ビスコッティ共和国興亡記・HA Edition   作:中西 矢塚

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因みにレギオスの続きは永劫に無いと思います。
 何故かって言うと、アレ、『原作が面白いから二次創作をする』ではなく、『二次創作を書きたいから原作を読む』みたいな本末転倒な状況に嵌ってしまっていたからです。
 五巻くらいまでの話が一番好きでしたからねー。


4-2

 

 

 ―――その晩。

 草木も眠りに付く頃、と評される時間に目を覚ました。

 

 一度眠りに付いてから、夜明け前に目を覚ますのは珍しいことだ。

 首を捻りながら、なんとなく、ベッドから這い出す。

 もっとも、ほんの数週間前までは、しばらく。

 この程度の時刻はまだまだ宵の口、眠るには早い時刻(・・・・・・・)だったりもしたのだが。

「太陽が出る頃に漸く眠りにつくのが当たり前の毎日ってのは、我ながら、なんとも……」

「こんな夜更けに寝所を抜け出したと思ったら、いきなり何を口走ってるのだ己は」

 鉄格子越しの夜の景色を眺めていた背後から、あきれ声。

「起こしちゃったか」

 寝ていなきゃ駄目だよ、と言う口調とともに振り返る。

 美しい女性―――もう、少女ではない―――が、頬を膨らませていた。 

 妻である。この国の領主でもあった。

「こうもベッドに縛り付けられる日が続けば、夜中に目覚めてしまいもしよう」

「……奥さん、俺の記憶が確かなら、一日としてまともに部屋の中だけで一日を終えてくれた日は無かったと思うんだけど」

「適度な運動は必要じゃからな」

「適度、適度ねぇ。付き合わされるゴドウィンとかバナードとかの気持ちも考えてやろうよ。相手するたびに神経すり減らしてるぞ」

 然もあらん。

 基本的に真面目な彼らは、上位者である彼女の命令には逆らわない。逆らえない。

 しかし現在の彼女の戦闘訓練の相手を務めると言うことの重要性―――危険性とも言う―――も充分に理解しても居るから、剣を合わせるその心中を察するに、痛ましいことこの上ない。

「今頃、屋台で痛飲でもしてるんじゃないかね、あのオッサン」

「それほど部下の身を案じているのなら、代わりに己が相手を勤めよ、我が夫よ」

「やだよ、おっかない。サンドバック役ならやってあげてもいいけどね」

 反撃は絶対にしない。

 断固たる態度に、妻はますます頬を膨らませた。もっとも、尻尾はどこか機嫌よさ気に揺れていたりもするが。

「過保護な父君よの、全く」

 生娘とも妻とも違う仕草で腹を撫ぜながら、レオンミシェリは微苦笑を浮かべた。

 

「―――それで?」

 そのまま、何とはなしに窓辺で睦言に興じていた後、さりげない口調でそう、尋ねられた。

 何を尋ねられたのか、は考えるまでも無かった。

「うん……うん」

 言葉を整理するように曖昧に頷きながら、窓の外に視線を向ける。

 

 今は施錠されているテラスの欄干。

 白く、輝き、透けている生き物が留まっていた。

 鳥―――の、ようなもの。

 

「ワタリか」

 土地神の亜種。渡り神。

 土地神との違いは、名前の通りである。渡り神は一つの土地に留まらず、土地から土地を渡り行く。旅する者たちを守護し、導く存在と言われている。

「何ぞ、神託でも下ったか」

「そこまで大げさでもないけどさ。運んできた風が、少し」

 良くない。

 はっきり言ってしまえば、悪い(・・) 。

「ほう」

 疑うわけではないが、と言う態度である。

 勘の良い女である。

 不浄が直ぐ傍に迫っていれば、当然、直ぐにそれに気づくだろう。

 だが、そんな気配は、全く感じられない。

 周囲からは。近隣からは。

「少し遠いところから着たみたいだからね。どうもその土地で、嫌な気が沸いているんだろう」

「―――魔物か」

「おそらく。とは言え、わが国の管轄外の土地で魔物が沸いたってんなら、まぁ、その土地の領主なり守人なりが何とかしてくれればそれで済むことだから」

 そこまで心配するような話でも、無い―――筈である。 

「けど、わざわざこうやって、あからさまに警告してきてるんだから……」

 渡り神はじっと、視線を合わせて外そうとしない。

「放っておく訳にもいかないさ」

 

 だから、調べてくる。  

 

 あっさりと決断を下した。

「まて、今からか?」

「善は急げ、だと思うんだ、こーいうのって」

「明日……いや、もう今日か。ナナミ達が帰還するのだぞ?」

「だからこそ、ってのもあるでしょ。このタイミングでわざわざ遠くから来たんだから、アイツ」

 欄干の上の渡り神は、とぼけるように翼を繕っていた。

「フン。勇者の力が必要な事態、という訳か」

「とはいえ、せっかく遊びに来てくれる子たちをこっちの都合で働かせるのもアレじゃない。―――まぁ、駄目だったら素直に助けを呼ぶさ」

 

「と、言うわけで助けてくれ」

 ビスコッティ共和国首都近郊。

 風月庵と呼ばれる、当方風の建築物の門をくぐり。

 開口一番で助けを求めた。

「夜中に空から降ってきたと思ったら、いきなりあからさまでござるな、シガレット……」

 呆れ顔―――いや、諦め顔、と言った方が正しいか。

 長い付き合いの友人、或いは姉貴分とでも言う女性だ。

 只のスタイルの良いだけの美少女ではない。魔物退治の専門家でもあった。

「全く嬉しくないけど英雄結晶のおかげで最短時間を二時間近く更新できたんだよなぁ、嬉しくないけど」

「少しは人の話を聞くでござるよ」

「なんていいながら旅支度をしてくれるユッキーは良い女だと思うわ」

「それは夜中に妻以外の女に言ってよい発言では無いでござるよ」

「あーだいじょぶ、出掛けにもう殴られてきたから」

「夜中に弟分ののろけ話も聞きたくないでござる……よっと」

 旅の荷物をセルクルに載せた後で、しゃがみこむ。

 周りに集っていた子犬の一頭の首に、手紙を巻きつけた。

「悪い男にゆーかいされてくるので少し留守にする、と。ちゃんと姫様にお伝えするでござるよ」

「酷い風評被害の現場に遭遇したぞ」

「シンクたちにもよろしくでござる」

 ワン、と一声啼いて犬は竹林の中へ消えていった。

「さて、いくでござるか」

「ダルキアン卿も居てくれればよかったんだけどなぁ」

「アデル様たちと共に、パスティヤージュにいらっしゃるはずでござるが……途中で合流するでござるか?」

「残念、方向が逆だ」

 二人ともセルクルに跨り、藁葺き屋根の庵を出る。

 向かう先は。    

「竜の森、でござるか」

「禁足地の一つだよな。あそこは専属の巫女が守護してた筈なんだけど……」

「あのような霊場で、瘴気が外に漏れるような魔物が出たとなると、確かに大事でござるなぁ」

「竜が魔物化してるのか、竜より強い魔物が出るのか。ま、無理そうなら飛んで逃げよう」

 

 夜明け目前。

 二人は旅立った。





 尚、投稿してないだけで何度か二次創作のプロットも作ってみたりもしてました。
 最近考えたやつだとだとこんなタイトル。

 『閃の軌跡―THE LORD OF ELEMENTAL-』

 内容はまぁ、タイトル通りに「実はゼムリア大陸は精霊信仰が失われた未来のラ・ギアスだったんだよー!」とかいうネタを下敷きにした感じ。

 書かなかった理由?
 書きたい場面にたどり着くまで遠いからだよ!
 
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