女騎士の定義ってなんだろう   作:闇谷 紅

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プロローグ【ゲームは好きかい?】

 

「たとえばだけど、作成するキャラにランダムでボーナスが付くゲームってあるね?」

 

 同意を求めてくるこの問いかけに、和人はどう答えるべきか、一瞬悩んだ。

 

「うん」

 

 とシンプルに頷くべきか。

 

「あ、いくつかやったことあるよ。ボクは海外ゲーで有名なアレの三作目あたりが好きだったな」

 

 と、ややマニアックに自分の趣向まで混ぜて、そこからゲームトークに発展させてゆく勢いで食いつくべきか、などと言う迷い方ではない。

 

「まずさ、もう一度説明してもらえない? なんでこうなったかを」

 

 和人自身、ライトノベルと言われる読み物の類はよく読む方だった。古い言い方だがテレビゲームと呼ばれるモノも最新機種まで備えてるし、学校の放課ではクラスメートとバカ話以外にもそう言った趣味の話題を口にすることはある。

 

(だからさ、アレは付き合いというか個人的にやりたかった訳ではないんだけど……)

 

 ただ、その手のゲームやら読み物のキャラの格好をする所謂コスプレについては、口外しないし、してもいなかった。すべては、その手の衣装を作るのが大好きな幼馴染に押し切られてしぶしぶ着せ替え人形をさせられていたのだ。

 

(ホント、どうしてこうなったんだろう)

 

 気が付けば遠くを見てしまいそうになる目を下にやれば、目に入るのは足元が見えなくなるほど豊かな膨らみ。これが詰め物だったら良いのになと和人は声に出さず先ほど独言をこぼした。

 

「確かに、女装してたよ? けど、これってどういうこと?!」

 

「お、落ち着け。別に『女の子に転生しちゃいました』とか『女の子になっちゃいました』って訳でもな」

 

「なお悪いわ! そもそもそっちのミスじゃん、性別確認せずに、女騎士にしようとするからこうなったんじゃん!」

 

 言葉を遮って噛みついた和人は一見するとどこからどう見ても女の子だった、ただ部分的に男の子が残っていることを除いては。

 

「だ、だって適正は女騎士になってたし、そのコスプレ姿を見れば、男の娘だなんて思わないでしょ」

 

「はいはい、女顔で悪うございましたね! と言うか、ボクだってコスプレするならせめて男キャラって主張したよ! だけど『こっちの方が可愛いから』とか『サイズを直せばあたしも着れるから』って言ってきかなかったんだから仕方ないじゃん!」

 

 都合が悪くなると泣き落とししてくる幼馴染にNOを突き付けられなかったのは確かに和人だが、だからと言ってこれはないんじゃないかとも思うのだ。

 

「それにね、適正クラスに付いた場合の君に与えられるボーナスポイントはかなり多いんだよ? ふつうは10あれば御の字なのに120だ。12倍だよ? ほら、君達のよく読んでるような話で言うところのチートって奴だ。俺TUEEEEとかだってできるんだよ?」

 

 和人をこんな姿にした、目の前の男は良いところを上げて弁解に終始するが、じゃあ許そうなんて気になるかと言えば、否だった。

 

「元に戻してよ。だいたい何で適正も『女騎士』なのさ。性別的におかしいよね?」

 

「そういわれてもねぇ」

 

 一度目の説明の中、最初にツッコんだのもそこだったと思い返しながら指摘する和人へ男は困り顔を作る。

 

「システム面は上が担当してるから私には何とも言えないのよ。苦情を送ることや不具合の報告をすることはできるけど、そもそも君はもう作られちゃったから」

 

「え゛?」

 

「あ、しまった。いや、もうこの際だ。ええと、君はね……君の知覚してる君自身ではなく、もともとその複製体なんだよ。さっき、作成するキャラにボーナスが付くゲームって話をしたでしょ? ようはアレ。複製して誕生させた時、『高い資質=多いボーナス』を持つ人間をここから探して、誕生させ異世界に放り込むのが私の仕事なんだよ」

 

 突然の爆弾発言というか暴露話は半分ほどが和人の耳を右から左に抜けていった。

 

「……複製体」

 

「あ、大丈夫。複製って言っても寿命が短いとか子供ができないなんてことはないから。今流行りのハーレム展開とかやっちゃっても構わないよ? これはせめてものお詫び替わ」

 

「ハーレム?」

 

 呆然としていた和人も徐々に落ち着いてきていたのだろう。あまりの言い様に単語を拾うと睨みつけた。

 

「それ、イヤミ? こんな体でどうハーレムしろと?」

 

「へっ? あ、いや……その、ハーレムも逆ハーレムも両方でき、いやそうじゃなぶべらっ」

 

 自分が地雷を踏み抜いたであろうことに男は言葉の途中で気づくも取り繕うには遅すぎ、頬に良い一撃を貰って傾ぐ。

 

「ぐ、痛」

 

 傾ぎつつも物理法則を無視したかのように斜めのまま倒れず何か言おうとしたが、和人にとってそれは別の意味で都合がよかった。

 

「い・う・に・こ・と・か・い・てぇぇぇぇっ!」

 

「うぐっ、おごっ」

 

 「に」と発した辺りで殴った腕を使い男の首を抱え込み、もろともに倒れこむかのごとく体を傾けながらまだ自由なもう一方の腕で腹部に肘鉄を叩き込む。

 

「この手のお話、何本も読んだことあるけどさ……これだけは譲れない。男にしてもらうよ」

 

 異世界に送り込まれる前にと、和人は腹を押さえた男に絶対零度の視線を向けたのだった。

 

 





拙作「強くて挑戦者」を読んで下さってる方はおわかりかも知れませんが、主人公はあちらのムール君がベースとなっております。

体型は違いますけどね?


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