このベルナ村へ来る前、私はとある旅団に所属していました。
それはバルバレへと向かう砂上船でその旅団の団長と出会ったのが始まり。最初はバルバレのギルドに入ってそこでハンターを目指そうと思っていた。
でも、団長さんに私が気に入られ、旅団に入らないかと誘われたんです。その頃の私は狩りに一度も行ったことのない初心者ハンターで、そんな私を誘ってしまって良いのかなぁなんて思った。でも、団長さんや、その旅団に所属していた加工屋さんはすごく素敵な人で、その誘いを受けることに。
それからは本当に大変だったなぁ。
私は新米中の新米ハンターだったから、最初は失敗ばかり。ジャギィだって倒せなかったし、大型種なんてとてもとても。
失敗する度に私は凹んで、落ち込んで……でも、その度にあの団長さんが――
お前さんなら、できるできる!
と励ましてくれた。その団長さんの言葉に私はどれだけ救われたんだろう。それほどに団長さんの言葉は私の力になってくれた。
だから、あの頃の私は今よりもずっとずっとがむしゃらに頑張れていたと思う。ゴア・マガラとの戦いや、筆頭リーダーさん達との出会い。そして、シャガルマガラとの戦い。
今、思い返してみても本当に失敗ばかり。でも、旅団の人達は皆優しくて、そんな失敗ばかりの私をいつも応援してくれた。
正直、辛かったです。
本当に大変でした。
でも、それ以上に楽しかった……かな。
シャガルマガラを倒してからは、ドンドルマへ移り、そこでまた色々なことがあった。極限化個体なんて呼ばれるモンスターとの戦いや、クシャルダオラからの防衛戦とか。
自分で言うのもおかしいけど、それなりに私も頑張っていたと思う。今では当たり前のように使われている抗竜石の開発に私も関わっていたりするのだから。ただ、集会所には全く行かなかったから私のことを知っている人はやっぱり少ない。それに、そんな私よりももっともっとすごい人たち……あのハンターさんたちがいたから余計に私は目立たなかったんだろうなぁ。
別に、有名になろうとか、そう言うことは思っていない。でも、自分の力を試したいなぁとかもっと上手くなりたいなぁって思う自分がいて、私はベルナ村へ来た。
そんなことがあったのです。
私は旅団を抜けてしまったわけだけど、旅団の皆とは今でも仲良くできるだろうし、会えるのなら会いたい。だから、団長さんを見つけてお話ができたときは嬉しかったな。ベルナ村で頑張ると決めたのだから、またあの旅団に戻ることはないけど、アレだけ一緒に旅をした仲間。だから色々と思ってしまうよね。
そして、団長さんからとあるクエストをお願いされた。内容はあの古龍シャガルマガラの討伐。
シャガルマガラはすごく強いモンスターで、私じゃ失敗してしまうかもしれない。でも、このパーティーなら……あのネコさんと白ネコさんのいるこのパーティーならきっと倒せる。倒してしまう。それははっきりとわかった。
ただ、いつまでもネコさんたちに頼りっきりじゃダメなんです。私自身がもっと成長しないといけないんです。だって、私はあのネコさんたちのご主人なんだから。
今のままじゃダメ。私は変わらないといけない。
だから、これはきっと良い機会なんだ。きっとこれは私が変わるきっかけ。
そう思うのです。
「それじゃ行ってくるね!」
禁足地へ向かう準備は完了。そして、私を見送りに来てくれた頼もしすぎるオトモさんたちへ言葉を落としてみた。
「うニャ、ご主人ならきっと大丈夫だと思うから頑張ってくるニャ!」
「……気をつけて」
武器は漸く完成したエムロードビート。スタイルはブシドー。昔シャガルマガラと戦った時とは色々と違うけれど、もう後には引きません。あの頃みたく、もう一度がむしゃらに進むのだ。
「ふふ、うん、頑張ってくるね。ネコさんたちも仲良くしていないとダメだよ? よし……行ってきます!」
そう言ってから飛行船へ乗り込む私へ、ぶんぶんと手を振ってくれるネコさんたち。見ていてすごく和む。見た目はこんなに可愛いのに、その実力は私よりもずっとずっと上。でも、2匹とも私のことをちゃんと考えてくれる優しいアイルーさん。そんなネコさん達が私のオトモで本当に良かったと思う。
きっと私はひとりじゃ何もできない人間だ。けれども、いつだって周りの助けがあって、今こうしてどうにか立っていることができる。ソロで行くクエストだってひとりとは感じない。
ひとりじゃ何もできない私が頑張れているんだ。ホント、周りに恵まれている人生です。
それじゃ、ひと狩りいくとしましょうか!
天空山のベースキャンプ隣に位置する禁足地はベルナ村からかなり遠く、こうやって飛行船が開発された今でもなかなかの時間がかかってしまう。
クエストの時間は長くないけれど、またベルナ村へ戻るのはきっと三日後くらいになっちゃうんだろうなぁ。その間、ネコさんたちは大丈夫かな?
あのネコさんと白ネコさんの実力ならどんなクエストへ行っても大丈夫だと思う。だからそのことを心配していない。じゃあ、私は何を心配しているのかって話だけど――
「仲良くしていてくれればいいけど……」
そう言う事なんです。
別にあの2匹の仲が悪いと思っているわけじゃない。けれども、あの2匹が話をしているところとか見たことないんだよね……
それは、あの白ネコさんが大きな原因だと思うけど、ネコさんもネコさんで白ネコさんに対してちょっと引いているところもあるしなぁ。
私としては皆でワイワイしたいのだけど難しいものです。
私はネコさんと白ネコさんの過去にどんなことがあったのかは知らない。アレだけの実力があるのだし、きっと過去に色々なことがあったと思うんだけど……そこにはどんな物語があったのかな? 私が私の話をすればあの2匹も自分のことを話してくれるかな? そうだと嬉しいな。
うんうん、もし今回のクエストが無事に成功したら、私のことをちゃんと話してみよう。今まではずっと喋らなかったけれど、これで私が変わることができれば今度こそ話をすることだってできるはず。
それはつまり、私が初心者ハンターじゃないってことを教えてしまうこと。もしかしたら、それでネコさんたちが私から離れていってしまうかもしれない。でも、もういいんです。だっていつまでも黙っているのは心苦しいし、やっぱり同じパーティーの皆には私のことを知ってもらいたい。それでやっと私は前へ進むことができるはず。
それにしても、こうやって振り返ってみると私って頼りないご主人だなぁ……悩んでばかりで全然動けていない。そんな私のことをあのネコさんたちはどう思っているんだろうね? 聞くのは怖いけれど、やっぱり気になってしまう。
さてさて、それよりも今は目先のクエストに集中しないと。
多分、私が一番上手く使える武器は片手剣だ。あの旅団にいた時、ずっと使っていたものだし。でも、せっかく新しい場所で頑張ろうって思ったのだから、新しい武器を使おうって思ったんです。じゃあ、どの武器にしようかなって悩んで……選んだのはハンマーだった。
この世界に多くのハンターがいるけれど、ハンマーを使う人は少ない。流石に狩猟笛を使うハンターよりは多いと思うけれど、それでもハンマー使いのハンターさんは少ないんです。
そんな武器を選んだのは私が闘技大会を見てしまったから。それは恐暴竜――イビルジョー討伐の闘技大会だった。イビルジョーと私は戦ったことはない。けれども、そのモンスターがどれほど強いモンスターなのかは知っていた。
そんなモンスターの闘技大会に出場していたひとりのハンターさん。武器はハンマー。闘技大会は基本二人で出場するものだし、難易度だってそう設定されているはず。そうだと言うのに、そのハンターさんはひとりで出場していた。
当時の私は知らなかったけれど、その頃からそのハンターさんや、そのハンターさんのいるパーティーはかなり有名だったらしく、その闘技大会の盛り上がりはすごかったなぁ。
そして、その闘技大会の内容もその盛り上がり以上にすごいものだった。闘技大会は私も何度か見たことがあったけれど、そのハンターさんの動きは他のハンターと全然違うんです。
その動きを一言で言うと滅茶苦茶。相手の攻撃なんて関係なしに突っ込んでいき、攻撃は無理やりローリングで回避。確かに、闘技大会はその討伐時間を競うものでもあるけれど、彼処までするハンターさんは見たことがない。
でも、それが何よりカッコ良くて――憧れた。
私もあのハンターさんみたいに戦ってみたいって。
だから、私はハンマーを使っています。最初はすごく使い難い武器だと思っていたけれど、少しくらいは慣れてきたんじゃないかって思う。
私なんかじゃ、とてもじゃないけど、あのハンターさんみたいになることはできない。だからと言って諦めたくもない。少しでもあのハンターさんに近づけるよう頑張ってみるんだ。
今回の相手はすごく強い。そんなことわかってる。もしかしたら、ダメかもしれない。そんなことだってわかってる。
未だ慣れていない武器に、慣れていないスタイル。そして敵はあのシャガルマガラ。
どう考えたって分が悪い。もっと良い方法なんてたくさんあった。
でも……だからこそ――頑張りたいって思うんだ。
いつだって私は崖っぷちだったし、余裕なんて何もなかった。でも、ネコさん達がパーティーに加わってくれてからその感覚は薄れていたのかも。
だから……もう一度、あの頃の感覚を取り戻させてもらおう。余裕なんていらない。崖っぷちでいい。私は追い込まれているくらいが丁度いいんだ。
仮眠もしたし、身体の調子も悪くない。頼れる仲間が今はいないけれど、心細いとは感じない。
飛行船から降り、天空山のベースキャンプへ。支給品も受け取り、準備は完了。
ひとつ、大きく深呼吸。一度禁足地の中へ入ってしまえば、私が倒すか倒されるまで戻ってくることはできない。
そんな追い込まれている状況。でも、そんな状況は嫌いじゃない。
無意識に心臓は暴れ、呼吸の感覚だっていつもよりずっと早い。冷めた血液が全身を回る感覚。それは、初めてゴア・マガラやシャガルマガラ、極限化セルレギオスやクシャルダオラと戦った時と同じもので、ずっとずっと私が忘れていたもの。
懐かしい感覚。
ただ、これは悪いものじゃない。
「……よし、行きますっ!」
一度大きな声を出してみた。
その瞬間、私の中の何かが噛み合って……視界から色が消えた。
さて、あの頃の私を取り戻し、前へ進ませてもらうとしましょうか。
もうご主人さんが主人公で良いような気がしてきました
次こそ、シャガルとの戦いになりそうです