ネコの手も狩りたい【完結】   作:puc119

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第12話~遠いからこそ面白い~

 

 

「クエストへ行くのはいいけど、何のクエストへ行くの?」

 

 俺はまだクエストへ行くと言っていないけれど、流れ的に俺も一緒に行かないとだよなぁ。しかしまさか、また相棒と一緒にクエストへ行くことになるとは思わなかった。

 

「え、えと、それはまだ決めてなくて……あと、実はまだ武器が完成してないから直ぐには行けないんです」

 

 ああ、ご主人ったら何の考えもなしに、相棒さんを誘ったんだ。それほど緊張していたってことなのかねぇ? まぁ、このご主人は声をかけられないから集会所のクエストを受けられないくらいなんだ。それなのに、相棒へこうやって声をかけたのはかなり頑張ったんじゃないかと思う。

 

「ありゃ、そうだったんだ。武器は何時頃完成するのかな?」

「あっ、えと、確か今日の夕方だったかと。だからクエストへ行くのは明日になってしまうんですが……」

 

 無理をすれば今日の夕方には出発できそうだけど、まぁ、其処までする必要もないか。ご主人がこれだけ頑張っているんだ。その頑張りのためにも相棒には一緒に行ってもらいたいけど……

 

「うん、それなら大丈夫だね。私もまだまだ時間はあるし」

 

 それは良かったよ。

 これでご主人の頑張りも報われると言うもの。俺の気持ちは複雑だけど、今ばかりはご主人のことを第一に考えよう。

 

「それでクエストは……あっ、じゃあ、ネコちゃんが決めてよ」

 

 ……何故、俺? こんな機会なのだし、其処はご主人か相棒さんが決めれば良いと思う。ただのオトモである俺が決めるのはどうなのだろうか。

 

「えと……どうしてボクが決めるのニャ? せっかくなのだし、ご主人やハンターさんが決めた方が良いと思うニャ」

 

 正直なところ、行きたいクエストはある。今のご主人はまだまだ駆け出しのハンター。だからどうしてもまだ行けないマップがあって、集められない素材がある。その素材を集めておけばかなり美味しい。

 

 そして、俺の言葉に対して相棒は――

 

 

「……その理由、言った方がいい?」

 

 

 そう言った。

 クスリと何処か意地の悪い笑みを浮かべながら。

 

 ……えっ? なに? も、もしかしてバレてるの? それともただのハッタリ?

 

 う、うーん、本当のところがどうなのかは分からないけど、そんなことを聞けるわけがない。はぁ、なんだか相棒にしてやられた気分だ。

 唯一の救いは俺たちの会話に対して、ご主人が首を傾げていること。流石にこのご主人へいらないものを背負わせたくはない。

 

「……わかったニャ。じゃあ、ボクが決めるニャ」

「うん、私はそれがいいと思うよ」

「お願いね、ネコさん」

 

 色々と思うこともあるけど、まぁ、丁度良いと考えよう。

 多分、この相棒が一緒なら下位クエストは全部いけると思う。あのディノバルドと戦う許可が下りていたくらいだし。

 んで、俺が今一番行きたいのは“火山”のクエスト。そこなら次の武器強化に必要な“ドラグライト鉱石”を採取することができる。てか、下位だと其処でしか採取できない。一応、オオナズチからも取れるけれど現実的ではないだろう。

 

 しかし、現在のご主人の装備は初期防具一式とかなり脆い。だからディノバルドだったりブラキ、ウラガンキンなんかと戦うのは厳しそうだ。ショウグンならギリギリ行ける気もするけれど、いや、アレも厳しいか。

 そうなってくると……まぁ――

 

 

「火山の採取ツアーが良いと思うニャ」

 

 

 そんなところになるのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、次の日。ご主人の武器も無事強化が終わり、クエストへ行く日となりました。

 因みに、昨日はクエストへ行く話が終わったところで、流石に疲れていたのか俺に限界が来て家へ帰りずっと寝てました。まぁ、その前の日は色々あったもんなぁ。そうなってしまうのも仕方無いと言ったところ。

 それにこの身体のせいか、以前よりも睡眠が多く必要になったと思う。元気ドリンコでも飲めれば良いのだろうけど。

 

「うー……緊張するね、ネコさん」

 

 いや、そうでもないです。むしろ、しっかり寝られたから、今日は調子が良いくらいです。

 今は火山へ向かう飛行船の上。今回は採取ツアーだし、危ないことも特にない。乱入モンスターも確かラングロトラだけだと思う。

 ただ、このご主人は初めての集会所クエスト。それでいて、憧れ(?)のハンターと一緒なんだ。緊張してしまうのも仕方無いのかな。

 

「ちょ、ちょっと私は中で休んでいるから、もし火山に着いたら起こしに来てくれる?」

「了解ニャ!」

 

 う~ん、せめてクエスト中はいつもの調子になってくれれば良いけど、この様子じゃそれも厳しいかもしれない。

 せっかく勇気を振り絞って相棒を誘ったんだし、もっと話しかけたりとかすれば良いのにね。やっぱりいきなりってのは難しいのかねぇ。

 

 ご主人を見送ってからはひとりに。飛行船の甲板の上で感じる風は心地よく。眺めだってなかなかのもの。ただ……大丈夫だとは思うけど、もし飛竜に襲われたりしたらどうするんだろうね? 炎のブレスでも喰らえば爆発しそうだ。

 

「あれ? 槌ちゃんはどうしたの?」

 

 そんなことを考えていると相棒さんの声。

 むぅ、また二人きりですか。今度こそ何を言われるのやら。てか、“槌ちゃん”ってのはご主人のことで良いんだよね?

 

「……うニャ。今は中で休んでいるニャ」

「えっ? もしかして、体調が悪かったりとかしたの?」

 

 体調が悪いと言えば悪いけど……問題はないと思う。

 

「別に問題ないと思うニャ」

「そうなの? それなら良いけど……」

 

 正直、俺は不安です。何事もなくクエストが終わると良いんだけどなぁ。素材は確かに欲しいけど、今は無事に終わってくれることばかりを願います。

 

 

「……今は“ニャ”ってつけるんだね」

 

 

 そんな相棒の言葉にトクリと俺の中で何かが跳ねた。

 こう言うのは本当に勘弁してください。頭だって別に良くないし、心理戦だとかそう言うのは苦手なんです。

 

「そ、そりゃあ、ボクはネコだから仕方無いニャ」

 

 ジト目で俺を見つめる相棒さん。マジ怖い。

 だから、俺は目を逸らしました。伝えなかった俺が悪いし、もうなんかダメな気もするけれど、やっぱり本当のことなんて言えるわけがない。

 申し訳ないことだけど、こればっかりは許して欲しいんだ。

 

「……別に教えてくれないのは慣れてるからいいんだけどさ。だって、昔からそうだったもん」

 

 やめてください。俺の心に突き刺さります。

 いや、ホント、悪いとは思っているんだ。でもさ、もし本当のことを言ったところで仕様が無いじゃん。俺はこんな身体だし、今はあのご主人がいる。そんな状態でこの相棒と一緒にいられることはやっぱり難しいと思うんだ。

 

 なんて言い訳をしてみたり……情けないなぁ。

 

「だから、私は君が話してくれるまでもう聞きません。待つのだってもう慣れたし、きっと君には君の事情があるだろうし、なんか君をいじめてるみたいだし……」

 

 うん、正直今にも泣きそうです。

 

「でもね、いつか……いつの日か教えてくれたら私は嬉しいな」

 

 そう言って相棒は静かに笑った。

 ……今では遠い昔のように感じてしまうけれど、こんな会話を相棒とした記憶がある。あの時は確か、遺跡平原採取ツアーの帰り道だったかな。

 そして、その時、同じような会話をしたけれど――結局、相棒に俺のことを話すことはしなかった。

 

「……今度こそ、いつか話せるよう頑張ってみるよ」

 

 もしかしたら、また話すことができず別れてしまうのかもしれない。でも、今度ばかりは話すことができるよう頑張ってみる。今はまだできないけれど、ご主人と一緒に君の隣に立てるようなハンターとなったとき、今度はちゃんと話をしてみようと思う。

 

「約束だよ? 今度こそ! ちゃんと! 全部! 話してよ?」

 

 あー……ん~……そんなはっきりとは約束できないかなぁって思ったりするのですが……やっぱりほら、自分のことを話すのって勇気がいるし。

 てか、そもそもこれ以上話す必要ってあるの? だってもう俺だって分かってるだろうし……いや、口に出すことが大切なのも分かるけどさ。

 

「が、頑張ってみます……」

 

 これで、やらなきゃいけないことがまたひとつ増えてしまいました。ホント、この人生なかなか上手くはいかないものですね。

 

「そう言えば、君なら強いモンスターが出るクエストを選ぶと思っていたけど、どうして採取ツアーにしたの?」

 

 そして、ようやっと話題転換。俺はもう疲れました。まだクエストが始まってすらいないのにね。不思議だね。

 

「ん~……ご主人がまだ初期防具だからなぁ。それに大型種と戦った経験も少ないし」

 

 相棒の言葉に対し、俺がそう言うと……

 

 

 ――私の時は、そんなこと考えてくれなかったくせに。

 

 

 なんて言葉が聞こえた気がした。でも、きっと気のせいだろう。気のせいであってくれ。

 それに、あの時だって一応、相棒のことを考えて……ああ、うん。あんまり考えてなかったね。何段階かすっ飛ばしてた気もするし。

 

「はぁ……」

 

 そして、相棒さんのため息。

 心が折れそうだ。

 

「……優しいね、君は」

 

 そんなことはない……と思う。

 今だって、目の前の人間に此処まで気を遣わせてしまっている。いくら気が置けない仲とは言え、俺は迷惑をかけすぎだ。

 ホント、いつになっても成長してくれないものですよ。

 

「ま、まぁ、とりあえず今日はよろしく頼む。危ないことはないと思うけど、あのご主人をフォローしてくれれば嬉しいよ」

 

 どうにも空気がまた先程の感じに戻りそうだっため、無理やり終わらせてみた。

 

「うん、わかった。君の頼みだし私もできるだけ頑張ってみるよ」

 

 そうしてくれると有り難い。

 ホント、いつも頼りにしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな会話をしてからしばらくして、火山へ到着。

 ギリギリで踏みとどまっていた状態から、完全に一歩進んでしまった気もするけれど、どうにかまだ落ちずに空中へいられているんじゃないかと思う。ほら、空中はセーフなんだ。

 

 ホント、相棒さんにはいつもいつも迷惑をかけっぱなしだ……いったいどれほどの借りができているのやら。

 

「うわっ、火山って本当に暑いんですね」

 

 そして、ご主人もちゃんと起きてきてくれました。いつもの調子とまではいかないけれど、なんとかなるレベルだとは思う。

 

「えと、槌ちゃんはクーラードリンク持ってきてる?」

「はい! ちゃんと持ってきています!」

 

 旧砂漠ならまだなんとかなるけれど、火山でクーラードリンクを忘れたら悲惨だ。とは言え、その辺はご主人もしっかりしていたようで助かった。

 

 さてさて、それじゃサクッと目的の素材を集めてくるとしようか。

 

 

 

 

 その後の採取ツアーは特に何の問題もなく終了。

 途中でやはりラングロトラが乱入してきたけれど、戦うことはやめておいた。倒したところで旨味は少ないし、何よりやっぱりご主人が緊張やら何やらで動きが硬かったから。俺がよろしく頼むと言ったからか、相棒さんも一生懸命ご主人に声をかけていたけれど、どうやらそれが逆効果だったらしく、声をかける度にさらに動きは悪くなった。暑いエリアで顔を白くしているハンターとか初めて見たわ。

 う~ん、上手くいかないものですね。ご主人にはその相棒くらいすごいハンターになってもらいたいのだけど……

 

 とは言え、収穫はかなりあった。ドラグライト鉱石は十分な量が手に入ったし。貴重な虫であるドスヘラクレスも採取できた。うむうむ、上出来上出来。

 

「帰ったら打ち上げやろうよ、打ち上げ!」

 

 一方、帰りの飛行船ではしゃぐ元気な様子の相棒さんの姿が。それがなんとも懐かしい感じがして、何処か面白かった。

 俺もアレだけ話ができたおかげか、以前よりはこの相棒へ普通に接することができるようになったと思う。

 

「うニャ。ボクもビールが飲みたいニャ」

 

 暑い場所にずっといたのだし、今ばかりは冷たいビールを喉へ流し込みたいところ。

 とは言え、ご主人はどうなんだろうか? クエストが終わった時も随分辛そうに見えたけど……

 

「ご主人、大丈夫かニャ?」

「……私はもうダメかもしれません」

 

 頑張ってくれご主人。確かに酷いものではあったけれど、あれくらいならギリギリでセーフだと思うぞ。

 

「……でも、せっかくだし、私も打ち上げに参加したいです」

「ホント! ふふっ、それは楽しみだね」

 

 きっとこれで当分の間、相棒とクエストへ行くことはないだろう。それに、もしかしたらもう一緒に行くことだってないのかもしれない。

 けれども、今回のことはこのご主人にとって大きなものとなるだろうし、目標だって見えた。その目標は随分と遠い場所にあるけれど、そのくらいの方が面白い。

 

 やらなきゃいけないことが多すぎて目が回りそうになる。それでも、今回はかなり大きな収穫だったんじゃないかと思うんだ。

 

 いつかまた隣に立てるよう、全力でやってやろうじゃないか。

 

 そんなことをそっと心へ誓ってみました。

 

 







と、言うことで第12話でした
随分と引き伸ばしてしまいましたが、今度こそ相棒さんパートは終わりだと思います
終わりだと信じています
次話こそきっとご主人さんとネコさんのお話

では、次話でお会いしましょう
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