無事、ダイミョウザザミを倒すこともできベルナ村へ到着。
どうやらご主人はザザミ一式を作るらしいし、ザザミをあと数体ほど倒す必要はあるだろう。下位ザザミ防具一式で発動するスキルは……確か、ガード性能だけだったと思う。そしてご主人が使っている武器はハンマー。だから完全に死にスキルだ。
ただ、一応空きスロは5つあるし、5スロスキルくらいなら発動させられる。それにザザミ防具の見た目はかなり好きです。男性の場合はラガーマンだけど、女性のザザミ防具ってすごく良いよね。完成するのが楽しみ。
まぁ、それにまだ序盤と言っても良いような時期だし、今は防御力さえあればどんな防具だろうと良いと思う。だから俺からは色々言いません。どうしても詰まってしまった時に言えば良いのですよ。
こんな姿なせいで言えないってのもあるんだけどさ。ご主人が俺のことをどう思っているのか分からないけれど、俺ネコですし……
そんなことを考えつつ、コップに入った達人ビールを喉へ流し込んだ。
「……君ってネコなのにビール好きだよね。他のネコさんもそうだったりするの?」
呆れたような表情をしながらご主人が俺に聞いてきた。
ん~……それはどうなのだろうか。気がついたらこの世界に来ていて、その時にはもうこのご主人のオトモとなることが決まっていた。だから、ネコの知り合いなんていないし、ネコたちがどんな生活をしているのかもわからない。
「ネコそれぞれだと思うニャ」
そんなことを伝えても仕様が無いから、当たり障り無い言葉を落とす。
しかし、今の俺って代謝系とかどうなっているんだろうね? まぁ、そもそもアイルーの代謝系がどうなっているのも知らないんだけどさ。
ただ、この姿になってもビールが美味しいことには違いない。でも、タンジアビールの方が俺は好きだったかな。
「ネコさんにも色々いるんだねー」
そんなものだと思う。ただ、あまり深く聞かないでね。直ぐにボロが出ちゃうから。
できれば、このご主人と良い関係でありたい。ネコである俺のこともちゃんと気遣ってくれる素敵な人なのだから。
「そう言えば、ザザミ素材はあとどれくらい必要だったニャ?」
ザザミは嫌いなモンスターじゃないし、10体くらいなら喜んで戦うけれど、一応聞いてみる。
「えと……確かあと甲殻が4つと爪が1つだったと思うよ」
あれ? あともうそれだけなの? あの相棒もそうだったけれど、運が良すぎじゃないですか? きっと俺がやってもそんなに素材は集まらないだろう。なるほど、これが格差社会か。
ふむ。じゃあ、ザザミを倒すのはあと1回で済みそうだ。他に必要な素材は確かドスファンゴの素材だったよね。う~ん、思った以上にすんなりと防具はできそうじゃないか。いや、まぁ、良いことなんだけどさ。
「ついでだしさ、ネコさんの防具もザザミにしない?」
多分、ご主人は善意で言ってくれたのだと思う。今俺が装備しているのはマッカォ一式。それからザザミ防具にすれば防御力はかなり上がる。かなり上がるのだけど……
「……ボ、ボクは遠慮するニャ。今の防具で大丈夫ニャ」
あの見た目はいただけない。好きな人もいるだろうけれど、俺は遠慮したい。そんなこと言っている余裕なんてないかもしれないけれど、嫌なものは嫌なのだ。
それにほら、防御力が低かろうと攻撃を喰らわなければ良いのだし。
「別に遠慮なんてしなくても大丈夫だよ? 端材も出るし」
いや、うん。そうなんだけどさ。
「それにほら、ペアっぽくていいと私は思うんだ」
ああ、うん。確かに同じモンスターの素材を使った防具ならペアっぽくなるのだけど、あの見た目はなぁ……
「と、とにかくボクは大丈夫ニャ」
無理やり、話を終わらせてみる。
そんなことをしたせいか、ご主人は少しばかり不満気だったけれど、これは許してください。ネコだってオシャレしたいんです。
残念なことにネコの防具はネタ路線へ走っているモノが多々ある。昔はそれはそれで良いと思っていたけれど、いざ自分がそれを着て全力で戦えるかとなると……その自信はあまりない。
いや、まぁ、ネコが格好をつけたって仕様が無いとは思っているんですよ? でも、ほら、譲れないことだってあるんだ。
最終的なネコの防具は二つ名ディノ防具に白疾風手裏剣になると思う。そんな中、武器はできるだけ強い方が良いけれど、防具の方はそこまで重要じゃないと思っている。近接ネコだと流石に厳しいけれど、今の俺はブメネコ。手数を減らせばモンスターの攻撃を喰らわずに倒すことだって難しくはない。まぁ、流石に一発で乙るような防御力だとマズイんだけどさ。
しっかし、こんなことになるのなら、もっとネコの練習をしておけば良かったね。ゲームの中でもこの世界へ来た時もハンマーばかりを振り回していたせいで、基本的な立ち回りすらよくわかっていない。練習あるのみと言ったところか。
ああ、そう言えば、どうしてこのご主人はハンマーを使っているのだろうか? 残念なことにハンマーを使うハンターは少ない。決して弱い武器ではないけれど……ハンマーってクセが強いもんね。
だからこそ面白いのだが。
「ご主人ってどうしてハンマーなんかを使っているんだニャ?」
だから聞いてみた。
ゲーム中ではモンスターによって武器や防具を変えることが多かったけれど、この世界では基本的に同じ武器や防具を使い続ける。そんな世界の中でどうしてこのご主人がハンマーを選んでしまったのか気になったんです。
「んとね、私も最初は片手剣を使っていたんだ」
使いやすいもんね、片手剣。俺もゲームの中ではお世話になったなぁ。エリアルデスパライズで擬似ハメとかよくやりました。
「でも、昔バルバレの闘技大会を見に行ったとき、ちょうど有名なハンターさんが出ていたんだけど、その人の使うハンマーがすごくカッコ良かったんだ。それで、私もハンマーを使ってみたいと思ったんだよ」
へー、バルバレにはハンマーで有名なハンターがいたのか。
俺がバルバレにいたときはそんなハンターなんていなかったと思うけれど……まぁ、俺がいたときとは時間軸が違うだろうし、そもそも世界線だって違うかもしれない。
でも、そんな有名なら俺も一度見てみたい。
「そのハンターって今もバルバレにいるのかニャ?」
「ううん、確か大老殿へ行くことになって、そこでもすごく活躍して……今は、消息不明みたい」
あら、そうなのか。それは残念だ。ハンマー使いは希少種だから会って見たかったんだけどなぁ。ただ、このご主人みたいにそのハンターを見てハンマーを使ってくれる人が増えたのなら、きっとそのハンターだって満足しているだろう。
……そんなことはないか。
「私も詳しくは知らないんだけどね。そのハンターさん、急に消えちゃったんだって。あと、同じパーティーだった笛使いのハンターさんも消えちゃったとか聞いてるよ」
ブレスワインをちびちびと飲みつつ、ご主人がそんなことを教えてくれた。
急に消えてしまった笛とハンマーのハンターねぇ……なんだか親近感の湧くお話だ。ほとんどいないとは聞いているけれど、クエストから帰ってくることのできなかったハンターだっている。どんなに腕の良いハンターだろうと、失敗するときは失敗するのだ。それは仕方の無いことなのかもしれない。
「ホント、何処へ行っちゃったんだろうね? 同じパーティーだった操虫棍と弓を使うハンターさんはちゃんと残っているみたいだけど……」
追加でもう一杯達人ビールを頼もうとしたとき、またご主人が言葉を落とした。
同じパーティーだった虫棒と弓使い……? それもまた何処かで聞いたようなお話。いやいや、まさか、そんな……ねぇ?
「え、えと、そのハンターのパーティーってそんなに有名だったのかニャ?」
「そりゃあ、有名だよ。だって、あの蛇王龍を倒しバルバレを救って、大老殿でも巨戟龍を倒したパーティーなんだもん。むしろ一番有名なパーティーなんじゃないかな?」
……ダラにゴグマジオスを倒したパーティー。その内訳はハンマー、笛、虫棒、弓。そして、今はハンマーと笛のハンターがいない。
ああ、うん、流石にこれは俺の勘違いじゃない気がしてきた。まだ確証はない。ないけれど……きっとそう言うことなんだろう。
「ネコさんって、すごく知識が偏ってるよね。モンスターに関する知識とかはすごいのにさ」
だって、この世界の人間じゃないですし。まぁ、今は人ですらないんだけどさ……
「ネコだから仕方無いニャ」
「そうなのかなぁ……」
しかし、驚いたな。まさか、まだ世界が繋がっているとは思わなかった。
確かに、MHXはMH4との繋がりがある。けれども、此処まで直接繋がっているとは思わなかったんだ。
とは言え、そのことがわかったこところで、俺がやることは変わらない。今更、あの相棒や弓使いの少女と一緒に戦えるとは思っていないし、そもそも一緒に戦うことなんてできない。
それなら、今、自分ができることを全力でやるだけだ。
あのパーティーに負けないくらい、このご主人が有名になれるよう、俺も全力でサポートしよう。そう言うものだと思う。
「それにしても、あのハンマーを使っているハンターさん、かっこ良かったなぁ。私もいつかあのハンターさんみたいに……って、どうしたのネコさん、顔が赤いよ?」
……アルコールのせいってことにしておいてください。