「ご主人、ご主人。これからの予定はどうするのニャ?」
相棒さんと白ネコが戻ってきところで、ご主人に質問。
あの二人がどんな会話をしたのか気になるけれども、皆がいる場所で話をしなかったと言うことは、まぁ、そう言うことなんだと思う。それなら深く聞くことはやめておこうと思うところです。同じパーティーの仲間ではあるけれど、秘密の一つや二つくらいはあるものだから。
ただ、どうして相棒さんはそんなに良い顔をしてらっしゃるのですか? 此方はストレスやらなんやらで大変だと言うのに。
「う~ん、どうしよっか。特に村長さんに頼まれているクエストもないし」
ライゼクスも倒したわけだしゲームだと、次はガムートかタマミツネのはず。そして、その2頭を倒したらディノバルド。それがMHX村クエのシナリオだった。
けれども、今は特にやることもない、と。ん~……それならどうしようか。ご主人の防具は今のままでも問題ないはずだし……
ふむ、こう言うときはあの白ネコに聞いてみるか。
「君は何か行きたいクエストあるかニャ?」
そうやって俺が聞くと、白ネコはびくっと身体を震わせ、酷く驚いた顔で俺の方を見てきた。いや、そんな驚くような事じゃないと思うけど……
てか、そう言う反応をされるとちょっと傷つきます。
「え、えと、私は特にない、かな」
そうか。そうなってしまうと……どうすっかなぁ。
……うん? 今の白ネコの口調、おかしくなかった? 特に注意していたわけではないけど、確かこの白ネコも語尾にニャってつけていたし、一人称も俺と同じようにボクだったと思った。
まぁ、そんな口調なんて気にしたって仕方無いか。
「あっ、で、でも、ライゼクスを倒したのだし、ご主人さんの武器を作った方が良いと思う」
ああ、そっか。そのことをすっかり忘れていました。
「武器ってライゼクスのハンマーのこと?」
こてりと首を傾げたご主人。
うん、エムロードビートって言うハンマー。ハンマーっぽくない見た目だけど、アレはアレでカッコイイです。
「……うん、強い武器だから作っておいて良いと思う」
そうだね、時間もあるみたいだし、丁度良い。あと、先程から白ネコさんがチラチラと俺を見てくるのはなんなんだろうか。もしかして顔にチーズでもついているのかな? 今日は気をつけていたんだが。てか、それくらい教えてくれても良いのに。
「うん、わかった。白ネコさんが言うなら頼んでみるね」
素材、足りると良いね。できればレベル2まで強化しておきたいけど……流石にそれは厳しいか。
ああでも、せっかく相棒がいるのだし、集会所のライゼクスを倒しに行くのはアリかもしれない。2頭倒せば流石に素材だって足りるだろう。
「ハンターさんはこの後、どうする予定ニャ?」
「んと、今日はもう帰ろうかなって思っているよ。気になることは色々とあるけど、私がいると余計にわちゃわちゃしちゃいそうだし」
あら、そうなんだ。それで今日は珍しくお酒を飲んでいなかったんだね。てっきり遠慮しているのかと思っていた。
ふむ、相棒の言葉の意味はよく分からないけど、そう言うのなら仕方無い。
それじゃあ、リオレウスやウラガンキン辺りを倒すことにしようかな。レウスの防具はかなり優秀だし、素材はあって良いはず。
その後は、日が傾くくらいまで4人でのんびりと料理を摘みつつ雑談をして過ごした。そんな打ち上げも相棒が帰るところで終了。
どうにもモヤモヤすることはあるけれど、あの相棒と話をすることができ、そのモヤモヤも多少は晴れてくれたと思う。だから相棒さんには素直に感謝です。
そして、その日の夜。
適度にアルコールが入ってくれたせいか、どうにも寝付けられずご主人や白ネコを起こさないようこっそりと抜け出してみた。夜ってのはひとり考え事をするのに丁度良いのです。
オトモ広場へ移動し、今宵も真ん丸に輝いてくれているお月様らしき物を見上げながら、ホッとひと息。月が、綺麗ですね。
さてさて、これからどうなるのかねぇ。前回と前々回、この世界へ来た時は、自分がやりたいことをやるだけで良かった。けれども、今回はそういかない。
だって、俺はご主人のオトモなわけですし。
そのことに不満はなく、あのご主人のため頑張ろうとも思えている。ただ、今までと勝手が違うせいでどう動いていけば良いのかがわからないのですよ。とりあえずは村クエを進めていけば良いと思っているわけですが、集会所の方はどうなるのやら……
そもそも、何処まで村クエを進めるのかもわからない。村クエと言っても上位レベルのものだってあるのだ。そして、今の装備でそのクエストをクリアできる自信はないかな。
ホント、これからどうなるんだろうね。
「え、えと……こんばんは?」
そうやって、ひとりうだうだ考え事をしていると、あの白ネコの声がした。
もしかしたら、俺が部屋を出たときに起こしてしまったのだろうか。そうだとしたら申し訳ない気分になる。
「こんばんはニャ」
月の綺麗なこの晩。相手の一番の特徴である真っ白な毛は月の光を浴び、いつもよりいっそう綺麗に見えた。
さて、そんな白ネコさんがこんな場所へ来てどうしたんでしょうね? 正直なところ、この白ネコさんはちょっと苦手なんです。会話は上手く続かないし、そもそもどんな会話をして良いのかもわからない。多分、相手もそう思っているだろうけどさ。
「こんなところで何をしていたの?」
「月を見ながらボーっと考え事をしていたニャ」
どうせ答えなんて出ないだろうに、どうしても考えずにはいられない。それくらい未来へ不安があるってことなんだろう。
さてさて、この白ネコさんとはどんな会話をしたものか。前のパーティー……まぁ、つまり相棒や笛の彼女たちのパーティーほど仲良くなるのは難しいと思っているけれど、同じパーティーのメンバーなのだからやっぱり仲良くなっておきたい。少なくとも仲が悪いよりは良いと思うんだ。
「そう言えば、“ニャ”って言わなくなったけど、どうしたのかニャ?」
とりあえず、ちょっと気になっていたことを聞いてみた。
そんなことを聞くと、何故か知らないけど、バシバシと叩かれた。いや、ホントなんで叩くのさ。
「わ、私は“にゃ”なんて言ってない!」
最初に会った時からずっと言ってたんだけど……むしろ、言わなくなったのはついさっきからだ。それにネコなんだし別ににゃーにゃー言ってもおかしくはないと思うけど……俺も最初は人前でニャーニャー言うのは恥ずかしかったが、最近はなんだか慣れてきました。まぁ、流石に相棒とかの前だと恥ずかしいけどさ。
しかし、困ったな。会話の内容のチョイスに失敗してしまった。難しいね、会話って。
う~ん、なんとも距離が測り難い。それに何処か避けられているような気もするんだよなぁ。そんな変なことをした覚えもないのに……
――――――――――
あの娘に自分のことを話してから、どうにも心がざわついてしまい、寝ることだってできなかった。寝付きは良い方だと思っていたのだけど……
そんなんだから、一度冷静になってみようと思い部屋を抜け出して外へ。
ただ、あの彼も抜け出していたことにすら気付けなかったのだから、それくらい動揺していたってことだと思う。
そんな気分のままオトモ広場へ行くと彼の姿。小さな体となってしまっているけど、それが彼であることに違いはない。
その彼を見つけた瞬間、バクバクと暴れる私の心臓。
ああ、困りました。冷静になろうと思って此処へ来たのに、これじゃあ逆の結果となってしまう。ホント、どうして貴方が此処にいるの……
とりあえず、一生懸命冷静な振りをしつつ、彼に挨拶をして、此処で何をしていたのか聞いてみた。ただ、もう語尾に変な言葉はつけない。つけられるわけがない。
元々、にゃーにゃー言うのは恥ずかしかったし、さらにそれを彼の前で言うのは流石に無理。
「そう言えば、“ニャ”って言わなくなったけど、どうしたのかニャ?」
そして、そんな彼のセリフ。
もしかしたら、私がにゃーにゃー言っていたことは気づかれてなかったんじゃないかなぁって期待していたけどダメでした。しっかりバレていました。非常にマズい状況です。
彼の言葉を聞いて、私の中で恥ずかしさやらなんやらが爆発。だから、彼をペシペシと叩きながら、自分でもどうかと思うような言葉を落とした。そんな言葉を落としたところで、私がにゃーにゃー言っていた事実は変わらないと言うのに。
こんなに恥ずかしい思いをしたのは初めてだ。どうせいつかバレてしまう日は来ると思うけれど、できるだけその日を遅らせる必要がある。
「んと……きっと君にも色々と事情があると思うニャ。ボクはそれでも良いと思っているし、ボクから詳しく聞くこともしないニャ。でも、君とは同じパーティーなのだから、やっぱり仲良くなれたら良いなって思うニャ。あっ、でも、だからと言って無理やり仲良くなりたいとかじゃなくて……君だってボクに対して色々と思うところがあるはずだし……」
わたわたと慌てながら、ちょっと早口にそんな言葉を落とした彼。
心が非常に痛む。私の態度が原因で彼にものすごく迷惑をかけてしまっているのだから。
えとえと、違うんです。私だって貴方とは仲良くなりたいと思っている。でも、今はちょっと無理と言いますか、そもそも貴方と私は付き合っているわけでして、だから安心してもらって良いけれど、そんなことを言えるわけがなくて……ああ、ど、どうすれば良いんだろうか。
それにしても、あの彼がニャーニャー言っているって考えるとちょっと面白いし、これはこれで可愛くてアリだと……こらこら、今はそんな状況じゃないでしょうが。
防具のせいで彼の表情は見えないし、そもそもネコの姿。でも、彼がどんな表情をしているのかはわかる。だって、それくらいは長い付き合いなんだもの。
きっと、今はあの申し訳なさそうな顔をしているはず。それは他人へ気を遣いすぎる彼がよくするあの表情。そんな彼に対して私は何かを言わなければいけないのだ。いつもいつも、彼には頼りっぱなしだけど、そんな彼を少しでも助けてあげられるように言葉を出さないといけない。
「え、えと、その……私は話すことが苦手なの」
「……うニャ?」
ゆっくりで良い。
やっぱり全部のことを話すのは無理だけど、それでも何かを伝えることはできるはず。
「だから、上手く言葉にすることはできない」
「うニャ」
きっとこの世界でも彼とずっと一緒になるだろうし、私はそうしたい。
自分のことを話さないくせに、都合の良いことばかりを望む酷く我が儘な人間だって自分でも思う。それでも、やっぱり彼には嫌われたくないし、一緒にいたい。それが私の本心。
その本心を全部話すことはやっぱりできない。それでも、一部だけなら言葉にすることができるから、そっとそっと口に出してみる。
「でも……あ、貴方のことは、嫌いじゃない、よ?」
むしろ、大好きです。
全部のことを話すことはできなかったから、言葉を選びながらゆっくりゆっくりと私がそう言うと、彼は静かに笑ってくれた。
私の想いも少しくらいは伝わってくれたのかな? 伝わってくれていれば嬉しいな……
「そっか……うニャ。それなら良かったニャ」
私はそんな我が儘な人間ですが、どうかこれからも貴方の隣にいさせてくれたら嬉しいなって思います。
つまるところ――これからもよろしくお願いします。