ネコの手も狩りたい【完結】   作:puc119

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第61話~その物語に私も~

 

 

「くはっ……」

 

 温かな陽の光を浴び、ムーファの背中の上で寝ている俺の口からは大きなあくびが出た。

 先日、特に問題もなくレイアを倒すことに成功。んじゃあこの調子でどんどん進んでいこうかと思っていたけれど、ギルドの人から最近お前らは働きすぎだからちょっと休めと言われてしまった。

 そんなわけで今日は完全なオフ日です。

 

 大老殿にいた時なんかは、休日なんてほとんどなかったし、別にそれを辛いと感じていなかった。だから、こうやって休日らしい休日を味わうのはなんとも新鮮な気分だ。まぁ、焦る必要なんてないのだしのんびりやっていこう。

 とはいえ、クエストへ行っちゃダメとなるとどうしても暇になる。バルバレや大老殿と違い、闘技大会を見るにしても長距離の移動が必要で、それが面倒くさい。仲の良い奴がいるわけでもないし。

 お酒でも飲もうかと考えたけれど、昼間から飲むのは遠慮したい。だから、ムーファの背中の上で日向ぼっこなんかをしているんです。ムーファのモフモフ具合はなんとも気持ち良いし、これなら今直ぐにでも寝ることができそう。

 

「あっ、こんなところにいたんだ」

 

 やわらかな日差しとモフモフの毛に眠りを誘われて、うとうとし始めていたらそんな声。

 このまま寝てしまおうと思っていたけれど、声をかけられたのだし仕方なく、其方を向くと白ネコさんがいた。

 

「……何やってるの?」

「特にやりたいこともないし、このまま寝ようと思っていたんだ」

 

 バルバレにいた頃は、よくプーギーで暇を潰していたけれど、ベルナ村にプーギーはいない。そんなわけでムーファと戯れています。ただ、予想以上に心地が良いから今はこのまま寝てしまいたい気分。

 

「……私も乗って良い?」

「えー……ムーファなら他にもいるぞ?」

 

 いくらネコとはいえ、2匹も乗ってしまったらムーファだって迷惑だろう。それに、この白ネコさん寝相は良いけど、あの寝言がなぁ……あの寝言にツッコミを入れているだけで一日が終わりそうだ。

 ともかく、一緒にお昼寝するにしても場所が悪いと思う。ムーファはそんなに大きくないんだ。

 

 そして、俺がその提案に渋ったせいか彼女は随分と不機嫌な様子になった。いや何故、不機嫌になる。俺だってたまにはひとり静かにのんびりとお昼寝をしたい。

 

 

 何が其処まで彼女を駆り立てるのか分からないけれど、それからも白ネコさんは俺の睡眠の邪魔をし続けた。2匹のネコが騒いでいるのだし、ムーファだっていい迷惑だろう。

 なに? 貴女暇なの? せっかくの休日くらいおとなしくしていなさいよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

「うー……私も乗る」

「いやだから、ふたりも乗ったら狭……ああもう、こら引っ張るな」

 

 何をやっているのかよく分かんないけど、ムーファに乗ったネコさんとそのムーファに乗ろうとしている白ネコさんが騒いでいた。

 いや、ホント何をやっているんだろう……

 

 ギルドの人たちに心配されてしまい、今日は久しぶりの休日。最近は色々なことがありすぎたせいか、そんなことを思う暇すらなかったけれど、そういえば全然休んでなかったね。

 そんな久しぶりの休日だけど、今日は一日自由行動ってことに決まり、私はいつもより長く寝て、それからはネコ嬢さんやベルナ村の受付嬢さんとお喋りをしていた。

 そうしていたらそろそろお昼の時間。それじゃあ一緒にお昼でも、と思いネコさんと白ネコさんを探していたところです。

 

 多分だけど、白ネコさんはあのムーファに乗りたいわけじゃなくて、ただネコさんと一緒にいたいだけなんだろうなぁ。ネコさんはそれくらい気づいてあげてほしいし、白ネコさんもちゃんと一緒にいたいって言えばいいのに……

 まぁ、つまりですね。目の前でカップルがいちゃついているわけですよ。

 このふたりにその自覚はないだろうけど、私に対する嫌がらせだろうか。

 

 

 とはいうものの、ふたりを見ていても別に不機嫌になったりはしません。

 だって、このふたりを見ていてもアイルー2匹が遊んでいるようにしか見えないし。その小さな身体を使ってわちゃわちゃしている姿は見ていて和む。いや、そりゃあ私だって彼氏がほしいわけですし、白ネコさんいいなぁって思っているけれど……

 私はソフィアみたいな性格じゃないんです。恋愛とか憧れちゃうんです。ただ、色恋沙汰はさっぱりだからなぁ。

 

 なんとも和やかな雰囲気のふたり。とてもじゃないけれど、これがあの伝説のハンターさんたちなんて信じられないし、この姿を見て信じる人もいないと思う。

 私は一緒にクエストへ行っているし、今まで何度も何度も助けられた。だから私は信じることができるけれど……うん、まぁ、いっか。ネコさんたちも、自分のことはあまり知られたくないみたいだもんね。

 

 さてさて、もうこのまま放っておいてもいい気もするけれど、お腹も空いてきたから声をかけるとしよう。

 

「ネコさん、白ネコさん。楽しそうなところアレだけど、これから一緒にお昼を食べない?」

 

 結局、ネコさんはムーファの上から引きずり下ろされ、その代わりに白ネコさんがムーファの上へ。そんな状況になっていたふたりへ声をかけた。

 このふたりは何をしたいんだろう……

 

「うニャ? もうそんな時間だったのかニャ」

「……うん、私もお腹空いた」

 

 うーん、本当によく分からない人たちだ。

 その実力はよく分かっているし、ネコさんたちがどれほどすごいハンターだったのかも知っている。でも、このふたりを見ていても威厳……というか、そのすごさが全然感じられない。ふたりのことは本当に尊敬しているし、私なんかのオトモをやっていていいのかなぁっていつも思っている。でも、何といいますか……なんだろうね?

 

「えっと、じゃあ食べに行こっか」

「うニャ」

「了解」

 

 謙虚ってのとはまた違うと思う。ただ、もうちょっとくらい自分たちのことを誇ってもいいのにって思っています。

 だって、このふたりはそれだけのことをしてきたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネコさんたちってさ。やっぱり色々なモンスターと戦ってきたの?」

 

 ネコさんたちと一緒にお昼の時間。相変わらずネコさんの顔にはチーズがついちゃってるけど、上手く食べられないのはネコの身体のせいなのかな?

 そして、せっかくの機会だから、色々と聞いてみることにした。

 

「ず、随分と曖昧な質問ニャ……えと、そりゃあ、まぁ、色々なモンスターと戦ったことがあるニャ」

 

 ああ、ごめん。もうちょっと質問の内容を絞れば良かったね。

 ネコさんたちがどんなハンターだったのかは知っているけれど、その詳しい話を聞いたことがない。ネコさんたちはまさに雲の上の存在といっていいようなハンター。そんなハンターさんたちのお話を聞きたかったんです。

 

「んと……じゃあ、今までで一番苦労したクエストは?」

 

 このネコさんたちの苦労する光景が想像できない。でも、きっとネコさんたちだって苦労したクエストはあったはず。

 

「ん~……なんだろうニャ。君は何かあるかニャ?」

 

 少しだけ考えてからネコさんは白ネコさんに尋ねた。

 私の場合は、シャガルマガラかクシャルダオラのクエストが一番大変だったかなぁ。特に、シャガルマガラは私ひとりで戦わなきゃいけなかったし、本当に苦労しました。

 

「……G級ジンオウガの捕獲クエスト」

「いや、アレはあの相棒が捕獲玉を全部外したから、現地で調合しなきゃいけないのが大変だっただけじゃ……」

 

 えと、その“相棒”さんってのは、あの操虫棍のハンターさんのことでいいんだよね? どんな状況だったのかわからないけど……あんなすごい人でも失敗するんだね。

 そして相変わらず、白ネコさんの発言が自由だ。これまで一緒に生活してきてわかったけど、この白ネコさんって結構抜けているところがあります。計算しているとかじゃなく、素で。それが白ネコさんの良いところでもあるし、いい人であることは確か。そして、白ネコさんのことも好きだけど……白ネコさんには振り回されることが多いです。

 昔からこうだったのかな?

 

「あっ、そういえば、ネコさんたちってどうやって知り合ったの?」

 

 最初は三人のパーティーだったってことは知っているけど、それ以上のことは知らない。いや、まぁ、知っていたらおかしい気もするけど……

 

「んと、最初は俺と相棒さんがパーティーを組んで、次にこの彼女が。それで……あー、まぁ色々あって弓ちゃんがパーティーに入ったって感じニャ」

 

 あっ、そうだったんだ。

 それじゃあ、最初はこのふたりのパーティーだったわけじゃないんだね。ああ、それでネコさんはあのハンターさんのことを相棒なんて呼ぶんだ。

 

 ふーん、じゃあ――

 

 

「どうして、ふたりは付き合ったの?」

 

 

 このふたりはすごく仲もいいし、息も合っている。だから、別に付き合っているのがおかしいとは思わない。

 でもほら、やっぱり気になるじゃないですか、色々と。

 

「うニャー、チーズが美味しいニャ」

「……すみません、ブレスワインをひとつ」

 

 ……どうやら私の質問は無視される流れみたいです。

 私にはそんな経験がないからわからないけど、やっぱりそういうことを話すのは恥ずかしいのかな? 私にはそんな経験がないからわからないけどっ!

 うーん、私ももうちょっとこのふたりに気を遣った方がいいのだろうか。やっぱりふたりだけの時間ってのはほしいだろうし。

 もし、あの操虫棍のハンターさんとまた会うことができたら、昔はどうしていたのか聞いてみようかな。緊張しちゃって聞けない気もするけど……

 

 

 それからは、ネコさんとあのハンターさんが初めて一緒に行ったクエストの話だったり、あのダラ・アマデュラやゴグマジオスのお話なんかをふたりから聞かせてもらった。

 まだ昼間だったけど、白ネコさんがお酒を頼んじゃったし、休日だからいっか。ってことになりお酒を飲みしなふたりのお話に耳を傾ける私。

 

 流石は伝説のハンターさんたちのお話ってこともあり、私には想像もできないようなお話をたくさん聞かせてもらった。

 でもそれ以上に、伝説のハンターさんたちだって私と同じように悩んだり、止まってしまったりしたお話も聞かせてくれた。

 それは当たり前といえば当たり前のこと。でも、ネコさんたちのしてきたことは、そんな当たり前を忘れさせてしまっていたんです。

 

 今日、ネコさんたちのお話を聞いて、改めてネコさんたちのすごさを知らされた一方、また少しだけネコさんたちとの距離が近くなった気がします。聞かせてもらったお話は純粋に面白かったし、私も頑張らないとなぁって思えた。

 だから、聞いて良かったんだと思う。

 

 

 

 

 今の私にそんな実感はないです。

 でも、もしかしたら……もしかしたらだけど、今の私も未来じゃ伝説なんていわれるかもしれない。私がこのふたりの物語に登場することができるのかもしれない。

 だって、私のパーティーにはこのふたりがいるのだから。

 

 そう考えるとプレッシャーがすごい。ただ、それ以上に頑張りたいなって思う自分がいるんです。

 

 有名になりたいわけではない。

 伝説を作りたいわけでもない。

 

 でも、私が物語の登場人物となることができるのは悪い気分じゃない。

 

 主役じゃなくていい。脇役でいいんだ。

 台本なんてありません。けれども、私なりに精一杯頑張ってみます。それが私の役目なんじゃないかな。そして、そうなればいいなって思うのです。

 

 今日はそんなことを考えてしまう休日でした。

 

 

 

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