ネコの手も狩りたい【完結】   作:puc119

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第10話~また~

 

 

「とりあえず、こんばんはネコちゃん」

「……こんばんはニャ」

 

 はてさて、こりゃあまた困ったことになっちゃったね。

 俺はひとりでのんびりと星空を眺めていたかったんだけどなぁ。俺と相棒以外には誰もいない二人だけの世界。そんな世界で話なんてしたら、絶対にボロが出る。

 

 とは言え、流石に直ぐに帰ったらおかしいよなぁ。

 

「それにしても、ベルナ村って夜は皆寝ちゃうんだね。私なんてずっと研究員さんたちに捕まっていたから、夕御飯だって食べてないのに……」

 

 そりゃあ、アレだ。何と言うかご苦労様です。

 そう言った相棒だったけれど、食べるものを持っていないわけではないらしく、干し肉のような物とお酒らしき物を持っているのが見える。つまり、相棒が此処にいるのは飯でも食べに来たと言ったところか。

 

「……ネコちゃんも私と一緒に来てくれれば良かったのに。ディノバルドのことは私よりも詳しいでしょ?」

「ボクはネコだから難しいことはわからないニャ」

 

 俺がそんな言葉を落とすと、相棒はため息をひとつ落としてから、静かに笑った。そんな相棒の姿は昔に見たソレと比べて、やはり大人びて見えてしまう。

 此方の世界と元の世界では時間の進み方が違うけれど……成長、するんだもんな。そんな相棒を見ていると、最初に出会った時のことばかりを思い出す。

 

「せっかくだしさ、お話しようよ。お話」

 

 そう言ってから、自分が座っている隣を相棒はポンポンと叩いた。

 ……正直なところ、今すぐにでも逃げ出してしまいたいところ。けれども、やっぱり罪悪感だとかそう言うものがあって、その提案を断ることはできそうになかった。

 

 大きな石の上、相棒の隣に座ってみる。今の季節はよくわからないけれど、夜の空気に当てられた石の表面はやたらと冷たく感じた。

 隣に俺が座ったことを確認して、また小さな笑をひとつ落とす相棒さん。

 

「……ネコちゃんはさ、私のこと知ってるんだっけ?」

 

 ポツリポツリゆっくりと、相棒は言葉を落とし始めた。

 そりゃあ、もう知ってますとも。それもかなり詳しく。だって、最初にこの相棒とパーティーを組んだのは俺なのだから。

 

「噂は聞いているニャ」

 

 まぁ、そんなことを言えるはずがないんですけどね。

 だから、今の俺にはこんなことしか言えません。

 

「そっか。……私もね、昔は強いハンターに憧れたんだ。皆から尊敬されるようなハンターに」

 

 昔は、か。つまり、今はもう違うってことなんだろう。

 俺はどうだったかなぁ……確かに強いハンターには憧れたけれど、尊敬されるようなハンターには憧れなかったかな。ただひたすらに狩りを楽しめていればそれで満足していた。

 

「私もどうしてこうなっちゃったのかなぁ、って思うけど、今こんな状況になるとさ、もうよくわかんなくなっちゃうんだ。そりゃあ、皆のために頑張ろうとは思うし、私にできる限りのことはやってる。でも、やっぱり――周りの期待が重い」

 

 ……これはきっと相棒の嘘偽りない本心。

 そう言えば、昔から君はそうだったもんね。確かアレは、飛び級をして上位ハンターになれるときだったかな。あの時もそうだった。

 

「……私はそんなすごいハンターじゃないんだけどなぁ」

 

 いや、間違いなく貴方は最高のハンターです。少なくとも俺が今まで見てきた中では。武器種が違うから直接比べることはできないけれど、あの4人のパーティーで一番上手かったのはこの相棒だ。それだけは確かなこと。

 どうしてそのことがわからないのかねぇ。

 

「それもこれもね、きっとあの二人がいけないんだ」

「……あの二人ってのは誰ニャ?」

 

 話の流れ的にどう考えても俺と彼女のことです。なんだこの胸が締め付けられるような想いは。

 

「んとね。もしかしたら知ってるかもしれないけど、ハンマーを使ってた彼と狩猟笛を使ってた彼女のこと。それで特に彼の方がいけない!」

 

 い、いや、確かに色々と飛ばしながら進んだ気もするけど、君にはそれだけの実力があってですね。

 それにほら、今はこうして立派なハンターとなったわけですし……まぁ、それが問題らしいんだけど。

 

「そ、その二人はどうしてるのニャ?」

「そんなの私が聞きたいよ! 勝手に私を引き上げて、勝手に消えて……漸く諦められたと思ったらまた帰ってきて、また私を勝手に持ち上げて……そして、また勝手に消えちゃった」

 

 それは、あの……本当にすみませんでした。

 でも、最初にパーティーを組もうって言ってきたのはこの相棒からなんだよなぁ。そこからたった2ヶ月でバルバレの英雄にしたのは俺たちが原因だろうけど。

 もうちょっとゆっくり進めても良いとは思っていたけど、進むことができるのに止まっているのは苦手なんだ。俺もあの彼女も。

 

「……その二人のこと怒ってるかニャ?」

「そりゃあ怒ってるよ!」

 

 ですよねー。

 でも、仕方無いんです。俺たちもどうやってこの世界へ行けるのかわからなかったし、消える時だってほぼ一瞬だったし。それに、いくら相棒とは言え全てのことを話すことはやっぱりできなかった。まぁ、多分かなり気づかれていたと思うけど。

 

「……でも、それ以上に感謝してるし、やっぱりもう一度会いたいかな。だって、あの二人がいた時はずっとずっと楽しかったもん」

 

 何処か諦めたような表情で相棒はそう言った。

 

 ……罪悪感で本当にヤバい。多少は俺たちのことを思っていてくれたら嬉しいと思っていたけど、まさか此処までとは思っていなかった。

 

 いっそのこと、此処で本当のことを言えばどうなるのだろうか。

 もし、此処で本当のことを言ってしまったら、どうなってしまうのだろうか。

 

 そんなことばかりを考えてしまう。

 メンタルはそんなに強くないんです。だからこれ以上は本当にマズイ。どうにか話を反らしたいけど、どうすりゃ良いんだろうか。

 

 ……そう言えば、この相棒は俺のことをどう思っているんだろう。それを聞くのは怖いし、なんだかずるい気がするけれど、どうしても気になってしまう。嫌われてはいなかったんじゃないかと思うけど……

 

「はぁ……まぁ、そんなことを言ってもしょうがないんだけどね」

 

 そうでもないですよ? あの彼女はいないけれど、俺は此処にいますし。

 

「君のご主人さんってさ、やっぱりあの飛行船乗り場にいた女性のハンターなの?」

「うニャ。ハンマー使いのハンターニャ」

 

 そして、そのハンマーを使い始めたのは俺が原因らしい。ハンマー使いが増えるのは嬉しいけれど、武器が武器だけになんとも複雑な気分だ。

 

「ハンマー……か。でも、珍しいよね。私もハンマーを使っているハンターさんってほとんど知らないし」

 

 うん、俺も知らない。

 カッコイイ武器だと思うんだけどなぁ。確かにパーティーじゃちょっとアレだけど、ソロなら普通に戦えるくらいの強さはあると思う。

 

「……ハンターさんのパーティーにいたハンマー使いのハンターはどんなハンターだったのニャ?」

 

 話の流れもあったけれど、やっぱり自分がどう思われていたのか気になってしまい、結局聞いてしまった。

 でも、やっぱりずるい気がして、言ってから激しく後悔。どうして、自分から墓穴を掘るようなことをしているのやら……

 

「んとね。すごく変わった人だったよ。リミッターが外れると勝手に滅茶苦茶な行動を始めるし、それでいて変に私たちへ気を遣うし、でも、意地悪だし」

 

 聞かなきゃ良かったわ。

 何一つ褒められなかった。其処までぶっ飛んでいなかったと思うんだけどなぁ。てか、普通にショックだ……

 今日だけで俺のメンタルはどれだけボコボコにされているのやら。

 

「……でも、一番頼りになる人だった。私に色々と教えてくれたのは彼だったし、最初は私と彼、二人のパーティーから始まったんだ」

 

 ……やっぱり聞かなきゃ良かったって思う。それほどに、相棒の言葉は今の俺に重かった。

 恥ずかしさやら、罪悪感やらで今直ぐにでも逃げ出したいところ。

 

「彼と一緒に行くクエストはいつも楽しかったし、今の私がいるのは彼が原因で、彼のおかげ。本当に上手くてカッコ良くて……私の大好きな人。そんな人だったよ」

 

 涼しい夜だと言うのに顔が暑い。

 俺こそ、そんな人間じゃなかったんだけどなぁ。俺はただ、この世界へ来て純粋に狩りを楽しんでいただけなんだ。そんな俺にこの相棒を巻き込んでしまった。それは……失敗だったのかな。

 

 

「それなのに、彼ったら勝手に消えちゃったんだ。もしかしたらまた会えるのかな。って思うけど、もう会えないんだろうなぁって思う自分がいて……でも、やっぱりもう一度会いたくて。そんな今の私を見たら、彼はなんて言ってくれるんだろうね?」

 

 

 そんな相棒の言葉を聞いて、プツリ――と俺の中で何かが切れた。

 

 座っていた石の上から退き、大きく伸びを一度。

 

「ネコちゃん……?」

 

 こんな状態の俺がこの相棒にできることなんて何もない。それでも、言っておかなきゃいけないことがあるだろう。だって、この相棒が此処まで自分に自信がないのは、きっと俺がはっきりと言ってあげなかったことが原因なのだから。

 

「はっきりと言っておく」

「へっ? あっ、う、うん」

 

 語尾に変な言葉はつけない。今ばかりはネコの俺じゃない状態で言葉を伝えたかったから。

 バレる? 知るかそんなもん。今はそれ以上に大切なことがあるだろう。

 

「お前はもっと自分に自信を持て。お前は俺が見てきたどのハンターよりも上手いんだ」

「えっ、ちょっ、あの……いや、そんなことないよ。だって、笛ちゃんとか、あの彼の方が……」

 

 混乱気味の相棒。

 確かにあの彼女もかなり上手い。けれども、それ以上にこの相棒は上手かった。そしてもちろん、俺よりもずっと。

 

「俺が言うんだから間違いない。どれだけお前を見てきたと思ってるんだ。だから、もっと自信を持ってくれ……」

 

 きっと俺はまた消えてしまう。

 そして、いつか絶対に会えなくなる日が来ると思うんだ。そうなった時も、この相棒がひとりでも頑張れるようになっていてもらいたい。

 実力は文句なし。あとは気持ちだけ。

 

「…………」

 

 ポカンと口を開け、固まる相棒。

 俺も俺で、もう自分が何を言っているのか分かってません。絶対にいらんことまで言ったよなぁ。

 

 う、うむ。流石にこれ以上はダメだ。恥ずかしさとかそんな感情でどうかなりそうだ。

 

 

()()直ぐ隣に立ってやる。とりあえずそれまで頑張れ」

 

 

 だから最後にそんな言葉を落として俺はその場を後にした。

 

 ああ、もう! 今日は寝ます。おやすみなさい!

 

 

 






多分、まだきっと大丈夫……なのかなぁ

と、言うことで第10話でした
ようやっと、相棒さんのお話が終わりっぽいですね
次話からはまたご主人さんと頑張るお話となりそうです

では、次話でお会いしましょう

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