さてさて、ウェールズ君の恋愛相談から一日空けて、ようやくモード大公家へと行けることになりました。クーです。
いやー、一昨日は大変でしたね。ウェールズ君ったらはしゃいじゃってまぁ。
友達いなかったんですかねw まぁ俺も人の事はあまり言えんけどさ。
ウェールズは一人っ子ということで、ガリアのように王位継承者争いなんてものもないんでしょうが、一方腹を割って話せる相手というのもいないんでしょう。
こっちがロンディニウムで散策している所を目撃されなければならないという仕事を持ってなかったら、おそらく引きとめられていたことでしょう。実際お暇を申し出にくいったらなかったですし。
執事のバリーさんなんか微笑ましそうに見つめてましたよ。
なんかアルビオンでの俺の評価が上がりすぎてる様な気もしますが、別に損をするわけでもないですし、いいでしょう。厄介事が上がった時の相談相手にされそうな気もしますが、俺がある程度アルビオンを操れるというのなら、寧ろ願ったり叶ったりといったところですしね。
俺やガリアの平穏のためとはいえ、アルビオンのためにもなるでしょうから勘弁して貰いましょう。
というわけで戻って参りました。シティ・オブ・サウスゴータ。
モード大公家もこちらにあります。ちなみに密偵からの情報ではエルフが大公邸にいるのは確定っぽいです。
というのも食糧だとか衣類だとか、大公邸に運び込まれえるモノの量がおかしいとか。
特に子供服の受注が商人に対してされていたなんて聞いた時は、もうちょい気を配れよと突っ込みたくなりましたが。
地球産のストーカー術の持ち主ならゴミを漁ることで家人の行動まで予測できるそうですが、ハルケギニアにそこまでの猛者はいないと信じましょう。
それと何故サウスゴータに来た当初はモード大公家ではなくサウスゴータ家にお世話になったかというと、国王に挨拶する前に大公家に直接赴くとアルビオン貴族にあらぬ誤解をさせるから、だそうで。
ま、俺としてもモード大公にアルビオン貴族の目が行くのは避けたかったし、アルビオン王家側からのこの要請はありがたかったんですがね。
おかげでマチルダさんとも会えましたし。
……嗚呼、会いたいねぇ。これが一目惚れというものか。
おっと失礼。プライベートを気にして仕事が疎かになったんじゃ、ただのアホと変わりないしね。
ええ。ようやく本命の『お仕事』です。
マチルダさんを通してサウスゴーダ家に俺という後ろ盾が付けば、おそらく内乱に繋がるモード大公派の処刑は回避できると思うんですが、期待と予測は違いますしね。当初の予定通りきっちり釘をさしておかなければと思ってます。
とはいえアルビオンに来る前はエルフ親子を俺の監視下に置かなければ安心できないと思っていたくらいですし、ハードルが下がっていることは確かなんですが。
ま、油断せずに行きましょう。
と、そんなこんなしているうちに、到着しました。モード大公邸。
「お久しぶりです、モード大公」
「ああ。シャルル陛下の継承式典以来だが、健勝なようでなによりだね」
ちなみに今はモード大公と差し向かいでワインを頂いてます。
サウスゴータ家で催された歓待パーティーのようなものはされてません。
モード大公家には数日滞在する予定ですので、おそらく今日くらいはゆっくりと、という配慮がなされたんでしょう。
正直ありがたいよね。毎度毎度貴族の相手をしてるのも疲れるし。
「此度の君の『仕事』に関しては私も聞き及んでいる。君もその若さで大変だろうが、せめて我が屋敷にいる時くらいは羽を伸ばしてくれたまえ」
「お言葉に甘えさせて頂きます。モード大公」
ニコニコと人の良さを表わすような笑みを浮かべるモード大公にほほ笑んで応対する。
正直原作でほとんど描写のなかったモード大公の人となりは予想が付かなかったんだが。
うん。『いい人』って感じだね。
まぁ打算で動くような人間ならそもそもエルフを匿ったりはしないだろうし、その上エルフを愛人に、さらには王命を無視してまで守ろうなんて思わないんだろうが。
こういう主君だからこそ、サウスゴータ家もモード大公が投獄された時にエルフを守ろうとしたんだろう。
たとえ主の愛人だったとしても、エルフを守るなんて異端審問をされかねないほど危ない橋を渡るなんてのは、そうそうの忠誠心じゃ無理な話だろうし。
……人望、ありそうだねぇ。
…………こいつぁマズイよねぇ。
モード大公が理由も無しに投獄されれば、多数の貴族が反感を持つのは必至だろう。
そうなれば予測していた『最悪』。すなわちアルビオンが王党派と大公派に分かれて内戦ってのも、あながち『最悪』ではなく『当然』の未来になってしまうかもね。
は? ガリアは関係ないだろうって? アホ言いなさんな。
国が二つに分かれて戦争おっぱじめるってんだよ? とんでもない数の難民が
さらには敗者側の貴族も問題だ。
連中は魔法っていう戦争で使える兵器を手にしてるんだぜ?
その上そいつらは平民は貴族に搾取されて当たり前。無礼討ちも許されて当然なんて考え方だ。
そんな連中が爵位を取り上げられ、日々の糧を手に入れる手段を失えばどうなるか。
ま、平民から奪ってしまえと考えるだろうね。
内戦に負けて国を追われたならば、当然の様に他国の平民からとなるだろう。
さて、泥棒だの強盗だのって連中は、どんな人間を標的にすると思う?
正解は、より多くの蓄えを持ってる奴だ。
ガリアといえども領主の中には平民のために力を割けるかなんて言う奴もいる。平民ならいくら被害にあってもいいなんて考えている奴だっているかもしれない。となればゲリラ的に発生する『戦争帰りの腕利きメイジ』らの強盗をガリアから一掃するのも容易ではないだろう。
先の先まで読むのなら、アルビオンの内戦の回避は、ガリアにとっても非常に重要度の高い案件なんだよ。
何事もなく平穏に、が遠いよねぇ。
ま、色々と悩んだけど、やっぱりアルビオンに来ておいて良かったわ。
さて、となるとこの『いい人』にエルフを匿うなんて裏事のイロハを叩きこまなきゃならん訳だが。
はてさて、一体どこで切りだそうかね。
向こうから切っ掛けがやって来るのを期待するには、時間が足りないだろうしねぇ。
ちらほらと出ていたアルビオン行きが無理矢理じゃないのか?という声が常々気になってたので、この機会にちょっと詳しくクーの危機感を表に出させてみました(おかげでモード大公の影の薄いこと薄いこと)
正直隣国の内戦だから傍観してれば?なんてレベルじゃないと思うわけです
現代で言えば、弾丸を無制限に使えるライフル持った兵隊が、それも市民=家畜と考える連中が押し寄せてくるのと同じわけですから
軍で来るなら軍で対抗もできるでしょうが、賊として散らばってヒャッハーされるとなると
クーが介入する理由として十分だと思ってたんですが……むーん