ネコの手も狩りたい【完結】   作:puc119

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第63話~誰よりも自由で誰よりも……~

 

 

 別に非日常的なことを求めていたわけではないと思う。

 だって、このモンハンの世界へ来たというだけで、もう充分すぎるほどの非日常を体験することができているのだから。

 

 けれども、きっと心の何処かでこの日常に慣れてしまっていた自分がいたんだろう。

 欲が出てしまっていた。求め始めたら、切りなんてないことくらい分かっていたはずなのに。

 

 3度目となるこのモンハンの世界で、今度はネコの姿に。そんなおかしなことなど、普通じゃ絶対に味わうことなどできやしない。だから、それ以上の刺激を求めても仕方無い。

 そう思っているつもりだった。

 

 ただ、まぁ……せっかく訪れた機会なら全力で楽しんだ方が良いって俺は思うんだ。どうせやるなら徹底的に。

 何をやったって後悔することになる。それでも、自分に嘘をつき続ける理由にはならないだろう。

 

 それに、このまま普通に終わるとも思っていなかった。だって、この馬鹿げた物語がそんな普通のまま進むわけがないのだから。

 

「ちょ、ちょっと! ソイツはターゲットじゃ……ああもう! ホントに、貴方って奴はっ!」

 

 強引に付き合わせる形となってしまい、妹さんには申し訳ないと思っているけれど、目の前にエサをぶら下げられ、我慢できるような性格じゃないんだ。

 手は抜かない。やるなら全力で。崖っ縁で良い。崖っ縁が良い。非日常で味わうことのできる、自分の限界を超えたモノとの戦い。それが何よりも心地良い。

 

 あの時はやられてしまった。それもこれも全て自分の実力がなかったのが原因。あれからもう随分と時間が経ってしまったし、あまりにも遅すぎるリベンジマッチだけれども……何というか、お前には負けたくないかな。

 

 随分と昔のように感じていた。でも、どうやらちゃんと身体は覚えてくれていたらしい。そんな状態は、悪くない。

 

 そして俺は、()()()()()()()()()()()()()()、乱入してきたイビルジョーへ向かって走った。

 

 それじゃあ、ひと狩り行かせてもらおう。

 今、此処で、あの時のリベンジマッチといこうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

「今回、私たちが戦う相手、ガムートってどんなモンスターなんですか?」

 

 氷海へ向かう飛行船の上で、白ネコさんに尋ねてみた。

 

「ん~……象さんかな」

「なるほど、分かりました」

 

 さっぱり分からない。

 本当、白ネコさんは相変わらずといいますか、なんといいますか……姿は大きく変わってしまいましたが、その中身はやはり変わらないものですね。

 

「えっと……弓ちゃんはもう知っているんだっけ? 私たちのことを」

 

 多分、先輩と白ネコさんがネコの姿になっていることをってことだと思う。

 

「はい、先輩から直接教えられてはいませんが、それは知っています」

 

 不思議な人たち。

 私が先輩とこの白ネコさんに抱く感情はそんなことばかりです。

 

 私はあの人ほど、先輩と白ネコさんのことを知りません。それはそのふたりが私に教えてくれないというのもありますが、私が深く聞かないからというのも大きな理由だと思います。引け目を感じている……とまでは流石にいいませんが、やっぱり遠慮してしまっていることはあるのでしょう。長い付き合いではあるものの、私が一番の新参者でしたし。

 それに私のハンターとしての実力も、あの人や先輩、そして白ネコさんと比べ、ひとつ二つほど低いこともよく分かっています。

 

 私だって、決して実力のないハンターではありません。ハンターのトップが集まる大老殿の中でも私はかなり上位の実力があると思っています。それでもあの3人と比べてしまうと、どうしても越えられないほどの差があります。

 詰まるところ、あの3人が異常なんです。

 

「そっか、それなら楽で良いね」

「はい、どうか気にせず、いつも通りでいてください」

 

 いつか並んでみたいとは思っていますが……きっと私じゃ届かないんだろうなぁ。目標があるのは良いことですが、その目標があまりにも高すぎるせいで、ちょっと凹みます。

 

「うん、分かった。弓ちゃんならガムートくらい苦戦しないだろうし、サクっと倒してこよう」

「はい、今日はよろしくお願いします」

 

 そんな会話をした後は作戦会議。

 作戦会議といっても、私は基本的に後脚を狙い、白ネコさんが麻痺を取ったら弱点である頭を狙うといった本当に簡単なものです。後はガムートの行動なんかを少し。

 私は初見モンスターが苦手なので、かなり心配ですが白ネコさん曰く、どうにかなるそうです。不安だらけだ……

 

 それにしても、白ネコさんは本当にブレませんね。慌てている場面などは見たことがありませんし、あのパーティーの中でダウンした回数は一番少ないです。

 因みに、一番多いのは私で次はあの人だったりします。先輩もスイッチさえ入らなければなかなかダウンしませんし。

 

 

 

 そんなことを経て無事、氷海へ到着。

 

「それじゃ、頑張っていこー」

「はい」

 

 私は先輩とペアを組むことの方が多かったですが、白ネコさんと一緒にクエストへ行ったことは何度もあります。ただ……そのことを懐かしいと思ってしまうくらいには、昔のことのように感じてしまいます。

 それほど時間は経っていないはずなのに……不思議なものですね。

 

「……ガムートの初期エリアは3」

「戦い難い場所ですね」

 

 私は坂道のあるエリアは苦手です。照準を合わせるのが難しいので。

 

 さて、そんな愚痴は良いとして……頑張っていきましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

「足踏み。避難して」

「了解です」

 

 ガムートと戦い始めてそろそろ5分を超えたくらいです。

 的は大きいし、動きも速くはありませんがやはり初見モンスターは上手く戦えません。大きすぎるせいで、次にどんな行動をしてくるのか読めませんし……

 

 白ネコさんに言われて直ぐにガムートから避難。

 そうして直ぐに、ガムートは大きく足踏みをし、その脚に付いていた雪塊を撒き散らしました。

 

「装甲取れた。チャンス。あと、そろそろ2回目の麻痺を取ると思う」

「はい。分かりました」

 

 流石、というべきでしょうか。相変わらず白ネコさんはクエスト中も余裕そうです。私なんてクエストになると全く余裕なんてなくなるというのに。

 4人でクエストへ行っていた時は、クエスト中も先輩と白ネコさんはよく喋りながら戦っていました。私には分からない内容も多かったですが、何処を狙うとか、罠を使おうとかそういうお話をしながら。

 でもそれだけじゃなく、帰ったら何を食べようかとか、次はどの武器を作ろうか、とかそんなクエストとは関係のない話をしながら戦っている時も。あの人はそんな会話に混ざる余裕もありましたが、私にはとても無理です。目の前のモンスターのことを考えるので精一杯。他のメンバーの動きだったり周りを見る余裕すら……

 もっと余裕を持って戦うことができれば良いってことは分かっています。でも、私はあの3人のように戦うことはやっぱりできません。それほど、私とあの3人とで差があるのです。

 

「よっし、麻痺取った。頭お願い」

「流石です」

 

 こんなにも近くにいるというのに……本当に遠い存在だ。

 それでいて、驕ることもなければ私を貶すこともない。ずるい人たちだと思います。そんな人たちを嫌いになれるはずがないのだから。

 

 変わってしまったこともありますが、きっときっと変わらないものだってあるはずです。先輩と白ネコさんを見ているとそんなことを考えてしまいます。

 

 

 

 

 

 

「……クエスト完了。お疲れ様」

「はい、お疲れ様でした」

 

 エリア3からエリア9へ。そしてまたエリア3へ戻ってきたところでガムートを討伐しました。多分、15分くらいかかったと思います。体もアレだけ大きいのですし、体力も多そうですね。

 

「うん、弓ちゃんがいると早く終わって助かる。ありがとう」

 

 あぅ……白ネコさんに褒められるとはずかしい。でも、それ以上に嬉しかったり……

 尊敬している方に褒められれば、そりゃあ嬉しくもなります。そして、お礼を言わなきゃいけないのは私の方なのですが……

 

 どうにかダウンすることはありませんでしたが、上手く戦えていたかというと……どうでしょう? 初見にしては頑張った方だと思います。

 

「いえ、白ネコさんがいてくれたからですよ。私ひとりじゃ厳しいですし」

 

 謙遜とかじゃなく、本音です。

 一度戦ったことのあるモンスターならともかく、初見のモンスターは本当に苦手ですので。

 

「でも、前より上手くなったと思う」

「そうだと良いのですが……」

 

 その実感はありません。ホント、前よりも上手くなっていれば嬉しいです。まぁ、それでもあの3人にはまだまだ届かないわけですが。

 ネコの姿になんてなっていますが、白ネコさんはやっぱり上手かった。以前、あの人と一緒に見た闘技大会に出場していたネコとは比べ物にならないほど。

 

「それじゃ、帰ろ」

「そうですね」

 

 剥ぎ取りも終え、あとは帰るだけ。お疲れ様でした。

 

 

 

 

「ネコの姿ってどんな感じですか?」

 

 帰りの飛行船で白ネコさんと雑談。

 白ネコさんのことだし、昔みたく直ぐに寝てしまうでしょうからそれまでの間、少しだけ。ホント、昔からよく眠る方だったんです。

 

「ん~……思ったより快適。あと、世界が広く見える」

 

 へー、そういうものだったのですか。ネコになるのはちょっと遠慮したいですが、どんな感じなのかは気になります。

 

「他のペアは大丈夫かな?」

「あの人のペアは大丈夫だと思いますが、先輩のペアは……まぁ、大丈夫ですよ」

 

 あの人の妹さんもあのネコが先輩とは知らないはずですし。

 まぁ、バレたらどうなるか分かったものじゃないですが。

 

「なんか、バレちゃいそうだよね」

「……はい、私もそんな気がします」

 

 抜けているしなぁ先輩。

 バレたらバレたで面白そうではありますが……帰って来たらどんな感じだったのか聞いてみるとしましょう。

 

「白ネコさんのご主人さんはどんなハンターさんなのですか?」

 

 目をぐしぐしこすっているし、白ネコさんがもう眠そうだ。だから、これが最後の会話となりそうです。せっかくの再会。だからもっとお話を続けていたいところですが……仕方なしです。

 

「ちょっと頼りない時もあるけど、上手いよ」

 

 そうですか、それなら安心ですね。

 多分、あのご主人さんは数多くいるハンターの中で、オトモに最も恵まれたハンターなはずです。世界を2度も救ったことのあるオトモはそんなにいないでしょうし。

 

 そんな会話をしたあと、私から話しかけることは止めました。白ネコさんも限界でしょうし。

 別に疲れているわけではありませんが、私も龍歴院へ着くまで目でも閉じていることにしましょうか。

 

 

 私はそんなことを考えていたわけですが……どうしてか、白ネコさんがなかなか寝ようとしない。目蓋は下がり始めているし、明らかに眠そうな顔。それでも、白ネコさんは起きていました。

 

「えと……今日は寝ないのですか?」

 

 白ネコさんは昔から自由な方です。ちゃんと周りに気を遣ってくれますが、本当に自分に素直な方だと思う。どっかの先輩も少しは見習ってほしいですね。もちろん、私も見習わないといけないと思っていますが。

 

「……うん、せっかく弓ちゃんと再会できたし今回は起きてる。お喋りしよ。お喋り」

 

 ……よく素面でそんな恥ずかしいことを。聞いている私の方が恥ずかしいです。

 でも、まぁ……うん。ありがとうございます。

 

 

 それから、白ネコさんと昔のことだったり今のことを、のんびりのんびりお喋りしていました。けれども、やっぱり眠かったらしく龍歴院へ着くまでずっととはいかず、白ネコさんは途中でダウン。

 本当に自由で……優しい人だ。

 

 そして何より、私と再会できたことを白ネコさんも喜んでいてくれたことが本当に嬉しかった。

 もう、私たちが昔みたいな関係に戻ることはないでしょう。それでも、昔のことがなくなるわけじゃない。きっと今も繋がってくれている。そんなことを実感させられました。

 

 

 

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