「ふむ。トリステインのアンリエッタ姫、ね」
どもども、クーでさぁ。ウェールズ君の恋愛相談中でがす。
え? 飛ばせって? キングクリムゾン発動しろって?
だが断る! 野郎相手の恋バナなんて拷問、俺だけ受けろってか!?
むしろ道連れじゃ! キンクリどころかバイツァダストで巻き戻すぞこの野郎!! 俺はこのままエンドレスエイトでもいいんだが?
おっと失礼。空回りした恥ずかしさから少しカッとなってしまったね。
ま、こっから先は興味ないって方は時を駆けて未来で待っててくれ。
「いや、本当に他意は無いんだ。ただガリアのオルレアン公がトリステインと交流があると小耳にはさんだだけで」
随分慌てて否定してるけどさ、ドツボにはまって行ってるよね。
というか自国の情報収集力を明かしていいのか? いいのか。これくらいなら。
とはいえ言動からお人好しっぽい所が見え隠れしているし。
適当に励ましておくか位に考えていたけど……いっそ貸しを作っておくべきかもね。ウケケ
……いや、やっぱ面倒だわ。
「先ほども言ったが私にアンリエッタ姫との面識は無いよ。継承式典の折にはトリステインの王族の方々にも出席を求めたが、私はアルビオンからの出席者と応対していたしね」
「ああ。そういえばそうだったね。父上から君の話を聞くことも多くなったよ」
ふむ。本当に小言でも言われてるのか?
まぁ悪印象を抱かれているわけでもなさそうだし、今はいいか。
「確かに私はトリステインと付き合いがあるが、主な付き合いがあるのはオルレアン領の隣領の領主であるモンモランシ家と、あとはヴァリエール公爵家くらいか。マザリーニ枢機卿とも面識があるが」
「へぇ。トリステインの有力者ばかりじゃないか」
「そうなるか。まぁトリステインの内情を僅かばかり知っている私としては、私とアンリエッタ姫の婚姻の可能性は低いだろうと思っている。安心してくれ」
「こ、婚姻って」
いや、そこに食い付かれても。
というか意外と幼さが残っているな。王族の婚姻なんて
まぁハルケギニアだしな。魔法の腕がなにより重要とされる世界だ。政治を学ぶのはこれからってことなんだろう。
「私も一応王家に連なる者だしね。それが国益となると言うのなら見知らぬ相手とでも結婚するさ。ま、ウチの場合は他所との繋がりを強く求めているというわけでもないんだが」
「ガリアは……なるほど、自国の力だけで……。いや、しかし君はトリステインの内情を鑑みて、と言わなかったかい? トリステイン側ならガリアとの繋がりは是が非でも欲しがるものだと思うんだが」
ふむ。頭が柔らかいね。ウェールズ君には八十ポイントあげましょう。
ま、最初に目が行くのがアンリエッタのことってので九千二百ポイントマイナスされてるんだけど。
「いや、むしろトリステインは私を歓迎できないだろう。ガリアの王弟とトリステインの姫。もしこの婚姻がなされれば、事実上トリステインはガリアの属国になってしまうからね」
「それは……いや、そうなのか? 君がトリステインの王となるというのなら――」
「それはないよ。それはつまり私が婿入りするという話だろう? 王弟を人質の如く他国に渡すというのはガリア貴族の感情を逆なでするものだ。もしウェールズ殿下に弟がいて、彼がトリステイン、だと冷静に判断できそうにないから、そうだな、クルデンホルフ大公国に婿入りなんて話が持ち上がったらどう思う?」
「それは……なるほど人質か。……いやちょっと待ってくれ。本当にアンのことは」
もう面倒だから認めちまえよ。
え? 俺がツッコミを止めればいいって?
アホか。マセガキをからかいながらでもなけりゃこんな話やってらんねぇっての。
あー酔っ払いてぇ。ワインを断るんじゃなかったかね。でもワインじゃ酔えないしなぁ。
はぁ。ホント勘弁願いたい。
「そうだったな。すまない。話を戻そう」
「あ、ああ。そうだね」
「つまりは、だ。トリステイン側としては私を警戒しているくらいだと思うよ。少なくともヴァリエール公爵やモンモランシ伯爵のような愛国心のある貴族はね」
これがレコンキスタに尻尾を振るような腐敗貴族なら、国よりも自分の利益を守るためガリアの属国になることも喜びそうではあるんだけど。ま、そこまで説明することもないだろう。
「とにかく私とアンリエッタ姫の仲の事を警戒する必要は無いってことさ。アルビオンの王族として殿下が他国同士の関係の強化を警戒するのは当然だとは思うがね」
最後に持ち上げてあげておいてっと。これでウェールズの俺への警戒も無くなったことだろう。
さて、そろそろお暇させて貰いたいん――
「と、ということはだ。アンリエッタが他国の王族と結婚する可能性もないという事かい? トリステインの有力貴族が反対すると言うのなら」
……誰か代わってくれよ orz
「ストレートでは難しいだろうな。搦め手を使えばあるいは」
「搦め手? それはどんな?」
しらねぇよ。俺だってマチルダさんをどうやって落とすか悩んでる所だってのに。
……もういいか。適当で。
「そうだな。……他国への婿入り、あるいは嫁入りというのが、一種の人質のような役割を果たすと言ったが」
「ああ」
「逆にとらえれば、他国に自国の位の高い人間を差し出すと言うのは、信頼を示すことでもある」
「人質が信頼を?」
「ああ。例えば、だ。アルビオンの爵位の高い貴族がトリステインの貴族に婿入りする。それはつまり、トリステインならばアルビオンの人間を無下には扱わないだろうという信頼からの行為とも取れるわけだ」
「ふむふむ」
「まぁしかし、一方からの貴族の供出は、いくら信頼が成り立っていたとしても人質でしかない。だが、これを相互に行った場合、一種の同盟のような関係を作れるだろう」
「同盟?」
「なにせ両国が自国の人間を預け合うんだ。トリステインが、そうだな、仮にゲルマニアに攻め込まれたとしよう。アルビオンはトリステインに預けられた『自国の貴族』を救うためという大義名分で、実質トリステインを救うために兵を出すこともできるようになる。アルビオンにいる人間には、アルビオン王家はたとえ他国に行った貴族だとしてもないがしろにはしない、という信頼を与えることが出来るだろう。逆もまたしかり、だ。国家間の関係は密になり、他国への牽制にもなる」
「それは……なんというか……」
良いことずくめに見えるだろう? 良いことだけをピックアップして話しているからな。あえて『穴』まで説明はせんよ。ウケケ
それにしても目を輝かせちゃってまぁ。陰謀は初めてかい、ボウヤ?
「まぁ搦め手、と言われて今思い付いただけの策ではあるがな。これを使えばアンリエッタ姫をアルビオンに迎えることも可能だろう。アルビオンの公爵クラスの人間をトリステイン貴族の『お相手』として差し出す必要もあるだろうが」
いっそトリステインの迎える側の貴族としてカトレアさんでも推薦してやろうか?
「……これが今思い付いただけの策。確かに父上が君を褒めるわけだ」
……つか感心しすぎじゃね? あえて『穴』については説明しなかったんだが、ある程度釘をさしとかないと暴走しかねないな、これは。
「一応言っておくが、安易に実行しようとはするなよ? 始祖の血を引く三王家の内、二王家が手を組もうとすれば横やりが入るのは必至だ」
「ゲルマニアかい?」
「……ま、そんな所だ」
実際ウェールズに暴走されたらガリアも動くだろうけどね。
アルビオンとトリステインが手を組んだ所でガリアの敵ではないし、いずれ
「この策を実行するには障害も多い。しかしそれを乗り越えた先に待ってるモノが大きいことも確かだ。アルビオンにとっても、そしてガリアにとってもね。まぁまだ殿下もアンリエッタ姫も若いのだし、これから計画を煮詰めていけばいいだろう。私でよければ協力させて貰うつもりであるしな」
「お、おお。万の味方を得たような気分だよ。父上の言っていたことは本当だった。君と友誼を結ぶことは、私に大きな力を与えてくれるだろうと。是非とも友と呼ばせてくれないか?」
友、ねぇ。
アリっちゃアリか。
これでアルビオンとトリステインとの同盟が成ったとしてもガリアも一枚噛める。
なにより次期アルビオン国王との繋がりが出来たことが大きいしね。
ま、仲好くさせて貰いましょうか。ウケケケケ
「あ! 何度も言ったがアンリエッタのことは違うからな!」
それはもういいっての。
まさか続きを書くはめになろうとは そんな37話 当初はキンクリする予定だったもの
ちょっとクーを腹黒くしすぎましたかね?
ウェールズは結局クーの二歳年上ということにしました
園遊会でアンリエッタの水浴びを覗いていたということからあまり年齢差があっても、となりまして
にしても何故恋バナが陰謀話になってしまうのか
男二人でキャイキャイ話す姿なんて書く気が湧きませんが