転生?チート?勘弁してくれ……   作:2Pカラー

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32.デコイ

 

 やぁ。クーだ。

 現在アルビオンに向けて『旅行』中です。

 両用艦? アホいったらあかんでよ。そんな目立っても仕方ないでしょう。

 同行者は八人ですね。内訳はメイジ六人にメイド二人。

 ラ・ロシェールまでは騎兵に守られ馬車に揺られ、そこからガリア籍のフネに乗り込むことになってます。トリステイン領のラ・ロシェールですが、交易用だとかの理由を付ければ他国籍のフネを駐留させることもできるそうで。まぁ今回使うフネは、一応の武装を積んだ『小型艦』を賄賂で『商船』だと認めさせたそうなんですがね。うーん。さすがトリステイン。

 話を戻しましょう。

 護衛を連れて移動し、ガリア籍のフネに乗る。実際目立っとるやんけ? と疑問の諸兄もおられるかもしれません。

 説明しますと、全てジョゼフ兄の発案でして。

 

『ところでお前のアルビオン行きの名目はどうする?』

 

『ただの『旅行』じゃ納得されない?』

 

『おそらくは無理だろうな。お前がトリステインのヴァリエールやモンモランシと懇意にしているのは少し調べれば手に入る情報だ。トリステインに食い込めるだけの力を持ったクー・セタンタ・ド・オルレアンが此度はアルビオンへ。それも向かう先はモード大公家。裏を疑わない奴がいるならば、そいつはガリアじゃ出世できん』

 

『有能な奴なら疑ってくる、か。そいつはマズイね。疑われるってことは調べられるってことだ』

 

『さて、どうするべきだと思う?』

 

 そう言った時のジョゼフ兄は輝いてたなぁ。

 あれは、うん。どんなイタズラをしてやろうかと企む子供みたいで。

 あるいは、そう。自分と同じレベルで陰謀の話し合いの出来る相手を見つけたことに喜んでいるようでもあった。

 

『情報を隠すのは下策だね。俺たちの側からの情報流出は防げても、モード大公がポカをやらかせば一巻の終わりだし』

 

『ならば偽の情報を流すか? 裏を疑わないほどの情報を?』

 

『いや、むしろ疑って貰おう』

 

『ほう?』

 

『俺が『旅行』にアルビオンへ。何か裏があるのでは、と疑って調べてみれば、ギリギリ手の届く所にクー・セタンタは囮だというネタがあった』

 

『自分で手に入れた情報は疑わない、か。お前を囮にしてまでガリアがしようとしていることに関しては?』

 

『そっちはジョゼフ兄にお任せするよ。あるでしょ? 他国の目があるだけに踏み切れなかった案件。アルビオンに使者を出したい案件の一つや二つ』

 

『いっそこの際にアルビオンとの関係を変えてしまうのも手だな。お前を囮とするだけの案件には風石関連辺りが妥当か。軍備を固めるそぶりはゲルマニアへの牽制にもなるしな』

 

『現状ヴァリエールやモンモランシとの繋がりがあることで、俺を頼れると思っているトリステインの馬鹿共への牽制にもなるね。ガリアがアルビオンとの交易を重要視しているんじゃないかと思わせることが出来れば』

 

『その思い込みを利用してさらにトリステインから絞り取る、か?』

 

『ロマリアにもいい薬になるでしょ? 始祖の血を引く三王家が一つにまとまれば、今までのような横暴が出来なくなる』

 

『異端審問を盾に暴れることもできなくなるか。継承式典への教皇の招致にも正気を疑うような寄付の催促があったしな。まぁ大人しくさせるためには、もう二、三絡め手が必要だろうが』

 

 くっく、ウケケと嗤いながら策を巡らしていく。

 よりガリアを富ませるために。より強固な平穏をもたらすために。

 

『ふむ。つまりはお前の『旅行』は囮としてそれなりに目に付いて貰う必要があるか』

 

『それでいて派手になりすぎず、何か裏があるんじゃないかと疑わせるくらいが丁度いいね』

 

 

 

 ……と、まぁそんな感じのジメッとしたやりとりがありまして。

 結果的にこうなりました。

 

「クー殿。そろそろラ・ロシェールです」

 

 ちなみに俺をクー殿と呼ぶのは古参の連中。つまりは花壇騎士からオルレアン領に来たような奴らだね。

 新たに俺の下に付いた奴らは公爵、もしくはオルレアン公って呼んでくる。

 原作のオルレアン公の末路を知ってる身としては不吉に感じる呼び名ではあるんだけどもね。

 

「わかった。それにしても空に浮かぶ島、か。楽しみな限りだ」

 

「そうでしたね。クー殿は空に浮かぶ島が見たくてアルビオンに行くのでしたね」

 

 ちなみにコイツラ。俺の目的を知っているわけじゃありません。

 こいつらはジョゼフ兄と決めた、囮としての俺の目的のことしか知りません。

 んで、その目的というのが、

 

「にしてもクー殿はそっち方面には疎いのかと思っていましたが。仕える者としては安心しました」

 

「そうですね。オルレアン公爵家も安泰でしょう」

 

「ええ。不敬と言われるかもしれませんが、クー殿にますます親近感を感じられるようになりましたよ」

 

「「「まさかアルビオンまで嫁探しに行くことになろうとは」」」

 

 はっはっは。笑い合う部下を見て、やはりこの『理由付け』は止めといた方が良かったんじゃないかと今さらながらに思う。

 

 まったく、勘弁してくれ

 




むーん



筆乗らず
何故か妄想
湧いて来ず

むーん。参りました

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