普段はひっそりとしている広場に祭囃子の太鼓や笛の音が鳴り響き、参道は色鮮やかな浴衣姿の少年少女や子どもを連れた若い夫婦たちで賑わっていた。
屋台のりんご飴の甘い香りが漂ってくる。
仙座) 「りんご飴〜!」
炎条寺) 「ちょ、ゆりか待てよ! 転ぶぞっ!」
その匂いに釣られた仙座が駆け出す。
その後を追う炎条寺。
取り残された3人は一緒に回ろうとしたが、空気を読んでくれたのか ニッ怪が2人でどうぞと言ってくれた………
考えて見たら…僕とちーちゃんの付き合いほんと長いよなぁ…
小学校の頃出会って直ぐに毎日遊ぶ様になって…
東京に来てからも変わらずにさ…
幻花) 「くふふふっ 変な顔〜」
お面を見て笑ってる……こんな笑顔を何回見たんだろうか…
その度に僕の心は ちーちゃんに近付こうとする…
「ねぇ、あれ見て あの綺麗な黒髪〜」
「スタイル良いなぁ〜羨ましい〜」
「浴衣と合って大人みたい〜」
幻花) 「ふふ〜ん?」
夏来) 「分かったから そのドヤ顔やめてっ!?」
「しっかし…彼氏の方が冴えねぇなぁ」
「なんであんなのと付き合ってんのかな」
「遊びに決まってんじゃん」
夏来) 「ぐぶはぁっ!」
幻花) 「ブッ…ww」
夏来) 「ち、ちーちゃん! ちょっとムカつくよっ!?」
全く…
しかし、カップルに見えるんだ僕たち…
そう思われてるって感じると、何だか嬉しいなぁ…
まぁ、2人っきりだからそう思われるんだろうけど
……はぁ、それにしても信じられないな……
今いるこの世界が本当の僕が生きるべき場所ではないなんてさ…
しかも夢……こんなに素晴らしい世界なのにさ…
幻花) 「夏来?」
夏来) 「え、ぁ、ごめん ちょっと考え事してた…………ねぇ ちーちゃん」
幻花) 「ん?」
夏来) 「ぁ………っ…や、やっぱり何でもないよ…」
ここで自分の気持ちを伝えても…現実の世界じゃ変わらないんだ…
だったら無事に元の世界に戻って、本物の ちーちゃんに想いを伝えなきゃならない
今ここで言うべきでは無いだろうと思って、夏来は口を紡ぐ。
幻花) 「…? まぁいいや あっちに輪投げとかあるから行こ♪ ほらほら」
そう言い幻花は夏来の手を掴む。
ドクンドクンと言う音が聴こえてしまうくらいに、夏来の心臓の鼓動は大きく跳ね上がり、赤くなった顔を隠す。
そしてそのまま夏来と幻花は、人混みの中へと消えて行った…
場所は移り変わり、仙座と炎条寺の2人は、タコ焼き屋の前を通りかかろうとしていた。
仙座の両手は多くの袋が下げられていた。
その中には焼きそばや、フランクフルト、りんご飴に、綿飴などなど食べ物だらけだった。
鼻歌を歌い、ご機嫌な様子の仙座とは裏腹に、炎条寺は仙座自身では持ちきれない物を強制的に持たされて少しイライラしている。
仙座) 「ぁっ!叔母さん!」
タコ焼きを作っている夏来の叔母に声をかけ、後から来て買おうとしていたのだが、別に今でも良いかと思い、話がてらに一つ買って再び歩き出す。
炎条寺) 「ぉ…おい…持ってやってんだぞ……俺の分は買ってくんねーのかよ」
仙座) 「え〜 8個入りだから一緒に食べようよ〜♪」
炎条寺の方に振り向いた仙座は、ニコニコと笑っていて実に可愛らしい。
まぁ…コイツのワガママも聞いてやるか…
……それで喜んでくれるんだったら嬉しいからな…
それを見るや否や、炎条寺の鋭く尖っていた目は優しく、和んだ目へと変わっていた。
そして取り残されたニッ怪は闇籠神社へと来ていた。
本殿内に明かりは灯って居らず、あの時と同じ様に暗く重い空気に包まれていた。
鳥居をくぐり抜けて空中へと飛び出し、神社の屋根へと降りて腰を下ろしたニッ怪は、空に浮かぶ、雲一つ掛からない少し欠けた綺麗な月を眺める。
ふと誰かの視線を感じたニッ怪は後ろを振り向く。
と、そこには浴衣姿の享奈が月を見上げながら立っていた。
そのまま何も言わずニッ怪は前に向き直し、帯に挿してある扇子を取り出してパタパタと扇ぐ。
ニッ怪) 「……悟神殿の事を考えておるのかい?」
享奈) 「うん…この世界に来る前から一緒に居たからね……私の大切な人だよ…」
悲しげな感情が…気持ちが…ニッ怪には痛いほど伝わって来た………
ひゅ〜〜ドーン!
そんな時、祭りが最高潮に達するのと同時に、様々な色や形、大きさの打ち上げ花火が上がり始めた。
さらに手持ち花火を楽しむ子供たちなど、村の人たちは花火に夢中になって居た。
ニッ怪) 「……悟神殿を生き返らせる為にも、我らが必ず夏来殿を返す……ここに宣言致そう」
ピシッと扇子を閉じて振り返り、享奈の目をしっかり見て言う。
ニッ怪) 「じゃからの……今は祭りを楽しもうぞ!」
ニカッと笑ったニッ怪が手を差し伸べる。
享奈) 「……うん!」
その手を取ると、ニッ怪が享奈を横抱き(お姫様抱っこ)して地面に降り立ち、享奈を下ろすと横に並びながら広場へと歩き出した。
夏来) 「花火綺麗だね、ちーちゃん ♪」
幻花) 「ほんとっ…やっぱりこれが有るから夏祭りはサイコーよね〜」
一方その頃、この2人は人混みに紛れて夜空に咲く無数の花火に目を輝かせて居た。
打ち上がるたびに至る所から歓声が溢れてくる。
と そんな中、休憩場の椅子に炎条寺と仙座がグッタリと座って居るのを発見する。
どうしたのだろうかと2人は人混みの中を掻き分けつつ向かった。
何とか2人の元に着いた夏来と幻花は、俯きながら何回も溜め息を吐いている2人の姿を見て、疲れたと言うよりも後悔している様に感じられた。
夏来) 「2人とも…花火だよ? 打ち上げ花火っ…」
炎条寺) 「射的で出禁喰らっちまった…」
仙座) 「イージー過ぎて調子乗っちゃってお金無くなっちゃった…」
そう言う2人の側には沢山の食べ物の袋と、大きな袋に大量の景品がどっさりと入って置いてある。
夏来と幻花は只々苦笑いをするしかなかった。
祭りも終盤に差し掛かり、徐々に人が少なくなって行く。
それに連れ、屋台を閉めて帰って行く人がチラホラと見え始める。
時計柱を見てみると、もう午後9時を回って居た。
炎条寺) 「さーて、俺たちも帰るか 明日も祭りあるしな」
夏来) 「うんっ あ、ニッ怪君 多分神社に居ると思うから呼びに行ってくるね!」
炎条寺) 「おう、任せた じゃ俺たち先に帰ってるわ」
駆け足で細長く続く階段を上がり、神社へと来た夏来。
……だが来たは良いものの、人の気配が無い。
鳥居をくぐり抜け、本殿の中を覗く。
何時もなら其処に享奈が居るはずだが、今日に限って居なかった。
ニッ怪君…享奈さんと一緒にお祭りに行ったのかな…
そう思った夏来が来た道を引き返そうと振り返り、右足を一歩踏み出したその時、
いつから其処に居たのだろう…夏来と鳥居の間にポツンと高身長で瘦せぎすの、地面まで届く黒い服を着た赤黒い短髪の男の人が立って居た。
その男は夏来が此方を重視しているのを見ると、左手を胸に当て深々と礼をする。
???) 「貴方と話せる時を待って居ましたよ」
と発する声は低く、とてもネットリとしている。
正体の分からない男が、ニタニタとした不気味な笑顔で夏来に近づいて来る。
夏来) 「だ…誰ですか…」
それを見て夏来は一歩二歩と後ずさる。
???) 「ォオ〜! こぉぉおれぇは大変申し訳ありませんでぇぇしたぁ 私は特殊能力撲滅機動隊 遠征部隊 隊長 レウザ・ディアスと申します」
機動隊…その言葉を聞いた瞬間、夏来は自然と距離を取り 身構えて居た。
その夏来の慌てふためく姿を見てレウザはクスクスと笑う。
レウザ) 「そこまで警戒しなくても良いのですよ? 戦いに来たわけでは無いのです」
夏来) 「じ…じゃぁ…何なんですか…」
レウザ) 「春、機動隊の最高戦力部隊が其方に伺う事をお伝えに来ました そう伝えろと上が言って来ましてね」
夏来) 「………なんで…僕たちを襲うんですか…」
レウザ) 「それは私達、正義の為に戦おうとしない悪質性能力者が居るから、と言うのが分かりやすいですが………強いて言えば貴方が居るからなのです」
夏来) 「僕が…?」
レウザ) 「この世界は貴方の願いを叶える為だけに造られた世界です 貴方が元の世界に帰ると言う事は即ち、願いを見つけたと言う事 つまり、もうこの世界には用が無くなるのです そうなるとこの世界は形を保つことが出来なくなり消滅してしまうのです なので私達 夢の世界の民は貴方が元の世界に戻る前に殺す事に決めたのです」
夏来は何も言えなかった。
僕のせいでニッ怪君たちを危険にさらして居るんだ……
そう僕が…みんなを……
だけど…悟神さんを生き返らせる為、ニッ怪君たちを元の世界に戻す為、僕は無事に帰らなくちゃならない
レウザ) 「…まぁ…どう足掻こうが、私達からは逃れられませんよ、貴方が願いを見つけるその時まで…」
炎条寺) 「おーい、夏来〜! ニッ怪居たぞ〜 帰るぞ!」
遠くから夏来を呼ぶ炎条寺の声が聞こえる。
レウザ) 「おや…長居してしまいましたね、では私はこれで…来年の春、またお会いしましょう」
そう言い残し レウザは、身体の周りに召喚した闇がかった炎と共に消えていった……
その後、ほんの数秒後に炎条寺と享奈が神社へ駆け足で登って来た。
呼んでも返事がなく、なかなか来ないので何かあったのかと心配になって居たが、夏来の何時もと変らない その姿を見て肩の力が抜ける。
炎条寺) 「夏来……あんまり心配掛けんなよ…ほら、帰るぞ」
夏来) 「うん…」
享奈) 「じゃぁ、また明日ね バイバイ〜」
手を振る享奈に2人も手を振り返し、そして前を向いて歩き出す。
広場へと下りてくると、其処に居ると思って居た皆んなの姿は無く、周りを見渡す夏来。
まだチラホラと祭りを楽しんで居る人も見られる。
と、炎条寺がそのまま広場を素通りした事で、夏来はニッ怪たちが先に家に帰って居る事を知る。
夏来) 「(そう言えば先に帰ってるって言ってたっけ…)」
先を歩く炎条寺が夏来を呼ぶ。
その声に応えて、駆け足で歩み寄り、横に並んで2人は家へと帰って行った………
時は着々と過ぎて行き、夏休みも終わりに近づいて来た。
夏来) 「では、そろそろ出ますね」
東京へ帰る準備を終えて荷物を持ち、夏来たちは玄関の扉に手をかける。
叔父) 「きーつけてな」
叔母) 「またいつでも遊びに来てね〜」
2人の笑顔に夏来たちも笑顔で手を振り、扉を開けて少し離れた場所にあるバス停へと向かった。
話しながら歩いていると いつの間にか着いていた。
ここは余りバスが入らない場所に位置して居る為、下手をしたら1、2時間待つ事になる。
が、今回は運が良かった。
11時35分に来る様で、夏来がスマホを取り出し時刻を見る。
現在時刻は11時29分だった。
約5分後、バスが来て炎条寺、幻花、仙座、ニッ怪の順番で乗り込んで行き、最後に夏来が乗り込もうとした時、後ろから掠れた声で呼び止められた。
振り向いた夏来の目に映ったのは、膝に手を当てて荒い呼吸を繰り返す享奈の姿だった。
夏来) 「享奈さん…?」
享奈) 「これを…っ」
と言い、享奈が自分の首にかけてある、紐が長く小さい御守りを取り外して夏来に渡す。
夏来はコロコロとした感触に、その御守りが何なのかがすぐに分かった。
夏来) 「これ…悟神さんの…」
享奈) 「私より夏来君が持って居た方が良い気がするの」
夏来) 「……分かった」
ー間も無く発車いたしますー
運転手の呼びかけに応え、乗り込むと同時にドアが閉まり、ゆっくりとバスが発車する。
窓際に座った夏来達は窓を開けて、手を天に突き上げる享奈に向かって、同じ様に手を突き上げる。
願いはきっと見つかる…
幻想には…必ず終わりが来るんだ
だからその時まで頑張って………夏来君…
バスが角を曲がり、完全に見えなくなると享奈はゆっくりと手を下ろし、青々と果てし無く続く空を見上げた。
享奈) 「これで良かったんだよね…悟神様」
野を越え、山を越え、バスは駅へと着く。
仙座が俳句を詠み上げ 電車を召喚する。
それに乗り込むと夏来は1人、ニッ怪達から少し離れた場所に座った。
仙座が呼びに行こうとするのを炎条寺が止め、首を横に振る。
それを見て察した仙座は席に戻り、指を鳴らして電車を発車させる。
運転手も乗客も居ない無人電車内は、ニッ怪達の話す声が良く響く。
その傍で夏来は、享奈から受け取った御守りを取り出して眺めて居た。
悟神が残した、享奈にとって たった1つの大切な物を受け取ったのだ…
享奈自身、手放したくなかったのだろう。
だから、夏来を信じて全てを託した享奈の思いを無駄には出来ない。
顔を上げ、御守りをギュッと握り締めた右手を胸に当てる。
夏来) 「(絶対に…叶えて見せる…っ!)」
こうして東京へと帰った夏来たちは、また何気無い普通の生活を送ることになった。
夏来は願いを見つけながら…
だが…これから先起こる最悪な展開を、この時はまだ知る由もなかった。
投稿遅れてすいませんでしたぁぁ…m(_ _)m
色々とやるべき事が沢山あって…
学校の宿題でしょ? それと宿題と宿題……
って!宿題だけかよっ!!
悟神) 「1人ツッコミとは…見苦しいぞ」
ゾルバース) 「マジキメェ(☝︎ ՞ਊ ՞)☝︎」
………チッ
あ、次回の投稿は…遅くなるかもです!
あらかじめご了承下さい(>_<)
レウザ) 「………に…賑やかですね、ここ」