「よし、これで7つ目! ネコちゃんの調子はどう?」
現在は古代林のエリア9。結局、相棒さんを説得することができず一緒に深層シメジの採取中です。
「ボクも3つ持ってるニャ」
そして、相変わらずと言うか何と言うか、この相棒の運がすごい。確かに深層シメジは出やすいと思うけれど、まさか1つのエリアだけで目標の8つまで集まるとは……
うむうむ、これで目標も達成したわけだし、あとは帰るだけだな。本当に運が悪いと8つ集まらない時とかあるし、相棒が一緒に来てくれて助かった。
「あっ、じゃあこれでもう足りるんだね」
「うニャ。納品に戻るニャ」
採取に夢中となっている振りを続け、クエスト中も相棒とはできるだけ喋らないように気をつけた。多分、バレることはないと思うけれどやっぱり用心した方が良いと思うんだ。
「う~ん、もうちょっとかかると思ってたのに、あっさり終わっちゃったね」
「助かるニャ」
一応、ソロ用のクエストだしなぁ。そりゃあ二人でやれば直ぐに終わる。
さてさて、これで帰ることになるわけだけど、帰ったら帰ったらでまた面倒なことになってそうだ。多分、今回のことはギルド側のミスで俺はそんなに悪くないと思うけど……まぁ、面倒なことになったらこの相棒に全部押し付けて俺は逃げるとしよう。すまんな相棒。
「そっか……ねぇ、ネコちゃん」
「どうしたニャ?」
何処か遠くの方を見ながら言葉を落とす相棒。その顔を俺からは見ることができない。
「私さ、古代林に来たのって初めてなんだ。だから、できればで良いけど、もうちょっと探索してもいいかな?」
……まぁ、そう思うよな。初めて行くマップってのはやはりワクワクする。だから、相棒のその気持ちはよく理解できた。
できるなら、さっさと帰ってしまいたいところ。けれども、相棒のその提案を断ることは流石にできないだろう。
「了解したニャ」
「うん、ありがとう」
……ホント、ごめんな。
こんな姿じゃなければ、もっと違う接し方ができたはずなんだ。そして、例えこの姿だろうと、もっとちゃんと接してあげることだってできるはず。けれども、俺にはそこまでの勇気がないのですよ。無駄なプライドが邪魔ばかりをして、身動きなんて碌にとれない。
ホント、損な性格だよなぁ。
ディノバルドをあっさりと倒すことができ、また、深層シメジも早々に集めることができたため、のんびりと探索できるくらいの時間はあった。
相変わらず、俺はあまり喋らなかったけれど、それでも相棒は楽しんでいるように見えた。エリア10のシェンガオレンであったり、エリア8から見える壮大な景色。そして、エリア1にある大きな滝などなど。
俺自身も此処までちゃんと探索するのは初めてで、新しい発見もあったし、かなり楽しんでいたと思う。それに、この相棒とは長い付き合いなんだ。今はちょっと居心地が悪く感じてしまうけれど、それでも、一緒にいると安心できる仲間だと思ってしまう。だって、この世界へもう一度来たいと思っていた理由はこの相棒と会うためでもあったのだから。まぁ、この相棒が俺のことをどう思っているのかはわからないけど。
「ん~……なんだか、久しぶりにクエストが楽しいって思えたよ!」
「それは良かったニャ」
クエストを楽しいと思えた……か。はっきりと聞いたことはなかったけれど、俺たちと一緒にいた時はどう思っていたんだろうね? あの時だってきっと辛いこと、大変なことが沢山あったはず。それでも、この相棒はいつも楽しそうに見えたんだけどなぁ。
「それじゃ時間だし、そろそろ帰ろうか」
「うニャ。お疲れ様ニャ」
俺がその言葉にそう応えると、相棒は優しく笑ってくれた。そんな笑顔は随分と大人びて見えたと思う。
そのクエストの帰りの飛行船では、俺が寝たふりをしていたし、相棒も話しかけてくるようなこともなく、特に会話はなし。
本当は話さなきゃいけないことがあるんだと思う。けれども、何を話せば良いのかなんてわからないのですよ。こんな姿となってしまった自分にできることなんてほとんどないのだから。
もし、この姿じゃなく、人間の姿だったらちゃんと話すことはできたのかな? そんなことを考えたって仕方の無いことではあるけれど、その時の俺はどんな言葉をこの相棒へ送るのだろうか。
帰り道はそんなことばかりを考えていた。
そして、特に問題もなくベルナ村へ到着。
「ネコさん! 大丈夫だった? ケガとかしてないッ!?」
到着すると、飛行船の降り場にご主人がいて、いきなり抱きしめられた。
お、おぅ……嬉しいけど、もうちょっと優しく抱きしめてもらった方が俺は嬉しいです。
「べ、別に大丈夫だったニャ」
「はぁ……ホント心配したんだよ?」
それは申し訳ない。
こりゃあ、あれだ。自分からディノへ突っ込んでいったなんて絶対に言えませんね。何を言われるのかわかったものじゃない。
「ハンターさんもありがとうございました! 貴女のおかげで私のネコさんもこうして無事に……」
相棒に向かって頭を下げるご主人。
なんとも複雑な気持ちではあるけれど、俺のことをちゃんと思っていてくれたんだとわかって、それが嬉しかった。うむ、ご主人のため俺も頑張らないとだな。
「あっ、いや、そんなお礼を言われるほどじゃ……それに、もし私が行かなくてもそのネコちゃんだけでディノバルドは倒していたと思うよ?」
うん、俺もそう思う。正直、あのディノバルドはあまり強くなかったし。
ただ、あの場にいなかった人たちはそんなことを思わない。それに、この相棒は有名なハンターなんだ。だからきっと、今の相棒のセリフだってただの謙遜としか思われないだろう。
現にご主人だって、目を輝かせながら相棒を見ているし。多分、この相棒が此処まで有名になったのは、実力はもちろん。この性格も関係しているんだろうなぁ。コイツはちょっと遠慮しすぎなんだ。その性格のせいで逆に目立ってしまっている。
有名になるってのも大変だねぇ。そんなの俺は全力でお断りしたいです。
そのあと、例のごとくベルナ村の受付嬢から滅茶苦茶謝られもしたけれど、此方からは気にしてないと伝えておいた。てか、むしろこの段階でディノと戦えたのだから感謝しているくらいだし……
他にも色々と面倒なことがあるだろうと思っていたけれど、俺はそれで解放された。ただ、相棒さんはダメでした。ディノのことを聞きたいとか言う龍歴院の研究員たちに連れていかれました。
観測船があるのだし、俺が戦っていたこともバレているかと思ったけれど……まぁ、早く解放されたのだから文句はない。
「それにしても、ネコさんはあのハンターさんと一緒にクエストをやったんだよね。いいな~、せっかくのチャンスなのにさっきは慌ててたせいで全然会話できなかったし……」
少々落ち込み気味のご主人。
うん、あれだ。切り替えが早いのね。
「サインとかしてもらえば良かった……」
サインって……それほどにあの相棒が有名なハンターってことなんだろうけど、なんだか信じられません。
「サインならボクがしてあげるニャ」
「ネコさんのはいいよ。価値ないし」
お、俺だって、前にこの世界へいた時は握手してください。くらいは言われたことのあるハンターなのに……あの相棒と同じパーティーにいたのに……
まぁ、今はこんな姿だし、そんなことを言っても仕様が無いけど。あと、俺が恥ずかしいから相棒さんからサインをもらうのはやめてもらえると嬉しいです。
そして、その日の夜。
色々とあった日だったし疲れていると思っていたけれど、どうにも寝ることができなかった。
……ふむ、ちょいとお散歩でもしてこようかな。
そんなことを思い、ご主人を起こさないよう、そっと身体を起こして家を後に。
そう言えば、当たり前のようにご主人と一緒に生活しているけど、やましいことは何もしてないです。着替えの時だって見ないようにしてるし。
ただ、このご主人ってかなり無防備なんだよなぁ……一緒にシャワーへ誘われたときは本当に困った。まぁ、それも俺がネコだからだろうけど。
家を出て、上を向くとそこには満天の星空がどこまでも広がっていた。うむうむ、やはりこの世界の星空は何度見ても飽きない。
俺は溶岩島のベースキャンプから見る星空が一番好きだけど、ベルナ村から見る星空だってそれに負けないくらい綺麗だ。
バルバレや大老殿と違って、ベルナ村の夜は人が本当に少ない。料理屋もやってないし。だから明かりも少なく、星空が映えるのだろう。
そんな星空を見ながら、オトモ広場へ移動。昼間はネコ嬢が歌っていたりフェニーに遊ばれていたりと騒がしい場所だけど、夜になるとそんな昼間のことが嘘みたいに静かな場所となる。
そんな場所から見る星空が俺は好きだった。
今日もまたひとりそんな場所で、何かしらの想いを馳せながらのんびりとあの星空を眺めるとしよう。
けれども、どうやらその日はいつもと勝手が違い、俺が訪れる前に先客がひとり。
「あら? ネコちゃんだ。こんな時間にひとりでどうしたの?」
相棒さんでした。
お前こそ何故此処にいる。
流石に逃げることはできないだろうし……ホント、今日は色々と起こる日ですよ。
本当は相棒さんとの会話までのつもりでしたが、いつも通り文字数が増えてきたので止めました
と、言うことで第9話でした
相棒さんとのお話はもう少しだけ続くそうです
てか、多分次話が一番深くなる気がします
では、次話でお会いしましょう