ネコの手も狩りたい【完結】   作:puc119

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第28話~睡眠中に強溜めスタンプ~

 

 

「私、ブシドースタイルって初めてだけど大丈夫かな?」

 

 森丘へと向かう飛行船の上で、心配そうにしながらご主人が言葉を落とした。

 今回のターゲットは電竜ライゼクス。MHX看板モンスターの1匹であり、攻撃一発一発が重くなかなかに強い相手。

 

「最初は戸惑うと思うけれど、直ぐに慣れると思うニャ」

 

 ジャスト回避した後、狙った部位へ上手く攻撃できなかったり、そもそもジャスト回避に慣れなかったりと最初は大変だと思う。

 けれども、此処でブシドーが使えるようになっておけばディノ戦では絶対に役立つ。それに、予備動作がちゃんとあるライゼクスならブシドーの練習にも丁度良い。だから、ご主人には是非此処でワンランクアップしてもらいたいところです。

 

「うん、わかった。頑張ってみる」

 

 あと、これでライゼクスの素材が手に入れば、ライゼクスのハンマーであるエムロードビートを作れるのも大きいです。エムロードビートの見た目はハンマーと言うよりも斧だけど、まぁ、カッコイイことは確か。そしてエムロードビートができてしまえば、もう下位クエストは十分だろう。

 

「それじゃ、私はちょっと寝てくるから、着いたら起こしてもらえるかな?」

「わかったニャ」

 

 どうかゆっくりと休んでください。ライゼクスは今まで戦ってきた相手の中で一番強いモンスターなのだし。

 

 色々と心配なことはある。あるけれど、正直今回は大丈夫だろうと思っている。ライゼクスさん、慣れちゃえばそんなに強いモンスターじゃないし。当たり判定がすごく薄いのよね。股下で適当にローリングするだけでほとんどの攻撃を躱すことができる。部位荷電状態で攻撃力が上がるけれど、肉質も軟化してくれる。体力が多いイメージもないし、新モンスターの中ではかなりの良モンスターなんじゃないかな。

 そして何より、俺とあの白ネコがいる。クリアは問題ないだろう。

 

 ただ、やっぱり俺はハンマーを使いたかったなぁ。

 

「……どうして貴方は色々と詳しいのにゃ?」

 

 もし自分がネコじゃなく、人間の姿だったらどうなっていたのか、なんて考えたって仕方の無い妄想をしていると、あの白ネコが声をかけてきた。

 そりゃあ、気になりますよね。

 

「ん~……ボクにも色々あったんだニャ」

 

 本当に色々とあったんです。自分で言うのもアレだけど、かなり特殊な経験をしていると思う。

 

 そして、それは俺だけじゃなく――この白ネコだってそうなんだろう。

 だって、普通のネコはあんなに上手くないもん。ただ、俺から色々と聞くことはやめておきます。気になることではあるけれど、現時点でこのパーティーはちゃんと機能している。それを乱したくはないんだ。

 

「……そっか。ぼくも色々とあったにゃ」

 

 うん、でしょうね。むしろ、何もなかったと言われたらそっちの方が驚く。

 

「色々ありすぎちゃって、何が何だかわからないにゃ」

 

 そう言って、白ネコは静かに笑った。

 お互いに悩みが多いものですね。相変わらず何を考えているのかわからない奴ではある。でも、何も考えてないってわけではなさそうだ。

 

「とりあえず、今はご主人のために頑張るニャ」

「うん、わかってる。頑張るにゃ」

 

 いつか自分のことを話せる日が来れば良いと思う。でも、あの相棒にすら俺は全部を話していないんだ。そんな俺に自分のことを話せる日なんて来るのかねぇ……

 ホント、悩ましい人生です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしっ、準備完了! それじゃ、サクッと倒してこよっか!」

「うニャ!」

「にゃー」

 

 結局、あの後も白ネコと深い話をすることはなかった。俺がそう感じているだけかもしれないが、お互いに距離を置いちゃってる感じです。仲は悪くないと思うけれど、やっぱり自分のことを話すのには勇気がいる。そして、その勇気が俺にはないのですよ。

 

 つまり現状維持。便利な言葉。

 

「ライゼクスはエリア4にいるニャ!」

「了解です!」

 

 さてさて、狩りに集中しなければ。

 このご主人がブシドースタイルを使う初めてのクエスト。最初だし、まず上手くはいかないはず。だから俺たちが頑張ってサポートしないとです。

 

 

 とことことご主人の後をついていき、ライゼクスのいるエリア4へ到着。

 

「すごく、つよそうだね……」

 

 全身は黒色の甲殻に覆われ、その所々に見える金色の甲殻。ハサミを思わせる二股の尻尾。大きな翼は蝶類のように透き通り、その姿は見蕩れるほどに綺麗だった。

 ライゼクスはモンスターの中でも見た目がかなりカッコイイ方だと思う。そして何より、見た目だけならすごく強そうなんです。

 

 そんなライゼクスへ向かっていつものようにブーメランを一発。

 此方へ気づき、開幕咆哮。さて、クエストスタートだ。

 

「おっ、おお!? バ、バシュンってなって……えっ、この後どうすれば……」

 

 咆哮をジャスト回避したらしいご主人が騒がしい。一応、ブシドーの動きは昨日教えておいたつもりだったけど、あの時はお酒が入っていたしなぁ。忘れちゃってるかもね。

 

「ジャスト回避後、右腰へハンマーを構えればカチ上げに派生するニャ!」

「りょ、了解です!」

 

 翼を使った攻撃を避けながら、ライゼクスの股下へ潜り込みおまけでブーメランを当て、ご主人へ指示。ただ、ブシドーのカチ上げって普通のカチ上げと踏み込みがちょっと違うんだよね。慣れればアレはアレで使いやすいと思うけど。

 

「あと、もっと溜めるとスタンプになるにゃ。踏み込みながらやると使いやすいにゃ」

「あっ、うん。わかった」

 

 白ネコさんがご主人にそんな言葉を落とした。

 そうなんだよねぇ。踏み込みながらじゃないとスピンアタックになっちゃうから、そこは気を付けないと。スピンアタックのモーション値はホームランと同じだけど、出るまでが遅すぎるせいでとにかく使いにくい。だから、モーション値は10落ちるけど、強溜めスタンプの方が出も速いし使いやすいと思う。

 

「あぅ……バシュンバシュンなって何がなんだか……」

 

 ライゼクスの攻撃が来るたびにご主人がジャスト回避。エフェクトも派手でカッコ良く見えるけれど、さっきから全く攻撃ができていない。

 頑張って。最初は皆そんなもんだよ。

 

 サポゲも貯まり、ブメ2種を発動。ようやっと此方の準備は完了です。

 一方、ライゼクスも怒り状態で、両翼は荷電状態。面白くなってきました。

 

 

 

 

 それからも、ご主人はブシドースタイルにかなり苦労しているように見えた。

 

「寝た! 攻撃ストップニャ!」

「あっ、ごめっ……と、止まらないです!」

 

 とは言え、流石はご主人。一度、部位荷電状態の単発ブレスが直撃して吹き飛ばされはしたけれど、その他の攻撃はほとんど喰らっていない。頭もちゃんと狙えているみたいだし、最初でこれなら上出来と言ったところ。

 

「……ナイス、スタンにゃ」

 

 それはご主人の腕が良いってのもあると思うが、元々ブシドースタイルがあっていたのかもしれない。あの笛の彼女や相棒なんかは、立ち回りで攻撃を喰らわないようにするタイプで、あの二人にはブシドースタイルはあまり合わないと思う。でも、俺や弓ちゃんみたいなタイプはフレーム回避を多様するからブシドースタイルはなかなか合っている。多分、ご主人もそう言うタイプなんだろう。

 

「ごめん! ホント、ごめんね、ネコさん」

「い、いや、そんな謝らなくても気にしてないから大丈夫ニャ」

 

 そして、そろそろ倒せるかなぁってくらいで、俺が二回目の睡眠を奪い、その瞬間ご主人の強溜めスタンプがライゼクスの頭へ入り、一回目のスタンを奪った。

 水爆一回分が消えてしまったけれど、どうせもう爆弾はないのだし、気にしてないと言ったのは本当のことです。それに強溜めスタンプが睡眠中に入ったのなら十分だ。

 

 ご主人もブシドースタイルに少しくらいは慣れてくれたかな? 確かにエリアルスタイルは強い。ただ、やっぱり色々なことをできた方が絶対に良い。まぁ、それが難しいんだけどさ。

 

「お、おおー。足引きずったよ!」

 

 クエストが始まって多分まだ10分は経っていないと思う。ご主人も今回はライゼクス自体に苦労していなかったみたいだし、なかなか良い感じ。やっぱりこの白ネコがパーティーに入ったのが大きいのだろう。ホント、このパーティーなら下位の集会所くらい苦労せず進むことができそうだ。

 

「ライゼクスはエリア5へ行ったニャ!」

「了解です! あっ、捕獲した方が良いかな?」

 

 ん~……どうだろう。捕獲するメリットは剥ぎ取りじゃ出ない、若しくは出にくい素材が出ることと、クエスト終了後の時間が40秒短縮されること。

 ただ、今作は捕獲報酬が2枠の時も多いし、報酬目当てでの捕獲は微妙になっちゃったんだよね。それに今は急いでいるわけでもないし、そもそもこの世界じゃ捕獲したところで帰りが早くなるわけでもない。

 

 うむ、此処は倒しちゃった方が良さそうだ。

 

「……エムロードビートって電竜の尻尾必要にゃ?」

 

 そんなことを考えていると白ネコが俺に言葉をかけてきた。

 ああ、捕獲なら報酬で尻尾が来るんだったか。

 

「いや、最終強化まで一度も要求されなかったと思うニャ」

 

 俺もエムロードビートの最終強化である電竜砕カクルハまで作ったけれど、ライゼクスの尻尾を切った覚えはない。俺はハンマーを使っていたし、彼女も笛だったし。てか、尻尾を斬ったことのあるモンスターがどれだけいるのやら……

 そして、ハンマーは、他の武器と比べて尻尾を要求されることって少ない気がする。多分、製作者もその辺のことはちゃんと考えてくれているんだろう。もちろん、ディオステイルみたく普通に要求される武器もあるけどさ。

 

「えっと、結局どうすれば良いのかな?」

「倒しちゃって大丈夫ニャ」

 

 相手の体力はあと僅か。サクッと終わらせてきましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

「それじゃ、今日はお疲れ様でした!」

 

 ベルナ村に戻って直ぐ、いつものように打ち上げです。

 ライゼクスだけど、俺がちょっと考え事をしている間に寝てしまい、其処へご主人がホームランを叩き込んだところで討伐完了。

 つまり、四天王のうちの一匹を倒したと言うこと。これでまたご主人が有名なハンターに一歩近づきました。ガムートはどうとでもなるだろうし、タマミツネもなんとかなると思う。苦労しそうな相手はディノバルドくらいじゃないかな。

 

「お疲れ様ニャ」

「うにゃ」

 

 ああ、今日も冷えたビールがすごく美味しい。クエストを頑張ったあとはビールに限りますね。もう、このために頑張っていると言っても良いかもしれない。

 

「ライゼクス強かったねー」

「うニャ。怖かったニャ」

 

 ライゼクスを倒したことだし、素材さえ足りていればご主人の新しい武器ができる。武器倍率も今の武器よりも高いし、雷属性と会心率もある。これで武器も安心ですね。

 

 

 そして、今回のクエストの感想であったり、これからの予定なんかを話している時だった。

 

「やっほー、槌ちゃんとネコちゃん。遊びに来たよー」

 

 前回別れた時からまだ2週間も経っていないはず。

 

「えっ? あっ……こ、こんにちはです!」

 

 声をかけてきた人物を見て慌てたようにご主人が挨拶。

 

 はい、相棒さんがまた来てくださりやがりました。

 こりゃあ、また面倒なことが起きそうだなんて思い、誰にも気づかれないようそっとため息をひとつ落とした。

 

 

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