一歳の誕生日から数カ月がたちました。どもども、クーです。
今日もあのセリフからいってみましょーかねー。
はい。皆さんもご一緒にー。
勘弁してくれー!
事の発端はいつものように親父殿。
ついに、ついに兄と顔を合わせることに。
いや、本来ならもうちょい早くに会ってたはずなんだけど。
「さぁパパとグラントロワ行こうかー」
「やー(フルフル、ギュー)」
「そ、そうだなー。今日はママと三人で過ごそうなー」
「なー(にぱー)」
と、まぁこんな感じで拒否っていたら毎度毎度お流れになってくれてたんだよね。
問題の先送りにしかなってないよなーなんて思いながらも、いっそ五十年後くらいまで先送れないかなーとか思ってたんだけど。
しかし現実は無情である。二人の兄上が早々にしびれを切らし、向こうから出向くというじゃありませんか。
父上からその旨を聞いた時には思わずげんなりしたね。
わざわざ親父の愛人の家に出向くという二人の王子様(髭)にも呆れたけど、父上も拒否できなかったのかとね。
まぁ決まってしまったことは仕方ない。なるべく凡愚に見られるようアホ面下げていよう。王位継承者争いになんてまるで参加できるように見えなければ、お兄たまたちも俺への興味を失くしてくれるだろうしね。
と、思ってたのにね。どうしてこうなった。
「ふむ。不思議な瞳をしているな。我が弟よ」
「あー?」
あ……ありのまま今起こった事を話すぜ!
『俺は兄の前でアホのふりをしていたと思ったら、いつの間にか顔を覗きこまれていた』
な……何を言っているのかわからねーと思うが、俺もどうしてこうなったのかわからなかった……
頭がどうにかなりそうだった……虚無の担い手だとか未来の狂王だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……
「兄上は随分セタンタが気になってる様ですね」
とは家に来てからずっとニコニコしている下の兄、シャルルの言葉。
「ああ。畏れ多くも始祖に名付けられた我らの弟だぞ? シャルルは気にならんのか?」
「気にならないと言えば嘘になりますが、私としては初めて出来た弟に対しての感情の方が強いのでしょう」
「ふむ。教会の連中が大騒ぎする「光の御子」も、我らにとっては一人の弟、クー・セタンタ、と言うことか」
……ん? ジョゼフ兄様の言葉に聞き流してはならない言葉があったような。
くそ。未だしゃべれない凡人を装っているせいで聞き返すことも出来ない。俺の平穏を揺るがす危険ワードな気がするのに。
「にしても兄上がセタンタのことをそこまで気にかけているとは思いませんでしたよ。神託事件の折も、司教はただ夢を見ただけ。実際にセタンタがいたことを知っても、ただ偶然が重なっただけ。なんて不敬なことを言ってませんでしたか?」
「クックック。確かにそう思っていたさ。だがな、シャルルよ。セタンタの瞳を見てみろ。これを見てしまえば神託とやらも司教の妄言ではなかったと理解出来るさ」
「へぇ。兄上にそこまで言わせますか」
そう言ってシャルル兄様もしゃがみこんで俺に目を合わせてくる。
いや、そんなイケメン二人に見つめられても///モゲロとしか思えへんよぅ///
「不思議な色合いですね。吸い寄せられるように深い色でありながら、自ら輝く力強さもある。ガリア王家には珍しい赤い瞳だというだけではない、何かを感じさせますね」
ん?
「あかー?」
思わず尋ねていた。だってただでさえ王家なんかに生まれたり神託事件があったりしたのに、そのうえダメオシ? 目の前の兄二人も、そして父も瞳の色は青だった。俺だけの赤眼と言う特異性なんて目立ちポイントは勘弁願いたい。
言葉を返されたシャルル兄様はそれが嬉しかったのか、
「そうだよ、セタンタ。セタンタの目は赤くてとても綺麗なんだよ」
そう言ってわざわざ使用人に鏡を持って来るよう命じてくれた。
ありがたい。自分でも確認しておきたかったからね。
で、使用人さんが鏡をもってきてくれたんだけど、
一目見て、
うん。ちょっと落ち着こうか。
眉間を揉んだりしたかったが二人の兄の前でもあるし自重して、もう一度見て、
うん。クー、貴方疲れてるのよ。
……うん。うんうんうん。一つずつ整理して行こうか。
「前世」の記憶がある身としては信じられないほど小さな体。これはまあいい。
「前世」ではありえなかった青い髪。これもまあいい。
「前世」でならアルビノと呼ばれるかもしれない赤い瞳。これだっていいさ。
でもさ。
「前世」のとあるゲームで見たキャラを、ショタを通り越してベイビーサイズにまで縮めたようなのが鏡越しにこっち見てるってのはどうよ?
青い髪。赤い瞳。間抜け面をしてみてもなんとなく分かってしまう目つきの鋭さ。
どう見ても某蒼い槍兵ショタver.です。ありがとうございました。
てか、クーてクー・フーリンのことかよぉぉぉぉぉぉ!?
アイルランドの光の御子ぉぉぉぉぉぉ!!?
「ん? どうしたクー・セタンタよ?」
なんてジョゼフ兄様が尋ねてくるが、正直それどころじゃなかった。
ガチンガチンと歯車がかみ合い、俺のネガティブ思考が高速回転し始めてしまったのだから。
俺の名前がクー・フーリンから取られていることと、俺の見た目が型月におけるクー・フーリンに似ていること。それぞれ独立して見れば大したことじゃあないんだよ。
問題はそれらの事柄が関連していた時だ。
髪の色は父からの遺伝だし、瞳の色も母方の遺伝と考えられるかもしれない(母の瞳はブラウン)。
しかし見た感じ、俺の顔つきと両親の顔つきはほとんど似ていない。
もしかしたら、
俺の顔が
なんせ神さんにチートパワーの代わりとして貰った名前である。御利益はんぱねーなんてものじゃないだろうし、俺が
もしこの予測が合っていた場合、俺は将来的に彼の英霊クー・フーリンのスペックを手に入れてしまうことになる。
ヤバいなんてものじゃない。トリステイン貴族に生まれるだろうと予測していた時とは状況が異なってはいるが、「誕生前」同様、俺の「強さは死亡フラグを招き寄せる」論は変わっちゃいない。
おそらくスクウェアメイジなど余裕で降せるだろうクー・フーリンのスペック。果たして隠し通せるものだろうか。
あぁ、何も出来ない赤ん坊だというのに危険なフラグばかりが乱立してる気がする。
「セタンタ?」
お兄様がた、愚弟はもう限界の様です。
しばらく、不貞寝させてください。
ぽてりこ
俺は横になって目を閉じた。
いつものセリフを頭に浮かべながら。
ホント、もう
勘弁してくれ
あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします
クーがしゃべれない以上しょうがないんですが、一向にコミュ力チートが発動しませんね
なのに厄介事フラグだけが乱立して……
早くこの作品の主眼、舌先無双(えろくない)を発動させたいです