ご主人さんからもう一匹、オトモがいることは聞いていたけれど、これはちょっとマズイ。ご主人さんはどうにか誤魔化すことができた。でも、今ホロロ装備をつけているこのネコは本物のアイルーなのだから、流石に誤魔化しきれない。
最初は別に私が本当のアイルーじゃないってバレちゃっても良いのかなぁ、なんて思っていた。けれども、どうやらこの世界は前回私が来た時の世界と繋がっているらしい。そして、前回私たちはそれなりに活躍してしまった。
絶対に尾鰭が付いてしまっているけれど、ご主人さん曰く、私たちはすごく有名なハンターなんだって。そうなってしまうともう無理。絶対にバレたくない。私は静かに、自分の好きにこの世界を楽しみたい。
だから、できる限りこのホロロネコには怪しまれないよう気をつけたいのです。とは言っても、同じパーティーなのだし、全く関わらないわけにもいかない。すごく困った。
けれども、有り難い事にこのホロロネコの方から私に声をかけてくるようなこともないし、とりあえずは一安心。いつか絶対にボロが出るんだろうなぁとは思うけれど、できるだけ頑張ってみる。語尾だって一生懸命『ニャ』って付けてみる。
でも、なんで今回はネコなんだろう……私は普通のハンターが良かったし、あの彼と一緒が良かったし……ホント、上手くいかないなぁ。今までが上手くいき過ぎてたのかな?
とにかく色々な不安を抱えたままクエストへ出発。目的はナルガクルガの討伐。
ナルガは慣れているし、嫌いなモンスターでもない。それにこの装備なら私ひとりでも倒せる相手。でも、どうだろう。もし此処で、いつも通り戦ってしまったら怪しまれるんじゃないかと考えてしまう。だって、普通のネコがそんなに上手いわけないもん。普通のオトモなんて、地面へ潜っている時間の方が長いくらいじゃないだろうか。
ただ、クエストで手は抜きたくない。やるなら全力でやりたい。だから、クエスト中だけは色々と考えるのをやめて、全力で狩りに集中することにした。そして、それは間違った考えじゃないと思う。きっとあの彼だってそうするだろうから。
このホロロネコには怪しまれちゃうだろうけど、こればっかりは譲れない。もし、怪しまれてもゴリ押せばどうにかなる……はず。
そんなことを思いつつクエスト開始。
ナルガの初期位置はエリア6。この世界の渓流へ来るのは初めてだけど、慣れているマップで慣れている相手。負ける要素は何もない。
それじゃあ、ひと狩り行かせてもらおう。
エリア6へ入ると直ぐにナルガを発見し、あのホロロネコがブーメランをぶつけた。そしてナルガが私たちへ気づき、開幕咆哮。
あれ? オトモってハンターが攻撃するまで大型種に手は出さなかったような気が……なんて思ったけれど、そんなことを考えていても仕方無い。今はとにかくサポートゲージを貯めないと。
私は防音の術があるから咆哮は気にせず、頭へブーメランをぶつけられる。一方、ホロロネコは特に咆哮で怯むこともなく、私と同じようにブーメランをナルガの頭へぶつけていた。
ああ、なんだ。フレーム回避か。…………フレーム回避!? ネコが!?
いやいや、ちょっと、ちょっと待って。それは流石におかしい。確かに、ご主人さんからこのホロロネコはすごく上手いと聞いていた。とは言え、いくら上手いと言ってもネコなのには変わらない。だから、足を引っ張らないくらいのネコなのかなぁ。くらいにしか思っていなかった。
そもそも、オトモがステップをするところなんてまず見ない。見るのはダッシュでモンスターへ突っ込んでいって吹き飛ばされる姿ばかりだ。そうだと言うのに、フレーム回避となると上手いネコとかそう言う問題じゃない気がする。
う、う~ん、この世界も広かったってことなのかな。この世界でオトモをつけたことがなかったからそんなこと全く知らなかった。
とは言っても、これは悪いことじゃない。だって、このホロロネコがそれだけ上手いのだから、私が全力で戦っても怪しまれることは少ないはず。
ナルガの回転攻撃をフレーム回避してから、また頭へブーメランをぶつける。あのホロロネコを見ると、彼方も同じようにフレーム回避に成功していた。
……うん、すごいネコもいたんだね。ゲームの中のオトモこれくらい上手ければ、喜んで一緒に連れて行くのに。ホロロ戦を抜かして。
……ふむ。とりあえずこのクエストはなんとかなりそうだ。ご主人さんも結構上手いし、失敗することはないはず。
後は、私の普段の行動で怪しまれないかどうかだけど……そっちは自信ないなぁ。にゃーにゃー言う癖をつけないとだ。
「乗った! 支援お願い!」
「ナイスニャ!」
ぐぅれいと、にゃ。
あぅ……ご、ご主人もナルガとしっかり戦えているし、これなら大丈夫。ただ、今回は色々と苦労しそうだ。
いや……にゃーにゃー言うのって結構恥ずかしいんだよ?
その後、ナルガは特に問題なく討伐完了。ご主人も2回スタンを取れていたし、あのホロロネコも睡眠を一回取っていた。すげー。私もちゃんと毒にさせました。仕事しました。
「よっし、討伐完了! 初めての相手だったけど結構あっさり倒せちゃったね」
そりゃあ、まぁ、実質3人のハンターで村クエをやっているようなものだし、早く倒せるよね。あのホロロネコのスキルは詳しく分からないけれど、少なくとも貫通ブーメランと巨大ブーメランに緊急撤退。あと、ブーメランの溜め時間が短かったし、ブーメラン上手の術は持っていると思う。……ゴールネコじゃねーか。なんでこんなネコが普通にいるんだ。
いや、まぁ、私も同じスキルを持ってるけど。
「お疲れ様ニャ」
「お疲れ様、にゃ」
ご主人さんからこのホロロネコも新米のオトモだと聞かされている。こんな新米のオトモがいてたまるかとは思うけれど……そう言うこともあるのかな? そしてそれは嬉しい誤算。だってもしかしたら、このままバレずにいけるかもしれないのだから。
ただ、せっかくこの世界へ来たのだし、あの二人とは会っておきたいなぁ。私たちが急に消えてしまったせいできっとすごく迷惑をかけたはず。それにあの二人になら今の私の状況を話しても良い。それくらいの仲なのだから。いつか会える日が来れば良いけど。
「うん、お疲れ様。剥ぎ取りも終わったし帰ろっか」
「うニャ!」
そう言えば、ご主人さんって集会所クエストはやらないのかな? このご主人さんとこのホロロネコの実力なら下位集会所は全部クリアできそうだけど……まぁ、焦る必要もないんだ。ご主人さんのペースに合わせてのんびり進めていこう。
そして、帰りの飛行船。
ご主人さんは前回と同じようにちょっと会話をしたところで直ぐに寝てしまった。つまり、今はあのホロロネコと二匹だけ。なんとかなるかなぁって思っていたけど、実際にこうなると超気まずい。まぁ、そう思っているのは私だけなんだと思う。
う、う~ん、流石に会話のひとつくらいしないと変だよね。同じパーティーなのだし仲を悪くはしたくない。ただ、なんて会話をすれば良いのやら……アイルー同士ってどんなお話をしているんだろう。
「え、えと……あの、好きな魚はなに、にゃ?」
ボーッと飛行船から見える景色を眺めていたホロロネコにとりあえず、ネコっぽい会話をしてみる。多分これで大丈夫なはず。そのはずだ。
「えっ? あっ、え、えと……そ、そうだニャ……サ、サシミウオとかすごく好きだニャ」
急に私が声をかけたせいか驚いた様子のホロロネコ。
なるほど、サシミウオが好きなんだ。うん、うん……えと、それでこれからどうやって会話を広げれば良いんだろうか。全く分からない。
ん~……まぁ、これで会話もできたし良しとしよう。私は十分頑張った。サシミウオってどんな味だったかなぁ。そもそも食べたことがない気がする。MHXでは裂傷状態の時にお世話になるけど、MH4Gではモスジャーキーがあったもの。モスジャーキーは美味しかったなぁ……
「えと、じゃあ、君はどんな魚が好きなのかニャ?」
む、聞き返された。
これは困った。まさかそんなことになるとは思っていなかった。う~ん、とは言え此処で無視するのもおかしいよね。さて、どうしようか。
「えと……じゃあ、ドス大食いマグロが好き、にゃ」
食べたことはない。てか、フエールピッケルとか入ってるし正直食べたくない。おい、こら。じゃあ、なんでそう答えたんだ私。
「あ~……う、うん、ボクもアレは美味しいと思うニャ。また食べてみたいニャ」
マジですか。アイルーにとってはアレ美味しいんだ。私は遠慮したいんだけどなぁ。
けれども、どうやらこの質問も上手く躱すことができたっぽい。上出来上出来。この様子ならなんだか本当にいける気がしてきた。少なくとも、現時点でこのホロロネコに怪しまれてはいないはず。
その後も、好きな肉とか好きな飲み物とかの会話をそのホロロネコとした。よくよく考えると好きな食べ物の話しかしてないけれど、それなりに仲良くなれたのかなぁって思う。このホロロネコも悪い性格じゃなさそうで助かった。きっとこれからも長い付き合いとなるだろうし、なんとも良い流れ。
最初はどうなることかと思っていたけれど、どうやら思っていた以上に私の未来は明るいらしい。