ネコの手も狩りたい【完結】   作:puc119

61 / 100
第56話~誰よりもスタイリッシュに~

 

 

「その……ご主人? 爆弾を使うってのはどういう意味ニャ?」

 

 多分、SBのことだろうけど、確認のために質問。

 

「え、えと、だからね。爆弾をいっぱい持って行って、後はとにかく爆弾を置いて片手剣で起爆させるって戦い方だけど――あぅ、やっぱり変だよね……」

 

 はいSBでした。

 

 ……SB。スタイリッシュボマー。主に抜刀時でもアイテムを使える片手剣で用いられるスタイル。そのやり方は簡単。スキル、高速設置を発動させ、後はモンスターの隙を突き爆弾を置いて起爆させるだけ。大量の大タル爆弾を使うから素材とお金がカツカツな序盤は厳しいし、味方を巻き込むパーティープレイじゃ御法度。

 けれども――その威力は絶大。特に、上位クラス程度の体力が少ないモンスターが相手なら。

 

「確かに、旅団の人たちからもそんな戦い方をするハンターなんていない、とか言われたけど……でもね、でもね、これがすごく強いんだよ!」

 

 ああうん。それは知っています。SBは俺もソロでお世話になりましたし。

 しかし、よくご主人はそんな戦い方を……ゲームの中ですら、SBをやっているハンターは少ないと思う。

 さらに、この世界のハンターたちは基本的に安全な戦い方を求めるし、下手したら自分が危険な状態になるSBなんて絶対にやらない。

 

 MHXになってからはエリアルスタイルのおかげで、片手じゃなくてもSBができるようになった。それに、蟲纏いと金剛心を発動させた操虫棍で、4人集まれば裏ボスを0分針で倒すことができる変態的なSBもある。まぁ、あの戦い方にはスタイリッシュさの欠片もないけど。

 そんな感じでそれなりに有名な戦い方ではあるんだけど、ホントよく思いついたね……昔のご主人がどうやってモンスターと戦っていたのかすごく気になる。

 

「戦い方はそれで良いとして、スタイルはどうするの?」

 

 そして、白ネコの質問。

 

「ブシドーで行こうかなぁって思ってるよ」

 

 ブシドーボマーかぁ。片手のブシドーボマーはジャスト回避後にキャンセル爆弾置きができたはずだし、すごい火力になりそうだ。ただ、ちょっと難しいんだよね。

 とはいえ、これならガノだって倒すことができそうだ。爆弾のダメージだけで倒せるとは思わないけれど、全体力の3分の2くらいは持っていってくれるはず。

 

 う、うーん、戦っているところを見ていないから、まだなんとも言えないけど……はてさて、どうなるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

「よしっ! それじゃリベンジといこっか!」

「うニャ!」

「おー」

 

 現在の場所は夜の渓流。

 このパーティーになり、初めてクエストを失敗してしまった日から2日後。前回と同じガノトトスの狩猟です。今日は頑張ります。

 

 担いでいる武器はハンマーじゃなく、ナルガクルガの素材を使った片手剣。これまでずっとずっとハンマーを使ってきていたけれど……やっぱり片手剣はしっくりくる。

 前回は私が3回倒れてしまい、クエスト失敗。そんな自分が情けなかったし、ネコさんたちには本当に申し訳ないって思っている。けれども、何処か安心してしまった私もいた。

 私はネコさんたちほど上手くない。今まではどうにか順調に進むことができていたけれど、私の実力を考えればそんなに上手くいくわけがないんだ。失敗なんてせず、進み続けることができれば一番。でも、きっと何処かで止まってしまう時は来ると思っていた。だから、前回失敗してしまったのは悪いことだけではないのかなって思う。

 

 ただ、もう失敗はできません。これ以上は流石に止まっていることができない。

 本当はハンマーでガノトトスを倒したかった。でも、何度考えたって、やっぱり私の腕じゃハンマーでガノトトスを倒すことができない。

 

 だから、今回は……今回だけはこの武器を使わせてもらおうと思う。

 これ以上、逃げることはできない。これで失敗したら打つ手はない。そんな崖っぷちの状況。でも、それでいいんだ。

 

「ガノは前と同じようにエリア7にいるニャ」

「了解です!」

 

 片手剣――それは私があの旅団にいた時に使っていた武器。

 でも、そんな私の戦い方は普通じゃなかったと思う。看板娘にはもちろん、あの団長さんからも引かれるくらいだったし。

 けれども、私にはそれくらいの戦い方しか思いつかなかったんです。だから、これが私の限界なんだろう。

 

 そして、ガノトトスのいるエリア7へ到着。

 そのエリアにある川の水面に見える大きな背びれ。ただ、まだ私たちには気づいてないっぽいです。それに気づいてもなかなか水の中から出てきてくれないんだよね。そうだっていうのに、相手はブレスを飛ばしてくるし……ずるい!

 

「ご主人、煙玉を使ってくれニャ」

「あっ、はい。了解です」

 

 ネコさんに言われ、持ってきた煙玉を使用。

 よく分からないけど、ネコさんがガノトトスを釣ってくれるんだって。うん、意味分かんないね。

 

「ご主人さん、ご主人さん、此処に落とし穴をお願い」

 

 そして、次は白ネコさんがぴょんぴょん跳ねている場所へ行ってから落とし穴を設置。因みに、罠と爆弾は調合分まで持ってきてます。

 

「此処でいいかな?」

「えと、もう少し左が良い」

 

 ……やたらと細かいんだね。別にそんな気にすることじゃないと思うけど。

 

「かかった! ガノトトスが釣れるから準備をするニャ!」

 

 白ネコさんに言われた位置へ落とし穴を設置して直ぐ、ネコさんの声が響いた。

 おおー、すごい、ちっちゃなネコさんが本当にガノトトスを釣ろうとしている。ただ、どう考えても体格的にネコさんが水中へ引きずり込まれそうだ……

 

 手伝った方がいいのかな? なんて思っていると、ネコさんがガノトトスを釣り上げた。そして、釣り上げられたガノトトスはさっき私が置いた落とし穴の中に。バタバタと暴れるガノトトス。なんだこれは。

 

 ……さて、ちょっと予想外のことが続いてしまったけれど、始めさせてもらおっか。

 私の戦い方を。

 

 落とし穴に嵌った状態のガノトトス顔の横に大タル爆弾を設置。

 そして、背中に担いでいた片手剣で抜刀斬り。その爆風をジャスト回避してからまた直ぐに、大タル爆弾を設置して起爆。ソレをもう一度だけ繰り返して、次はジャスト回避から飛んで、ジャンプ攻撃。

 爆発で視界は悪いし、火薬の匂いが酷い。でも、それは懐かしい景色で懐かしい匂いだった。

 

 うん、ブシドースタイルで来たのは正解だったかもしれない。私が爆風に巻き込まれることは少なくなりそうだし。

 ああ、懐かしいなぁ。今じゃ、遠い昔のことのように思ってしまうけれど、どうやら私の身体はちゃんと覚えてくれていたみたいだ。

 

 漸く罠から抜け出したガノトトスの動きに注意しながら、大タルと爆薬を調合。この瞬間が一番危ないけれど、身体が勝手に動いてくれる。

 調合した大タル爆弾を威嚇中のガノトトスの足元へ設置。直ぐに起爆し、ジャスト回避から爆発で怯んでいる相手へジャンプ攻撃。

 

「寝た! 攻撃ストップニャ!」

 

 そこで、ネコさんの攻撃でガノトトスは睡眠状態へ。

 

「ご主人さん、また落とし穴をお願い」

 

 了解です!

 白ネコさんに言われてから直ぐに落とし穴を調合。

 

「罠は此処でいい?」

「其処じゃ入っちゃうから、もうちょっと離した方が良いニャ」

 

 ……私がこんな変な戦い方をしているのに、ネコさんたちが特に何かを言ってきたりしない。最初に私が片手剣と爆弾を使うと言った時は少し驚いていたけれど……

 ま、まぁ、そうだというのなら、全力でやればいいんだ。

 

 本当は、もう少し驚いてくれた方が嬉しいなって思う私がいたりします。

 

 ネコさんに言われた場所へ落とし穴を設置してから、まだ寝ているガノトトスの頭の前へ大タル爆弾をふたつ設置。抜刀斬りで起爆からジャスト回避、ジャンプ攻撃。

 そして、起きたガノトトスはさっき仕掛けた落とし穴の中へ。

 また大タル爆弾を調合して、直ぐに設置して起爆。今度はジャンプ攻撃じゃなく直ぐに大タル爆弾を設置して、また起爆。

 

 これが私の戦い方。他のハンターたちがどうやって戦っているのか私はよく知らないけど……大タル爆弾をメインに使うのは私くらいなんじゃないかなって思う。

 昔、私が旅団に所属していた時、どうしてもリオレイアが倒せなかった時に、この戦い方を思いついた。自棄糞気味に大タル爆弾を使ってみたら、それが予想以上に強くて――あれ? これなら爆弾をたくさん使えばいいんじゃない? なんて思ってからこんな戦い方に。

 最初は何度も何度も自分が置いた爆弾の爆風に巻き込まれたし、上手く爆弾を使うことだってできなかった。それでも、あの頃の私がシャガルマガラを倒すことができたのだって、この戦い方のおかげだと思う。

 

「お? 乗りました! 援護お願い」

「ナイスニャ!」

 

 落とし穴から抜け出したガノトトスに爆風を当て、ジャスト回避からジャンプ攻撃をしたところで、乗り。

 さっきから怖いくらい上手くいっている。てか、ガノトトスに何の攻撃もさせてない。

 そして、ネコさんたちの援護もあり私の乗りも成功。

 

 よしっ! 一気に畳み掛けよっか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 ……ご主人のSBが予想以上に上手いぞ。流石にこれは驚いた。片手のブシドーだって初めてなはずなのに、完璧に使いこなしている。

 落とし水爆落としから乗りも成功。さらにその間、ご主人の大タル爆弾のダメージも入っているし……

 

 相棒だったり、弓ちゃんだったり、妹さんだったりと今までこの世界でも上手いハンターは見てきた。けれども、ご主人はそんなハンターたちとちょっと違う。ご主人が上手いのは確か。何とも説明し難いけれど……どちらかといえば、俺や白ネコ側に近い気がする。ご主人からはそんな上手さを感じる。

 

「シビレ罠使うね!」

「た、頼んだニャ」

 

 そして、乗りが成功したご主人は一度だけ大タル爆弾を起爆させてから、ガノの足元にシビレ罠を設置。すごいぞ、何も教えてないのに、ご主人がガノを完全にハメてる。ガノさんったら釣り上げられてから一歩も動けてないのですが……

 それにそろそろ、また俺が睡眠を取るだろうし……

 

 そんな予想は当たり、ご主人が起爆させ黒煙が広がった景色の先、やっとシビレ罠を壊すことができたガノはパタリと横に。うん、まぁ、睡眠耐性低いもんね、仕方無いね。

 前回、アレだけ苦労したのが嘘みたいだ。

 

「……捕獲の方が良い?」

 

 ご主人が寝たガノの頭の前に爆弾を置く姿を眺めていると、そんな白ネコの声。

 

「いや、できれば竜玉が欲しいから討伐の方が良いと思うニャ」

「ん、了解」

 

 捕獲すると報酬数が減るし、ガノの場合は捕獲するメリットなんてほとんどないんじゃないかな。ゲームならクエスト時間が40秒早くなるから、捕獲はありだけど。

 

「起爆するよー!」

 

 あっ、はい、お願いします。

 

 多分、そろそろ倒せると……ああ、倒したわ。お疲れ様でした。

 うーむ、やっぱりSBは強いな。0分針は間違いないだろう。睡眠のタイミングや乗りが上手くいったのもあるけれど、今日のご主人は本当に輝いていたと思う。

 

「おおー倒した! 倒したぞー!」

「……お疲れ様」

「お疲れ様ニャ」

 

 とはいえ、これでご主人のHRは5。HR5になれば俺たちの新しい装備を作ることもできる。ん~……何を作ろうかな。

 それにご主人がSBをできると分かったのも大きい。もし、この先また止まってしまう時があったらこの方法を使えば良いわけですし。

 

 それにしても……やっぱりハンターは色々なことができて羨ましいなぁ。俺や白ネコなんて武器を変えるぐらいしかできない。

 

 それは酷く贅沢な願いではあるけれど――また、人間の姿でモンスターと戦いたい。

 

 そんな想いがやたらに強くなった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。