「素手で壁を……ですか?」
「ええ。まったく、誰に似たのやら」
いやぁ、少なくとも貴方の旦那さん似じゃないと思いますが?
ま、そんなことは口には出さないけどね。
つか何が起こってるのよ? オーガの血でも目覚めたか?
「まぁあの子が健康であってくれるというのなら、それ以上言うつもりもないのですが」
「そ、そうですね。それだけ元気があると言うのなら、心配など必要ないでしょうし」
ちょっと気になってたりしてたからね。カトレアさんに関しては。
水の精霊サマを信用してないわけじゃないけど、かな~り大雑把な治療だったっぽいし。
ぶっちゃけ本当に完治しているのかとか、再発しないのかとか、後遺症が残らないのかとか、気にはなってたんだよね。
ま、どうやら無用な心配だったようだけど。
あの『烈風』を疲れさせることが出来るくらいなら、病気なんて気にするだけ無駄だろうしね。HAHAHA。
……まぁどういうわけかチート化してるっぽいけど、病気とは無縁になれそうだし、よかったんじゃないでしょうかね。
…………今すぐ地の果てまで逃げなきゃならんような気もしているけどさ。
「ところで、話は変わりますが」
「はい。なんでしょうか」
「オルレアン公はカトレアをどうお思いで?」
変わってないよ。全然話が変わってないよーぃ。
つかなに? ウェールズといいカリーヌさんといい、ハルケギニアの人間は何故まずそっち方面の話題をだすわけ? まぁカリーヌさんとウェールズじゃ質問の意図がまるで違うんだとは思うけどさ。
それで……これはどっちだろうね。
素直に何とも思ってない事を明かしていいのかどうか。さすがにガリアの公爵相手に娘を押し付けてくるとは思えんが……。
まぁどんな目が出るにしても、ここで出来る返答は一つっきりなんだけど。
「私にとってのカトレア嬢は、あくまで隣国の公爵家の御令嬢です。個人的な感情は抱いておりません。カトレア嬢にはもっといいお相手が見つかることでしょう」
……ぶ、無礼すぎたかな? どうかな? 怒っちゃやーよ?
でもここで退くわけにはいかんのよなぁ。カトレアさんは嫌いじゃないんだけど、今の俺には嫁(予定)がいるわけだし。
マチルダさんを裏切ることが出来ない以上、八方美人ではいられない! ガツン……は無理でもはっきり断っておかねばね。
そんな感じで勇気を振り絞って答えたのだが、予期していた殺気とかがやってこない。てっきり『カトレアいらん』『なら殺す』くらいの応酬になるんじゃないかと覚悟していたんだけど。
しかし予想とは違い、何故かカリーヌさんはどこかホッとした様子。ホント、予想外の表情ばかり見せますなぁ。ギャップ萌えでも狙ってるんだろうか?
「そうですか。少し安心しました」
「安心ですか?」
「はっ。いえ、申し訳ありません。オルレアン公が不満というわけでは決してなく」
「ああ、気になさらずとも結構です。ただ少し意外だったもので」
あの質問、『カトレアをどう思っているか?』は、ウチの娘に文句あるんかい?的な意図からの言葉だとばかり思っていたのに。
「カトレア嬢を刺激しないようにと言っていたので、てっきりくっつけようと画策されているのかと思いましたよ」
肩を竦めておどけて見せる。『コミュ力』も使ってなるべくフレンドリーに。
ちょっと興味湧いて来たしね。事情とやらを教えて貰いましょうか。
「……現在カトレアのフォンティーヌ子爵位を返上し、ヴァリエール公爵家に戻そうとしているのはご存知でしょうか?」
「ええ。オルレアンに封じられた際、モンモランシ伯爵家より聞き及んでますが」
「……恥ずかしながらヴァリエール家の存続にはあの子は不可欠でして」
……あぁ~。他の姉妹では婿が取れんからか。どっちも苛烈なツンデレ様だし。
「あの子の幸せを第一に考えるのは母親として当然のことですが、一方でカトレアにはトリステインの貴族から婿を取り、ヴァリエール家を安泰させて貰いたいと思っているのです」
なるほどねぇ。なんていうか、大変ですなぁ。
ガリアの
刺激するなってのも他の女に手を出すなって意味じゃないっぽいね。どっちかってぇと、カトレアに気付かれないうちに婚約なりしてしまってくれと思われてるのかも。他国に知られるレベルで大々的に『嫁探し』なんてされるのは困るってわけか。
直情径行の人かと思ってたけど、一応考えてるのね。旦那さんからの入れ知恵かも知らんけど。
「ふむ。納得行きました。私としてもヴァリエール家との繋がりは大事にしていきたいですし。そのヴァリエール家の存続とやらがかかっているというのなら、以降は善処しましょう」
うん。この『旅行』から帰った後にまた『嫁探し旅行』をさせられることは無いとは思うけど、カトレアさんを刺激するのはマズそうってのは十二分に理解したしね。気をつけましょう。
と、そろそろいいかな?
さすがに現れたばかりのカリーヌさんを放っておく事は出来なかったからカフェに残ってお話に付き合っていたわけだけど、現在俺にはエルフをなんとかせねばならんという大事な仕事がある。
モード大公が動く=ポカをやらかされる可能性が高まるという図式がある以上、出来ればモード大公が動く前に押さえてしまいたい。
というわけで、お暇させて貰いましょう。
「カリーヌ殿。叶うことならばこの後もご一緒したかったのですが、私はモード大公に用事がありまして。申し訳ないがこの辺で失礼させて貰います」
そう言って立ち上がったわけだが。
……何故にカリーヌさんまで立ってらっしゃる?
「奇遇ですね、オルレアン公。私もモード大公邸に行かねばならないのですよ」
はいぃ?
「トリステインとアルビオンの仲はそれなりに良好とはいえ、公爵家の人間がその地の領主に挨拶も無しに、というわけにもいかないでしょう。主人であるヴァリエールが既にモード大公に挨拶に向かっているはずです」
そそそそそれを先に言ってくれませんかねねねねね!?
やべぇ。やっべぇよこれ!
頼むから早まってくれるなよ、モード大公。
嗚呼、何故に当初の計画からガンガン外れて行くんだろうか。
ここまで来て御破算だけは、勘弁してくれよ?
本作は素人の思い付きで構成されています
なのでこうしたほうがいいんじゃ?なんて思い付いたら話の展開が変わることも日常茶飯事なわけで
つまり何が言いたいかというと
矛盾点があるかもですが、どうか勘弁して下さい!orz
つかカトレアさんって人気ないのか?