転生?チート?勘弁してくれ……   作:2Pカラー

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48.ただいま

 

 ナマステ! クーでっす!

 ようやく帰ってこれましたね。ガリアに。我がオルレアンに!

 いやぁ密度の濃い日々でした。アルビオン旅行。

 ホント、へとへとです。

 マイハウス(という名のキャッスル)にはもうしばらくかかりそうですが、つい先ほどモンモランシ領からオルレアン領に入りましたし、のんびり景色でも眺めながら馬車に揺られるとしましょう。

 やっぱ故郷は良いですな。なんといいますか、空気の匂いが違う気さえします。

 ほんの数年前にはガリア=常に死亡フラグを警戒しなきゃならん国って印象だったってのね。今じゃ安心出来るふるさとですから。わからんもんです。

 そ・し・て。にゃふふふふ

 なんと現在馬車に乗っているのは俺だけじゃなかったりします。

 例の『モード大公よ。エルフがバレてしまうとは情けない』な事件の後、かくかくしかじかありまして、結局ガリアに連れ帰ることに成功しました。

 ええ。ラブリーマイエンジェルまちるだたん。

 ……そしてティファニアも何故か一緒に。

 …………何故にっ!?

 

「わぁ。大きな池ですね。これが海ですか?」

 

「テファ。ここが湖よ。ラグドリアン湖。シャジャル様から聞いてなかったかしら?」

 

「あ! お母様も言ってました。水の精霊様が住んでいるんですよね!」

 

 チッ。はしゃぎやがって。小娘が。

 おっと失礼。無邪気な姑娘(クーニャン)に暴言はいけませんな。

 ……いや、俺だってね、別にテファ嬢が嫌いってわけじゃないんだよ。

 たださ、この数日。

 

『マ、ママママチルダしゃん!! あああああののの!』

 

『あ、クーさん。すいません、これからティファニアと約束がありまして。あの子ったら耳を隠せるようになって外に出れるようになったのが嬉しいみたいで、今日もこれからサウスゴータを散歩したいと。フフッ』

 

 とか、

 

『ママママチルダさん! どうでしょう? 一緒にワインでも』

 

『申し訳ありません、クーさん。ティファニアをお風呂に入れてあげるようシャジャル様より言われていまして』

 

 とか、

 

『マチルダさーん! 今晩』

 

『ごめんなさい。テファがもう眠いらしく。モード大公より今夜は一緒に寝てあげるようにと』

 

 ……ガッデム!!

 

 と、まぁお邪魔なわけですわ。マ・ジ・で!! 邪魔!!

 折角マチルダさんと一緒にいられるというのに、全然いい雰囲気にならへんねや!

 俺としては『前世』も考えればぶっちゃけいい年なわけですから、そりゃR-15をすっとばしてピンキーエアーゾーンなイベントにも突入したいわけなんです。

 だというのに今目の前ではしゃぐ小娘のせいでっ。

 あのハグハグギュー以来、手すら繋げていないとは何事か!

 あームラムラしてきた。あ、間違えた。ムカムカしてきた。

 ……いや、間違えてないな。ムラムラして来たー。

 

「あの、クーさん?」

 

 とはマチルダさん。

 お? まさか俺の心情を察知したというのか? さすがは我が嫁!

 と、思ったが、まぁ常識的に考えてそんなわけは無く、

 

「やはりテファも一緒というのは迷惑でしたでしょうか?」

 

「……いや、そんなことはないよ」

 

 そう言うしかないじゃない! 面と向かって『お前の妹、邪魔アル』なんて言える奴がいたら連れてこい。

 

「俺としてもモード大公の懸念はもっともだと思う。ティファニア嬢をオルレアンにという申し出に異論があるわけじゃないよ」

 

 モード大公の懸念。そいつのせいで現在テファは俺たちと同行しているわけである。

 さて、それではそろそろそいつについて説明しておこうか。

 

 エルフであるシャジャルを『平民の妾』とするのが、今後アルビオンに内乱を発生させないための俺たちの策だった。

 しかし、その策を採用すれば、同時に厄介な問題も浮上することになる。

 そいつがティファニア。『始祖の血を引くモード大公の子』の存在である。

『平民の妾の子』。大公家を継ぐには問題のある身分であり、本来ならば庶子として扱われるのだろうが、しかしモード大公家にはティファニア以外の子供がいない。平民の子であったとしても、ティファニアが唯一の大公の血筋の者だとなれば、当然彼女が大公家の跡取りとなるだろう。

 そうなれば、フェイスチェンジという見た目のみを変える魔法は逆に窮地を招くだろうというのがモード大公の懸念だった。

 なにせモード大公曰く『テファはめちゃ可愛い』らしいから、『アルビオン貴族のガキ共から求婚されまくるんじゃね?』という予測が成り立つらしい。

 何も知らないアルビオン貴族とウチのテファとの間に子供が出来たら……。そう言った時のモード大公は般若の様な形相だったが、まぁ言いたいことは分かる。

 クォーターエルフ。その子の見た目から『テファがエルフの血を引いていた』とバレる可能性は十分あるというわけだ。

 となればテファを大公家唯一の血筋の者と知らしめるのはマズイ。

 ゆえにモード大公は一つの決断を下すことになった。

 

 すなわち、ティファニアに大公家とは無縁の人生を歩ませる。

 

 その結果がティファニアを、彼女が姉と慕うマチルダに同行させるということ。当然出自は隠し、マチルダさん付きの使用人とでもするつもりだ。

 甚だ利用されているという感が強いがね。

 

「まぁガリアは貴族よりも王家の影響力の方が強い。フェイスチェンジもあるし、俺の身内にディテクトマジックをかけようとする馬鹿もいないだろう。安心して貰っていいよ」

 

 そして俺がティファニアを匿っている間にモード大公は養子を取るらしい。

 アルビオンの魔法学院。ロンディニウム魔法学院にて優秀な成績を収めている者の中から大公家に相応しい者を選別し、万一に備え有力貴族らとの繋がりも強めるとか。

 大公家に滞在していたヴァリエール公爵と、養子を二人以上取り、一人をヴァリエールに婿に出すのなんてどうだなんて話し合ってもいた。

 エレオノールさんのツンドラアタックに耐えられる人材でないと、いろいろ御破算になりそうだし、多数の選択肢の中から選んだ優秀な人間を『大公家の人間』として迎えられるというのなら、モード大公家の現状は幸先良かったのかもしれんね。

 

「オルレアンに居る間は安全を保障しよう。国境守護ということで手練も多い」

 

 ロマリアに侵入されるほどやわな体制を敷いているわけでもない。

 

「窮屈な思いはさせないはずだ。年に二度くらいはアルビオンに旅行に行くこともできるだろうしね」

 

「何から何まですいません」

 

「すいませんじゃなく、ありがとうと言って貰いたいね」

 

「クーさん」

 

 おぉ、いい雰囲気じゃね?

 

「さんづけは止めてくれ。リュティスで兄上たちに紹介したら、俺たちは正式に婚約するんだから」

 

「クー……」

 

「マチルダ……」

 

 チャ、チャンスだよな? この勢いのまま上手くいけば、せせせ接ぷ「ああーーー!!」

 

「お城! お城ですよ、マチルダ姉さん!」

 

 ティファニアの声でハッとなったマチルダさんに目を逸らされ……。

 

 ぐぬぬ。このちんくしゃめが!

 

 ……はぁ。

 

 思っていたのとは別ベクトルで厄介なモノを押し付けられたのかなぁ。

 

 まったく。勘弁してくれ。

 





一週間も何も書かないでいると文が崩れますな
どうも上手く嵌まっていない様な気がしなくもなかったり

マチルダさんについて説明不足の感はありますが、その辺は追々
次回からはジョゼットちゃん編になります
アルビオン編ほど長くはならないかと
今後もどうかよろしくお付き合いください

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