漢を目指して   作:2Pカラー

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31.解放

 

 ――二年四カ月十六日前――

 

「ハッキリ言って出鱈目ね。アナタのアーティファクトは」

 

 呆れたようにそう零したのは先日俺と仮契約したフィオ。ちなみに今俺たちがいるのは『アトリエ』。フィオの作ったダイオラマ魔法球の中だ。

 

「そうか? 俺としては願ったり叶ったりなアーティファクトだけど、出鱈目って感じはしないんだよな」

 

 男になるという目的のためには最高に近いカードを引いたように思う。

 しかし仮契約カードを手にして数日試してはいるが、未だ満足いく結果は得られていなかった。

 

 

 アーティファクト。魔法使いとその従者が『契約』をしたとき、時に発生するオマケである。

 ネギま原作内においては魔法無効化に特化した神楽坂明日菜の『ハマノツルギ』や、思考を覗くことの出来る宮崎のどかの『いどのえにっき』が代表的だろう。

 そしてそれらに代表されるアーティファクトは、総じて強力な力を有している。それこそただの女子中学生が魔法使い同士の戦いに参加できるようになるほどに。

 しかし俺のアーティファクトはそれらと比べると一段劣るような気もするのだが。

 

 

 俺のアーティファクト。名は『如意羽衣』。俺の知識が正しいのなら、それは封神演義の登場人物、胡喜媚(こきび)のもつ宝貝(パオペエ)だったはず。といっても藤リュー版の封神演義しか知らないが。

 その能力は端的に言えば他者に化けるというもの。そのため胡喜媚は楊戩(ようぜん)と並んで変化(へんげ)の使い手として描かれていた。

 

 もっとも楊戩の変化能力と比べれば、如意羽衣の能力の方が俺にとってはずっと都合がいい。

 封神演義作中では、楊戩は一度見た相手ならば演技力まで完璧に変化して見せたが、胡喜媚はそのさらに上を行っていた。

 具体的には四不象(スープーシャン)という空飛ぶカバのガールフレンドに相応しいよう、己を変えて見せたのだ。つまりはカバになって。

 それは一つの事実を導き出す。すなわち楊戩の『実在の人物』を『観察』した上でその本人に変化するのと違い、胡喜媚は『イメージ』することで『実際には存在しないスープー族の娘・胡喜媚』への変化を可能としたのだと。

 全てはイメージ次第。ならば俺も『男の俺』をイメージすればその通りに変化できるということ。

 

「だっていうのになぁ」

 

 如意羽衣を使う。変化するのは俺のイメージする男の俺。

 それは滞りなく成功する。いや、成功したように見える。

 金の髪は変わらず、しかし顔立ちは男の物。性別はしっかりと変わり、しかし魔力量はそのまま。俺のまま性別だけが反転したように見えるはず。

 だというのに、

 

(念が使えないとは)

 

 そう。アキレス腱となったのは俺の固有技法、念能力。

 どういうわけか『男の俺』では念が使えないのだ。

 

(イメージする力が足りないか。『念使いの俺』をイメージすると逆に男になれなくなるし)

 

 さすがに念能力を捨てることは出来ない。というか念が使えないならば、それは俺以外の人間なのではないかと思えてくる。俺っぽい誰かではなく、俺は『俺』になりたいのだ。妥協はできない。

 

「ままならないなぁ」

 

 如意羽衣を解除する。ため息を一つ。

 と、そんな俺の様子が不満だったのかフィオが尋ねてきた。

 

「何が不満なのよ。十分すぎるほど強力なアーティファクトじゃない? あのサウザンドマスターへの変化まで完璧にこなしておいて。記録映像を見ただけだっていうのに」

 

「ジャック・ラカンは無理だったけどな。つか俺が成りたいのは『強者』じゃないんだよ。他人の力で勝てても嬉しくもなんともないし」

 

 フィオには言ってないが、ナギへの変化がすんなりできたのは、おそらくは本人を一度目にしているからだろう。ちなみにフィオやヘルマンにも変われることが出来た。

 

 やはり経験を積むしかないか。より多くの変化をこなし、より多くの強者を観察する。

 できればジャック・ラカンを見ておきたい。あとは旧世界のサムライマスター。アルビレオ・イマ。そして闇の福音。そうやってレベルアップをしていけば、いずれは『俺』への完全な変化も可能だろう。

 

「なんたって理論上は素粒子への変化も可能なんだから」

 

「なんですって?」

 

 ふと漏らした言葉に反応したのはフィオ。俺としては封神演義内のあるエピソードを思い出していただけなのだが。

 

「いや、だから素粒子への変化「ありえないわよ」」

 

 おおう。被されるような否定は心に来るものがあるな。

 

「でも出来るはずなんだけど」

 

「……ハァ。あのね。素粒子の質量がどれだけか分かる?」

 

 いや、知らんけど。

 

「素粒子と言えばクオークやレプトン。分かりやすいようレプトンに分類される電子を例に出すわね」

 

「はい」

 

 思わずうなずく。なんとなく怒っているように見えるのは気のせいですよね?

 

「電子の質量は約9.109×10のマイナス31乗キログラム。アイカがそれだけの質量まで体積を減少させるには何倍掛ければいい?」

 

「……じゅ、じゅうのまいなすさんじゅういちじょう?」

 

「……はぁ。まぁいいわ。スケールを考えればその程度どうせ誤差だし。ならそれだけ縮ませられたとして、同じだけ増やす方向に持って行けるならば、」

 

「じゅうのさんじゅういちじょう倍?」

 

「それだけの質量をもつ物体が何て呼ばれているか分かるかしら?」

 

 はて? なんと呼ばれるかも何もないんじゃないか? 超重い物体とか?

 

「……天体よ」

 

「はい?」

 

「天体。ちなみに、太陽に質量が十の三十乗キログラムと言われているわね。わかったかしら? 素粒子への変化なんて発想が何処から出てきたのか知らないけど、そんなものは忘れてしまいなさい。宇宙開闢でもしたいなら別だけどね」

 

 や、やっぱり怒ってませんかね? あれか? 研究者タイプだから理論的でないこととか嫌いなのかね? そういや念能力について聞かれたとき『なんとなくグワァーっと』って言ったらアイアンクロー喰らったしな。

 

「さて、妄言は放っておいて次の実験をするわよ。羽衣のみを別の物へ変化させるとかいう『部分変化』。実に興味深いわ」

 

 そうして、その日の『第六回アーティファクト検証会議』は進むだった。

 

 

 

 ――現在 エヴァンジェリン邸前――

 

「ナギ……なのか?」

 

 どこか呆けたような表情でエヴァンジェリンが尋ねる。

 

 それに対して、先ほどまでアイカだった彼はにこりと目を細め、

 

 くしゃり

 

 エヴァンジェリンの頭を撫でた。

 

 そして、

 

「んなわけねぇだろ。アホか」

 

 世界が止まった。

 先ほどとは別の意味で。

 

 

 

 

「~~~~~~ッッッ!!!」

 

 やっと再起動したかと思った途端、顔を真っ赤にするエヴァンジェリン。アイカも我慢の限界と言ったように笑い出していた。

 彼らの周囲は周囲で、フィオは呆れたようにため息をつき、チャチャゼロはアイカ同様爆笑。千雨は突然変身したアイカに口をパクパクさせているという、おかしな風景が広がっていた。

 

「まぁそんな怒んなよ。中身以外はアホ親父を完全再現してるはずだから。なんならディープキスでもしてやろうか?」

 

「い、いいいいるか!! それといい加減頭を撫でるのをやめろ!!」

 

「そんなこと言っちゃって。ホントは期待しちゃってるくせに」

 

 そういうアイカは依然としてぐりぐりとエヴァンジェリンの頭を撫でるのをやめない。

 

(なんせ『原作』じゃ中身が変態(アル)なナギにも色々要求してたしな。この姿になるのは心の底から嫌だけど、なっちまった以上少しくらいなら付き合ってやってもいいんだが)

 

 もっともアイカの『如意羽衣』とアルビレオ・イマの『イノチノシヘン』は全く違う物。『イノチノシヘン』の能力である完全再生(リプレイ)は本人の人格まで含めているのだから。

 

「ま、いいや。それより用事を済まそう」

 

 外の騒々しさも大変なことになってきていることだし。そう続けるとアイカは膝をつく。

 元々が小柄なエヴァンジェリンが血を吸いやすいようにと。

 

「やっぱ首筋とかの方が良いのか?」

 

「……いいのか?」

 

「いや、俺が質問したんだけど」

 

 こちらに聞かれても困るとアイカは言うが、そうではない、とエヴァンジェリンは首を振る。

 

「……本当に血を吸ってもいいのか?」

 

 フードを外し、膝を突き、目線を合わせている今だからこそわかるエヴァンジェリンの瞳の揺らぎ。

 まるで何かに怖がっているようで、まるで今にも逃げ出しそうで、

 それでアイカは気づいた。

 

(ああ。なるほど)

 

 それはここ何年かで見慣れた瞳。フィオが時折見せていたものと同じだった。

 

(こいつも拒絶されることに怯えてるのか)

 

 世界というものは彼女たちのような存在には厳しいらしい。アイカにとって見ればフィオはフィオであり、エヴァンジェリンはエヴァンジェリンだ。六百万ドルの賞金を懸けられた吸血鬼だからといって、何故恐れないといけないのか、アイカには理解が出来なかった。

 

 故にアイカはそっと腕を伸ばすと、

 迷ったように立ちすくんでいたエヴァンジェリンを抱き寄せた。

 

「いいんだよ。好きなだけ吸うといいさ」

 

「……その姿で、…………優しくするな」

 

 消え入るような声がアイカの耳元で囁かれる。

 

 そして、

 

 かぷりと、

 

 アイカの首筋にエヴァンジェリンが噛み付いた。

 

 

 

 

 

 この日、十五年の長きに渡って封印されてきた闇の福音(ダークエヴァンジェル)は、完全に力を取り戻した。

 

 童姿の闇の魔王が、再び牙を取り戻す。多くの魔法使いが期待を寄せる『英雄の子』の手によって。表舞台より姿を消した『英雄』の血をもって。

 




ヤバい。変化ヤバい。まじでヤバいよ。マジヤバい。変化ヤバい。
まずデカくなれる。もうデカいなんてもんじゃない。超デカい。
「東京ドーム20個ぶんくらい?」とかそんなレベルじゃない。
太陽とか余裕。単位とかおかしい。何キロとか何トンとか超越してる。アイカの変化で銀河がヤバい。
あとイメージ次第ってのがヤバい。フィクションとか関係ないの。
なんにでもなれる。しかも魔改造も可能。UBW涙目なんて凄すぎる。
『ぼくのかんがえたうちゅーさいきょーのきゃらくたー』とか余裕だから。うちゅーさいきょーて。⑨でも言わねぇよ。最近。
でも変化なら出来る。イメージ次第だから出来る。凄い。ヤバい。
とにかくお前ら、変化のヤバさをもっと知るべきだと思います。
そんなヤバい変化を使いこなせないアイカがんばれ。もっとがんばれ。超がんばれ。
(※宇宙ヤバいのコピペを改造しようとしたらいろいろ力尽きたでござる。というかキビちゃんの風への変化を見る限り、現象への変化も可能っぽいのでビッグバンも起こせますよね? うん。宇宙ヤバい)

そして後半。
実はエヴァの吸血シーンを丸々カットしてます
本当はゴクゴク飲んでます。そらもう牌の透ける麻雀でやり取りできるくらいの血をエヴァは吸ってます
なので解放されました。でもそのシーンはカットです
いやね、書いたんですよ。実は。ノリノリでね
でもね、こういう時はやっぱ「字面だけでみるとエロ!?」な感じに仕上げるのがしきたりじゃないですか
ぴちゃぴちゃちゅるちゅる吸うわけですから
それに対してアイカも「んっ……」とか言ってみたりしてね
頑張って吸い出そうとするエヴァの息が耳にかかったりね
ちょっと吸われ続けたせいで疲れちゃう描写とかね
こういうシーンでは絶対必須じゃないですか
エヴァ編ラストはめくるめく官能モドキにしようとスタート時から考えてたくらいですし
でもね、途中で気づいたんですけどね、
これ、アイカじゃなくナギ(見た目)だったんですよね
気づいた瞬間バックスペース連打でしたよ。ハハハ
……如意羽衣のお披露目回は別にすればよかった orz
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