……気まずい。
ご主人がシャガルのクエストへ行ってしまってから、まず思ったのはそんなことだった。
現在の場所はベルナ村。当たり前だけど其処にご主人はいなくて、俺と白ネコだけ。多少は打ち解けることができてきているのかもしれないけれど、この白ネコと二人だけと言う状況はやっぱり気まずかった。いや、俺がそう思っているだけなのかもしれないけどさ。
何より俺の立場がちょっと特殊すぎるんだ。この白ネコはこの世界のアイルーなはず。一方、俺はアイルーじゃなく中身は人間だし、そもそもこの世界の人間じゃない。せめて俺が、この世界の人間かアイルーだったらまだ会話に困らなかったかもしれない。けれども、流石にこの白ネコと俺は離れすぎている。共通性が少なすぎるわけですよ。
ホント、どうしたものか……
「ご主人さん行っちゃったけど、どうするの?」
ん~……どうしよっか。ご主人から白ネコと二人でクエストへ行く許可はもらっている。それにこの白ネコと一緒なら下位クエストくらいは全部クリアできると思う。それこそテオとかだって行けるんじゃないだろうか。まぁ、そんなクエストを受注させてくれるわけないけど。だって俺たちネコですし。
そうなるとネコ専用のクエストへ行くのが無難、ただ、なんかもったいないんだよなぁ。どうせなら使える素材とか集めておきたい。それに俺もこの防具飽きてきちゃったんだよね。
「君は何か行きたいクエストとかあるかニャ?」
もし防具を作るとなるなら作りたい防具がある。元の世界へいた時もオトモにはいつもその防具をつけさせていたものが。どうせならそれを作りたいなって思うのです。
「ううん、私は特にない」
あら、そうなのか。
じゃあ此処は俺の我が儘を通してもらっても良いのかな? ご主人と一緒にそのモンスターと戦ったことはまだないから、ちょっと申し訳ないところだけど。
「えと、じゃあさ、クエストだけど……ゴア・マガラいいかニャ?」
戦い慣れている相手でもあるし、クリアはそれほど難しくないはず。それに何よりあのゴアネコ防具が好きなんです。あと、ネコのゴア装備って見た目も良いけど、武器なんかは名前もおしゃれだよね。
「防具のため?」
「うニャ」
白ネコの質問に、俺がそう答えると何故かクスリと笑われた。別にそんなおかしなことを言った覚えもないのに、何処か恥ずかしい。
「うん、わかった。それじゃあゴアのクエスト行こ」
君なら問題ないと思うけど、よろしくお願いします。
そんなわけで、ネコ2匹でゴア・マガラと戦うことになりました。
―――――――――――
ご主人さんひとりでシャガルへ挑戦することとなり私たちは暇に。
シャガルかぁ……ハンマーとの相性も悪くないし、あのご主人さんが我らの団のハンターなのだとしたら、戦ったこともあるはず。それにあのご主人さんのことだ。シャガルくらいならソロでもまず大丈夫だろう。
ちょっと頼りないところもあるご主人さんだけど、彼女が上手いのは確か。このクエストがきっかけとなり自信をつけてくれれば良いけど。
そして、暇になった私たちは、どうやらゴアと戦うらしい。ゴアと戦う理由はあの彼が防具を作りたかったからと言うもの。そう言えば、ゲームの中でも彼はいつもオトモにゴア防具をつけさせていた。そんなことを思い出してしまったから、私の口からクスリとひとつの笑い声。
結局のところ、この世界にいようが元の世界だろうが、人間の姿だろうがネコの姿だろうが彼は変わらない。それが良いことなのか悪いことなのか、そんなこともわからないけれど、やっぱり安心できる。
「それじゃ、早速出発するニャ!」
「りょーかい」
そして、今回は初めて彼とふたりきりでのクエスト。闘技大会もふたりだけだったけれど、あの時は彼が彼だと知らなかったし、闘技大会はまた別。
だから今回はちゃんとした初めてのふたりだけのクエストと言うことで、その……うん、まぁ、色々と思っちゃうよね。いや、彼は私が私だと知らないわけですが。
流石にデートみたいだとは思わないし、こんな殺伐としたデートはお断りしたいところ。でも、ちょっぴり楽しみにしている自分がいるのは仕方無いと思うんだ。それくらいには彼のことが好きなわけですし。
「えと……君はゴアと戦ったことがあるかニャ?」
クエストへ向かう準備も終え、今は古代林へと向かう飛行船の上。
ベルナ村の受付嬢さんには、クエストを受けようとした時に止められたけれど、どうにか受注させてもらえることに。見た目はちょっと頼りないかもしれない。でも、中身はちゃんとしたハンターだから安心してください。
「うん、何度か」
ゲーム中では嫌になるくらい戦ったし、この世界でもそれなりの数のゴアと戦ってきた。MHXになってから特に新モーションが増えたわけでもないし、問題なく倒せると思う。
「うニャ。それなら安心ニャ。ボクはちょっと自信がないから頼りにしてるニャ!」
そんな彼の言葉を聞き……吹き出しそうになった。危ない危ない。
この発言もきっと私を私だと知らないからなんだよね。申し訳ないって思ってしまうけれど、今の状況を楽しんでいる自分がいたりする。だって今の彼は私に向けている姿ではなく、この世界のアイルーへ向けている姿なのだから。
でも、やっぱりいつもとあまり変わらないね。
ただ、今なら私に見せてくれないような姿を見せてくれたりするのかも。なんてちょっぴり黒いことを思ってしまう。
どうしよっかなぁ、何を聞いちゃおうかなぁ。ふふっ、なんだか面白くなってきた。
「貴方ってあの操虫棍のハンターさんとどんな関係なの?」
とりあえずは聞きやすいところから。そして最終的に私のことをどう思っていたのかまで聞いてみたいけど……流石にそれは難しそうだ。
「うニャ? ああ、うん。えと、ギルド側の手違いでクエスト中に出会ったことがあって、そこで知り合ったニャ。それでちょっと前、あのハンターさんとクエストへ行ったんだニャ」
んと、確か私がこの世界へ来たとき彼がいなかったのは、あの娘と一緒にクエストへ行っていたから……だったかな。ふ~ん、その前にもう彼はあの娘と出会っていたんだ。それは初めて知った。
しっかりしているように見えてかなり抜けている彼のことだ。多分、無意識のうちに下手なことを言ってあの娘に気づかれちゃったんだろうなぁ。まぁ、あの娘もあの娘でかなり聡いけど。
「……それだけ?」
ちょっと意地悪だけどもう少し突っ込んで聞いてみる。だってこんなの今しかできないことだから。それに彼ならこのくらいで怒るような性格でもない。彼は将来、尻に敷かれるタイプだ。だから今のうちから……えと、い、いえ、なんでもないです……
「へっ? えと、あの、いや、べ、別にそれ以上は何もない、ニャ」
明らかに動揺した様子の彼。それが見ていてすごく面白く、思わずまた笑ってしまいそうになったけれど、どうにか我慢。
ただ、少しばかり彼のことが可哀想になってきた。多分、あの娘にもこうやっていじめられたんだろうなぁ。でも、こう言うことやりたくなっちゃうよね。うん、彼には悪いけど仕方無いと思う。
「え、えと、君はあのハンターさんのことを知っていたのかニャ?」
「うん、だってあのハンターさん有名だし」
改めて思う。
なんて生産性のない会話だろうと。いや、私から始めた会話なんだけどさ。この会話をあの娘に聞かせてあげたらどんな反応をするだろうか。あの娘ならすごく笑ってくれそうだ。
「ああ、うニャ。そうだニャ。あのハンターさん、有名だニャ」
ふふっ、やっぱり複雑だよね。同じパーティーだった人がすごく有名なハンターになっちゃうってのは。私たちも元の世界へ戻らず、あのままずっといたらそうなっていたのかな? そんなことを考えたって仕方が無いし、有名になんてなりたくないけど色々と思ってしまう。
ただ、あの娘も今は楽しいようだし良いのかな。そして、私も今は楽しいです。彼はどう思っているのか分からないけど。
さてさて、これ以上この会話を続けたって彼も困るだろうし、これくらいにしておこう。本当はもう少し続けたいけど、やっぱり彼に嫌われたくはないから。
「貴方はゴアと戦ったことあるの?」
それじゃあ、今回のクエストのことについて話をするとしよう。ゴアが相手だし、そんなに気をつけることもないけど、話をしておいて悪いことはないはず。
「あ~……ん~……まぁ、あると言えばあるニャ」
初めてこの世界へ来た時もゴアの防具作ったもんね。
「でも、自信はないニャ」
またまた、そんなこと言っちゃって。
間違いなく貴方は凄腕のハンターなのだから、もっと自信持って良いのに。今はちょっと小さな身体だけど、中身は立派なハンター。
変なところで遠慮してしまうこの彼の性格も変わらない。
「わかった。じゃあ、一緒にがんばろ」
そう言って笑ってみた。
色々と溜め込んでしまう彼の性格。きっと今だって彼の中は悩みでいっぱいなはず。その悩みが少しでも減るように私は笑ってみる。
全部を話すことはできなくても、私にできることはきっとあるはずだから。
「うニャ。よろしくお願いするニャ!」
この彼と一緒なんだ。それは誰よりも頼もしいパートナー。
負ける要素は何もないし、それじゃ、サクッと倒してきましょうか。
ご主人さんが頑張っているのにこの2匹は……
なんて思わなくもないですが、まぁ、自由にやってもらいましょう
そして、白ネコさん視点にしたせいでお話が全然進まない……
この2匹のお話ですが、少なくとももう2話はかかりそうです