「ボクはクエストに行ってくるから、ご主人はゆっくり休むと良いニャ」
「うん、わかった。ネコさんだし大丈夫だとは思うけれど、気をつけてね」
ご主人の武器を強化するため、孤島の採取ツアーへ行った次の日。素材も集まり、無事ご主人の武器が強化できるようになったわけだけど、予想通り武器の強化には時間がかかった。
武器が完成するのは明日の夕方。その間、ご主人は武器がないからクエストへ行くことはできない。けれども、俺は武器もあるわけだから、クエストへ行くことができる。
そんなわけで、今日は俺ひとりでクエスト行ってきます。
「うニャ。気をつけるニャ」
俺がそう応えると、ご主人は優しく笑ってくれた。……ホント、良い人だと思う。少なくとも、仕える相手がこのご主人で良かったと思えるのだから。
まぁ、とは言っても、今回やるクエストはネコ専用のそれもかなり序盤のクエスト。正直、乙る方が難しいレベルじゃないだろうか。クエスト内容を聞いてみないとわからないけれど、この段階じゃ採取クエストくらいしかなかったと思う。
「それじゃ、行ってくるニャ」
「ふふ、いってらっしゃい」
さて、久しぶりのソロクエストだ。
「あっ、こんにちは、ネコちゃん! 今日はハンターさんと一緒じゃなくて、ひとりみたいだけど、どうしたの?」
ご主人と別れ、ベルナ村の受付嬢の元へ。見た目的には集会所の受付嬢の方が好きだけど、性格はこの受付嬢の方が好きだったりします。まぁ、それでも一番はアイシャだけど。
「今日はボクひとりでクエストを受注しに来たニャ」
「ふふっ、そうだったんだ。ちょっと待ってね、ネコちゃん専用のクエストは……ああ、あった! えと、『古代林のキノコ生態調査』って言うクエストがあるけど、受けてみる?」
ん~、クエストの内容的に特産キノコか深層シメジの納品クエストだよな。深層シメジの取れる場所は奥の方だからちょっと面倒だけど、苦労するようなクエストじゃなさそうだ。
「クエストの内容はどんなものニャ?」
「えとね、深層シメジを8個の納品だって」
残念。深層シメジの方だったか。まぁ、別に急いでいるわけでもないのだし、ゆっくりとやっていこうか。久しぶりにエリア10にいるシェンガオレンとかもみたいし。
しかし、どうしてあんな場所にシェンガオレンがいるんだろうね。最初に見つけたときは滅茶苦茶驚いた。もしかしたら裏ボスで出るんじゃないかとか思ったもの。まぁ、シェンガオレンとは戦ってみたいけど、数回戦えば満足しそうだ。戦い方がワンパターンなこともあって直ぐに飽きるんだよね……
「ソレをお願いするニャ」
「はーい。わかりました。それじゃ、いってらっしゃ~い! がんばってね」
了解です。まぁ、のんびりとやってきます。
う~ん、絶対に時間も余るだろうし、此処はご主人のために素材とかお金を集めておこうかな。ザザミを倒したら直ぐに防具を作るだろうし、その時にお金が足りなかったら悲しいもんね。
ネコと言うこともあり、アイテム整理もいらないし、持っていくものも何もない。一応、爪護符の効果は乗るけれど、そんなもの持ってないです。
そんなわけで、飯も含めクエストへ行く準備は早々に終わり、直ぐに古代林へ向けて出発。古代林は大きな島にあるため、飛行船ができるまで調査ができなかった。だから、色々と分からないことが多いと聞いている。
とは言え、ベルナ村から古代林はかなり近く、また馬車じゃなく飛行船で移動することもあって、移動時間もそれほどかからない。だから、上手く行けば一日で2回クエストを受けることだってできるかも。まぁ、流石に止められると思うけど。古代林のクエストを受けるのは俺たちだけじゃないのだから。ただ、村クエだったり集会所だったりと、色々な場所からクエストを受けることができるのだし、その辺を管理しているギルドも大変そうだ。
「っしゃ、それじゃ行くか!」
支給品ボックスから取り出す物もないから直ぐに出発。その前に大きな声をひとつ。今回はひとりと言うことで、語尾に“ニャ”とかはつけません。
ただ、アレだね。今までずっとニャーニャー言っていたせいで、違和感がすごい。慣れとは怖いものだ。
さてさて、そんなことは良いとして、とりあえずサクッと深層シメジを集めるとしようか。素材集めなんかはその後にしよう。
深層シメジを採取できる場所は古代林のエリア9、10、11と奥の3エリアのみ。古代林は戦いやすいエリアが多いし、好きなマップだけど奥のエリアへ行くのが時間かかるんだよね。近道のひとつでもあれば良かったのに。
まぁ、そんな文句を落としたところで仕方無い。今は他にやらなきゃいけないことがあるのだから。
……そんな久しぶりのソロクエスト。そのことで舞い上がっていたのだかなんだか知らないが、その時の俺は気づかなかった。千里眼効果が教えてくれていたエリア2にいる大型種の存在に。
エリア1でリモセトスやオオサンショウウオみたいな生き物、そして水中を泳ぐ謎の生物などを横目に、奥のエリアを目指してダッシュ。うむうむ、古代林のエリアは好きだ。見るものが沢山あってただフラフラするだけでも面白いよね。
ネコのスタミナは無限と言うこともあってか、思っていたよりも奥へ行く時間はかからないかもしれない。やっぱり採取系のクエストはネコの方が楽かもね。問題があるとしたらモドリ玉を使えないことくらいだろうか。
そんなことを考えつつ、エリア1を抜け、エリア2へ入った時だった。
「いや……これは驚いたな」
そんな予感なんて何もなかった。
そもそもこのクエストに乱入はないはずだし、乱入だとしても出現が早すぎる。と、なると、コイツは最初から此処にいたのだろう。確かに、ゲーム中でもいきなりコイツと出会うことはあった。所謂、トラウマクエスト的な感じで。しかし、それとも今回は状況が違う。いや、だってネコ専用クエストでこれは流石にやらないだろ。ようは、ギルドの手違いと言ったところか。
重厚な紅蓮の甲殻。荒々しさを感じる顔。そして、何よりも特徴的なのは蒼く染まった身体の半分ほどにもなる巨大な尾。
つまり――斬竜ディノバルドがそこにいた。
まさかこんなことになるとはねぇ。
まだ此方には気づいていないみたいだが、さてどうするか。
……戦うか? いやいや、流石に無理だって。此方はネコでしかも武器も防具もマッカォ。どう考えたって、攻撃力と防御力が足りない。即乙だって考えられるし、ノーダメでもクエスト時間以内にクリアできるのかも怪しい。でも、戦って……いや、落ち着きなさいよ。此処で戦ったところで何のメリットもない。いくら失うものが少ないとしても、戦うのはマズイ。観測船だってこの状況を見ているだろうし、ギルド側のことを考えると、直ぐにリタイアした方が良いくらいだ。リタイアしないとしても、このエリアは無視して、エリア6経由で奥のエリアを目指せば良い。千里眼があるから帰りだって道を選べば安全に……だから落ちつけよ。こればっかりは勝てる相手じゃないだろッ!
……ただ――きっとこんなチャンスは二度とない。
確かに、武器と防具は弱いものだし、俺のレベルだって低い。でも、スキルとサポート行動は最終系。そして、今はソロ。迷惑をかけてしまう仲間もいない。
ああ、うん。これはもう止められないかな。
……ホント、いつになっても成長しないことで。
バカだよなぁ。自分でもそう思うくらい。
リタイアするか、このディノなんて無視してさっさと奥へ行き、深層シメジを集めるか。それが絶対に正しい判断。
でもさ、やっぱり思ってしまうのですよ。
――より強い敵と戦いたいって。
勝てるわけない相手だってことくらいわかっている。それでも、抗ってみたいじゃないか。自分の限界へ挑戦してみたいじゃないか。
帰ったらきっと色々な人から怒られるかもしれない。どうして無茶したんだって。それでも、この性格ばかりは治ってくれやしないんだ。
目を閉じ、ふっと息を短く吐き出す。
そうしてからゆっくりと目を開けた。見えてきたその世界に色はもうない。
その白黒の世界で、背中へ担いでいたブーメランを手に取り力を込めた。
この小さな身体に何ができるのかなんて知らない。それでも、せっかく訪れたこのチャンスを逃したくはない。
ようやっと此方に気づいたディノバルド。その顔面に向かってブーメランを投げつけた。
そんじゃ、ひと狩りいきますか。
ディノさんの乱入と言えば、村クエの波乱の萌芽ですよね
きっと何人ものハンターさんがあのディノさんに挑んだことでしょう
私もデスルーラ用のタクシーとして使わせてもらいました
さて、その波乱の萌芽ディノさんですが、通常よりも体力が2~3倍らしいです
まぁ、このお話のディノさんは普通のディノさんだと思いますが
では、次話でお会いしましょう
~余談~
ロケハンがてら……
レベル:26
サポート傾向:アシスト
装備:下位ドスマッカォ防具、下位ドスマッカォ武器
スキル:遠隔強化、ブーメラン上手、会心強化【大】
サポート行動:貫通ブーメラン、巨大ブーメラン、緊急撤退
のネコさんで村クエディノと戦ってみました
結果ですが……うん、まぁ、そうなるよねって感じです
気になる方は是非試してみてください