「よしっ! それじゃ頑張っていこっか!」
「おー」
場所は森丘という私が初めて来るところで、目的は雌火竜リオレイアの狩猟。
私の新しい防具も完成し、今はザザミ一式を装備している。以前までつけていたベルダー一式と比べて防御力もかなり上がったんじゃないかと思う。白ネコさん曰く、10倍くらい強くなったみたい。流石にそれは信じられないけど、強くなったことは確か。これからは強いモンスターも増えてくるだろうし、私も頑張らないと。あと、ハンマーもちゃんと強化しました。
新しい防具の見た目だけど……なんだろう。カッコイイと言うよりは可愛い感じ。装備していて少し恥ずかしいです。この装備はネコさんに勧められたものだけど、あのネコさんってこう言う装備が好きなのかな……
そんな私がリオレイアのクエストを受けたのは、白ネコさんの装備を作るため。だって、今の白ネコさんは頭にどんぐりネコヘルムを被っているだけで、胴装備は無し。武器だって、間違えて作ってもらっちゃったマッカォネコダガーと、強い装備じゃない。
だから私はリオレイアみたいに強いモンスターじゃなくて、ドスマッカォとかそのくらいの強さのモンスターを倒して装備を整えてからの方がいいと思った。だって、この白ネコさんはまだクエストへ行った経験がないのだから。
そうだと言うのに、白ネコさんは……
――レイアなら大丈夫。頑張れば倒せるから。
なんて言ってくれた。それは随分と頼もしいセリフだけど、正直不安しかない。ホント、その自信は何処から来るのだろう。いや、そりゃあ頑張れば倒せると思うけどさ……てか、いきなり大型種と戦うのって怖くないのかな?
そんななんとも不思議な感じの白ネコさんだけど……何を考えているのかよく分からないアイルーさんみたいです。昨日出会って一日一緒に過ごしたわけだけど、マイペースと言うか何と言うか……
ただ、ちゃんと私のことも考えてくれているみたいだから、悪い子ではないと思う。あのネコさんはどちらかと言えば熱血っぽい感じだけど、この白ネコさんはクールな性格。ほぼほぼ正反対な性格の2匹だけど、あのネコさんと仲良くなれるかなぁ。
「……初期エリアは5」
「了解。ありがとう」
う~ん、それにしてもリオレイアかぁ。こうして戦うのは何時以来だろう。最初は本当に苦労したなぁ。倒せないことはないと思うけど、苦手です。空を飛ぶし、火を吐くし、毒状態にされる尻尾攻撃は強いし……
むぅ、いきなり不安になってきた。
「私も頑張るから大丈夫」
そして、どうやらソレが表情に出ていたらしく、白ネコさんにそんなことを言われてしまった。情けないなぁ。でも、ありがとう。私も頑張るね。
「うん、一緒に頑張ろう!」
オトモに心配されているようじゃダメだ。色々と考えちゃうところもあるけど、ネコさんから言われたように、あのハンターさんくらい上手くなるって決めたんだ。それなら我武者羅でもいいから前へ進もう。
ネコさんと一緒にエリア5を目指していたけれど、途中でリオレイアが移動しちゃったみたいで、エリア2へ逆戻り。
リオレイアが移動したことは白ネコさんが教えてくれました。
そして、エリア2へ。
緑色の甲殻に覆われ、巨大な翼に長い刺のある尻尾。雌火竜リオレイア。陸の女王。ソレがいた。
白ネコさんがブーメランを当てたところで、リオレイアが私たちに気づき、大きな咆哮を出した。できるか分からなかったけど、とりあえずローリングをしてみる。
完全に咆哮を躱すことはできなかった。でも、その怯み時間はいつもよりもずっと短い。ネコさんからいいこと教えてもらっちゃったね。これはかなり助かります。
右腰へハンマーを構え、ブレスを吐き出したリオレイアの頭へ溜めていたハンマーを振り上げる。リオレイアの弱点は頭のはずだし、ひたすらに其処を狙っていこう。
突進を躱してからローリング。そのままリオレイアを蹴って飛び、全力でハンマーを振り下ろした。乗ってダウンを取らないと、私の腕じゃスタンなんて取れない。
一方、白ネコさんの様子だけど、怖がることなんて全くなく、ひたすらブーメランを投げつけていた。もしかしたら、経験がないからその怖さを分かっていないだけかもしれないけど、素直にすごいと思う。だって、初めての狩りでいきなり大型種のそれも飛竜種相手にちゃんと戦えているのだから。
そして、私も4回目のジャンプ攻撃で漸くリオレイアの背中へ乗ることができた。
「乗った! 援護お願い!」
「了解」
リオレイアは何度か戦ったことのある相手、初見モンスターだと失敗しちゃうことが多いけれど、リオレイアなら大丈夫。
そんなことで、乗り攻撃も無事、成功。
ダウンしたリオレイアの頭の前へ行き、ハンマーを2回振り下ろしてから、ぐるりと一回転してアッパー。
そこで、一回目のスタンを取ることができた。
「ぐぅれいと」
そんな白ネコさんの声。うん、ありがとう。頑張ってもう一回はスタンを取ってみるね。
スタンしたリオレイアへさっきと同じことを二回。それが終わったところで、リオレイアは起き上がり、また大きな咆哮を出した。
口からは炎が溢れているところを見るに、どうやら怒り状態になったみたい。此処からが大変だ。
怒り状態となって飛んだリオレイアは一気に私の場所まで飛んできた。
あっ、これはマズイぞ。なんて思って慌ててローリングをしてみたけれど、リオレイアは空中でグルリと回り、その尻尾が私に直撃。吹き飛びました。
この攻撃、嫌い。だって、全然避けられないんだもん。
吹き飛ばされた私は毒状態に。ただ、思った以上にダメージは少ない。新しい防具を作っておいて本当に良かったと思う。
「ちょっと回復するから、少しの間頑張って!」
「……おまかせー」
ダメージは少なかったけれど、毒状態のままと言うのはちょっとマズイ。だからリオレイアはちょっとの間白ネコさんに頼んで私は回復。初めての狩りなのにゴメンね。
アイテムポーチから解毒薬と回復薬を取り出して一気に飲み込む。回復薬の味はあまり好きじゃないけど、文句を言っている場合じゃない。私も早く戦闘へ戻らないと。
そんな準備も終わり、再び戦闘へ戻ろうとしたけど、リオレイアは既にエリアを移動するために地面から脚を離していた。
「……あーレイア行っちゃうレイア」
そんな言葉を出しつつ、飛び去っていくリオレイアを見上げる白ネコさん。ちょっと可愛い。
とは言え、此処まではかなり順調だと思う。白ネコさんも普通に戦えているみたい……てか、初めての狩りとは思えないくらいだ。
「ご主人さん、ご主人さん」
斬れ味が落ちてしまったハンマーを研いでいると、白ネコさんが声をかけてきた。
「どうしたの?」
何か問題でもあったのかな? 今のところは何の問題もなかったと思うけど……
「えと、サマーソルトだけど」
ん~……サマーソルトってのは確か、私がくらっちゃったあの攻撃だよね。そう呼ぶこともあるって聞いたことがある。あの攻撃は本当に苦手だ。どう避ければいいのかがわからないんです。
「レイアに対して縦方向じゃなくて、横方向に避ければ良いと思う。ギリギリまで軸合わせをしてくるから、ソレをしっかりと見ながら横にコロンって」
……アドバイスをされてしまった。それも今日初めて狩りをしているアイルーさんに。
いや、このアドバイスは有り難いし、なるほどそうやって避ければいいのかって思うけど、なんだろうね、この気持ちは。
「……あと、レイアはしっかりと振り向いてくれるモンスターだから、突進の後とか無理やり頭を狙うんじゃなくて、尻尾のしたくらいで振り向きを待ってから攻撃すれば良いと思う」
そう言えば、確かに無理やり頭を狙っていたかも。なるほど、だから私は壁際で突進を連発されたのか。
「うん、わかった。ちょっとやってみる」
「頑張って」
……この白ネコさんって本当に今日が初めての狩りなの? 流石にそれは信じられなくなってきたのですが。
その後、白ネコさんからのアドバイス通りに色々と試してみた。
失敗してまたあのサマーソルトを1回くらっちゃったけど、そのあとは普通に避けられるように。どうやら今までの私はちょっと慌て過ぎていたみたい。しっかりと見れば、避けるのも難しくないし。
そして、突進の後は尻尾の下辺りで振り向きを待つと言うのもやってみた。たまに白ネコさんの方へ走っていっちゃうこともあるけど、頭すごく狙いやすいです。面白いくらいにハンマーが頭へ入る。
リオレイアはちょっと苦手なモンスターだったけど、今回のクエストのおかげでその苦手意識もかなり減ったと思う。それもこの白ネコさんのおかげです。
「よっし! 討伐完了! お疲れ様、白ネコさん」
「うん、お疲れ様」
倒したリオレイアからせっせと剥ぎ取りをしながら言葉を落とした白ネコさん。なんかもう熟練のハンターさんみたいだ……
さて、白ネコさんの装備のために私も剥ぎ取りをしないと。
「……白ネコさんってさ、本当に今日が初めてのクエストなの?」
帰りの飛行船で、疑問に思っていたことを聞いてみた。これで、初めてだと言われても驚きだし、初めてじゃないと言われても何があったのかと思う。
「ん~何と言うか……初めてと言えば初めてだけど、初めてじゃないと言えば初めてじゃないって感じ」
……うん? どう言う意味なんだろう。もしかして、私と同じように、このベルナ村でのクエストは初めてってことなのかな。この白ネコさんもかなり上手いみたいだし、きっと有名なハンターさんとかのオトモだったんだろうなぁ。これはまた頼もしいアイルーさんが私にオトモに……
「よくわかんないけど……白ネコさんがハンマーに詳しいのもその影響?」
あそこまで的確なアドバイスなんて普通はできない。つまり、この白ネコさんは昔ハンマーを使うハンターさんのオトモだったのかなって思った。
「うん、ハンマーばかりを使う人をずっと見てきたから」
そう言った白ネコさんは何処か恥ずかしそうに……でも、ちょっと誇らしげで嬉しそうだった。ただ、その表情の裏には悲しそうなモノが少しだけ見えた気がする。
この白ネコさんの過去に何があったのかわからない。でも、私のオトモになるまで1匹でいたと言うことはきっと……
流石にそこまでは聞けない。
ハンマーを使うハンターさんと言うと、直ぐにあの人が思い浮かんだ。でも、きっとそれは違うだろう。だって、あのハンターさんはオトモを連れていなかったと聞いているし。
うん……私じゃそのハンマーを使うハンターさんの代わりになんてなれないけれど、君のご主人として精一杯やってみます。
「そっか……ちょっと頼りないご主人かもしれないけど、これからもよろしくね、白ネコさん」
「うん、私もご主人さんが有名なハンターとなるよう頑張る」
ホント、私のオトモは頼りになります。
私なんかにはもったいない気がしちゃうけれど……私なりに頑張ってみるので、そんな私を助けてくれれば嬉しいかな。
これはまた、色々と勘違いしているパーティーとなりそうですね
彼が帰ってきたらその勘違いがもっと加速するんだろうなぁ
次話は、彼と相棒さんたちのお話の予定です