ネコの手も狩りたい【完結】   作:puc119

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第20話~無理~

 

 

 強い敵との戦いは面白い。

 一度ボコボコにされ、こんな奴勝てるのか? なんて思いながら戦略を練り、立ち回りを考え、そうしてギリギリで勝つことのできるような相手との戦いは本当に面白いと思う。

 

 とは言え、流石にこれはなぁ……

 

「よーし、それじゃ頑張ろー!」

「はい!」

 

 なんとも元気の良い二人。一方、俺はほとんど諦めています。

 普通のナルガ程度どうとでもなったと思う。そして、このメンバーなら上位ナルガだって倒すことはできただろう。けれども、白疾風は流石にキツい。二つ名モンスターの中では体力が低い方ではあるけれど、下位装備のハンターが挑んで良い相手ではないのだから。

 

 まぁ、そんなことを言っていても仕様が無い。できる限りのことをやってみようか。

 

「ちょっとタイムニャ!」

 

 だから、まずは色々と話し合う必要があると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって、白疾風ナルガのいたエリア6の隣にあるエリア5。

 

「えと、いきなりどうしたの?」

 

 本当はクエストが始まる前に確認しておけば良かったと思う。でも、まさか相手が二つ名だなんて思わなかったんだ。話している時間ももったいないくらいだが、必要経費と割り切ろう。

 

「二人の防具は強化してあるかニャ?」

 

 まずは防御面。二人共、下位防具だから、ビターンなんかを喰らえば確一も有り得る。そうなってしまうと、流石にどう仕様も無い。

 

「うん、私も弓ちゃんの防具もちゃんと強化してあるよ。重鎧玉が沢山あったし」

 

 おお、それは良かった。

 えっ? てか、もしかしてフル強化? そうだと嬉しいけれど、ちょっと豪華過ぎません? いくら下位防具とは言え、フル強化すればガンナーでも200、剣士なら400くらいの防御力になったはず。それだけあればまず確一もないだろう。まぁ、俺は無理なんですけどね。ビターンなら一撃で乙ると思う。

 

「了解ニャ。それで、あのナルガだけど……」

 

 ん~……これは言った方が良いのかな。防御力は足りているのだし、下手に意識させない方が戦えるかもしれない。二人共普通のナルガとすら戦った経験がない。そんな中で白疾風ナルガと普通に戦ったってどうせ勝てやしないんだ。それならビギナーズラック的なモノへ賭ける方が良い気もする。

 

「えと……尻尾攻撃をすると真空波のような風の刃を一緒に飛ばしてくるから気をつけるニャ」

 

 だから、あのナルガが普通のナルガではないことや、このクエストが上位の……それもかなり高難度のクエストへ当たることは伝えないでおいた。

 

「……どうしてそのことを知っているのですか?」

 

 そして、弓ちゃんからの質問。

 まぁ、ただのネコがそんなことを言えば、疑問に思うわな。そんな弓ちゃんの質問を受けた俺を見ながら、クスクスと笑う相棒さん。楽しそうだなコノヤロー。

 

「ナルガクルガとは戦ったことがあるからニャ」

 

 それは半分が嘘で、もう半分が本当のこと。そもそもアレ、普通のナルガじゃないわけだから、もう嘘も何もない気がするけど。

 

「……なるほど、分かりました。ようは強いから気をつけろってことで良いですか?」

「そうだニャ」

 

 理解が早くて助かります。

 弓ちゃんはブシドースタイルと、ナルガに対して相性はかなり良い。このパーティーの中では一番のダメージソースになるはず。俺はそもそもまともに戦えないだろうし、相棒もギルドスタイル。通常種と比べて隙が少ない白疾風ナルガが相手となると少々キツい。何より、初見ってのが痛い。

 

 それにしても、なんとも懐かしい気分になる。大老殿で初めて極限化モンスターと戦った時も、こうやって作戦……と言うか話し合いのようなことをしてから戦った。

 うん、悪い気分じゃあないな。

 

 さて、話し合いも終わり、いくらかの希望は見えた。ちょいと厳しい相手ではあるが、精一杯抗わせてもらおうか。

 

 

 そして、エリア6へ戻り、再び白疾風ナルガの元へ。

 

「翼と尻尾が赤、前脚が白、頭と胴体が橙、頼んだニャ!」

「了解!」

 

 俺がそう伝え、相棒の飛ばした虫が当たり、此方に気づいたナルガ。んで、ソイツの咆哮が響いた。

 できれば挑戦してみたいところだけど、どうせできやしないから、フレーム回避は諦め咆哮はガードします。

 

 通常のナルガもそうだが、コイツらはとにかく動きが早い。直ぐにステップされ距離を取られてしまう。通常のナルガなら距離を取られたところで、怖い遠距離攻撃はないが……この二つ名ナルガはちょっと面倒なんです。

 

「尻尾振り。真空波が来るニャ!」

「おおぉ、な、なんか飛んできた……」

 

 2連ステップで距離を取ってからの尻尾振り攻撃。それに合わせて飛んでくる風の刃。これが本当に鬱陶しいんです。

 ブシドースタイルならジャスト回避するだけで良いが、そうじゃない場合はフレーム回避か軸避けをしないといけない。ただ、そんなことをしていると手数が減っちゃうんです。だから、できればナルガに張り付きたいところなんだけど……

 

 ネコで白疾風ナルガと戦うの初めてなんです。立ち回りが本当にわからない。弓と同じように立ち回れば良いと思うが、どうにも上手くいかない。

 いや、ホントどうすっかね。

 

 なんて思っていると、尻尾から飛ばされた真空波が俺に直撃した。ダメージは体力の5分の2ほど。思っていたよりは痛くないが、回復薬のないネコにとってはかなり痛いダメージ。しかも、コレが通常攻撃なわけで、ビターンだったり飛びかかりはもっとすごいダメージだろう。さらに、怒り状態になんてなったらもっとダメージは大きくなるわけですよ。

 正直、心が折れそうです。こんなのどうしろってんだ。

 

「乗ったよー!」

「ナイスです」

 

 どうにも今回の俺は戦力になりそうもありません。しかし、流石と言うべきか、この二人は頼りになる。うむ、時間はかかってしまうがとにかく安全に行こう。今の状況はどう考えても回復が追いついてないわけですし。

 

 そして、相棒の乗りは無事成功。

 サポゲを2つ消費して貫通ブーメランの術を発動。行ける時にダメージを稼がないと。

 

 乗りダウンから起き上がったナルガは一度ステップ。その目は赤く光って見えた。つまり、怒り状態。

 さて、此処からが大変だ。どうにか攻撃できるチャンスがあれば良いけど……

 

 

 

 

 

 怒り状態となった白疾風ナルガ。ヤバいだろうなぁ、とは思っていたけれど、そんな予想以上だった。

 速かった動きは更に加速し、隙がほとんどない。通常攻撃で体力の半分以上を持っていかれ、此方からはほとんど攻撃できない。

 ビターンが直撃した弓ちゃんはベースキャンプへ送られていってしまったし、俺ももうドングリが残っていない。相棒の表情からも余裕は消え、まさに絶望的な状況。

 此処までだと、怒り状態になったらもう攻撃は諦めた方が良いレベルだ。

 

「や、やっと怒りが解け……ああ、何処か行っちゃう」

 

 怒り状態が解けたナルガ、しかし、直ぐにエリチェン。疲労状態っぽかったし、多分エリア2で食事だろう。せっかくのチャンスなんだ、急いで向かわないと。

 しっかし、こんな調子で勝てるのだろうか……怒り状態にすることはできたのだし、ダメージはそれなりに入っているはずだけど、此方はあと2乙でクエスト失敗。クリアできる気がしない。俺はあと何回、死と隣合わせのフレーム回避をすれば良いんだろうか。

 

「エリア2に行った。急ごう」

「うん。了解」

 

 ただ……やっぱり勝ちたいよなぁ。

 

 

 エリア2へ向かうと、食事中のナルガとキャンプから戻ってきた弓ちゃんがいた。

 俺たちのことなんて無視して食事に夢中のナルガ。其処へブーメランを当てたところで、一回目の睡眠を取ることができた。

 

「寝た! 攻撃ストップ!」

「え、えと、爆弾を置けば良いんだよね?」

 

 うん、頼む。白疾風ナルガの睡眠時間はかなり短いと思ったし、急がないと。

 

 相棒と弓ちゃんが爆弾を置いてくれたのを確認し、最初に爆風が当たるように気をつけながら直ぐに起爆。できればもう一回は寝かせたいのだけど、どんなものでしょうね。

 

 爆弾で叩き起こされたナルガ。まだ疲労状態は続いているし、今はとにかくダメージを稼ぎたい。

 

「シビレ罠置きました!」

 

 ナイス。

 弓ちゃんが置いてくれたシビレ罠へナルガを誘導。怒り状態になったら落とし穴も置いてもらおうかな。拘束時間は確かかなり長かったと思うし。

 シビレ罠にかかったナルガの頭へ全員で総攻撃。できればスタンも取りたいが、コイツは耐性値がなぁ……ハンマーじゃないとスタンなんて取れる気がしない。

 

 疲労状態だったこともあり拘束時間はなかなか長く、かなりのダメージが入ったと思う。けれども、それだけのダメージが入ったってことは……

 

「はぁ……また怒り状態ですか」

 

 まぁ、そうなりますわな。

 頑張れ弓ちゃん。超頑張れ。とは言え、俺も心が折れかけている。

 

 どうやら最近は微温湯へ浸かり過ぎていたらしい。確かに、ディノも弱いモンスターではなかったが、予想よりずっと弱かった。

 けれども、コイツはそれこそレベルが違う。

 

「尻尾叩きつけ! その後、回転攻撃に派生するから気をつけるニャ!」

 

 一応、HR5から戦える相手と言っても、二つ名モンスターはそんなに甘くない。

 完全になめてたよなぁ。このメンバーでナルガくらいならって随分と甘い考えだった。

 

 この世界がそんな甘いもんじゃないってことくらい分かっているだろうに。俺は何回同じ失敗を繰り返せば学習するんだ。

 

「あっ、しまっ……」

 

 再び、弓使いの少女がベースキャンプへ。

 これで2乙。つまり、もう後がない。

 

「……ちょっと厳しいね」

「ああ……これは無理だろうな」

 

 どれくらい体力を削れているのかも分からない。ただ、良くてもまだ半分くらいしか削れていないだろう。そうだと言うのに、此方はもう乙ることができないとは……

 

 つええなぁ。ホントに、つええよなぁ。もう笑うしかできないくらいの強さだ。この世界で此処までボコボコにされたのは初めてかもしれない。

 

 怒り状態のナルガは弓ちゃんを倒したところでエリアチェンジ。少しだけ期待したが、脚はまだ引きずっていない。

 

「……このままやって勝てると思う?」

 

 不安そうな相棒の顔。

 

「どうだろうな……正直、勝てる気なんて全くしないけど」

 

 だって、アイツは今の俺たちが戦って良い相手じゃないのだから。いくら実力のあるハンターだとしても、下位装備で挑むのは少々キツい。

 

「ただ……」

 

 だからこそ――

 

 

「勝ちたいって思うんだ」

 

 

 言い訳はもうしない。今はただ、アイツを倒すためだけに全力を出してみよう。勝てるかどうかなんて知らん。これで負けたら俺はその程度の実力だったってだけだ。

 

 一度目を閉じ、ゆっくりと深呼吸。

 

 クエストを初めて10分くらい。カチリ――と、俺の中の何かが漸く噛み合ってくれた。

 

 目を開けた視界から色は消え、音はもう聞こえない。

 行動パターンはゲームと同じ、フレーム回避のタイミングも覚えた。

 普通にやったって絶対にクリアできないクエスト。それなら無理でも無茶でも無謀でも、この小さな身体にある少しばかりの意地を張らせてもらおうか。

 

 

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