「ネ、ネコさん! 大丈夫だった? 怪我とかしてない!?」
白ネコと一緒に飛行船から降り、ベルナ村へ到着するとディノバルドと戦った時のように降り場の近くにはご主人の姿が。
そして、俺たちを心配する言葉を落としてから、2匹まとめて抱きしめられた。
「う、うニャ。ずっと隠れていたからなんとか大丈夫だったニャ」
それは嘘だけど、本当のことなんて言えるわけがない。怒られるのも心配されるのも嫌ですし。
だから、そのことだけは事前に白ネコと話し合っておいた。あと、ずっと隠れていた飛行船を操縦してくれたネコとも。
操縦ネコは、どうしてそんなことをするのか分かっていないようだったけれど、どうにか納得してくれました。
「良かったぁ……クエストから帰って来たらネコさんたちが消息不明になったって聞いたから、すごく心配したんだよ?」
そりゃあ、ご迷惑をおかけしました。
とは言え、アレばっかりはどう仕様もなかったしなぁ。戦いを挑んだのは自ら進んでだけど、あの場所へ落ちてしまったのは俺のせいじゃないし。
「白ネコさんも大丈夫だった?」
「うん、大丈夫。余裕だった」
ご主人の言葉に白ネコはそう答えた。
うん、そうだね。君はずっと余裕そうだったね。……どっかの誰かさんと違って。
ホント、格好悪いところを見せちゃったよなぁ。まぁ、これからまた頑張って俺の評価を上げていくとしよう。
どうにかして、オストガロアを撃退したわけだけど、それで安心できたかと言うと、そうでもなかった。だって、また何時アイツが帰ってくるのかなんて分からないのだから。
下位相当のオストガロアなら何度来ようが倒すことができると思うけれど、本気で来た場合は勝てない。迎えが来てくれるかどうかも分からなかったし、精神的には撃退した後の方が疲れたかも。
俺はそんな状態だったと言うのに、この白ネコさんったらまぁ、マイペースなのね。
落ちているバリスタの弾で遊び始めるわ。探検してくる。とか言って何処かへ行こうとするわ。疲れたから寝る。とか言ってすやすや夢の世界へ旅立つわと、とにかく自由だった。その余裕は何処から来るのやら……
ただ、そんな白ネコのおかげで気持ちは楽になったと思う。だから、こっそりと感謝している自分がいたり。
それに多分白ネコがそんな行動をしたのも……いや、流石にソレは考えすぎなのかな?
因みに、救助の飛行船は1日も経たないくらいに来てくれました。2、3日はかかるかなぁって思っていたけれど、流石です。
「そんなことより、ご主人のクエストはどうだったニャ?」
「そんなことって……ホントに心配してたんだよ?」
いや、だって結局アイツは下位個体だったわけですし……
そんなもの結果論でしかないけれど、危険なことは何もなかった。ただ俺の恥ずかしい姿を白ネコさんに見られただけです。
「はぁ……うん、クエストはどうにかクリアできたよ。それもネコさんのアドバイスのおかげだね!」
俺のアドバイス? シャガルと戦うことに対してアドバイスなんてしたかな。いや、まぁ、ご主人がそう言うのだから何かを言ったとは思うけどさ。
とは言え、それは良かった。
多分、ご主人がシャガルと戦うのは初めてじゃないんだろう。それでも、慣れない武器――それもハンマーを使い、ソロで古龍を倒すことができたのは凄いこと。これでご主人も自分に自信を持つことができただろうか。そうだと良いけど……
「それは、おめでとうニャ!」
「おめでとうご主人さん」
ソロでシャガルを倒すことができたんだ。これはもうご主人も一流のハンターと言って良い。
そんなご主人の足を引っ張らないよう、俺も頑張らないとなぁ。
「えっ、あ、うん。ありがとう」
あら? ご主人に元気がない。もっと喜んで良いことだと思うけど。
ん~……俺たちのことを気にしているのかな? ホント、そんな気を遣わなくて良いんだけどなぁ……
ああ、そう言えば俺たちもゴアを倒したのか。オストガロアのせいで大事なことを忘れていた。ゴアを倒すことができたのだし、これで俺の防具も新しくすることができる。
「ご主人ご主人、新しい防具と武器を作りたいんだけど、大丈夫かニャ?」
「えと、うん。それはもちろん良いけど、何の装備にするの? あっ、シャガルマガラの素材使う?」
そっか、シャガルの装備も作ることができるのか。
確かにシャガル装備も強いけれど、シャガル防具ってあの天使みたいな見た目になるやつだったよなぁ。
ああ、うん。どう考えても俺には似合いませんね。
「ゴアの素材を使った装備にするニャ」
「うん、了解。白ネコさんはどうする?」
「じゃあ、私はシャガルの装備にする」
あら、白ネコはそっちにするのか。まぁ、シャガル装備――アンヘル防具の方が防御力高いもんね。あと、武器もシャガルの方が強かったはず。
ん~やっぱり俺もシャガル装備の方が良いのかな。ただ、やっぱりゴア装備は魅力的だし……
「貴方はゴア装備の方が似合うと思う」
ゴアとシャガル何方にしようか悩んでいると、白ネコからそんな言葉をかけられた。
あっ、やっぱりそうですか? そうだよなぁ、流石に天使は俺に似合わないよな。この白ネコみたいに真っ白で綺麗な毛並みなら似合うんだろうけど。
「じゃあ、ネコさんはゴア・マガラ装備で、白ネコさんはシャガルマガラ装備ってことで良い?」
「うニャ!」
「うん、お願い」
これで毒と睡眠はなくなってしまうけれど、火力は上がる……はず。いや、水爆と毒ダメを考えると微妙か?
ま、まぁ、とにかく新しい装備なんだ。それだけでワクワクしてくる。
それから、加工屋へ行き素材を渡してから二匹分の装備をお願いした。ネコの装備は早く完成するし、明日にはきっと出来上がっているはず。
新しい装備、楽しみだね。
さてさて、それじゃ色々あったことだし打ち上げをやろうか! なんて思ったけれど、今回色々とありすぎたせいで、龍歴院の研究員への事情説明だのなんだのをさせられることに。
その後も、ベルナ村の受付嬢にギルドを代表してってことで謝られたりなんかも。今回は誰かが悪かったとかそういうことじゃないのだし、俺は気にしてないんだけどなぁ。いや、建前とかそういうのが大切だってことも分かっているけど。
そんなわちゃわちゃがあってから漸く打ち上げ。
「これからの予定はどうするのニャ?」
いつも通りのビールを飲みながらご主人に質問。
ああ、今日もビールが美味しい。
「んと、私も詳しくは知らないけど、龍歴院の人から呼ばれてるんだ。多分、クエストの依頼だと思うからそれをやることになると思うよ」
あら、そんなことがあったんだ。
うむうむ、それだけこのご主人も頼りにされてきているってことかな? それだと嬉しいけど。
でも、そんなイベントがゲーム中であっただろうか。龍歴院のイベントは全部、集会所クエスト関連だった気がするけど。
まぁ、どんなクエストが来ようとも、俺は全力でやるだけです。ガムート戦以来の全員で行くクエスト。きっと新しい装備だろうし、楽しみだ。
そして、次の日。昨日に頼んでいた新しい装備が完成しました。
「……天使と悪魔?」
俺と白ネコの新しい装備を見て、ご主人が最初に落とした言葉がそれだった。
別に狙っていたわけじゃないけれど、うん、確かにそうだね。俺は悪魔と言うより、死神とか亡霊って感じだけど、白ネコのアンヘル装備の隣に立てば、そう思ってしまうのも仕方無い。
「ネコさんってフルフェイスが好きなの? あっ、似合ってるとは思うよ」
「別にそんなことないニャ。ボクの作る防具がたまたまそうだっただけニャ」
俺が好きなネコの防具は、このゴア装備と骸装甲装備。……ああ、うん。どっちもフルフェイスだね。いや、でも、ホント両方良い装備なんだよ?
それにしても、白ネコとは見事に対照的な装備になってしまいました。
そう言えば、あの彼女もオトモにはアンヘル装備をつけさせていたなぁ。そんなことをついつい思い出してしまいます。
「それじゃ、私はちょっと龍歴院に行ってくるけど、ネコさんたちはどうする?」
「ボクは此処で待っているニャ」
昨日ことでまた何か聞かれたら面倒だし。
「私もそうする」
あら、君もですか。
「了解。あまり時間はかからないと思うけど、それじゃあちょっと行ってくるね」
うん、行ってらっしゃい。
良い報告であることを願っているよ。
「……どんなお話をされるのかな?」
ご主人が龍歴院へ向かって直ぐ、白ネコがそんなことを聞いてきた。
「ん~……ボクも分からないニャ。多分、ご主人が言っていたように、何かのクエストの依頼だと思うニャ」
ただ、龍歴院ってことはやっぱり集会所のクエストだよなぁ。まぁ、下位クエストなら大丈夫だと思うけど。
タマミツネとかその辺のモンスターかな? ラギアなんかは苦労しそうだから遠慮したいところです。
「君はどう思うニャ?」
「私もわかんない。でも、そろそろ動き出すんじゃないかな。そんな時期だと思う」
動き出す? なんのことですか?
そんな白ネコの言葉の意味は分からなかったけれど、どうやら何か感じているものがあったってことだと思う。
俺はそんな感じ全然しなかったんだけどなぁ……
それからは、お互いの防具を見てみたり触ってみたりして、ご主人が帰ってくるのを待った。
その天使の輪っかとかどうやって浮いてるんだ? いや、似合ってるとは思うけど。
昔と比べてこの白ネコと二匹だけになっても慌てなくなったと思う。それも多分、お互いに。最初の頃なんて二匹してどう接して良いのか分からなかったもんね。でも、今となっては緊張することもないし、二匹だけでいても苦にならない。
この白ネコはどう思ってくれているのだろうか。
そして、時間にして一時間もしないくらいだと思う。ご主人が帰って来てくれました。
ただですね、そのご主人の様子が少しばかり……てか、かなりおかしいのですよ。顔とか青くなっているし。
「……何があったの?」
白ネコだっておかしいと思ったんだろう。だから、まず白ネコがそんな質問をした。
「その……何から説明したらいいのかわかんないんだけど……」
えっ、もしかしてかなりマズい感じですか? このパーティーがバラバラになるのだけは避けたいのですが……
「うニャ。ゆっくりでも良いから、話してほしいニャ」
「うん、ありがと。そのですね……」
俺が言葉をかけると、少しだけ言葉を落としてからご主人は大きく深呼吸をした。
何を言われたのか分からないけど、そんな反応をされるとこっちまでも緊張してしまう。
「上位ハンターになるための緊急クエストをお願いされちゃったんだ」