「それじゃあ、オブシドハンマーって武器を作ればいいのかな?」
「うニャ。それで大丈夫ニャ」
ユクモ村での観光も終わり、現在の場所はベルナ村。
これからはまたモンスターと戦う日々が始まりそうだ。そして、今はご主人の新しい武器を作成しようとしているところ。
「でも、せっかく作ったのに、エムロードビートは強化しなくていいの?」
いや、できればエムロードビートを強化していきたいんだけど、素材がなぁ……
だって、ライゼクスは一回しか倒してないし。
「それができればそうしたいけど……ご主人、電竜の逆鱗は持っているかニャ?」
エムロードビートをレベル3まで強化することができれば絶対にそっちの方が強い。ただ、ライゼクスの逆鱗がなかなか出ないんですよ。
あと、ゴアの触覚も要求されたりも。まぁ、そっちは前回、俺と白ネコで行った時に入手済みですが。
「あるよ」
だから、此処は一度比較的作りやすいオブシドハンマーを……うん?
「え? 持ってるの? 逆鱗」
「うん、前倒した時に出たもん」
……運、良いんだ、ご主人って。
よ、よし、それじゃあ、オブシドハンマーじゃなくてエムロードビートにしよう。レベル5の強化に獰猛化素材を要求されるけど、斬れ味と会心率は優秀だから、なかなかに強い武器。獰猛化モンスターと戦えるようになるまでの繋ぎとしては充分。
ただ、見た目がハンマーっていうより、斧なんだよね……だから正直、俺は好きな武器じゃありません。一方、オブシドハンマーはすごくカッコイイから大好き。
「それじゃあ、エムロードビートを強化してもらえば良いと思うニャ。あと、オブシドハンマーも一応、作ってもらった方が良いニャ」
「わかった。それじゃあ、加工屋さんのところに行ってくるね」
ちょっと予想外のことが起きたけれど、別に悪いことじゃない。予定よりは良い武器ができるわけですし。
……逆鱗の入手確率ってどのくらいだったかな。
「結局、この後はどうするの?」
ご主人との会話が終わったところで、とことこと白ネコが近づいてきてからそんな言葉を落とした。
う~ん、どうしようか。ご主人の武器と防具が完成するのは明日。その間、クエストへ行くことはできないし……
「え、えと、ご主人の装備が完成するまで特に予定はないけど……君は何かやりたいこととかある?」
てか、白ネコさん? ちょっと距離が近いですよ? いや、別に君のことを嫌っているわけじゃないですけど……ほら、前回のことがあったので、俺としてはどのくらいの距離を保てば良いのかとかよく分からないわけでして……
残念なことに俺はモテるような人間ではありません。告白されたことだって、あの彼女にしかなかったし。ですので、こういう場合、どうすれ良いのかとか分からないのですよ。例え、相手がネコだとしても、適当に扱って良いはずがない。
「ううん、私は特にない」
そして、一番の問題は何かっていうとですね。
その……告白されてしまったせいか、どうにも白ネコさんのことが気になってしまうというか、何というか……
ほら、よくあるじゃん。好きと言われたせいで、その相手のことが気になっちゃうこととか。
……自分で言っておいてアレだけど、小学生みたいだな。
はぁ、何を緊張しているんだか。
さ、さて、そんなことは良いとして、これは暇になってしまいましたね。ご主人をおいて、俺と白ネコだけでクエストへ行くって選択もあるけど、正直、今はこの白ネコとふたりだけになりたくない。
ネコだけどチキンなんです。
「ネコさーん、加工屋さんに頼んできたよー」
お疲れ様です。
ん~……ホント、この後はどうしよっかなぁ。
俺としては早くご主人のHRを上げて強いモンスターと戦いたいのだけど、そもそもクエストへ行けないとなると本当にやることがない。
ゲームの時みたく、武器防具が一瞬で完成してくれれば良いのにね。
「ご主人、ご主人。何かやりたいことはあるかニャ?」
やれることはないのだし、またユクモ村へ行ってものんびりするとかでも良いかも。あとは……闘技大会とか?
「特にないけど……あれ? もしかして暇になっちゃった感じ?」
ご主人の言葉にコクリと頷いてみる。
はい、そうです。暇になってしまいました。
ホント、どうすっかなぁ。装備なしで行く古代林探索ツアーとか……いや、何を言っているんだ俺は。
「そっかぁ。それじゃあ、今日もまたお休みになっちゃうね」
ですね。
とは言え、やれることがないのなら仕方無い。今日もまたのんびりさせてもらおう。
その後は、とりあえずご飯でもってことで、ベルナ村ではなく龍歴院で食事をすることに。その後の予定は決まってないし、今日はもうずっとムーファの背中の上でゴロゴロしていようかな。たまにはそんな日があっても良いだろう。
な~んて思っていたわけなんだけど……
「あっ、見つけた。やほー槌ちゃん。ひっさし振りだね!」
なんでか知らないけど、相棒さんがいました。
なに? あんた暇なの?
しかも相棒だけじゃなく、その近くには弓ちゃんと……相棒の妹さんの姿も。大老殿でトップの3人が全員揃ってしまった。大老殿が心配だ。
「あっ、あ。お、お久し振りです!」
そして、相変わらず相棒さんを見て緊張してしまうご主人。
俺のことは慣れたけど、相棒さんはまだダメらしい。なんだろう……なんとも複雑な気分。
「今日はどうしたのニャ?」
「んとね、ナルガクルガが今度は古代林に現れたから私たちが来たの」
どうせ、白疾風のことだよなぁ。
確かにアイツは強いけど、この3人を呼ぶのは流石に戦力過多な気がする。
「なんて理由もあるけど、皆で遊びに来たんだ。弓ちゃんとこの子はベルナ村に来たことなかったし」
うん、そんなことだろうと思った。
白疾風ねぇ……まぁ、アレだ。頑張ってくれ。一度戦っているのだし、このメンバーならまず大丈夫だろう。多分このメンバーなら、オストガロアでも余裕で倒せると思う。
「槌ちゃんたちはこのあとクエストへ行くの?」
「い、いえ、武器と防具が完成してないので、今日はクエストへ行かない予定です」
そんなご主人さんの言葉を受け、相棒さんが俺の方を見ながらなんとも意地の悪い笑みを浮かべた。
嫌な予感。
「へぇ……あのね、私たちは3人だから後ひとりの空きがあるんだ」
ほら見なさい。言わんこっちゃないわ。
「だからね、ネコちゃんか白ネコちゃん一緒に来ない?」
おろ? 白ネコも誘うんだ。てっきりまた俺が連れて行かれるのかと思った。
ふむ、それじゃあ此処は白ネコに任せるとしよう。白疾風とはもう戦っちゃったし。
「……私は調子が悪いから貴方に任せる」
白ネコに先手を打たれてしまった。調子が悪いとか、どう見たって嘘です。
「ボクも今日はダメっぽいから遠慮す……うニャ!?」
「お姉ちゃん! このアイルーが前言ってたネコ?」
断りの言葉を落とそうとしたら、後ろから誰かに抱きかかえられた。
俺、知ってる。これ、ダメなやつだ。
「え、えと、うん。そうだよ。この前私たちと一緒に行ってくれたネコちゃんだね。ネコちゃんなのにすごく上手いんだ」
余計なことを……
相棒の妹さんとは何度か関わりがあるけれど……正直、俺との仲は良くないです。てか、一方的に俺が嫌われています。
「ホント! それじゃあ、このネコを連れて行こうよ!」
また、そうやって俺のことを物みたいに扱って……お願いだから、俺の気持ちも大切にしてもらいたい。
「そうですね。貴方なら安心ですし、それが良いかと」
そして、畳み掛けるような弓ちゃんの言葉。逃げ道を完全に塞がれてしまった。マジ容赦ない。
「あー……そ、それじゃあ槌ちゃん、またネコちゃんを借りてもいいかな?」
「はい! どうぞお好きに使ってあげてください」
心が折れそうだ。
あと、妹さん? 良い加減、下ろしてもらえませんか?
「よし、それじゃあ、早速出発だね。ネコちゃんは準備できてる?」
「できてないニャ」
「了解。頑張っていこー!」
お願いですから話を聞いてください。
「白ネコさん。私たちはどうしてよっか?」
「……今日はのんびり過ごせば良いと思う」
すごい、大勢いるのに誰ひとりとして俺の味方がいない。おかしいね。
結局、その後も俺の言葉を聞いてもらえず、クエストへ連れて行かれることになった。
唯一の抵抗として、3人パーティーじゃオトモは連れて行けないってことを言ってみたけれど、ちゃっかりご主人が俺と白ネコをニャンターとして登録していたらしく、問題なく連れて行けるんだって。そんな大事なことをご主人は相談もせず勝手に……
いや、まぁ、別に文句はないけど。
因みに、相棒さんと弓ちゃんの装備は、前回の物を上位にしたもので、妹さんはレギオス一式に、大剣もレギオス大剣。この3人の実力のことも考えると絶対に俺はいらない。
「それじゃ、頑張ってね、ネコさん!」
「がんばってね」
クエストへ出発する俺へブンブンと手を振るご主人と白ネコ。
……はい、頑張ってきます。
ん~……白疾風かぁ。
色々と文句があるところではあるけれど、前回俺は最後まで戦うことができなかった。そのことを少しばかり悔しく思っている自分もいるから、自分で思っているよりはこのクエストも悪くないかもしれない。
メンバーがメンバーということもあり、今回はあっさりとクリアできると思う。
それでも、まぁ、せっかくの強いモンスターと戦えるチャンスなんだ。頑張って行ってみようか。