて考えないよ。
私はこっそりと簪と手をつなぎ、指を絡ませた。
それで少しは機嫌がよくなったようだ。
「それって?」
またちょっと不機嫌になったみたいだけど、我慢して! 今は言葉にできないよ! いたっ、いたたっ!
「はい。複数ありまして、お嬢様がお選びください」
メイドさんがご褒美の一覧が書かれた紙を渡してきた。
ご褒美は結構な数があって、主に割引き券や物や『メイドさんと~』という券が並んでいた。最後のはメイド喫茶らしいものだ。だからもちろん最後のは料金がかかるが、ご褒美ではなくても体験はできる。
う~ん、どれにしようか。
メイド喫茶なのですべてそんなに高い価値(金銭的な意味で)というわけではない。
「じゃあ、これで」
ということで選んだのは、メイドさんと一緒に記念撮影するというものだ。せっかくここに来たのだ。メイド喫茶でしかできないことをやろう。割引きや物なんてお金でどうこうできるものだ。写真は違う。その時その時の思い出という価値がある。その価値は金では買えない。
「分かりました!」
「あっ、あとこの子も一緒でもいいですか?」
この子というのはもちろん簪のことだ。だって簪とのデートは初めてだもん。初デートの記念の品は必要だ。
「もちろん大丈夫です。お嬢様、記念撮影したいメイドを選んでください」
メイドさんたちが私たちの前に並ぶ。みんな可愛い子たち(私よりも年上)いっぱいで迷う。
しばらくエッチな目で見ながら考えた結果、
「じゃあ、全員で」
と答えた。
メイドさんたちは私の答えが予想外だったようで、一瞬キョトンとした表情浮かべたが、すぐに笑顔に戻った。
「はい! お嬢様!」
メイドさんたちはすぐに準備を始めて、私たち二人も立ち位置を決めた。もちろん場所は撮影専用の部屋だ。
メイドさんたちは立ち位置を決めた私たちを囲むように立った。
メイドさんに囲まれるなんて初めてのことなので、若干緊張する。隣の簪はそうではないみたい。やっぱりこういう体験はもう済んでいるのだろうな。
「お嬢様、今から撮りますね! にぱーって笑顔を見せてください」
私は言われた通りにする。
「はい! オーケーです! 撮りますね!」
そう言ってカメラを持ったメイドさんがパシャリと撮った。それから数枚撮られる
撮られた写真はもちろんのことその場で貰えることになっている。
受け取るまでちょっと時間がかかるので待つことになった。今、この部屋にいるのは私と簪だけ。
「メイドさん全員・・・・・・なんて、詩織らしい」
簪が話し出す。
「そう?」
「うん、ハーレムを目指、している・・・・・・からね」
まあ、確かに私らしい選択と言えば私らしい選択だ。ハーレムを目指しているから出せた選択肢だね。普通はきっと自分好みに合った子を選ぶのだろうけど、私は選ぶなんてできないもん。
ハーレムはその必要がない。
もちろん、誰でもなんてことはしないよ。ちゃんと愛せる子だけ。
「そういえば・・・・・・詩織。メイドさんに・・・・・・ご褒美って言われたとき・・・・・・何考えてた、の?」
思い出した簪は不機嫌そうに言った。
ああ、あの勘違いか。
私は簪の手を握る。
簪は逃げようとするが、私の手は簪を逃がさない。
「そ、そうやって・・・・・・して、も、ゆ、許さない、から!」
「うん? 許すって? もしかして簪はメイドさんの言葉に反応した私がした想像があのメイドさんたちといちゃいちゃだと思ったの?」
「・・・・・・そう」
簪は顔をそらしながら言った。
可愛い表情♪ そんな可愛い表情されると襲っちゃいたくなるじゃん。
私はちょっと襲いたくなったが、なんとか我慢する。
「残念だけど外れだよ。私が想像したのって、メイドさんとじゃなくて、簪やセシリアたちとのいちゃいちゃだもん」
「!?」
簪は自分が勘違いしたことに気づかされて顔を真っ赤にさせた。
そんな簪を見た私は顔を簪の耳元に寄せると、
「私がね、いちゃいちゃしたい人は恋人だけだよ。絶対にこの体は恋人以外にエッチなことはさせない。だから簪が体を重ね合わせたいって言うなら、私は抵抗なんてしないよ。好きなことをしていいよ」
「わ、分かった・・・・・・から、み、耳元、で・・・・・・囁かない、で! へ、変な感じが、する! んぐっ」
可愛すぎるかんざしにキスをする。舌までは入れないけど、長いキスをした。終わったとき簪はぼーっとしていて、キスの余韻を味わっているようだった。
ちょっとやり過ぎた。
それは簪がこうなったことではない。私のことだ。キスしたことで、その、欲求が高まってしまったのだ。
は、早く夜が来ないかな。簪といちゃいちゃしたい。
と、互いにキスでダメージを受けていると、
「お待たせしました、お嬢様!」
メイドさんが元気よく入ってきた。
幸いにも大きなダメージではなかったので、メイドさんに違和感をもたれることはなかった。
メイドさんから受け取った写真はみんなが笑顔だった。
うん、私の選択は間違ってなかった。メイドさん全員を選んでよかった。こっちの方が賑やかでいい。絶対に選んでいたら寂しいものになっていただろう。
私たちはその写真を大事にしながら、店を出た。
「今度、恋人全員の写真を撮りたいな」
先ほどの写真を見たらつい撮りたいって思った。
だって私を中心に囲まれている写真ってハーレムって感じだもん。たった二人ではどうしても物足りないものがある。
う~ん、でもただ囲まれるなんてだけも、ただの仲の良い友人に見えるから、何か工夫が必要だな。思いつかなかったら囲まれているだけでいいや。誰かに私たちは恋人なんですよって示すわけではないのだから。これは私が見ながらニヤニヤするものだから。
「ねえ、みんなは良いって言ってくれると思う?」
隣を歩く簪に聞く。
「言う。少なくとも私とオルコット、は・・・・・・言う」
二人が私のハーレムをほぼ受け入れてくれたのは、私のためだって言っていたっけ。
「ありがとう」
「・・・・・・別に礼は、いらない。詩織の恋人とし、て、当然のことを・・・・・・言ったまで」
うん、本当に最高の恋人だ。こんなにされたり言われたりしたのだ。私も応えられるように頑張る。
ただ一方的にするされるの関係なんて恋人や夫婦の関係ではない。ただの上下の関係だ。それは嫌だな。
「そういえば私と簪の写真ってどのくらいあるの?」
もちろんのこと、二人きりで撮った写真はある。ただ学園から出られるのは二日だけなので、あまり数はないはずだ。
そりゃ毎日撮ってもいいけど、ちょっと面倒くさいから。あと、似たようなものばっかりになるから。
私は簪からの返答を待つのだが、全然来ない。
あれ? そんな難しいものじゃないよね? 数もそんなに多くないはずだけど。
私はちょっと強引に簪の携帯を奪う。
「あっ! だ、ダメ!」
そう言うが、私は素早く簪の携帯にスティック型の機器を取り付けた。謎の機器を取り付けられた簪の携帯の画面は壊れたかのように乱れ、最終的にロック解除状態となった。
私が使ったのはもう分かるとおり、ロックを強制解除させる機器だ。今のところ解除できないものは私のパソコンや端末だ。大統領しか開けられない? これを使えば関係ないよ。すぐに開けられる。
まあ、そんな危険なものを私は簪の携帯を見るために使ったのだが。
さてさて何枚かな?
私は取り戻そうとしている簪から逃げながら見た。そして、動きが止まった。その瞬間に簪は取り戻す。
「か、簪?」
「・・・・・・・・・・・・」
見られたものが私に見られていけないものだと理解している簪は何も言わない。無言で携帯を抱え込んでいる。
現在、私たちがいるところは人気のない場所なので、暴れても問題はない。
「ほら、怒らないから何を撮ったか言ってごらん」
自分の口からは言わない。
「……詩織の……写真」
うん、そうだ。私が見たのは私の写真だ。
「そうだね。でも、ちょっと違うよね? どういう写真?」
「し、詩織が……寝ている写真」
「うん、そうだね。ただし、胸丸出しにされた私だけどね」
「…………」
「何か言うことは?」
「ご、ごめんなさい……」
簪の携帯に入っていたのはパジャマのボタンが外され、胸を露にさせられた私や寝ている私と簪がキスをしている写真だったりとちょっと危ない写真ばっかりだった。
寝ているときにされた写真だったので、特に前者はあまり良い気持ちにはなれなかった。ちょっと怖く感じた。
だって自分が意識のない間に色々とされちゃったんだよ。これが恋人以外からされるかと思うと……。
一応、襲われる前に起きることはできるけど、こういう写真を見せられると怖くなる。
「いい? 別に私もやっているからやるなとは言わないけど、こうして写真に撮っちゃダメ! そんなに見たかったりキスしたかったら言ってくれたらちゃんとするんだからね」
「写真はダメなのに……やって、いいの?」
「? いいに決まっているでしょ。したいんでしょう?」
「し、したい」
「いいよ。だから、私の許可なしでこういう写真はダメだからね!」
「寝顔は?」
「……別にいいけど」
は、恥ずかしいけど、さっきのとは違うので別にいい。私だって簪の寝顔の写真は持っているもん。誰もいないときにちらっと見たりしている。
「じゃあ、次に行こうか。今日は簪と私の時間だからね。夜までだよ」
「う、うん」
最後の言葉の意図に気づいた簪は顔を赤くして頷いた。
私はもうちょっと人気のない場所に移動した。裏路地ってやつだ。
「し、詩織?」
「キスだけだから。もっと先は夜だよ。いいでしょ?」
「で、でも、人が……来るかも……知れ、ない。見られるのは……嫌」
「大丈夫。私が気配を察知するから。それに監視カメラがあったとしてもちゃんと無力化してるから。やろう?」
「……分かった」
私たちは路地に入り、凹んだ壁に体を入れた。これで簡単に私たちの姿を見ることはできない。
入るとすぐに私は簪にキスをした。
「ん、んんっ」
した直後から軽いものではない。もうそれはメイド喫茶のときにやったから。
侵入させた私の舌は簪の口内を攻める。
「ん、んひっ!?」
突然の衝撃が股間部分からして、思わず変な声を上げた。
どうやら簪の脚がスカートの中に潜り込み、その、私の股間に刺激を与えたようだ。もちろんこれは簪の意思だろう。だって、脚を上手く動かして来るんだもん。これが自分の意思じゃなかったら驚きだよ。
私は抵抗しようとするが、抵抗に集中した瞬間を狙われて、今度は逆に簪が舌をこちらへと入れてきたのだ。しかも、今いる場所が壁が凹んだ場所なので、狭いこともあり、簪にとって全力をこちらへかけることができるのだ。おかげで抵抗しにくい。