う~ん……どうしてなのか分からないけど、パーティーの空気が重い。
白ネコさんが新しいオトモになってネコさんが帰ってきて初めてのクエストは十分過ぎるくらいの結果だった。そうだと言うのに、空気が重いです。
もしかしたら、私がそう思っているだけなのかもしれないけれど、これは気のせいじゃないと思う。白ネコさんはあまり自分から話す性格ではないし、ネコさんもネコさんで話したがる性格でもない。
とは言え、せっかくクエストを終えて打ち上げをしているのに喋っているのはほとんどが私。ネコさんと白ネコさんが会話をしているところは全く見ない。
「ネコさんネコさん、次はどのクエストへ行けば良いかな?」
多分、この二匹の仲が悪いってわけではないと思う。でも、緊張して話せないって感じでもないんだよね。
そうだとしたら、何が原因なのやら……
「ご主人の装備も完成しているし、どのクエストでも良いと思うニャ」
うん、ネコさんはいつも通りに見える。少なくとも私との会話では。クエスト中だって特に変わったようにも見えなかった。ううん、むしろいつもより張り切っていたように見えたもの。
「じゃあ、白ネコさんは何か行きたいクエストある?」
私がそう声をかけると、チーズを食べちびちびとワインを飲んでいた白ネコさんは驚いたらしく、その身体を僅かに動かせた。
「えと、わた……ぼ、ぼくは特に行きたいクエストもないからご主人さんが決めて良いにゃ」
……ああ、うん。なるほど。だいたい分かりました。
てか、白ネコさんはどうしてまた『ニャ』って言い出してるんだろう……私は別に気にしないって言って、白ネコさんだって普段通りの喋り方になったはずなのに。
その時と今で違うことと言えば、ネコさんがいることくらい。つまり白ネコさんはネコさんがいるから、ちょっと無理した喋り方になっている……ってことなのかな? それが正しいか分かんないけど。
この二匹のアイルーさんたちはすごく上手い。他のアイルーさんたちがどうなのかは分からないけれど、多分、此処まで上手いアイルーさんは少ないと思う。だって、他のアイルーさんたちがこのネコさんたちくらい上手ければ、ニャンターの数はずっとずっと増えていたはずだもの。
けれども、ニャンターの数はかなり少ないのが現状。しかも、ニャンターさんたちに任せられるクエストって採取系が中心、とそれほど難しいクエストじゃない。だから、ニャンターはそのくらいなんだろうなって思う。
そうだと言うのに、この二匹は本当にすごいんです。少なくとも私よりはずっとずっと上手いし、私とネコさんたちのどっちがオトモなのか分からないくらいだ。
そんな二匹が私なんかのオトモをしていていいのかなぁって思うけれど、そこは素直に感謝。
そして私としてはこのままオトモを続けてくれたら嬉しいなって思うのです。だから、できればこう言う重い雰囲気を回避したいのだけど……本当にどうしたんだろうね?
白ネコさんの様子は明らかにおかしいし、ネコさんもネコさんで自分から白ネコさんに話しかけていないってことは何かしら意識しちゃってるんだと思う。
う~ん、困りましたなぁ。
とは言っても、クエストは何の問題もなくクリアできていたし、これでいいのかなって思う自分もいたりするわけですよ。新しい環境になって、ちょっと戸惑っちゃっているだけとかそんなことも思います。
パーティーがバラバラになってしまうのは嫌だけど、何と言うかそこまでの深刻さ感じないと言うか……私もよくわかんないけどさ。
きっと時間が経てば解決してくるんじゃないかなって思うところです。もしかしたら、それはただ私が逃げているだけかもしれないけれど、どうすればいいのかが分からない。
難しいよね。人と人との関係って。
いや、まぁ、今回はネコとネコとの関係なわけですが。
――――――――――
……どうにもパーティーの雰囲気がよろしくないみたいで、ちょいと困っているところです。
ご主人もそのことを感じているのか、昨日の打ち上げはあの人見知りなご主人が頑張って一生懸命会話をしようとしていた。そのことに申し訳なさを感じるけれど……いや、どうすれば良いんだろうね?
相変わらず、あの白ネコが何を考えているのか分からないのですよ。
昨日、ナルガを倒した後の帰り道、あの白ネコから俺に話しかけてきてくれた。それは嬉しいことではあるけど、まさか好きな魚を聞かれるとは……
もしかしたら、アレがアイルーの間でよく行われる普通の会話なのかもしれないから、驚きはしたけどちゃんと会話をしてみた。なんとかやり過ごすことはできたけど、怪しまれていないだろうか。そんな不安ばかりが膨らむ。
「ご主人、今日は何のクエストへ行くのニャ?」
あの白ネコは上手い。それもかなり。
ご主人曰く、あの白ネコは俺と同じように狩りの経験がほとんどないアイルーだと言っていたけど……流石にそれは信じられんぞ。だって、あのナルガ戦とか明らかに、モーションを覚えているような立ち回りだったもん。初見で飛びかかり攻撃と、回転攻撃後は確定威嚇になるとかどうやったら分かるんだよ。
まぁ、つまり新米のネコではないってことだと思う。頼むからそうであってくれ。
「えとね、村長さんに聞いたら、イャンガルルガが古代林で暴れまわっているからどうにかしてくれって頼まれたよ」
とりあえず、あの白ネコの過去には色々あったってことだと思う。有名なハンターのオトモだったとかそんな感じ。そうだとしてもアレは上手過ぎると思うが……
んで、さらに良く分からないのが、あの白ネコの性格だ。向こうから話しかけられはしないと思っていたら、話しかけてくるし、そこから会話を広げようとしても上手く広げてくれないし。ホント、何を考えているんだろうか。
とは言え、大きな戦力が増えたのは嬉しい。俺の立場がかなり怪しくなってくれたが、ご主人にしてみればあの白ネコの加入は大きいはず。このメンバーなら村クエはもちろん、集会所だって下位なら余裕だと思う。
「緊急クエストかニャ?」
「うん、そうみたい」
ふむ、次の目標はガルルガか。鬱陶しいモンスターではあるけど……まぁ、大丈夫か。ガルルガが相手ならハンマーを使うご主人との相性も悪くない。
クエストの方は問題ない。しかし、パーティーの方がなぁ……雰囲気を重くしているのは俺があの白ネコに対して色々と考えてしまっていることが原因。だから、俺が割り切れば良いだけなんだけど、それがなかなか厳しいのですよ。
難しいよね。人と人との関係って。ああ、まぁ、今回はネコとネコとの関係か。
一度、あの白ネコとしっかり話した方が良いのかなぁ。気は進まないが。
クエストへ行く準備も終え、飛行船に乗り込み古代林へ向けて出発。
いつものようにご主人は寝てしまったから、現在はあの白ネコと二人だけ。昨日の帰りもそうだったけど、相変わらず超気まずい。そう思っているのは俺だけなのかね。
さて。
さてさて。いつまでもこの状態を続けるのはよろしくない。
やっぱり気は進まないけれど、少しばかり頑張ってみるとしようか。
「あの、ちょっと良いかニャ?」
ちっぽけな勇気を振り絞って、流れる景色を見ていた白ネコに声をかけてみる。
そうやって、俺が声をかけるとあの白ネコは驚いたらしく、ビクっと身体を震わせた。
「え、えと、どうしたのにゃ?」
ああ、良かった。どうやら会話はしてくれるらしい。これで無視されたら流石に泣くところだった。
んで、大事なのは此処からだ。どうしても色々と考えてしまうことはあるけれど、このままじゃご主人に迷惑をかけてしまう。それも俺の我が儘で。でもそれはよろしくないことで、俺が頑張らなきゃいけないこと。
「んと、何とも伝えにくいけどさ……その、君とは同じパーティーなのだし、仲良くしたいなって思ったんだニャ」
こんな時だって上手い言葉は出てこない。だからその分、気持ちを込めてみる。きっと、嘘偽りない言葉なら伝わってくれるだろうから。
「あっ、うん。ぼ、ぼくもその方が良いと思う、にゃ」
そして、俺の言葉に対しどうにもぎこちない感じで白ネコは言葉を落とした。
……なんだろう。こんな反応をされると、もしかしてアイルーから見ると俺って怖く見えるのかな? って思ってしまう。確かに今はホロロ装備だからちょっと怖く見える気もするけど。
それとも、本物のアイルーから見ればやっぱり俺はおかしく見えるってことなのかねぇ。
とは言え、一応俺の言葉は伝わってくれたみたいだし、この白ネコも俺の言葉に形だけかもしれないけど、同意はしてくれた。
今はちょっとお互いに上手く接することはできないけれど、前に進むことはできたんじゃないかなって思う。
「それなら良かったニャ。あのご主人を立派なハンターにするためお互いに頑張るニャ」
「わかった。ぼくも頑張るにゃ」
そう言ってから、手を挙げまたお互いの肉球を合わせてみた。
それがなんだか懐かしい感じがして、何処か心地良い。今となっては随分と昔の出来事となってしまったけれど、あの時もこうやって挙げた手を合わせたことがあった。
その時と姿は変わってしまったけれど、きっと変わらないものだってあるはず。そして、そう言うものを大切にできたら良いなって思ってみたりします。
うむうむ、まだまだ上手くいかないことは沢山あるだろうけれど、とりあえず一山越えることはできた気がします。
せっかくこの世界へ来たのだし、全力で狩りを楽しみたい。それなら、こう言う問題はサクッと解決していくのが一番だ。うだうだと悩んでしまう性格ではあるけど、ちょっとずつ頑張っていきます。
不器用な俺には、それくらいで丁度良いと思うんだ。
とりあえず乗り越えたっぽいです
次話からはまた狩りを続けることとなりそうですね
そろそろ集会所も進めさせないとなぁ
では、次話でお会いしましょう