漢を目指して   作:2Pカラー

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03.誤算だらけの第一歩

 ――MM(メガロメセンブリア)――

 

 幸運だったのは確かだ。

 後で知ったことだが、魔法世界と旧世界・地球をつなぐゲートが開くのは週に一度程度らしい。

 ストーンヘンジのような不思議な空間。俺がそこへと着いた日の夜明けにゲートが開いたことはまさしく幸運。

 しかし……

 まったく。行き当たりばったりで行動するもんじゃないね。

 

 まさかMMの入国管理局に見つかることになろうとは。

 

「はっ、発見! C地区にて不法入国者を発見しました!」

 

「チッ。こんなガキにマジになってるんじゃねぇよ!」

 

 そう毒づきながらも足を動かす。

 そりゃ『絶』だけですべて上手く行くなんて思っちゃいなかったが、ここまで追い回されることになるとは。メレオロンの『神の不在証明(パーフェクトプラン)』が欲しいくらいだ。

 

「そこまでだ! 止まりなさい!」

 

 角を曲がったところで杖を構えた男に出くわす。

 チッ。だがこんなところで早速強制送還なんて冗談じゃねぇんだよ!

 

『絶』を解除。同時にオーラで強化した足で強く踏み込む。

 ミシリと白塗りの床にひびが入るが、そんなこと知ったことか。

『練』で強めたオーラを右拳に集め、

 

「ジャッ!」

 

 気合を込めて一撃。

 瞬動ほどではないにしろ、その幼子の見た目からは予測もつかないほどの速度で間合いを詰めての一撃には、さすがに魔法使いも意表を突かれたらしい。たやすく一撃は決まり、

 

「ぐはあっ」

 

 と叫び声だけ残して飛んで行ってしまった。

 

 ……

 ………………

 ……………………………………え?

 

「……俺、強ぇ」

 

 つか死んでねぇだろうな!?

 つかつかオーラで強化した攻撃なんかしちまったが、まさか『念』に目覚めたりしないよな?

 

「がふっ。貴様……いったい」

 

「お。生きてた」

 

 目を向ければガラス張りの壁に磔のようになっている男の姿。

 どうやら角を曲がった先はT字路になっていたようで、そこの壁に衝突したらしい。

 それにオーラが体から立ち上ってないところを見ると、精孔は開いていないようだ。

 まぁとりあえずはセーフか。いろいろな意味で。

 こいつは『ネギま』世界の住人には『念』がもともと使えないとみるべきか。それとも『精孔を開くつもりでの攻撃』でなかったからセーフだったのか。一応検証しておく必要があるかもだが。

 なんてことを考えていたら、音を聞きつけてきたのか背後から大勢の人間の気配。

 いや、背後からだけじゃ無く、T字路の両側からも。

 

「ゲホッ。この強さ。年齢詐称薬を使っていたのか。だが、大人しく捕まることだ。もう逃げられん」

 

 いえ、使ってません。むしろ使いたかったけど。

 いや、そんなこと考えてる場合じゃないって。さすがに数で攻めてこられたらどうしようもない。

 ここで捕まりゃ悪魔に襲撃されることが決定している村に逆戻りだ。いや、MMの領地で捕まったとなれば、そのまま元老院にってな展開になりかねん。

 やべぇ。窓の外には魔法世界の街並みが見えてるってのに。

 こんなところで……ん?

 窓の外には?

 えぇっと。こういう時ゴンならなんて言うんだっけ?

 

『思い出した! ヨコヌキだよ、ヨコヌキ!!』

 

 おォ!

 愛してるぜゴンちャン! 抱きしめたいくらいだぜェ!!

 

「はっ。何を考えているかは知らないが、もう逃げられん」

 

 うっせえよ。俺は磔からなんとか抜け出した男へ向けて走り出す。

 当然『絶』なんかにはせず、むしろ最大出力の『練』の状態で。

 

 ――出口がふさがれているなら

 

「なっ!? 待て!! やめてくr」

 

 恐怖からか身をすくめ、丸くなった男を、

 俺はそのまま飛び越えて、ガラス張りの壁へと蹴りをぶち込んだ。

 さすがにただのガラスというわけはなく、おそらく魔法なりで強化されていたんだろうが、ビルのコンクリで出来た壁より固いというわけもなく。

 

 ――別なところから出ればいい!!

 

「シャァッ! 俺は自由だ!!」

 

 ガラスを力任せに突き破り、壁も屋根もない自由な世界へと、俺は飛び出していた。

 

 

 そこが地上四十メートルであることに気づかずに。

 

「って、うおわあああああああああああああ!!」

 

 

 それでも骨折などの大きな怪我などせず、生き残れたというのは、

 まぎれもなく幸運なことだったのだろう。

 

 

 

 

 

 それが今から大体三時間ほど前のこと。

 現在俺は市内にある本屋に来ていた。

 

「えぇと。地図地図」

 

 というのも無計画に魔法世界に来てしまったことのさらなる誤算が発生したからだ。

 というのも、

 

「金はないけど。立ち読みくらいならできるだろ」

 

 そう。金が無いのだ。

 ウェールズからパクって、もとい借りてきた金は、当然のようにイギリス通貨。

 そして魔法世界で使われているのはドラクマ。

 それを両替できるのはゲートを管理している入国管理局くらいなものだったのだ。

 

「そりゃ交流のほとんどない異世界なわけだからなぁ。……っと、あったあった」

 

 手持ちの金が使えないこと。こいつは大きな壁となって立ちふさがった。

 つまりは食う物を買えないのだ。

 泊まる場所も、まぁこちらのほうは二歳児が一人でホテルに宿泊となると注目されるだろうという考えがあったから、元々別の方策を考えるつもりではあったし、最悪野宿もやむなしとは思っていたが、金でどうこうすることは出来なくなった。

 そして一番の問題は、

 

「交通費、か」

 

 地図を広げながら呟く。目当てのものはMMの地図ではなく、世界地図。

 MMとアリアドネーの位置を確認して、さらに溜息。

 ほとんど世界の真裏である。

 

「ヒッチハイクなんて手は使えないだろうし」

 

 金が無いということは交通手段も使えないということだ。

 となれば空飛ぶお舟はお預けということになり。

 当初『絶』を使用した密航も考えたが、未だダメージの抜けきらない体の痛みがそれを躊躇させる。

 もう追い回されるのは勘弁願いたい。空飛ぶ船から落ちたら今度はさすがに死ぬだろうしね。

 

「となれば……」

 

 MMとアリアドネーの距離を指を使って測る。

 一万から……一万二千キロ?

 

「おぅふ」

 

 一万二千キロって……何カロリー?

 あー、やべ。頭痛くなってきた。

 

「……ま、なんだ。ウジウジしてても仕方がないか」

 

 そうだな。元々選択肢なんてなかったんだし。

 うん。歩こう。

 修行にもなるしね。強さは悪魔襲来事件を回避できるとしても必須だ。

 なんたって『ネギま』世界にはナギ(バグ)とかラカン(バグ)とかアルビレオ(バクテリア)とかいるんだもの。俺だけの『()』は磨いておかないと。

 うん。ポジティブにいこうぜ。

 魔法世界は地球と違って自然も豊富だし、焼けば食える動物とかもいるんじゃね?

 

「ってことは。えっと、上が北だから……左は西か? 西に向かって一万キロか」

 

 MMを出て西へ。まずはエオス。次いでトリスタンへ。海を渡って……いや、これは橋か? 橋を渡ってオスティアへ。海岸線を沿ってエルファンハフト。西へまっすぐ行くとモエル。西に海岸線を沿って行けばゼフィーリア。んでそっから北西に行けば、とうとうアリアドネー、か。

 おk。とにかく西に向かってればいいんだろ?

 やったろうじゃないの。山を掘って進むわけでもなし、なんとかなるだろ。

 覚悟を決めろ、俺! こんなんでへこたれてたら漢になるなんざ夢のまた夢だ。

 根性ォォォォォ!!

 

 

 

 

 ところで西ってどっちだ?

 ま、左っぽい方に行けばいいか。

 




嗚呼。ツッコミが欲しいよ。ぱっつぁん

『念』で攻撃したら原作キャラも『念』に目覚めるのでは?という感想をいただいたので独自解釈発動させます
本作では『精孔を開けさせるつもりでオーラを流す』という工程を行わない限り、『念』に目覚めることはないこととさせていただきたく
まぁ『念』で具現化した武器(周を使っていない場合)や、操作した動物(ワンワン)などで攻撃された場合、H×H原作でも精孔は開かないだろうなぁとも思いますし、『念』での攻撃=『念』を覚醒させるではないと私自身解釈していますので
ジャジャン拳で覚醒していたキメラアントは……元々の素質が人間離れしていたということで

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