幻想夢物語 〜少年の日々〜   作:わたっふ

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十夢 真実の世界

言葉にできる寂しさは誰かが慰めてくれる。

言葉にできない悲しさは自分で埋めなければならない…

しかし、それを埋めてくれるのが人間なのだろう。

 

 

 

 

 

弾け飛んだ光のベールが、空に吸い込まれるように消えていく。

ベールが囲んであった場所は土が凹んでおり、爆発で悟神とゾルバースたちの姿は跡形もなく消し飛んでいた。

泣いている享奈に駆け寄る夏来たち。

背中をさすって落ち着かせようと、手を伸ばしたしたニッ怪だが「触らないでっ!!」と手で払い除けられた。

ニッ怪) 「……悟神殿を失った悲しみは…十分、我らも分かっておる…じゃがの…いつまでも泣いておるのは、悟神殿が望んだことであろうか?」

その言葉に享奈は涙で濡れた顔を上げ、ニッ怪を見つめる。

享奈) 「でも……でも! ……っ…こんな…ぅっ…もう…悟神様がいないなら…し…死に…」

炎条寺) 「享奈…テメェ…良い加減にしろよ!!」

それでも泣き続ける享奈の前へ行き、右手で胸倉を掴み炎条寺が怒鳴る。

炎条寺) 「あいつは…俺らを…お前を! 助ける為に命を絶ったんだ!! 助けてもらった命を粗末に扱おうとするんじゃねぇよ!!」

炎条寺の言葉に答えたのか、ポタポタと流れていく涙が徐々に少なくなって行く。

涙を我慢し 目を赤くした享奈を見て、炎条寺はゆっくりと手を離す。

黙ったままの享奈に手を差し伸べる炎条寺。

その手を取り、享奈は立ち上がる。

夏来) 「享奈さん、きっと悟神さんも、貴女の今の前向きな姿を見て喜んでいると思います」

夏来の真剣な眼差しが、享奈の心に届き頷く。

 

 

きらーん

 

 

ふと ある物が目に入った幻花が、ベールがあった場所に、光り輝く物が落ちているのを皆んなに伝える。

享奈が駆け出す。

その後を追う夏来たち。

近くに来てよく分かった…これは、あの光のベールの小さな破片だと。

偶然にも、これだけ消えずに残っていた様だ。

享奈は指が切れないように、両手で優しく持ちあげると目を閉じ、そっと胸に当てる。

享奈) 「私、もう泣かないよ……悟神様に心配かけたくない…」

 

 

仙座) 「……ねぇ、その破片どうするの…?」

享奈は悩んだ…考えた…

そして思い出す。

 

 

享奈は本殿へと走って行き、神棚に飾ってあるお守り袋を持って来て、夏来たちに見せる。

仙座・幻花) 「袋…?」

これは悟神が初めて、この神社に来た時に貰った物らしい。

享奈は頷くと、その破片を入れようとする。

が、ニッ怪に止められる。

そのまま入れたら袋が破けてしまうからだ。

ニッ怪) 「仙座殿、丸くしておくれ」

仙座) 「ぁ…うん、 指切りし〜破片を削る〜まん丸く〜」

享奈から預かった破片を仙座に渡し、俳句の能力で凸凹を削り取る。

削り終えた姿は、まるで真珠の様にテカテカと輝いていた。

再度、ニッ怪は破片を受け取り、享奈の持っているお守り袋に入れ 紐を縛る。

享奈はそれを「悟神の形見」として大事そうに抱きしめる。

夏来たちは、その形見で少しでも、享奈の心に光が灯った様な感じがして嬉しかった。

こんな自分たちにもやれる事はあるのだと…

 

 

炎条寺) 「なぁ…ニッ怪」

 

 

ふと、横からニッ怪だけに聞こえる様な、小さな声で囁いてくる炎条寺に 耳を貸すニッ怪。

炎条寺) 「お前って、確か…死神だよな? だったら悟神を生き返す事とか出来ねぇのか…?」

だいぶ笑顔が戻って来た享奈だったが、やはり心の泣き叫ぶ思いを感じたのだろう、炎条寺が苦しそうな顔つきでニッ怪に尋ねる。

だが、ニッ怪は黙ったまま 首を横に振った。

炎条寺) 「そうか…」

炎条寺の言葉が聞こえていたのか、享奈は夏来たちに見せている表情を変える。

享奈) 「……さぁ、早く直そ? 夏祭り近いし♪」

そう笑顔で言った享奈は、見るからに作り笑いとわかる様な、哀しみのある笑顔を夏来たちに見せた………

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから時間が過ぎ、夏来たちが復旧作業を終え、家へ帰ってきたのは午後3時。

お昼も食べないで何処ほっつき歩いていたのか、叔父と叔母に少し怒り気味で言われた。

空が赤くなったりしたのに、それについては聞かないのか…?

もしや、あの光景は悟神が夏来たちだけに見せた幻想?

なんにせよ…闇籠神社前の広場で敵と闘っていた事なんて言えないし、そんなこと信じてもらえないだろう。

だから夏来たちは、ニッ怪と仙座の為に村の案内をしていたと嘘をつき、その場を切り抜けた。

部屋へ行き、その場に座る。

あんな事があったのだ、夏来たちの表情は明るくはなかった。

怒り、哀しみ、様々な想いが夏来たちの頭を駆け巡る……

 

 

叔父) 「失礼するよ」

 

 

ギシギシという音を立てながら歩いて来て、障子の引き戸から顔を出し、夏来たちに呼びかける叔父。

夏来) 「ぁ…叔父さん、どうしました…?」

叔父) 「祭りの準備を始めるんだよ、今から会場に向かうから、夏来君たちも良ければ手伝ってくれないかい?」

そういう叔父の手には玄関の鍵が握りしめられていた。

夏来たちも、祭に参加する身である為、手伝わなければならないのだろう。

気は乗らないが、断る気にもならない。

夏来たちは その誘いを受ける事にした。

 

 

会場へ着くと、そこには夏来たちしか居なかった。

これから続々と人が来る様だ。

先に始めていようと叔父が言い、祭りの準備に取り掛かる。

今日は主に屋台の取り付け作業を行うらしい。

夏来たちは享奈の事が気になりつつも、作業を進める手を休めようとはしなかった。

 

数十分後、ぞろぞろと階段を登り、会場へ足を進める村の人々。

各自、その手には工具箱が握られており、テントらしき布地を2人ずつ肩に乗せている。

叔父) 「よし、じゃあ本格的に始めようか」

 

 

 

カン↑ コーン↓ ガヤガヤ…

 

作業を始めた村の人々の話し声や、釘を打つ音でその場は包まれて居た。

時間が過ぎれば過ぎるほど、会場には次々と屋台が立って行く。

その数、数十屋。

これには初めて来るニッ怪と仙座も、驚きを隠せなかった。

 

 

 

 

叔父) 「さぁ、もう時間も時間だ 飾りつけは明日にしよう、会長さんに話をして来るから、先に帰ってな」

空が夕焼け色になり、カラスの鳴き声があたりに響いて来る時間帯になると、作業を辞めて、帰っていく村の人たち。

夏来たちもその人混みに紛れながら帰っていった、、、

 

 

 

〜その日の夜〜

ニッ怪たちが寝静まった夜中に夏来は1人、外へと飛び出していた。

向かった先は闇籠神社。

享奈の事が気になって仕方がなかったのだ。

階段を登り、鳥居を潜り抜け、縁側へと足を進める。

中を見ると、部屋の中心で此方に背を向け、敷いた布団の上で横になっている享奈がいる。

夏来は少し安心した表情を見せ、腕を腿の間に入れて指と指を絡ませ、縁側に座り 月を眺める。

今日は偶然にも綺麗な満月が顔を出していた。

 

すると、享奈がそっと起き、夏来の背中に抱きついてきた。

突然の事に、夏来は動揺を隠しきれずに居た。

享奈) 「ちょっと…このまま居させて……」

そう言う享奈の声は震えていた。

振り返るとそこに、涙に濡れた享奈の顔がある様な気がして、夏来はただ前を向いていた。

享奈) 「悟神様……」

やはり悟神の死は、享奈の心に大きな穴を開けてしまった様だった……

と同時に、あの時 何もできなかった自分を思い出す。

今になって悔やんでも仕方ないのは分かっている。

だけど…自分を恨む気持ちは変わらない。

 

 

憎い…憎い…憎い憎い憎い憎い憎い!!!

 

 

こんな気持ちになんてなりたくなかった……

けど、そう思わずにはいられない…

実際、仙座のテレポートでベール内に入る事が出来たはず…

それを怠った…しなかった…しようともしなかった!

 

恐れていたからだ…

ゾルバースたち…あの数の前に太刀打ち出来るのか……いいや、出来ない

 

自分たちが死ぬのが怖かった…

誰かがやってくれるだろう、、、

だから自分が死ぬ必要はないんだ

そう…「誰か」がやってくれると信じて疑わなかった。

 

 

その結果がこれだ……

悟神が夏来たちに背を向け、歩いていく姿を見て、、、止めようともしなかった……

このままじゃ確実に悟神は死ぬと分かっていて……っ!

 

 

 

 

 

なんで……

 

 

 

 

 

 

 

なんでだよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでなんだよっ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

享奈) 「夏来君…泣いてるの…?」

 

 

 

 

 

享奈の言葉で、夏来は涙を流している事に気がついた。

目から溢れた涙は静かに落ちて行き、手に優しく当たる。

 

夏来) 「…大丈夫…っ」

涙を拭き、享奈の方に振り返り 言う。

…と 享奈も同様、先ほどまで泣いていたかの様に、赤く潤んだ目をしていた。

 

夏来) 「……ごめん…悟神さんを…守れなくて…」

夏来はその状況に謝らずにはいられなかった。

享奈) 「……いいの…もう…過ぎたことは変えられないし、もしこれが運命なら…私はただ受け入れて、前に進まなきゃならない」

その言葉に夏来は、自然にまた涙が溢れてきた。

見殺しにしたのと変わりない自分に、恨むことなく、これ程までに優しく接してくれるなんて…

享奈) 「顔 上げて」

下を向き、目を閉じながら泣いている夏来を見て享奈が言い、夏来がゆっくりと顔を上げる。

と、夏来の首に両手を回し、胸にそっと寄せる。

享奈) 「もう気にしてないよ…だから泣かないで…? 夏来君が泣いてると…なんだか貰い泣きしちゃいそうだよっ……」

その発言に夏来は、また零れ落ちそうな涙をこらえる。

夏来) 「こんなんじゃ…ダメだよね…もっと…もっと強い人間にならないと…!」

享奈の手が離れると、夏来が力強く そう言った。

その姿を見て享奈は クスッ と笑い、話を続ける。

 

 

享奈) 「私も 夏来君みたいな強い人間になりたいよ、、悟神様が居なくなって…凄く切なくなって………ふっ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「所詮…ここは、夢の世界なのに…」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏来) 「ぇ…?」

享奈がボソッと呟いた その言葉に、夏来は違和感を感じた。

夢の世界…確かにそう言った享奈。

 

夏来) 「夢の世界って…どういうこと…?」

と夏来が問いただす。

すると享奈がこちらを向き、何をおかしな事を言っているんだ? と言わんばかりの顔で夏来を見つめる。

享奈) 「夢の世界は夢の世界だよ…? どうしたの夏来君…」

夏来) 「わ、わからないよ…夢の世界…? な、なんのこと…?」

顎に手を当て、深く悩んでいる享奈は、何かが分かったかのように立ち上がり、縁側に歩を進める。

享奈が夏来と少し距離を開けて座り、月を見ながら話始める。

享奈) 「はぁ…ニッ怪君たちから聞いてなかったんだ……てっきり…もう聞いてるのかと思ってたよ ……この世界はねー」

 

 

その内容に夏来は目を丸くして、驚きの表情を見せた。

無理もない…だって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏来がトラックに轢かれた あの時、死にはしなかったが、意識不明の重体となり病院に運ばれていて、現在も夏来は病院の個室で眠っていると言う。

そして、何らかの脳の誤差動で 夏来の意識だけが この「夢の世界」に飛ばされて居たのだった…




ついに解き明かされた真実!
トラックに轢かれた夏来の意識…魂だけが ニッ怪、悟神らが居るこの世界に迷い込んで居たのだった

次回!
真実を知った夏来は、この先どう動くのかっ!
そしてどうしたら元の世界に戻れるのだろうか…


炎条寺) 「次回も楽しみにな!」
幻花) 「なんか今日…私ら出番少なかったなぁ…」
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