ゆっくりと息を吸い込み、吐きながら目を開けた。
視界は不明瞭で、何処かボヤけている。
瞬きを何度か繰り返しても上手く頭が働かず、ようやく自分がうたた寝をして居たのだと気がついた。
和室はとても静かだった。
誰かの話し声など聞こえない。
庭から差し込む攻撃的な夕日の色を、カーテンが柔らかく包み込んで室内を淡く染めて居た。
願いを見つけられないまま……どれだけの時間が過ぎたのだろう…
夏来がリビングの窓を開けると其処には秋の世界が広がって居た。
町中が赤や黄色で彩っており、とても美しい。
目を細め、遠くの景色を見ていると、ガチャッという音と共に ニッ怪と仙座が外から帰ってきた。
リビングへと入ってきた2人はテーブルの上にビニール袋を置く。
夏来) 「おかえり それ何?」
ニッ怪) 「松茸じゃよ、松茸」
松茸…その言葉に夏来は耳を疑った。
ビニール袋の盛り上がり具合から見て、相当入っているのだと分かる。
松茸をこんなに沢山買えるお金は2人には無い事からして、仙座のテレポート能力で日本各地を回って集めてきたのだろう。
仙座) 「運動の秋…読書の秋…食欲の秋! 今すぐ食べよっ! ねっ!ねっ!今すぐ〜!」
ニッ怪にがっつく仙座を見て、夏来は折角だから炎条寺たちも誘おうと提案し電話をかけた。
2人が来るまでの時間、夏来たちは準備に取り掛かかった。
松茸に付いている土などを落とす為、台所でサッと洗う。
洗い終わったら、いしずきを鉛筆を削る様に薄く削り、そこで後で割ききやすいように十字の切れ目を入れる。
大きめの皿を2皿取り出し、その上に乗せていく。
残ったビニール袋はゴミ箱にシュゥゥゥーッ!!
仙座) 「松茸バトルドームも でぇたぁ☆」
乗せ終わった皿と、焼くための網などを持って庭へと出る。
と、丁度そこへ2人が話しながら入って来た。
夏来) 「あ、ごめん まだ準備出来てなくて…」
炎条寺) 「ぁぁ、いいんだ それより松茸は?」
キョロキョロと見渡す炎条寺に、仙座が皿に乗せた松茸を見せびらかす。
それを見て2人は目を輝かせる。
今までこれ程の量を、こんな間近で見た事が有るだろうか?
いいや無い……もしかして一生見られない光景かもしれない。
網をセットし、ガスコンロの火をつけて松茸を焼き始める。
少し経つと松茸から汁気がジュッと出て来る。
5人分の紙皿に2個づつ乗せ、ポン酢・柚子醤油・塩などを付けて食べる。
幻花) 「はぁ〜/// おいしい…」
ニッ怪) 「匂いはキツイが、とても美味…高級と聞けば尚更のぉ……」
あまりの美味しさに手は休むことを知らず、あっと言う間に無くなってしまった。
と、まだ夏来の手元には松茸が一つ残っているではないか。
それに眉を寄せ、何処か顔色が悪いようにも見える。
聞けば夏来はキノコが苦手らしい。
松茸と聞いて、人間の希少な物には目が無いと言う感情が勝ってしまい、自分がキノコ嫌いだったのをスッカリ忘れてしまっていた。
炎条寺) 「んじゃ、いっただき〜!」
と炎条寺が松茸に割り箸を近づける。
が、それを手首を掴んで来た仙座に止められる。
仙座) 「待ってよ〜松茸私もまだ食べ足りないんだけど それに私が採ってきたんだからね?」
炎条寺) 「こーゆーもんはな、早い者勝ちなんだよ 出直してこい」
仙座) 「へぇ…大口叩けるようになってきたじゃん非能力者が………ま、今は違うかっ 炎を操る能力者さん」
炎条寺が短い溜め息をつくと同時に、火の粉が口からパラパラと出て来る。
そう、僕らは全員「能力者」となって居た。
夏休みの終わり、東京へと帰って来た皆んなは、夏来から闇籠神社でレウザと会って居た事、来年の春に機動隊の最高戦力部隊が襲いに来ることを告げていた。
だが それも想定内か、ニッ怪たちの反応は至って冷静であり、直ぐに話し合いを始める。
悟神とゾルバースの戦いを見ていた夏来たちには一つだけ分かっていることがあった。
それは奴らが「対能力者用の能力者」であると言う事。
あの時、ゾルバースたちは雷を操っていた。
となれば、最高戦力部隊の奴らも能力者である可能性が高い。
そうなった時の為にも、奴らに対抗出来る戦力が必要になる。
だが何時もなら頼りになる警察も、奴らの前では今や無力。
そもそも余り被害は出したく無い。
と言う事は、もう残ってる方法は一つしか残らないだろう。
そう、夏来たちは自分たちが強くなればいいのだと考えた。
しかし大きな問題があった。
それは夏来、炎条寺、幻花の非能力者の存在だ。
特に夏来には死なれては困る。
そこでニッ怪はある提案をする。
「皆、能力者になれんかいの?」
こう提案したのにはちゃんと理由があった。
仙座の能力だ。
俳句を操る能力は575で言った事が周りで起こると言う能力で、つまり夏来たち3人が「能力を持つ」と言う意味で俳句を作り詠めば、能力者になれるのでは無いかとの事。
試しに実験として炎条寺を使って見た所、なんと成功。
さらに持ち主に合った能力が選ばれる様だ。
こうして炎条寺は「炎を操る能力」を手に入れた。
続いて夏来と幻花にも同じことをする。
それにより夏来には「身体強化能力」、幻花には「風を操る能力」が与えられた。
能力者相手なら特殊能力無効化が欲しい所だが、どうやら自分(俳句)の能力よりも性能、危険性が高いものは与えられないようだった……
あれから各自自分の能力を何とかコントロール出来る様になっていた。
炎条寺) 「チッ……わーかったよっ! 確かにお前が採ってきたんだしな くれてやる」
仙座) 「あぅ……」
申し訳なさそうに身を縮めている仙座を見て、ニッ怪が包丁を手に持ち、松茸目掛けて振り下ろした。
ぱかっと二つに別れた松茸を見た仙座は、なるほど!と言った顔でニッ怪を見つめる。
仙座) 「友貴っ!」
炎条寺) ビクッ「な、なんだy!?」
振り向いた炎条寺が口を開いた瞬間、仙座が半分の松茸を強引にねじ込ませる。
喉が大きく上下し、飲み込んだのを確認した仙座は満面の笑みを炎条寺に見せた。
仙座) 「これで解決だね♪ 残り半分は私のだー! ぱくりっ」
炎条寺) 「ぐ……」
怒りたいが、その笑顔に負けて黙る炎条寺を見て、夏来たちはクスクスと笑った………
それからと言うもの、夏来たちは沢山の秋イベントを楽しんだ。
仙座) 「おーばけーだぞー!」
ハロウィンや…
幻花) 「あの有名なメタセ…何だっけ?」
夏来) 「メタセコイア並木だよ」
紅葉狩りや…
炎条寺) 「いやぁクッソうめーな はむはむ」
ニッ怪) 「焼き芋も中々じゃぞい」
ぶどう狩りや焼き芋…?
そして一年最後の季節を迎え、寒さは一層激しさを増してきた。
東北などでは雪が積もっている頃だ。
だが夏来たちの居る東京では雪なんて降らない。
だが…別に此処で少量の雪を降らしてしまっても構わんのだろう?
夏来) 「雪だ……」
学校からの帰り道、不意に頬に冷たい物が当たったのを感じ、夏来は空を見上げた。
パラパラと降ってくる物体は、地に落ちると同時に優しく溶けて水となる。
早く帰らなきゃ。
そう思った夏来は、今日雨が降ると言う予報を聞いて持ってきた傘を差して駆け出した。
家へ着き、傘立てに傘を入れ、家の中へ入ろうと鍵を取り出す。
と その時、裏庭からドンッと重い音が聞こえた。
夏来はリュックを玄関に置き、裏庭へと回る。
仙座) 「ふぅ…」
ニッ怪) 「大量大量!」
そこで夏来が目にしたのは、自分の身長の倍以上ある、大きな山の様に盛られた雪だった。
夏来) 「ちょ!どうしたのコレ!?」
ニッ怪) 「む? おや夏来殿、おかえり 此れは我が故郷 越後から仕入れた本場の雪じゃ!」
その光景に口を開けながら唖然としていると、仙座が雪山の上から雪玉を一個、夏来の顔めがけて投げた。
が、夏来は短い悲鳴と共に それを避ける。
今までの夏来だったら避けられなかっただろう。
瞬間的に反射神経を強化した夏来の体は残像を残す程に素早く動き、もはや人間の動きではなかった。
仙座) 「ふふ… 身体強化能力は使いこなせてる様だね〜 これなら機動隊の奴らにも対抗できっ」ボフッ
夏来) 「お返しだー!」
と夏来が、避けた際に高速で作り出した雪玉を仙座に向けて投げ、それがクリーンヒットした衝撃で、仙座が雪山から転げ落ちる。
仙座) 「ぐぬぬぅ……雪玉が〜夏来の顔に〜ヒットする〜 はっ!!」
落ちる瞬間に体勢を立て直し、予備として作っておいた複数の雪玉を一斉に夏来に向けて放つ。
それに対し、夏来は仙座が能力を使ったと言うことは、避けても必ず当たってしまうのだと考え、こちらも複数の雪玉を一瞬で作り上げ、勇逸の手段として相殺する。
夏来と仙座の間を粉雪が舞う。
仙座) 「こなぁぁぁぁゆきぃぃぃぃ!!!」
夏来) 「ねぇ♪」
と、2人が楽しんでいる横で、ニッ怪は和んだ目をしていた。
冬も秋と同様、様々なイベントがあった。
クリスマスや、
幻花) 「呼ばれてないけど来たわ!!」
炎条寺) 「ひとりぼっちは寂しいもんな」
お正月や、
仙座) 「あのちーへいせーん かーがーやくーのーはー」
ニッ怪) 「どこかーに おかーね かくしてーいるーのーかー?」バッ
夏来) 「僕のだぞッッッ!!!」
スキーや、
夏来) 「む、無理だよ!スキーやっぱり無理!」
炎条寺) 「命は投げ捨てるもの、行ってこいっ!!」ドンッ
夏来) 「ビクトリィィイ!!!」
バレンタインや、
幻花) 「はい夏来! 義理チョコって言うか…それ以上って言うか…えっと……う…受け取って!」
仙座) 「夏来〜!私もっ私もっ! はい♪」
夏来) 「ありがとう♪」
炎条寺) 「もうウンザリなんだよ!義理だの本命だのくだらねェやり取りしてるバレンタインという悪習そのものがっ!!もうみんなで一斉に止めようぜ!?来年からチョコ送ったやつも貰ったやつも全員死刑でファイナルアンサー!?」
仙座) 「友貴にもニッ怪にも ちゃんと有るからね♪」
炎条寺) 「よしニッ怪、俺たちはまだ神に見放されてないんだな」キリッ
ニッ怪) 「う…うむ」
黄昏?
炎条寺) 「今日は……風が騒がしいな…」
幻花) 「じゃぁ風止めちゃおうか!」←風を操る能力
炎条寺) 「バカッ止めろ!」
夏来) 「早く中入ろ…? 風邪引くよ?」
炎条寺) 「作者に従わなきゃいけねぇんだよ!だってこれ小説だから!!(泣)」
そして……春
新年になり、早四ヶ月。
夏来たちは無事高校2年生へと進級出来ていた。
まぁ、夢の世界だから進級もクソもないけどねっ!!
制服に身を包み、ビシッとキメた姿で学校へ向かおうと準備する夏来。
今日は学校登校日だ。
玄関を開け、坂道を下った所の角で炎条寺とバッタリ会う。
夏来) 「あっ炎条寺君 おはよ〜」
と挨拶をしたが、どこか忙しそう。
スマホで時刻を見ても、学校が始まるまでまだ15分も有るのに…
炎条寺) 「ちょ…何呑気に歩いてんだ! 何時もより10分早く始めるって言ってたろ!?」
夏来) 「えっ!?」
そう、夏来はおっちょこちょいなのだ…
炎条寺) 「ほら行くぞっ!」ガシッ
夏来) 「もうダメだぁ…おしまいだー!!」
そして、学校へ着く頃にはせっかくキチンと整えた髪も、ボサッとだらし無くなってしまっていたとさ……
夏来) 「なんて日だっ!」
その頃ー
広大な荒野を見渡せる、切り立った崖に一人の男が座っていた。
???) 「脳内通信とか…貴様らしくないな…」
そう言う男は、自分の頭に右手を当て話している。
???) 「全く…俺が動く必要のある程の相手なのか…? ………はぁ…しゃーねーな…んじゃ、いっちょケリつけに行くか…」
((頼んだぞ、バールド))
バールド) 「ぁぁ……安心しろ……
ゾルバース…」
いやぁ〜結構進みましたねぇ
夏来たちも能力を持ち、戦力は跳ね上がりました!
けど……勝てるのかなぁ…
まっ!それはこのスマホを操る手が決める事だけど!!
っと…今回も読んでくださり、ありがとうございます♪
次回は遂に機動隊の最高戦力部隊との戦いっ!
夏来たちは未知の能力に打ち勝てるのか⁉︎
夏来) 「次回も乞うご期待…する程じゃないかも…?」
炎条寺) 「あ、言い忘れてたが、わたっふの高校2年へと上がるための試験が有るから、次回作は少し遅れるらしい」
それではっ……バイビッ!