メシがマズイんだが。
おっといきなりすぎましたね。ちっす。クーです。
ただいまシティオブサウスゴータのとあるカッフェで食事中です。
は? マチルダさんとデート?
んなわけねぇだろ!
……んなわけ……ねぇだろぉがよぉ。
おっと失礼。どうにも異国の地でマズイ飯を食べているとなると、ナーバスになっていけませんね。
いやぁ、そうなんですわ。マズイんですわ。飯。
ハルケギニアを地球に当てはめると、アルビオンは英国の位置にありますしね。ある程度は予期していたことではあるんですが。
いやぁ、ホント。ありえんぜ?
まぁ考えてみればお空の上をプカプカ浮いてる大陸ですし、海産資源なんて当然取れません。
さらにはアルビオンの高度。
これ、アルビオン大陸の下半分を雲が覆っていることから分かるかもですが、雲よりも高い所を飛んでるんですよね、この島。
そりゃ雨も降りにくいことでしょう。
水源はあるはずですが、それだけで農作まで賄えるはずもなく。
結果、
「芋ェ……」
芋イモおいもぉな芋づくし!
このままじゃ芋が夢に出てきかねない。マジで震えてきやがった……。
サウスゴータ家やモード大公家のような他所からの輸入食材をふんだんに使えるならともかく、平民の食卓なんかはさぞ深い悲しみに包まれていることでしょう。
アルビオンの立地上、輸入は全てフネによる空輸ですからね。追撃の風石費用でさらに食料価格は加速ッ! ガリアに生まれて良かったと純粋に思えるのもどこもおかしくは無いはず。
「クー殿。午後の予定はいかがいたしましょうか?」
「ん。そうだな。東街に足を向けてみるか」
サウスゴータはシティオブサウスゴータを中心に、五芒星型に大通りが走ってまして、ちょうどそのうちの一つに面したカフェにいましたからね。
トリステインの王都であるトリスタニアなんかよりよっぽど大きな街ですし、ぶらぶらするのもいいでしょう。
と、そろそろ説明をしておきますか。
モード大公邸に滞在していた俺ですが、すぐにエルフと出くわせるわけもありません。というかそんな簡単に事が運んだら、むしろ怖いです。
だからといって直接モード大公にエルフ云々の話を切り出すのも結構マズイんですよ。
マチルダさんのこともありますが、今後もモード大公との仲が険悪になるのは避けたい。むしろ俺がモード大公のバックに付いているとアルビオン王家に認識してもらうために、懇意にしていきたいくらいですし。
そうなるといきなりウィークポイントに言及するのはマズイでしょう。
こちらの意図はどうあれ、『貴族』という連中の中で生きてきたモード大公ならば、俺が弱みに付け込もうとしているんじゃないか? と思っても当然。
俺が『厚意』からエルフを妾にしているモード大公の手助けをする。それが理想的なシチュエーションであり、モード大公にはそう認識してもらいたいんです。
こちらの意図はどうあれ、ね。
そんなわけでこちらからアクションを取るのは出来れば避けたい。
つまりは俺が動くためにはリアクションを取れるだけの状況を起こせばいい。
と、いうわけで現在動いて貰ってます。
精霊サマに。
「クーよ。見つけたぞ。地下だ」
おっと、噂をすればって感じですか。屋敷を水滴ほどの小ささで動き回っているはずの精霊サマからの通信ですね。
カフェで頂いている紅茶から出来た精霊サマが教えてくれました。
これも意識を共有したまま分裂できる水の精霊サマだからこその技でしょう。
そのうち精霊本体とネットワークでつながった水の精霊、略してミセレが00001号から20000号まで作られたりなんかしてね。ミセレネットワーク。電気ではなく水を使う能力者集団ですが、領地の治安維持なんかには非常に有用そうですけど。
ま、それは置いておいて、周囲の護衛騎士に目線を飛ばします。さりげなく俺とティーカップを視線から守らせます。
同時にサイレント。これで俺と精霊サマの会話は騎士連中にも伝わりません。
ロンディニウムを離れる際、護衛の騎士にはジョゼフ宰相閣下からの別命があったと説明しています。祖国からの密命に関する話とくれば、彼らは自ら耳をふさいでくれるので安心です。
「へぇ。昨日見て回った時には地下への道なんて見当たらなかったけどね」
「壁の一部が動くようになっていたぞ?」
「なるほど。マジックアイテムかなにかで開閉する隠し通路ってところか。それなりに隠そうとはしているってことね」
少し安心。ま、それくらいはしておいて貰わないと困るんだけど。
「風の精霊共ならば気付いただろうがな」
「あー。風の精霊ちゃんたちはあまり動かしたくないんだよ。俺が付き合いのある精霊は水の精霊サマだけってことになってるからね。俺の周囲の風の動きが不自然だと、ウチの騎士なら気付きかねない」
もう秘密にしておく意味も薄いんだけど、一応、ね。
身内に明かすにしても、一応ジョゼフ兄やシャルル兄に相談してからの方がいいだろうし。
「で、我はどうする?」
「ふむ」
ここで重要になって来るのはどこをボーダーだと考えるか、だ。
俺がリアクションを取るためには、ある程度モード大公には混乱して貰った方がやりやすい。
モード大公に混乱して貰い、小さなポカをして貰う。俺にエルフの存在がバレ、精神的に追い詰められたモード大公が覚悟を決めるかという段に突入した所で、颯爽と俺が解決策を示す。精神的などん底から救い出したということで俺への信頼感は増すだろうし、今後アルビオンに食い込みやすくもなる。うむ。完璧だ。
しかし混乱が大きすぎてはダメだ。俺にバレるくらいのポカでいいのに、アルビオン王家側まで伝わる大ポカをやらかされてしまえば、一気に窮地に陥ってしまうだろう。
さて、どこをボーダーとし、水の精霊サマにどの程度の接触をさせれば適度な混乱を引き起こせるか。
とりあえずは……
「む。マズイ」
「どうかした? 精霊サマ?」
「うむ。我の分身だが、」
なんだか嫌な予感がするんだが。
「どうやら捕えられたようだな。さすがはエルフ、といったところか」
……
…………
………………マジで!?
色々マズイ そんな40話 マズイ味
作者は芋は好きです
煮て良し、焼いて良し、蒸して良し、揚げて良し、茹でて良し
甘辛く煮付けたトロトロのじゃが。最高だと思います
・・・なんかお腹減って来た
コンビニでじゃが○こでも買ってきますか