転生?チート?勘弁してくれ……   作:2Pカラー

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28.With a fanfare

 

 皆さま、ご機嫌いかがでしょうか。クー・セタンタ・ド・ガリアでございます。

 思えばこの十カ月は休暇とは名ばかりの大変な期間でした。

 トリステインへと赴き、胃を痛めながらも役目を果たしました。

 トリステイン側から使者が参られた時には、水の精霊様に気に入られるという不測の事態が発生しました。

 それにともないトリステイン貴族の方々と交渉する羽目にもなりましたね。

 水の精霊と交渉役であるモンモランシ家の間を取り持ち、ヴァリエール家の御息女の病を治療していただきました。

 その後も様々なことがありました。

 ラグドリアン湖に小舟で出れば、何故か毎回カトレア嬢とモンモランシー嬢がやって来ていましたし。フラグを回避しようと湖に出るのをやめれば、花壇騎士の諸兄らがニヤニヤ笑いながら私をボートに無理やり乗せやがったこともありましたね。なんでもリュティスから騎士団へと様々な指令書なる物が送られていたとか。陰謀大好きな上のクソ兄……ゴホン、失礼。私のことを大変思ってくださっている長兄のお節介が働いたように思えますね。

 ああ、そうそう。ラグドリアン湖で思い出しましたが、私が湖に出ると精霊様が喜んで下さるようで、私が湖上に居る間は鉄壁の守りが敷かれていました。凶暴な亜人が湖のほとりで全身から血を噴き出して倒れていた、なんてこともありましたし。精霊様に聞いたところ、あの方、液体ならばなんであれ操れるそうで、血流操作なんてのも出来るそうです。どこの一方通行でしょうね。さらに水に触れている相手ならば思考を呼んだり精神への干渉も出来るそうですから、心理掌握のような力も持っているということでしょうか。私も一応チートに分類されるはずですが、精霊様に比べれば可愛い方だと思います。

 さて、形式的に与えられていた仕事をこなし、同時に舞い込んで来る厄介事も片付け、時には湖で釣りを楽しむ。そんな毎日はそれなりに楽しく、またとても充実しており、あっという間に十カ月が過ぎました。

 ええ。現在ガリアでは王位継承式典が執り行われております。

 自然、背筋も伸び、思考までもピシッとせねばと思う次第であります。

 

 ま、と言ってももう終わりかけなんですけどw

 

 いや、だってわざわざ説明しなくてもいいでしょ? すっげえつまんなかったぜ?

 宰相による長々とした説明があって、父上がうんたらかんたらしゃべって。

 で、シャルル兄が戴冠して。拍手や歓声が溢れて。

 まぁ省略してもいいでしょう。継承式典そのものはこの戴冠式が本番だけど、実際は王族やそれに準ずる大貴族しか来ていないココではなく、諸外国から多くの貴族がやって来るラグドリアン湖の園遊会の方が派手になるしね。

 

「――以上をもって、我がガリアの、王位継承の儀をつつがなく終了したことをここに――」

 

 さて、こっから俺もお仕事開始なんですわ。

 戴冠式は終わったけど、直接オルレアンへってわけには行かないんだよね。

 まずは国内貴族と王都に集まった多くの平民にお披露目をするために、シャルル兄はこれからパレードです。花壇騎士(担当は騎士団の中でも見目麗しい方々がするそうで)を引き連れ、リュティスを回るとか。

 リュティスはここ数年の好景気に沸いていたし、継承式典に向けてジョゼフ兄が準備を担当して来たので、大いに盛り上がることでしょう。

 で、俺はと言いますと。

 

「お初にお目にかかります。ジェームズ陛下。わたくし、名をクー・セタンタ・ド・ガリアと申します。以後お見知りおきを」

 

 戴冠式に出席していた他国の王族のお相手ですわ。

 今のお相手はアルビオンのジェームズ一世。最初はトリステイン担当にされそうだったんだけど、なんとかジョゼフ兄に押し付けることに成功しました。マジで危なかったんだぜ?

 

「これはこれは。ご丁寧な挨拶、痛み入ります。本日は兄君の戴冠、誠におめでとうございます」

 

「ありがとうございます、陛下」

 

 ちなみに今の俺の立場は王子ではなく王弟。非常にややこしい立場なんだが、公爵位を綬爵するまでは王族のままってことになってる。ちなみに王兄であるジョゼフ兄が王位継承権第一位、王弟である俺が継承権第二位、王女であるシャルロットが第三位ということになってるあたり、わけがわからんよね。

 まぁ何が言いたいかというと、現在の俺は国王はまだしも、それに準ずる王族となら対等の立場であれるってことだ。

 

「これよりリュティスの民の前に新たな国王シャルルが姿を見せることで、王位即位を知らしめることとなっております。オルレアンでの披露式典は後日となりますので、本日は我らがグラントロワでお過ごしください」

 

「ありがとう、クー王弟殿下。お言葉に甘えさせていただくことにするよ」

 

 ふむ。ジェームズ陛下とは安心して会話をしてられるね。

 というか女性との会話よりオッサン相手にする方が心休まるってどういうことよ?

 

「それにしてもクー殿下は落ち着いておられるな。このような場においても堂々たる佇まい。我が息子にも見習わせたいものだ」

 

「アルビオンのといいますと、ウェールズ殿下ですか。ウェールズ殿下の聡明さは遠くガリアにいる私の耳にも届くほど。おそらく私ごときでは引き立て役にもなれませんでしょう」

 

「ハッハッハ。そう言って貰えるならば嬉しいのだがね。アレはあくまで年齢の割には聡明である、という評価を越えられはしないだろう。君とは違って、ね」

 

「それは、買被りでしょう。私は日々二人の兄の偉大さに、我が身の小ささを感じていますよ」

 

「ふっふっふ。我が息子ならば、この場面で兄君を持ち上げることで、ガリアの偉大さを印象付けよう、などとは考えられないだろうよ」

 

 見通されてますなぁ。ま、見抜かれることで効果の減るような話ではないんだけどね。

 むしろシャルルは『そこまで考えられる人間(クー)が王に推している』ということで、印象操作の強化を期待できるくらいだし。

 にしても、なんというか、かなりのレアキャラだよね。きちんと王族や貴族としての役目を果たせてる人って。ガリア以外では初めて見たんじゃないかな。

 

「クー殿下には是非ともウェールズと友誼を結んで貰いたいものだよ。それに、君の聡明さを目の当たりにすれば、このところプリンスオブウェールズという呼び名に喜ぶばかりのアレも少しは気を引き締めるだろう」

 

「私はいずれ公爵位を綬爵し、王室からは外れる人間です。そうなれば」

 

「それでも、だよ。クー殿下はきっとガリアの支柱となるだろう。なれば君と面識を持てることはアルビオンにとって、そしてウェールズにとってかけがえのない財産となるだろう」

 

「勿体ないお言葉です」

 

 かなーり本気で言ってるね。『コミュ力』で確認したけどさ。

 この人の息子ならそこまで酷いことになってはいないと思うんだけど。

 ってか、そのウェールズはどこよ?

 

「ところで陛下。ウェールズ殿下は今どこに?」

 

「……うむ。おそらくだが、従妹(イトコ)と会っているのかと」

 

 ……そりゃジェームズ陛下も顔を逸らすわ。

 つか他国の王位継承式典に呼ばれてるってのに、アンリエッタと逢い引きしてんのかよ。年齢からすれば仲のいい親戚がいるから会いに行っちゃったってレベルなんだろうが。

 

「クー殿下と会う前だったならば子供のやることと目を瞑っていたかもしれんが、……む」

 

 ジェームズ陛下の視線を追えば、……えーと、誰だっけ?

 ガリアで見かける顔ではない。トリステインからの来賓は全て把握している。ゲルマニアのアルブレヒト三世は式の前に挨拶したし、ロマリアの僧侶が着るような服装でも無い。

 ならばアルビオンか? と考えていると、

 

「ふむ。クー殿下。この者は我がアルビオンの大公。名をモードという」

 

 モード大公!? 生きてたのかよ!!

 俺は衝撃を受けていた。だってモード大公の投獄は既に終わっていると思ってたからね。

 というか何故か俺はそう思い込んでいたけど、モード大公の投獄はまだまだ先だって可能性の方が高かったんだ。

 それに何故気付かなかったのか。

 ……決まってるよなぁ。

 気付いてしまえば目を逸らせなくなると分かってたからだろう。

 助けられるというのなら、ティファニアも、その母も、投獄される大公自身も助けるべきだと思ってしまうと、俺自身が分かっていたからだろう。

 これはカトレアさんの時ほど簡単な話じゃあない。

 国家に対する干渉であり、俺がミスをすればガリアにまで責が及ぶ可能性だってある。

 簡単に手を出すべき問題じゃあないんだ……が。

 ホント、お人好しな思考回路ってのが神さんから押し付けられた嫌がらせに思えてきたぜ。

 あぁ、あのセリフが言いたいが、目の前にはジェームズ陛下もモード大公もいるしなぁ。

 ……分からないように呟きますか。

 

「Could you give me a break? My God」

 




ちなみにクーは『前世』で英検三級に合格するほどの英会話能力を持ってます。ええ、ペラペラですね(なので英語が間違っていても作者の責任ではないのじゃよ)

さて、内容としてはシャルルが即位しました。もっともモード大公の登場の方に意識が行くでしょうが
ええ、そうです。フラグです
まだまだどうするかは決めていませんが、次はお空の上でフラグを建てることになりそうです

追記)まさか英検三級にリアクションがあるなんて
   ネタだよ? 英語力が三級程度しかないから間違っててもいいでしょってネタですよ? 作者がラストのセリフで文法等間違えていても責めないでって予防線ですよ
   後書きに関しては適当に読み飛ばして下さいませ

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