人間は神が創りし物であり、神のために尽くす存在。
のはずだった…
人間は神を良くは思っていなく、下に敷かれることを酷く嫌っていた。
それ故に人間は自由を求めるため、神々に対し反乱を起こしたー……
光が消えたのと同時に、神社の屋根の上に人が立っていた。
夏来たちを見下ろす その眼は、怒りに満ち溢れている様だった。
享奈が不敵な微笑みを見せる。
まるで、勝利を確信した様な感じに…
炎条寺) 「て…テメェか…享奈の主の悟神って奴は…! こんな事はやめろ! 万が一、一般市民に被害が及んだらどうする‼︎」
意を決して炎条寺が、一歩前に出て、喉が枯れるくらい大きな声で叫ぶ。
悟神) 「それが何だと言うのだ いずれは貴様らの味方をする者どもだ 排除せねばなら…」
と、悟神が言い終わる前に、仙座が仕掛ける。
テレポートで悟神の後ろを取った。
悟神) 「貴様は話も聞けぬのか」
はずだったが…まるで出現場所が分かっていたかのように、後ろを振り向いたかと思うと、左足回し蹴りが仙座の右横腹に入る。
そのまま、仙座は足掻くこともできず、木々にぶつかりながら、屋台が開かれる広場に蹴り飛ばされる。
なんとか地面に背中をぶつけないように体勢を立て直した仙座だったが、勢い良く木にぶつかった事で肋骨、手足の骨が粉砕骨折、堪らず倒れる。
そこに神社から走ってくる夏来たち。
駆け寄り、仙座の身体をニッ怪の治癒能力で回復させる。
仙座) 「先を読まれた感じだったよ…っ…」
夏来たちは空を見上げる。
そこには先ほどと変わらずに悟神が浮いており、両手で享奈を抱かえていた。
ゆっくり地に降りて来たかと思うと、享奈をソッと寝かせ、手を掲げる。
すると、ニッ怪の回復効果と同様、享奈がケロっとした顔立ちで、ヨロヨロと立ち上がる。
享奈) 「……許さない…たかが人間がぁっ!!」
悟神1人相手でも勝てるかわからないこの状況下、仙座をひと殴りで仕留めた享奈も加わってしまった。
ニッ怪) 「夏来殿らは下がっておれ! 何れにせよ我らが立ち向かわねば成らぬ!!」
悟神) 「ほぉ…威勢が良いな…」
夏来達が後退した直後に戦いの火蓋は切られた。
若干、ニッ怪らの出だしが遅れたか、2人は一挙に距離を詰められる。
ニッ怪はバックステップを踏んだが、悟神に髪を掴まれ、地面に叩きつけられる。
と同時に手をつき、右足で悟神の腹を蹴り上げる。
が、左手で止められ、髪を掴んでいた右手を離し、ニッ怪の腹に当てる。
悟神) 「闇の極 ブラッディーアイズ」
その言葉の後、夏来たちは自分の眼を疑う。
それはニッ怪の身体を内部から上下に引き裂く。
まるで眼を開けた時の瞼の動き。
腹を区切りに2つに別れたニッ怪の身体は、血の螺旋を描きながら地へ落ちる。
仙座) 「ニッ…怪……っ!!」
仙座がテレポートで悟神の死角に回る。
仙座) 「一撃で…瀕死状態…なりまっ…」
俳句の攻撃を仕掛けようとした時に、横から享奈が殴りをかます。
それを右手で受け止める仙座。
享奈が驚いたのもつかの間、次の瞬間、右手から炎が出てくる。
仙座) 「邪魔…するな…」
その顔に光は無く、ただ殺意だけが込められていた。
夏来) 「仙座さん…ニッ怪君のことを…」
炎条寺) 「ぁ…あれ…なんだ!?」
炎条寺が指差した方向を夏来たち、悟神が見る。
仙座の背中からは鳳凰が現れていた。
仙座) 「花札 桐に鳳凰」
瞬く間に炎に包まれた享奈は叫び声と共に、鳳凰に取り込まれ、空高く打ち上げられた。
悟神) 「これは…」
少しして、鳳凰の燃え盛る炎の羽と共に落ちて来た享奈は、悟神にキャッチされ、神社へと続く階段に座らされる。
後は悟神に託したのか、そのまま眠りについた。
戻って来た悟神に対し、仙座はテレポートで背後へ回り、俳句の能力でトドメをー……
させなかった。
悟神) 「鎖の極 チェーンロック」
その言葉と共に、地面から鎖が8本出て来て、仙座の首、腕、胴、足に2本ずつ巻きつく。
幻花) 「ち…ちょっと…やばいんじゃない!?」
身動きが取れない仙座の前に立ち、腹を何発も殴る。
悟神) 「痛いか? 苦しいか? 人間… だが、我が受けた痛み、苦しみ、悲しみ…これでは表せられぬぞ……!!」
殴る強さが増す度、仙座の血反吐は多くなっていく。
殴られ続け、仙座は遂に意識が無くなる。
ダラっと垂れ下がった頭、手足には、もう生きていると言う感覚が失われている様だった。
悟神) 「…今、楽にしてやろう人間… 能力者として生きて来た、この人生を恨むがいい」
悟神が、ニッ怪にした事と同様に、仙座の腹に手を置く。
そっと…優しく…あの世へと誘う、この冷たい手。
仙座は足掻く事をやめ、死を覚悟したー………
「「諦めんじゃねぇ!!!」」
その時、何処からともなく、強く…暖かい声が響いて来た。
それと同時に、右から悟神の顔が歪み、数メートル先に殴り飛ばされる。
すると、巻かれていた鎖が解け、その場に倒れこむ仙座。
仙座) 「や…やる…じゃん……」
そう、仙座がそこで見たものは、悟神を鋭い目で睨みつけ、荒い呼吸を繰り返す炎条寺と、その後を追って来た夏来の姿だった。
炎条寺) 「当たり前だ! お前らが戦って…俺らが何もしないわけには…いかねぇ!」
夏来) 「僕たちも…戦うよ!無力だけど…それでも役に立ちたい! 皆んなを守りたい!」
夏来と炎条寺の瞳には、迷いは無く、果てしない、正義の力が溢れていた。
もう怯えない、負けたくない、そんな感情が伝わってくる。
そして、少し遅れてやって来た幻花が仙座の手を自分の肩に回し、なんとか起き上がらせる。
悟神) 「ぐぐ…っ…に…人間がぁぁ…人間風情がぁぁぁあ!!!」
素早く立ち上がり、上空に飛び立ったかと思うと、手を横に突き出す。
すると、悟神の背中に名前に反し、灰色の光輪が現れる。
と、同時に空にかかっていた雲が晴れ、その中から赤黒い空が顔を出す。
幻花) 「な…なんなの…これ…」
仙座) 「本気…出して来たみたいだね…っ…!」
その光景に唖然と立ち尽くしていると、さらに悟神の周りに魔法陣の様な物が、10数個召喚される。
悟神) 「我に…勝てると思うな…!」
身構える4人。
このままでは確実に殺されると知りながらも、戦闘態勢に持ち込む。
そう、「このまま」では…
悟神が右手を素早く上げると、周りの魔法陣が光り出す。
悟神) 「滅びるがいい…! 連撃神光貫(れんげきしんこうがん)!!」
魔法陣から光のビームが一斉に夏来たちに向かって放たれる。
仙座が無駄だと分かりながらも、バリアを張る。
その瞬間、黒羽の生えた黒い影が夏来たちの背後から飛んでいき、悟神との間合いに入ったかと思うと、黒刀らしきもので光線を縦に真っ二つに切る。
そして夏来たちの方を見下ろす影は、爆発の光に照らされ、その顔が映し出される。
仙座) 「なんで…ニッ怪…死んだはずじゃ…」
ニッ怪) 「我の能力は生命を操る能力、あの程度の攻撃では再生することが可能じゃ!」
ニコッと笑ったニッ怪に、仙座は涙を流す。
ただただ…嬉しかった。
生きていて良かったと…
悟神) 「そ…そんな…なぜ…人間が…人間風情が…こんな…こんな…!我の能力…悟りの能力は最強のはず…」
力が抜けたかの様に、地上へと降りて来る悟神。
仙座の身体を回復させ、少し離れ、夏来たちは再び身構える。
夏来) 「悟りの能力なら…心を読み取れない様にすればいいだけ…!」
炎条寺) 「ああ…その通りだ! 行くぞっ!」
炎条寺の言葉が合図で一斉に走り出す。
悟神は動かず、ただ、じっ…と立ち尽くしていた。
今がチャンスだと言わんばかりに、攻撃を仕掛けようと数メートルまで来た瞬間、悟神の足元から黒いオーラが出て来て、全身を覆う。
急な変化に夏来たちは止まり、少し後ろに下がる。
悟神) 「許さんぞ……これほどまでに我を踏みにじったのは貴様らが2回目だ…」
悟神の周りの黒いオーラが身体に取り込まれると、服が黒一色、灰色の光輪が黒く変色し、白目が赤くなる。
あまりの変化に夏来たちが固まっていると、悟神の姿が一瞬にして消え、次の瞬間、夏来たちは吹き飛ばされる。
というべきか…殴り飛ばされる感覚。
夏来、炎条寺、幻花ら3人は吹き飛ばされ(殴り飛ばされ)た勢いで腹が、地面に激突した衝撃で脚がやられた。
しばらくの間は動けない位のダメージを受け、地に横たわる。
一方のニッ怪、仙座は動けるがかなりのダメージを受けていた。
よろよろと立ち上がると前方に悟神がケラケラと狂った様に笑っていた。
その笑い声は、闇のオーラに完全に支配されている様にも思えた。
ニッ怪) 「ぐっ……これは少々…無理が…」
仙座) 「それでも…今…此奴をやれるのは私ら…だけなんだからぁっ…!」
最後の力を振り絞り、悟神に向かって行く2人。
悟神は再度、魔法陣を出すと、右手をゆっくりと上げ、
悟神) 「……くたばれ、人間よ」
攻撃を放つ。
それは光線ではなく、光の小さな球の様な物だった。
無数の光の球が次から次へと、防御の構えをしなくなったニッ怪と仙座の身体を蝕んでいく。
そして、仙座がついに倒れる。
ニッ怪) 「仙座殿っ……!」
悟神) 「アームソード リザベクション」
悟神は、休むことなく、自らの右腕を闇のオーラが掛かった刀に変え、ニッ怪を攻撃する。
ニッ怪) 「こっ…黒青刀 毘沙門天!!」
慌てて刀を召喚したニッ怪は悟神の攻撃を防くが、反撃する隙を与えない悟神にニッ怪は押されていく一方。
挙げ句の果てには、ニッ怪の刀が弾かれ、悟神の攻撃が腹を貫く。
腹から抜かれると、強烈な回し蹴りがニッ怪を襲う。
地面に叩きつけられ、ニッ怪も遂に動けなくなった。