転生?チート?勘弁してくれ……   作:2Pカラー

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長編初挑戦です
拙い点等多々あるかとは思いますがよろしくお願いします


しかしテンプレということであっさり行きたかったプロローグなんですが、なんで前後編になってるのやら



01.プロローグ

 はいはいテンプレテンプレ。

 

 いきなりなんだって? うっせーな。こちとら気付いたら見覚えのない場所に居て、そこにいた自称神に俺が死んだとか聞かされて、その上『力』を一つやって異世界に転生させてやるとか言われて、もうね、そんなん言われても付いて行けるかっての。せめて死んじまったことを悲しむ時間くらいくれっての。葬式終わるまでくらいは現世で家族の顔を見て過ごさせてくれっての。頼むぜ神さん。

 

「申し訳ありませんがこちらの都合もありますもので」

 

 あー、スマン。テンプレじゃない所があったわ。

 この神ときたら、よくあるSSの如く腰の低さなんかまったくねえの。寧ろ事務的対応? 今俺らはテーブル挟んで座ってるわけなんだけど、ちらりともこっちを見ずになんか資料っぽい紙束めくってるしね。俺なんかより仕事の方が大事ってわけね。

 

「で? 能力については決まりましたか? なるべく派手なのにしてくださいね」

 

「いやさ、そもそもなんで俺は転生なんてさせられんすか?」

 

 SSなんかだと神様のミスとかありがちだけど、コイツはミス自体しなさそうだし。超有能そうだし。つか見た目まんま百計のクロなんで、ちょっと怖いっす。

 

「貴方は選ばれてしまったんですよ」

 

「選ばれた?」

 

「たまに、といっても人間の時間で百年に一度くらいの頻度ですが、上の神々が我儘を言いやがるんですよ。娯楽をよこせとね」

 

 なんか神さんの口調が一瞬恐ろしくなったんですけど……。苦労してはるのね。

 

「それで人間の方々を選抜しまして、上の神々を楽しませていただいているんです。とはいえ今回の参加者は運がいい方ですが。数百年前など人間の作った娯楽小説というものが無かったものですからそれはもう血みどろ……おっと失礼」

 

 いや、血みどろって言ったよね? 何させられたのご先祖様たちぃ!

 

「それほど恐れなくても平気ですよ。先ほども言った通り貴方はまだ運がいい方なのです。上の神々の求めた娯楽は、貴方も良く知る転生モノ。閉塞した物語に新たに異物を放り込むことによって、全く別の物語を作り出させるというモノです。選ばれた人間たちは思うままに生きてもらいます。物語に介入するもよし、好きな人物に肩入れするもよし。主人公に成り変わるのもいいでしょう。そのための『力』はこちらで用意します」

 

「物語ってか異世界じゃないと駄目なんですか? 俺としては日本の平和ボケっぷりが気に入ってたんですけど」

 

「『力』を与えた人間が好き放題やっても影響が無い世界というのが所謂フィクション。人間の創作作品というわけなんです。『力』を得る以上異世界へと赴いていただくことは決定事項。そして上の神々を楽しませるため人を超えること、すなわち貴方が『力』を得るということもまた決定事項なのです」

 

 マジかぁ。まぁダメもとで聞いただけなんだけどさ。

 

「ちなみに俺が行くことになる異世界ってのはもう決まってるんですか?」

 

 神さんは資料の束の中から一枚の紙を取り出すと渡してくれた。さっきから見てた資料は異世界の情報だったのか。他にも数百枚は資料がある所から考えると、その分異世界を用意して転生者と面接して……止めよう。俺に出来ることなんて俺にかかる仕事の時間を減らしてあげることぐらいしかないんだから!

 とは言えこれから生きていく世界のことを無視するわけにも、と渡された資料に視線を下ろせば

 

「ゼロの使い魔?」

 

 全く見知らぬ文字なのにそう読めた。というか読める部分と読めない部分がある辺り、俺に見せてもいい部分だけ神様ぱぅあーで自動翻訳でもされているのだろう。

 それはそうとゼロ魔かぁ。

 …………………………ぶっちゃけ最悪な部類だな。

 だって治安悪いじゃん。文化レベル低いじゃん。差別&格差の世界じゃん。しかも戦争ばっか。才人とルイズのイチャコラのため、他のキャラには徹底した不遇を。そんな印象、ザ・ハルケギニア。

 正直やってらんねぇっすわ。原作のほうも序盤の大きなイベントは覚えてるけどロマリアが調子に乗り出した辺りからうろ覚えだしな。何巻まで読んだっけ?十……七?

 そんな思いなどそれこそ知ったこっちゃないのだろう。神さんはまるで変わらない口調で、目線は他の資料に向け、こちらをチラリとも見ないまま口を開いた。

 

「では現状を理解していただけた所で補足説明に入らせていただきます。まず、貴方に向かってもらう世界はそちらの資料にもある通り『ゼロの使い魔』の世界です。人種、生まれる国、生まれた家の地位、家の属する勢力などの一切は既に決定されており変更は効きません。また、情報を開示することも出来ません」

 

「それはなんでっすか? 貴族か平民かが分かるだけでもどういう『力』をもらうべきか、ある程度予測が付きそうですけど」

 

「だからです。上の神々が求めるのは自由奔放に『力』を振るい世界に新たな面を作る人の姿。ゆえに状況に則した能力などで場を濁されるのは好まれないのですよ。真に望まれていることは完全な原作破壊なのでしょうしね」

 

 まったく、面倒な。と思いつつもある程度思惑は読めてきた。

 神さんはこう言ってはいるが、おそらく俺が平民に生まれることは無い。原作に関わるならば十中八九トリステインの貴族。メインヒロインに蔑まれるゲルマニア人も、空の上で交通も不便なアルビオン人も原作には関わりにくいだろうしな。ガリア? シャルル派大粛清に俺が巻き込まれたら神々が原作崩壊を楽しむどころじゃねえだろう。エルフや亜人も言うに及ばず。

 

「では次に現時点で開示可能な貴方の情報を。まずは容姿。これは向かう先が先ですのでそれなりの見た目の体を用意します。両親と見た目が違いすぎるなど、異質と取られるような容姿とはなりませんので安心して下さい」

 

 まぁ生前の俺の見た目が反映されるとは思ってなかったけど。黒髪黒目がかなり珍しい世界らしいし。

 

「次に身体能力に関してですが、かなり高いものだと思ってください。もちろん希望されれば超人的なスペックを与えますが」

 

「サービスなんですか?」

 

「はい。『ゼロの使い魔』の舞台は医療などまるで発展していない世界です。水の秘薬を潤沢に使える貴族の家に生まれると決まっているわけでもありませんし。送り出した転生者(アナタ)が抵抗力の無い生まれたばかりの状態で病に罹り死亡でもすればこちらとしても遺憾ですから」

 

 なるほどね。生まれながらに成人なみの抵抗力を持つ肉体。鍛えたらどうなんだろうね……

 

「さらに魔法に関して。非メイジに生まれた場合には残念ながら発現しませんが、メイジの家系に生まれた場合ならば努力次第でスクウェアに到達できるだけの「ちょっと待って!」……はい?」

 

 ……ここなんだよなぁ。転生先がゼロ魔だと知って、おそらく貴族の一員になるだろうと予測が付いて、ここが一番重要だと、与えられる『力』なんかよりもよっぽど大事だと、真っ先に思い至った。

 思い至り、熟考、とまではいかなかったけど、さすがに覚悟は決められた。容姿だの身体能力だのを先に説明して時間を与えてくれた神さんには感謝っす。

 

「魔法の才は皆無にしてください」

 

 その時初めて神さんが顔を上げた。うぉ、目つき悪!

 

「理由を聞いても?」

 

「魔法至上主義の世界を掻き回すのに、俺自身が魔法の恩恵を受けられるポジションにいたんじゃモチベーションが上がらないだろうと思いましてね。ホラ、領地の経営だけ頑張って原作に介入しなくてもいいやなんて気分になるかもしれませんし、神様たちがお望みの原作破壊なんてそっちのけで平和な地方に婿入りして安穏と過ごすなんてこともスクウェアなんて箔さえあれば可能になるかもしれませんし! それならいっそ頼れるのは神さんから貰える『力』だけにして魔法なんかは全く使えない方がいいかなぁ、なんて、……思ったり、その、しまして。はい」

 

 もちろん全て口から出まかせの大ウソである。世界を掻き回す? やるわけねえだろ!

 神さんは派手に原作に介入してもらいたいのだろうが、そんなのより俺は自分の安全と幸福を優先したいね!

 そしてゼロ魔という『魔法の世界』においてもっとも不幸を呼ぶもの。それこそ『魔法の才能』だと俺は考えている。

 トリステインで魔法の才に目覚めようものなら、侯爵、公爵クラスの後ろ盾でもなければ、まずワルドに目を付けられるだろう。表向き栄えあるグリフォン隊の新人に、内実レコンキスタ幹部の自分の右腕に、なんて狙われたら生きた心地がしない。

 それをスルーしたとしても待っているのはアルビオンでの戦争だ。力があれば嫉妬も受けるだろうし危険な任務を押し付けられる可能性もある。ゼロ戦護衛の竜騎士たちみたいにな。

 さらにそこから生還できたとしよう。待っているのは? オンディーヌ隊で騎士団ごっこですねわかります。才人のために作られた部隊に箔を付けるにはスクウェアクラスのメイジは放っておけないだろうしね。

 あれ? 休まる暇なんてなくね? それどころか魔法が使えるせいで死亡フラグ量産してねぇ? と、まぁこんなかんじである。

 トリステイン以外の国で生まれた場合? 似たようなものだろ?

 アルビオンでは貴族派に敗北する王党派にも、ガリアにいいように扱われる貴族派に付くわけにもいかないが、魔法の才能があるというだけでクロムウェルに戦力として確保され、逃げ出せないなんてことになりかねない。最悪アンドバリの指輪が相手側にあるのだから俺の意思なんて関係ないだろうしな。しかし魔法の使えない『無能』ならば、むしろ貴族派の側から追い出そうとしてくれるだろう。戦争では役立たず。勝った後には分け前を要求する無能貴族なんて誰だって仲間に欲しくは無いだろう?

 ゲルマニアは一見安全に見えるかもしれないが、アルブレヒト三世が作中でほとんど描写されてないのが不気味すぎる。蓋を開けてみたら使える奴は全て軍人に!なんて危険人物かもしれないし。何よりゲルマニアなら魔法がなくても金を稼ぐ能力さえあれば出世だってできるだろうしね。

 ガリア? 大粛清がある場所で一人の魔法の才能が何になるよ? 使えない力ならなくてもいいさ。

 と、まあこんな感じで俺は魔法は要らないと結論付けました。むしろ厄介事に巻き込まれる呪いのようなものだろ? ルイズの虚無しかりタバサのスクウェアしかり。

 

 だからチートでスクウェアにしてやるなんてマジで勘弁してください!!


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