「それじゃ、ナルガとの戦い方を説明するニャ」
「よろしくお願いします!」
第……何回かはわかんないけど、ネコさんの戦い方講座(ナルガクルガ編)です。現在はナルガクルガ討伐のために古代林へと向かう飛行船の上。しっかりとネコさんから教えてもらわないとだ。
因みに、白ネコさんはすやすやとお休み中です。ウカムルバスのサマーソルトがなんたらとか、よくわかんないことを呟いているけど、ネコさん曰く、アレは寝言だから放って置いていいみたい。白ネコさんはどんな夢を見ているんだろう……
今回の私のスタイルはギルドスタイル。それはもっとも一般的なスタイルで。使っているハンターさんもギルドスタイルが一番多いと思う。バルバレとかだとギルドスタイルしかないし。
「今回、ご主人には“回避”を覚えてもらいたいニャ」
回避? それはどういう意味だろう。
「えと、その……回避っていうのは?」
「簡単に言うと、ローリングでモンスターの攻撃を無理やり躱すことニャ」
ああ、なるほど。つまり、ローリングで咆哮を躱すのと同じってことだよね。それで、今回は相手の攻撃をローリングで躱す、と。
いや……難易度高くないですか? だ、だって、咆哮とは違って、もし失敗したら実際に攻撃が当たっちゃうわけだし。
「本当はそうならないのが一番だけど、どうしても無理やり躱さなきゃいけない場面はあるニャ。そして、ナルガはその練習に丁度良いのニャ」
先生大変です。そんなのできる気がしません。
「……それってコツとかあるの?」
「ん~、こればっかりは感覚だし……えと、とにかく相手の動きを見ることが大切ニャ!」
……ネコさんって根性論で物事を語るときがあるよね。やればできる! みたいな感じ。いや、そりゃあ、やらなきゃできないわけですが。
「あとは、相手の攻撃に対して直角に入ることを意識すれば躱しやすいニャ」
うーん、そんなことを言われてもイメージが湧かない。ネコさんも一生懸命、身体も使って教えようとしてくれているけど、よくわかんないや。
「あー……つまり、モンスターの攻撃に自分から突っ込んで行けば良いニャ!」
そうなのかなぁ。なんか違う気がするけど。
「それと、尻尾振りとかの攻撃は根元よりも、振りの速い先端の方が躱しやすいから、それも覚えておくと良いニャ」
う、うーん、よくわかんないけど、攻撃を躱す時はモンスターから遠い方がいいってことかな。
「とにかく実践あるのみニャ!」
……不安だ。
「よし、それじゃ、サクっと倒してこよっか!」
「うニャ!」
「おー」
ネコさんの助言を受け、次は実践編。
ネコさんだし、間違ったことは言ってないと思うんだけど、如何せんネコさんの言葉は私に理解できないことばかり。
ただ、シャガルマガラと戦っていた時みたいに、急にネコさんの言葉がしっくりくる時もある。今回もそうなってくれればいいけど。
「初期エリアは4番ニャ」
了解です。
ナルガクルガと戦うのはこれで2回目。前回はネコさんたちに頼りっきりとなってしまったけれど、今回は私も頑張ります! ただ……ネコさんから言われたことを実践できるかどうかは難しそうだ。
ネコさんたちと一緒にナルガクルガのいるエリア4へ。
夜ということもあって、ナルガクルガの黒い体はその闇に溶けこんでいるように見えた。
「それじゃご主人、頑張って実践してみるニャ」
「あっ、はい。頑張ります」
ネコさんから言われたのは、相手の攻撃に対して直角に入ることと、攻撃の先端で躱すこと。
とはいえ、そもそも私はブシドースタイルでもないと、ローリングで攻撃を躱すなんてことをしない。片手剣を使っていた時はガードを多用していたし、ハンマーを使っている時も、モンスターの攻撃はその攻撃が当たらない場所まで避難していた。
でも、今回はその攻撃をローリングで避けることを学ばないといけない。
確かに、モンスターの攻撃が当たらない場所まで避難できないことは何度もあるし、これで躱せるようになれば私にとって大きな武器にもなる。
よ、よし、とにかく頑張ってみよう。
ネコさんと白ネコさんのブーメランが当たったところで私たちに気づいたナルガクルガ。
ナルガクルガはモンスターの中でも攻撃が速いモンスター。ネコさんは速いから躱しやすいって言っていたけど、私にその言葉の意味はやっぱりよくわからなかった。
昔、ネコさんから言われたように、基本的にハンマーを溜めながら移動。
そして、ナルガクルガの後で待機し、私の方を振り向き始めたところで、溜めていたハンマーを振り下ろす。
振り下ろされたハンマーは相手の頭へ吸い込まれ、ハンマー特有のエフェクトが弾けた。
よしっ、いい感じ。振り向きへスタンプを合わせるのは慣れてきた気がします!
そんな私の攻撃が当たったところで、ナルガクルガの目は赤く光り、大きくステップ。つまり、怒り状態。
赤く光った目は暗い夜の中、不気味なほどに目立っていた。
とりあえず、怒りからの咆哮を終えたナルガクルガの頭へハンマーでカチ上げ。
「尻尾振り!」
カチ上げをして直ぐ、ネコさんの声が聞こえた。
私の場所はナルガクルガの真正面。今からどんなに早くローリングをしても、攻撃の届かない場所まで避難することは無理。つまり、いきなりネコさんに言われたことを実践する時が来たわけです。
トクリ――と私の中の何かが跳ねた。
やたらと遅く感じる時の流れの中、ナルガクルガの振る尻尾へ向かってローリング。
結果、尻尾攻撃が直撃して吹き飛ばされました。
ああ、うん。そりゃあそうなるよね。
「惜しかったよ」
吹き飛ばされた私に白ネコさんがそんな言葉をかけてくれた。
そ、そうなのかなぁ……
それから何度もローリングでナルガクルガの攻撃を躱せるようチャレンジしてみたけれど、ほぼ全て吹き飛ばされました。今度は躱せたかな? なんて思えることもあったけれど、ローリングをしていたから本当に躱せていたのかはわからない。
そんなこともあって今回はいつも以上に多く攻撃を喰らってしまっています。おかしい。攻撃を喰らわない練習をしているはずなのに……
「怖いかもしれないけれど、できるだけ攻撃を引きつけてからローリングをしてみて。感覚でしかないけれど、あともう少しだけテンポを遅らせれば躱せると思う」
「りょ、了解です……」
白ネコさんからもアドバイスをもらってしまった。むぅ、本当に上手くいかない。
飛行船の上で教えてくれたネコさんのアドバイスもなんとなくだけどわかってきた。だから、あと少しだと思うんだけど。
もう少しだけテンポを遅らせてみる、か。
「回転攻撃! そのあと、確定で威嚇ニャ!」
ネコさんの声が響いた。
ナルガクルガの回転攻撃は攻撃は範囲がすごく広く、かなり速い攻撃。その後に威嚇することはわかっていても、毎回毎回吹き飛ばされているせいで、その威嚇中に攻撃ができていない。
モンスターの動きをよく見て、攻撃に対して直角に。そして、攻撃をできるだけ引きつけてからローリング……
またゆっくりとなってしまった世界で、ネコさんと白ネコさんの言葉がグルグルと回る。
頭でだって理解していない。身体も覚えていない。
だったら――今理解して、今覚えればいい。
やたらと遅く見えるナルガクルガの回転攻撃。
そして、引きつけて、引きつけてその回転してきた尻尾へ対して直角にローリング。
「ぐぅれいと」
馬鹿みたいに大きくなった自分の心臓の音以外に、そんな白ネコさんの声が聞こえた。
吹き飛ばされてもない、ダメージも受けていない。か、躱せたのですか?
よくわからない。よくわからないけれど、まだクエストは終わっていない。直ぐにハンマーを腰へ構えて溜め。そして、回転攻撃を終え威嚇中のナルガクルガの頭へカチ上げ。
そこで、このクエストが始まって初めてのスタンを取った。
「あっ、え……」
言葉が出てこない。
相手の攻撃を躱し、こちらから攻撃。
言葉にすればたったそれだけ。でも、なんだろう。たったそれだけのことなのに、やたらと高揚している私がいた。
「ラッシュをかけるニャ!」
そんなネコさんの言葉も何処か遠くの方で聞こえるし、すごく手が震える。息が荒い。心臓が暴れる。
どうしてなのか私だってわからない。でも……そんな状況を心の底から楽しんでいる私がいることはよくわかった。
「ん~っと、お疲れ様ニャ!」
「……お疲れ様」
「あっ、う、うん。お疲れ様だね!」
私が攻撃を躱してからのスタンを取った後、ナルガクルガは直ぐに脚を引きずりエリアチェンジをした。そのナルガクルガを追いかけ、私がスタンプをその頭へ入れたところで討伐完了。
今回は私が吹き飛ばされてばかりだったせいで、クエストの時間はいつもより長いと思う。でも、何というか……今まで一番、戦っていて面白いって思えた。
「ご主人ご主人、回避のコツはつかめたかニャ?」
倒したナルガクルガから剥ぎ取りをしていると、ネコさんが声をかけてくれた。
「流石にコツはつかめてないよ」
最後に相手の攻撃を躱すことはできたけれど、自分で躱せたと思えたのはあの1回だけなわけですし。
「むぅ、それは残念ニャ。とはいえ、ローリングで攻撃を回避するのはすごく難しいことだし、ゆっくりと覚えていけば良いと思うニャ」
うん、難しいことは今回のクエストでよくよくわかりました。
ネコさんたちはきっと、当たり前のようにやっていることなんだろうけれど、私にはまだまだ無理そうです。
「……でもね」
「うーニャ?」
きっと私じゃネコさんたちほど上手くなることはないと思う。精一杯、頑張ってみるつもりだけど、それでもネコさんたちにはとどかない。それほどに私とネコさんたちとの距離は離れているんです。
けれども、今日のクエストでそんなネコさんたちの背中が見えた気がする。
もしかしたら、それはただの思い上がりかもしれない。でも、そんな気がするのです。
「自分でもよくわかっていないんだけど、何というか……今日はすごく楽しかったです!」
そんな私の言葉を受け、ネコさんは笑ってくれた。
私とネコさんたちは根本的に何かが違う。それは人間とネコの違いってことじゃなく、精神的な面で大きな何かが違うんだろうって意味。
そんなネコさんたちと私だけど、今日はその違いが少しだけわかった気がします。
どんなに頑張ったところで、私はネコさんたちに追いつくことはできやしない。それでも、私だってネコさんたちのご主人なんだ。だから私は精一杯抗ってみたい。
それに、私にはネコさんと白ネコさんがついている。それならきっと大丈夫だろうって思ってしまいます。
ふふっ、調子に乗りすぎかな? でも、このネコさんたちについていくのなら、それくらいで丁度いいんじゃないかって思ってみたり。