ー翌朝ー
太陽の眩しい光に顔を照らされた夏来は、ゆっくりと目を開ける。
目が覚めたら元の世界に戻れて居るのでは、との思いは夏来には無かった。
起き上がり、左右を確認する。
そこには皆んなの姿は無く、枕元に置いてあった目覚まし時計の針は午前11時を回っていた。
あんな夜遅くまで起きていたから、こんな時間まで寝てしまったのだろう、そう思いながら夏来は布団を畳み、覚束無い足取りで部屋を後にする。
応接間へと続く廊下を進むにつれ、夏来は違和感を感じる。
やけに静かだ。
何時もなら、ニッ怪たちの話し声が聞こえるはず。
だが、それが夏来の耳には聞こえて来ない。
一体如何したのだろうと、応接間へ来た夏来は部屋の中を確認する。
だが誰もいない。
どこに行ったのか、夏来が家中を探して居ると、衣装部屋の中から出て着た叔父と出くわす。
夏来) 「あ、叔父さん おはようございます 皆んな何処にいるんですか?」
叔父) 「おはよう もう皆んな祭り会場に行って作業してるよ」
一瞬だが、元の世界に戻ったのかと思ってしまった自分が居る。
しかし叔父の言葉に、まだ夢から覚めていないのだと確信した夏来は、嬉しい様な…悲しい様な…複雑な気持ちに包まれる。
叔父) 「行ってあげな、みんな待ってるよ」
顔を洗い、着替えを済まし、ニッ怪たちの所へと歩いて向かう。
広場へと続く長い階段を登って行く。
昨晩と打って変わって、太陽の光が木々の隙間から入り込み、少し幻想的な風景となっている。
さらに、長く手入れされて居ない この石階段にはそこら中に苔が生えている為、そう思ってしまうのも無理ないだろう。
一歩一歩進んでいくにつれ、広場からは楽しそうな声が聞こえてくる。
世間話をする大人の声や、騒いでいるであろう子供たちの声。
さらにそれと同時に、焼きそばの良い匂いが漂ってくる。
どうやら お昼として皆んなに振舞っている様だ。
その匂いに釣られて、夏来の足は自然と早歩きとなって居た。
広場へと着くと、休憩所で仮眠を取る人や、木で出来た椅子に腰掛けて焼きそばを食べている人や、鬼ごっこをしている子供やらで賑わって居た。
ニッ怪) 「あ、夏来殿〜!」
全屋台の中心、太鼓台の真下に位置する長細い椅子に座り、夏来を見るなり手を振るニッ怪。
そこには仙座たちの姿も見られる。
人々の間を潜り抜け、なんとかニッ怪たちの元へと辿り着く。
ニッ怪) 「やぁ、夏来殿 遅かったではないか」
夏来) 「寝坊しちゃった」
クスクスと笑う2人の隣で、仙座たちは元気を無くしたかの様に しょぼん… として居る。
ニッ怪から例の事を伝えられたのだろう。
こちらをチラチラと見る目は、少し怯えて居る様に感じられた。
が、そこで話を切り出してくれるのがニッ怪。
ニッ怪) 「夏来殿……改めてこの場で謝罪いたす すまぬ…」
ニッ怪が黙ったままの仙座たちに向かって、「さぁ謝るのじゃ」と意味を込め、軽く頭を下げて言う。
幻花) 「ぁ…あのね…騙す気は無かったの…ごめんなさい…」
仙座) 「ごめんね夏来ぃ…」
炎条寺) 「言いたかったけど…言えなかったんだ……すまん」
その思いが届いたのか、ニッ怪に続き 3人も謝る。
その異様な光景に、周りの村の人たちの視線が夏来に突き刺さる。
もう気にしてないから、と焦りながら皆んなの頭を上げさせる夏来。
すると安心したニッ怪たちは嬉笑する。
つられて夏来も笑った。
夏来) 「あ、焼きそば!!忘れてたっ」
少しの休憩時間を挟んだのち、作業を開始する村の人々。
今日は飾り提灯、祭りなどによく見られる「祭」と書かれた丸い提灯を飾っている。
広場を囲んでいる木々の枝に吊り下げ、屋台の周りには点々と、太鼓台には何本も紐で結んだ提灯を大量に括り付ける。
夏来たちはと言うと、広場へと続く階段に灯篭を置いていた。
薄い紙に絵を描いて、専用の飾り台に貼り付ける あれだ。
階段の左右に一つずつ建てていく。
地味な作業に見えるが、これで夜の暗い階段を照らしてくれる。
広場へ行くときに躓いて、怪我をしてしまったら楽しめなくなるからね。
「おーい、誰か手の空いてる人 手伝ってくれー」
時間をかけて無事に全ての灯篭を置き終わった時、広場から手助けを頼む声が耳に入る。
夏来たちは急いで、その声に応えて広場へと向かった。
最終作業は この日の夕方まで続き、祭りの準備が整う。
あとは明日の祭りを待つだけとなったー
ー祭り当日ー
辺りが夕焼け色になるにつれて、村が騒がしくなる。
この祭りは夜が本番となるからだ。
その証拠に昼間は、広場に屋台を出す人以外立ち入らなかった。
叔母) 「ほら、千代ちゃん、ゆりかちゃん、これ着て行きなさい」
叔母に衣装部屋へと連れていかれた2人は、浴衣を渡される。
幻花は大人びた感じに、黒い生地に赤とピンク色の薔薇が描かれている。
薔薇はモダン型と呼ばれ、着る季節を問わない。
さらに薔薇には、美しさや華やかさ、艶やかさなど、オールマイティな意味が込められている。
一方の仙座はと言うと、可愛らしい感じに、ピンクの生地に赤やオレンジなどの比較的明るい色の桜で統一されている。
この桜も薔薇と同様、着る季節を問わず、縁起がいいとされている。
仙座) 「可愛い〜! ありがと叔母さん!」
幻花) 「毎年 すいません」
叔母) 「いいのよ♪ あ、じゃぁ私は屋台の準備があるから、また後でね」
一方、夏来たち男子は叔父に連れられて、幻花たちが居る衣装部屋の隣の部屋に来ていた。
叔父が部屋の隅にある大きなタンスの中を夏来たちに見せる。
そこには沢山の浴衣があり、どれがいいかと聞かれた夏来たちはジャンケンをし、勝った炎条寺から選ぶことになった。
炎条寺は「全身黒の生地に縦横と白い線が描かれた浴衣」
夏来は「シンプルな薄い水色の浴衣」
そしてニッ怪は「灰色の浴衣」を選んだ。
叔母) 「失礼するわ」
スッーー
と、夏来たちが居る部屋の引き戸が右に開き、叔母が入って来る。
その背後には幻花と仙座が浴衣を持って立って居る。
叔母) 「先に屋台の準備で行くから、後は宜しくね」
叔父) 「おう、分かった 任せな」
そう叔父から言われ、叔母は部屋から出て行き、早々と広場へと向かった。
ーPM5:40ー
祭りが始まる20分前となり、村は一層騒ぎ始める。
夏来たちは叔父に早めに出て行った方がいいだろうと告げられ、準備をして居るところだ。
それぞれが別々の部屋で浴衣に着替え、下駄を持ち、扇子を帯に挿し、巾着袋を片手に玄関へと向かう。
着替えに手間取った夏来たち男子が玄関先へと出た頃には、幻花と仙座が退屈そうに待っていた。
幻花) 「遅いっ! 何してたの!」
折りたたんだ扇子を夏来たちに向け、口を尖らせて言う。
夏来) 「ご、ごめん! 帯が見当たらなくて…」
幻花の威圧に3人はヨロヨロと後ろに一歩二歩と下がりながら、夏来が震えた声で返す。
幻花) 「もぉ…しっかりしてよ〜」
呆れた様にため息をつく幻花を節目に、夏来たちの目は2人を見つめていた。
幻花) 「な、なによ ジロジロ見て…」
夏来) 「あまりにも綺麗だから…つい」
と夏来が言い、ニッ怪と炎条寺が深く頷く。
幻花の顔が見る見るうちに赤くなって行くのが分かる。
仙座) 「たこ焼き〜綿飴〜やっきっそばっ♪」
一方の仙座はそんな事はどうでもいいと言わんばかりに、自分だけの世界に入り、食べ物の名前を連呼して居いたー
いやぁ…ねぇ…
この小説の文字数が減って来てる事は、申し訳ないんですが
本音言いますと、なるべく話数を増やしたいって考えがあるわけですよぉ…
まぁ…そんな事は置いといてと……
書いてる時、ついつい思うんですよー
悟神さんが死んだのに、何呑気に夏祭り楽しんでんだよって…w
はぁ…ほんと何やってんだか
あ、次回のお話は今すでに8割位書いているので、今週…来週位には出せそうです!