ネコの手も狩りたい【完結】   作:puc119

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第53話~やっと~

 

 

「思ったけど、最近は渓流ばっかだね」

 

 ロアルドロス狩猟のため、渓流へ到着。

 そして、渓流のベースキャンプでご主人がぽそりと呟いた。

 

 まぁ、今までずっと防具作りのためにクマさんと戦ってたし、それも仕方無い。それに渓流は嫌いなマップじゃない。景色は綺麗だし、うろうろしているだけでも楽しいよね。

 

「……ロアルの場所はエリア7」

「了解です!」

 

 ロアルかぁ……一応、ロアルのハンマーもあるけれど、あまり強くないんだよね。狂走エキスを取れるのは美味しいけれど、それ以外の旨味は少ないと思う。

 

「ネコさんネコさん。私は頭を叩けばいいんだよね?」

「うニャ。ボクたちが頑張って尻尾を狙うから、ご主人はそれで大丈夫ニャ」

 

 多分、無理だとは思うけれど、できれば竜玉を手に入れておきたい。そのためにも頑張って尻尾の切断をやってみます。ただ、尻尾なんて普段は狙わないから、切断できる自信がない。尻尾を切断する前に倒しちゃうかも。

 ま、やれることは全部やっていこうか。

 

 

 

 

 

 

「んー……初めてロアルドロスを見たけど、ちょっと可愛いね」

 

 渓流のエリア7。其処でメインターゲットを発見。

 そう言えば、ご主人がロアルと戦うのは初めてになるのか。まぁ、スタイルもブシドーだし、ロアルなら問題ないと思うけど。可愛いかどうかはノーコメントで。ただ、フルフルよりは可愛いと思う。

 

「よし! 行きますっ!」

 

 スタン耐性がちょっと高いけど、頑張ってください。2スタンでも取ることができれば充分だと思う。

 

 クマさんほど弱くはないにしろ、ロアルは強い相手じゃない。貫通火炎弾の撃てるライトが4人揃えば、ハメ殺しに近い形で倒すことができるくらいだろう。攻撃力も高いわけじゃないし、気をつける攻撃も……えと、回転攻撃くらい? そんなロアルの通称はバナナとかポンデライオンとか。

 水中戦は鬼のように強かったんだけどなぁ。

 

 やたらと好戦的な子バナナ(ルドルス)たちを鬱陶しく思いながら、ペシペシとブーメランをロアルに当て、サポゲを稼がせてもらう。ブメ2種を発動できたら、次は超音波を使った方が良さそうだ。子バナナたちが邪魔で仕様が無い。

 

「あたっ……おっ? な、なんか走り出したよ!」

 

 走り出したロアルにご主人が轢かれた。

 でも、どうやらダメージはそこまでないっぽいです。

 頭の前にいて怖い攻撃もアレくらいだし、今回もサクっと倒すことができそうだ。うむ、防具を先に作っておいて良かったね。

 

 誰に向かって走り続けているのか分からないロアルを横目に、溜まったサポゲを使ってブメ2種を発動。これで準備は完了。白ネコの方も準備できているっぽいし、一気に畳み掛けようか。

 

 

 

 

 そこからは特に問題もなく安定した狩りが続いた。

 

「こんのっ……えいっ!」

 

 そして、ご主人が回転攻撃をジャスト回避してからのカチ上げが決まり、本日一回目のスタン。ナイスです。

 

「ご主人、頭じゃなくタテガミを狙うニャ!」

「了解っですっ!」

 

 別にタテガミの部位破壊報酬が欲しいわけじゃないけれど、肉質的に頭よりタテガミの方が柔らかかったはず。それなら狙える時はそっちを狙った方が良いだろう。

 しっかし、なかなか尻尾が切れんぞ。白ネコと一緒に頑張って狙っているけれど、全然切れない。むぅ、やっぱり下位武器じゃ厳しいのかな。白ネコは良いとして、俺はもう武器を変えた方が良いかもしれない。

 

「おっ? な、なんか壊れました!」

 

 ご主人の声を聞いてから、チラリ其方の様子を確認すると、ロアルの特徴でもある立派なタテガミが砕け、白色の肌が見えていた。まさに皮を剥いたバナナといった感じ。

 てか、壊れるの早いな。ご主人の攻撃がそれだけタテガミに吸われていたってことだと思うけど。

 

「あー……ポンデリング壊れちゃった、ポンデリング」

 

 そして、ぽそりと聞こえた白ネコの声。

 そうだね、ポンデリングが壊れちゃ……うん? ポンデリング? え、いやなんで君がその言葉を――

 

 なんて考えていたところで、ロアルの尻尾振り攻撃が直撃して吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっし! 討伐完了だね!」

 

 多分、5分針だと思う。

 あの後、討伐する直前でどうにか尻尾の切断をすることも。ただ、捕獲はできなかったし、尻尾から竜玉も出ませんでしたとさ。

 まぁ、そんな上手くいくわけがないのですよ。モンハンなんてそんなもんだ。

 

「……お疲れ様」

「お疲れ様ニャ」

 

 それにしても……先程の白ネコの言葉がどうしても気になってしまう。きっとこの白ネコにも白ネコの事情があるだろうから、俺から聞かないようにと思っていたし、気にしないようにとも思っていた。

 

 けれども、あの言葉は流石に……

 

 う~ん、これはどうしたものか。この白ネコが普通のネコじゃないことは分かっていたけれど……つまりはそういうことなわけですよね?

 そうなると、俺としても願ってしまうことがあったりするわけで、でもそんな都合良くいくわけがないとも思ってしまうわけで……どうしたものやら。

 期待が外れてしまうとやはり辛い。そうなると自然と保険をかけたくなってしまうのも仕方無いと思うんだ。

 

「ねぇ、白ネコさん。次はどのモンスターと戦えばいいかな?」

 

 どうして俺がこの世界へ来たのか分からない。これで3回目のモンハンの世界ということで、もうそういうものだと無理やり納得してしまった自分もいるけれど、やはり意味が分からない。

 

「装備は完成したし、ご主人さんの好きに選んで良いと思う。緊急クエストは選べないから、その前に戦いたい相手がいたらそれで良いと思う」

 

 それに、そもそもネコって……

 あー、ハンマーを振り回したいなぁ。

 

「うーん、私は特に戦いたい相手なんていないんだけど……じゃあ、ネコさんは戦いたい相手っている?」

「ラージャンと戦いたいニャ」

 

 とりあえず、分かったのは、あの白ネコがこの世界の人間ではないということ。そして多分だけど、此処がゲームの中の世界だとも知っているんだろう。

 そうなると、まぁ、この白ネコが()()()()だって考えてしまうし、そう考えれば色々と繋がるわけだけど……

 

「了解、ラージャンだね! ラージャンっ!? い、いや、それは無理だって……」

 

 うーん、それをどうやって確かめたら良いのやら。

 もし、この白ネコがあの彼女だとしたら、納得できることは多い。でも、逆に引っかかることもあるんだ。ユクモ村のあのこととか色々と。

 

 答えを出すための素材はたくさんある。でも、どの素材を使って良いのかが分からない。

 

 ……とはいえ、あの白ネコが俺と同じ類の人間だと分かったことは大きい。俺だってそれなりにモンハンをやってきたけれど、やっぱり知らない知識はあるのだから。今までのことを考えるに、この白ネコの知識はなかなかなもの。この世界においてその知識は充分な戦力になる。

 

 ただ、やっぱりモヤモヤしてしまうわけです。

 その……まぁ、やっぱり俺だってあの彼女が一緒にいてくれたら嬉しいわけですし。

 

「え、えと、じゃあ次のクエストはまた私が決めちゃうね」

「……うん、それで良いと思う」

 

 どうすっかなぁ……どうして俺はこんな時ばかり臆病になってしまうのだろうか。サクっと聞いてみて、それで違ったら違ったで別に良いだろうに。

 この世界で俺が迷ってしまうのはこんなことばかりだ。これじゃあ、モンスターとの戦いにだって集中できない。

 それが悪いことだって分かってはいるんだけど。

 

「よしっ、それじゃ帰ろっか!」

 

 ホント、困ったものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 渓流からの帰りの飛行船。

 流れる景色をのんびり眺めながらボーっと考え事。これからのこととかそういうことを。

 

「……何を考えていたの?」

 

 そんなことをしていたら、あの白ネコが声をかけてきた。

 クエストが終わった後、いつもならご主人と一緒にさっさと寝てしまうというのに、今日はどうしたんだろうね?

 

「色々なことニャ」

「……そっか」

 

 この白ネコが誰なのかは分からない。分からないけれど……一緒にいると何処か安心する自分がいたりする。

 最初はそんなこと全く思わなかったんだけどなぁ……

 もし、これでこの白ネコがあの彼女じゃなかったとしたら、そんなことを思ってしまったこれも浮気になるのかな? 少なくとも、あの彼女から怒られるのは確かなことだろう。

 

 あー……これはダメだ。どうにもよろしい感じじゃない。色々と言い訳を重ねて逃げようとしている自分がいる。

 

 

 ああ、もう! 知らん。こうやってうだうだと考えるのは苦手なんだ。

 予想なんて外れて当たり前。それくらいの気持ちでいけば良い。

 

 だから、大きく呼吸をしてみた。この臆病な自分が少しでも動いてくれるように。

 そうしてから――

 

 

「……やっと気づいたの?」

 

 

 言葉を落とそうとしたけれど、それよりも白ネコの方が早かった。

 

 だから、今回だって最初に言ったのは彼女の方からなんです。情けないことではあるけれど、この彼女には負けっぱなしだ。

 ただ、まぁ、やっぱり俺がこの彼女に勝てることはないっぽいです。

 

「……確信があったわけじゃないよ。ただ、そうだったら良いなって思っただけ」

「鈍感」

「おっしゃる通りで……」

 

 返す言葉もない。

 この彼女がいつ俺のことに気づいたのかは分からない。でも、彼女はずっと待っていてくれたってことだろう。

 

「君はいつ、俺が俺だと?」

「ずっとずっと前から」

 

 ほら、やっぱり。

 申し訳なさでいっぱいです。

 

「それなら、教えてくれたって良かったじゃん……」

 

 申し訳なさだったり、恥ずかしさだったりと色々な感情で溢れてしまったから、八つ当たりのような言葉を落としてみる。

 

「それじゃ意味がない。……私は貴方に気づいてもらいたかったから」

 

 あーそれはまた……本当にすみませんでした。

 いや、俺だって、な~んか怪しいなぁ、とは思っていたんだよ? まぁ、それを口にしなかったのが問題で、それはただの言い訳なわけですが。

 

「あと、ご主人さんとあの娘はそのことを知ってる。私のことも貴方のことも」

 

 あら、そうだったんだ。相棒さんは良いとして、ご主人もか。

 えっ? じゃあ、もしかして知らなかったのは俺だけ? 先日は弓ちゃんにもバレちゃったし……

 

 ま、まぁ、バレてしまったものは仕方無い。やることは変わらないのだし、もう開き直っていこう。

 

「……これでやっと進めるね」

「そうだな。少なくともこれでもう迷うことはないと思う」

 

 別に何かが変わったわけじゃない。

 けれども――モヤモヤは一気に晴れてくれた。目指すゴールが何処かは分からないけれど、迷わず進むことはできそうだ。

 

 ん~……これからは忙しくなりそうだ。

 でもきっと、それくらいが合っている。それなら、一気に駆け抜ければ良いんじゃないかな。

 

 

 

 

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